とある宇宙、とある星系のとある惑星に小さな学園が創立されている。

その名はエンジェル学園。

今、この小さな学園に個性なんて言葉では割に合わないくらいアクの強い者たちが集結しようとしていた。






この物語は、ぶっちゃけ身も蓋もない言い方をしてしまえば「原作ギャラクシーエンジェル・学園Ver.」なのである。














エンジェル学園 Long Ver.


第一話「入学、エンジェル学園」









「お姉ちゃ〜〜〜ん!そろそろ出かけないとホントに遅刻だよ!?」

名前:アプリコット・桜葉(通称リコ) 年齢:10歳 備考:良識のあるミルフィーユの妹

何の変哲もない一軒家、そこに一人の少女の声が響き渡る。

「せめて後10分待って〜〜、もう少しで飾りつけが終わりそうなの〜〜!」

名前:ミルフィーユ・桜葉(通称ミルフィー) 年齢:17歳 備考:超天然ラッキーガール

対して姉と呼ばれた方の少女はまるでおもちゃをねだる子供のような声を上げていた。

「同じセリフを10分前に聞いたってば〜〜!っていうかなんで入学式の朝からウェディングケーキになんて挑戦するの!?台所のほとんどのスペースケーキで埋まっちゃってるし!!」

「だって〜〜、昨日見た『焼きたてケーキ』でウェディングケーキを作ってるのを見てどうしても作りたくなっちゃったんだも〜〜ん!」

「だったらせめてもうちょっと早起きしてから作ってよ!30分でそこまで仕上げたのはすごいけどさ!」

ザッ

玄関でツッコミの入り混じった説得を続けているとひとつの人影がリコの視界に入る。

「相変わらず苦労してるわねぇ、リコ」

名前:蘭花・フランボワーズ 年齢:18歳 備考:ミルフィーの幼なじみで桜葉家のお隣さん

「そうなんですよ……、っていうかここにいたら蘭花さんまで遅刻しちゃいますよ!?」

「なに水臭いこと言ってんのよ、こういう時のミルフィーの扱いには慣れてるんだから」

すると、蘭花は幼なじみということもあってか遠慮なく桜葉家のへと入って行き、ミルフィーのいる台所にたどり着く。

「あっ、蘭花!見て見て、あともうちょっとで『ミルフィー特性・ウェディングケーキ・フルーツの盛り合わせ』が完成………ってあれ?」

ズルズル……

無邪気にケーキ作りに没頭するミルフィーを蘭花は有無を言わせず引きずり出す。

「『見て見て』じゃな〜〜い!あんた今日が入学式だって分かってんの!!」

「分かってるよ〜、じゃあせめて生クリームが乾かないようにちゃんと保存してから……」

「それが分かってないって言ってんでしょうが〜〜〜〜!!ほら、さっさと行く!」

ドカッ

「あうっ!」

バキッ

「ふぎゃっ!」





途中、何度かミルフィーが壁や柱に頭をぶつけながらもようやく家の外まで引きずり出すことに成功した。

「お〜星さ〜ま〜キンキラリ〜〜ン♪」

「……毎度お世話おかけします」

「……いいのよ、慣れてるから」

少し頭を打ちすぎてあっちの世界にトリップしている様子にも全く二人は動じていない。慣れているといえばまだ聞こえは良いが、リコの10歳にしてこの達観ぶりは末恐ろしいとも言える。









「わぁ!人がいっぱい集まって楽しそうですね〜〜!」 ←なんとか復活

「当たり前でしょ入学式なんだから。それよりあんた、はぐれないように気をつけなさいよね」

タッタッタッタッ

「ね……寝坊した〜〜〜〜〜!!」

名前:カズヤ・シラナミ 年齢:12歳 備考:数少ない良識を持った平凡な少年

駆けるような足音と共にミルフィーたちの後ろから叫び声が聞こえてくる。一昔前の少女マンガ風に例えるなら「遅刻しちゃう〜〜!」といったところか。

しかし、急いでいる人間とは得てして冷静さを欠いて周りが見えなくなってしまうものである。

少年もまた、遅刻を恐れて冷静さを欠いていた。

ドカッ

「「あっ!」」

そのためカズヤは校門前で談笑していたリコに気づかずにぶつかってしまった。

そのまま二人とも倒れてしまうと思われた次の瞬間

ガッ!

