[異世界の住人] 

 

一章

 

 

 

 

 

 

広い宇宙の中、一隻の儀礼艦が航行している。

 

船の名はエルシオール。

 

紋章機と同じく白き月のロストテクノロジーである。

 

 

 

 

 

「暇だなあ〜〜・・・・」

 

 

エルシオールの司令官であり、准将のタクト・マイヤーズがぼやく。

 

 

「司令官の言うセリフじゃないな・・・・」

 

 

その司令官らしからぬタクトの言動にエルシオールの副司令官であり中佐のレスター・クールダラスが指摘する。

 

 

「そうは言ってもなあ〜〜・・・俺がこうして暇なのはお前のせいだぞレスター・・・」

 

 

「なんでそれが俺のせいになるんだ・・・・」

 

 

副官として司令官を注意したにもかかわらず逆ギレされては困る。

 

 

「お前が『たまにはフラフラせずに大人しくしていろ』なんて言ったのがそもそもの始まりだろう?」

 

 

「間違った事は言ってないはずだ、そもそも司令官がブリッジにいるということは至極当然なことなんだからな。

そんなに暇をもてあますのが嫌なら書類作業は山のようにあるぞ?」

 

 

「あぁ・・・・暇だぁ・・・・・」

 

 

シカト

 

 

それは無言の拒否である。

 

 

と、その時

 

 

「前方に未確認飛行物体接近中!!」

 

 

メガネを掛けてオレンジ色の髪をゆるく三つ編みに結んだレーダー担当のココが叫んだ。

 

 

「ココ、それ今すぐ映像化できる?」

 

 

ココの報告に隣にいた通信担当で紫色の髪をポニーテールにしたアルモが尋ねた。

 

 

「やってみる」

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

ココが未確認飛行物体を映像に出した時この場にいる全員が硬直した。

 

 

無理もない、広大な宇宙を年端もゆかぬ少女が十字架に張り付けられてプカプカ彷徨っていれば大抵の人間は

唖然とするだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・っは!エンジェル隊、手の空いてる者は即急に・・・・十字架に縛られている・・・・女の子を救出してくれ!」

 

 

やっと我に戻ったタクトがエンジェル隊に指令を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――医務室―――――――――

 

エンジェル隊が少女を救出した後、少女が医務室で寝込むこと小一時間。

 

 

「どうですケーラ先生、女の子の様子は?」

 

 

 「大丈夫よ。どうやら宇宙に投げ出されてそんなに時間は経っていないみたいだから」

 

 

ケーラと呼ばれた女性は医師にしては少々派手な姿をしているものの少女に対する処置が優れていることからして

腕は立つようだ。

 

 

「投げ出されてそんなに間がないって・・・・・・・この辺には小惑星すらありませんよ?」

 

 

「そうよね〜・・・それにいまどきこんな女の子を宇宙服もなしに投げ出すなんて非人道的な事をする人がいる

なんて・・・・・」

 

 

「服装からして軍の人間のようですが・・・・・・・・」

 

 

二人の会話に混じってきたのは薄い緑色の髪をポニーテールにし、その上からヘッドギアを付け肩にウサギの様な生物を乗せている白き月の近衛隊、ムーンエンジェル隊の一人ヴァニラ・H(アッシュ)である。

 

 

 

「確かに・・・・・この歳で軍人なんてエンジェル隊ぐらいだと思ってたのに・・・・・・・・・」

 

 

「言われてみればそうね〜・・・・・・」

 

 

そのとき

 

 

 

「ん・・・・・・」

 

 

少女の意識が戻ったようだ。

 

 

「良かった!気がついたみたいだ!」

 

 

タクトは少女の安否を確認するために身を乗り出した。

 

 

 

「・・・・・・こ・・・・・・」

 

「こ?」

 

 

 

 

 

 

「こんなオチは嫌や〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」

 

ガチンッ!!!!!

 

 

意味不明の言動を発しながら少女が勢い良く起き上がったため身を乗り出していたタクトとぶつかってしまった(ベタ)。

 

 

「ちょっ・・・・大丈夫?司令・・・」

 

「だ・・・・大丈夫ですか?」

 

 

ぶつかった要因の少女の方はたいして痛くなさそうだ。

 

「いてて・・・・・なんとか・・・・」

 

 

「すみません。わざわざ助けてもろたみたいやのに・・・・・」

 

「いや、ホントに大丈夫だから」

 

 

「さよですか?あぁ・・