倒れそうな自分の身体を足で支え、カズヤの腕を両手で掴む。そして………………





「男〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

無駄な動きがまるで見当たらないフォームのままカズヤを信じられない飛距離で投げ飛ばした。

アプリコット・桜葉  追加備考:男性恐怖症








「あ……あれ?おかしいな……たしか僕だけは『シラナミさんだとあんまり恐くない』とか『カズヤさんは特別だから……』とか言ってもらえてたはずなのになぁ……」

何をおっしゃるやら、この私がそんな甘久の恋愛要素とりいれたりする訳ないじゃないですか。
大体リコとイチャイチャカップルになれるのは4年後の話なのでは?

「そんな話書く気ないくせに………」

うん♪

カズヤ・シラナミ 追加備考:この小説でリコと恋愛する夢を見る無謀な少年



「あ……あの!大丈夫ですか!?」

本人はあくまで無意識なため、罪の意識を感じたリコはすぐさまカズヤの元へと駆けつける。

「まぁ、なんとかね。気にしないで(なんだ、やっぱりリコは良い子だ)」

「あの……本当にごめんなさい!『何かある毎にしょっちゅう自室で眠りこけて本編でそのムッツリスケ兵ぶりをあらん限りに発揮した』名も知らぬ人!!」

グサァッ!!

「あれ?ええと……こんなこと言うつもりじゃなかったんですけど、今頭の中に天(作者)の声が聞こえてきて……無意識にこんな失礼なことを………本当にごめんなさい!!」

「い…いいよ、気にしないで(おのれ作者め………!!)」


「リコ〜〜、助けて〜〜〜〜〜!」

そんな二人の会話をさえぎるかの様にミルフィーが呼びかける。

「お姉ちゃん!?それじゃあたし行きますので!!」

「う…うん」

本当にすみませんでしたとつけ加えてリコはミルフィーたちの元へと走り去って行った。

そんなリコのかわいらしい後姿を見つめながらカズヤは漫画版のように「…天使だ…」などとクっサいセリフ心の中で吐いていた。

「いちいちうるさいな!そんなに僕のことが嫌いか!?」

う〜〜ん、嫌いじゃないけど扱いにくいっていうか、まともな上ツッコミも遠慮がちなキャラって書きにくいんですよ。だからこうやっていじってあげてる訳だし。

「そりゃどうもありがとうございました!」










「どうしたのお姉ちゃん!?」

リコが駆けつけてみると、そこには長髪の男性がミルフィーにからんでいるようだった。

「さっきからこの人が………」

「お〜、マイハニー!どうして君はそんなに美しいんだい?君を一目見た瞬間から僕はもう君の虜さ!まるで全身に電撃が走ったかの様だ、ピ○チュウの電撃なんて比べ物にならないほどにね!あぁ、君はまさしく美の女神だ!ヴィーナスだよ!君と僕は前世での史上最高の恋人だったに違いない!!」

名前:カミュ・O・ラフロイグ 年齢:22歳 備考:言わずと知れたストーカー

新手のナンパなのだろうか、それにしてはやや版権的にまずいようなことも口走ったりと、とにかくこれで顔が良くなかったら成功率がマイナス点までいきそうな口説き文句だった。

「何……これ?」

姉のピンチのはずなのだがあまりに濃いものを目にしたため、まず目の前のものが人間かどうかすら疑問に思ってしまっている。

「分かんないよぉ……、蘭花もあっちで……」




「うおおおおおおおお!!周りの奴は騙せても俺の目は騙せんぞおおおお!!その身のこなし、キサマ相当の使い手だなあああああああ!!」

名前:ギネス・スタウト 年齢:25歳 備考:元ボディービルダーの現教師

「うっさいわね!別に騙してないし!っていうかいちいち語尾が長いっつうの!!」





「あっちでツッコミモードに入っちゃって助けてくれない………」

ぐいっ!

不意に元々近づいていた距離にもかかわらず更にカミュがミルフィーを抱き寄せる。

「さぁマイハニー、僕たちには名前を知り合う必要すらない魂のままに感じるんだ!レッツ・キスミー・マイリップ!!」

ただ今の言葉を翻訳すると『ぶっちゃけ名前も知らないんだけど君が可愛すぎて一目惚れしちゃったから、今メッチャキスしたいです』といった感じである(どっちも同レベルだ…)。

ガシッ

しかし、カミュのミルフィーを掴む腕が更に誰かによって掴まれる。

リコだった。

「止めてくだ………お、お、お………男〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
ドコォッ!!

メキメキ     ゴキッ!

先ほどのカズヤの件でお分かりの通りリコは触れられた男性を数十メートルもの距離を投げ飛ばすほどの怪力を瞬間的に発揮する。

その力で殴ったのだ…………カミュの『わき腹』をモロに……………


「か、カミュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「わ、私…!お姉ちゃんのためなら自分から男の人に触ることだってできます!」




「むしろ殴るために掴んだ感は否めないけどね……」

「あ、蘭花」

「ようやく開放されたわ」

どうやら今までずっとギネスの熱弁を聞かされていたらしい、心なしか少しやつれているように見える。









「さてさて、入学式での学園長の堅苦しい話でお疲れ様。一応このクラス担当のタクト・マイヤーズだよ、気軽にタクトって読んでね」

名前:タクト・マイヤーズ 年齢:21歳 備考:相手が女の子なら脅威的な守備範囲(ヴァニラからフォルテまでと)

「あ、あの……た、タクト先生」

本人が呼んで良いと言ったとはいえ、いきなりフランクに呼ぶには戸惑いつつも、気軽にと言われて『マイヤーズ先生』と呼ぶ訳にもいかないと考えていたリコはおずおずと挙手をする。

「ん、何かな?」

「あの、実は―――――――………」




リコはカミュの事件について全て話した(RPG風に)





「う〜〜ん、あの人も相変わらずだなぁ」

どうやらエンジェル学園の教員達は全員面識があるらしく、タクトもカミュの人間性について熟知しているようだ。

「ま、あの人も根は悪い人じゃないから……多分……大目に見てあげてくれないかな?」

ポン

そう言ってタクトは元気づける意味でリコの肩にそっと手を置く。

「……………………」

しかし、リコは何の反応も示さない。

「ど……どうなってんの?」

男性恐怖症のはずのリコのこの反応には蘭花も心底意外そうにミルフィーに尋ねる。

「逃げてくださいタクトさん!!」

だがミルフィーはそんな蘭花の疑問に答える間もなくタクトに向かって注意の声を促す。

「…あは……あははははは……男の人だぁ……」

あきらかに危ない不気味な笑みを浮かべながら自分の肩に触れているタクトを見据える。

「気をつけてください!リコは普段男の人に触れられると『怪力リコたん』に変身しますけど、一日のうちに三回触れられると『殺人鬼リコたん』に変身してしまうんです!!」

「リコたんって……なんでちょっとナノナノ風に言うのよ………っていうか聞いてないわよそんな話!!」

「そりゃそうだよ、作者がこの話のオチのためだけに作った即興のオリジナル設定だもん」

アプリコット・桜葉  追加備考:天使の顔も三度まで



「……男の人だぁ……ぎゃはははははははは!!」

ゆらりと力の抜けた身体をタクトに向けると、次に十本のツメが刃の様に伸び始めた。もはや人間じゃない。









「あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!!」




教卓が……紅く染まる………

この日を境に、『男殺しのリコ』の二つ名が学園に知れ渡ったそうな。










あとがき

という訳でエンジェル学園、ロングバージョンに挑戦してみました。

みなさん現役で出番があるようにUのキャラには少し若返ってもらってます。

あんまりキャラを多く出すのは苦手ですので、限度もありますが。

そして一応言っておきますが別に私はカズヤが嫌いな訳じゃないですよ……?

そりゃカルーア編での「僕、テキーラが好きだ!」発言に「はぁぁぁ!?何言ってんのこの子!?」とか思ったしまったり、ツッコミに今ひとつキレがなかったり、初代主人公と比べると……なところはありますが決して嫌いではありません。本当ですよ。

ちなみにヘルハウンズたちの歳は「これくらいかな?」というアバウトなものですのであしからず。

正直ぐだぐだ感丸出しの作品ですが、どうか生暖かい目で見ていただけると嬉しいです。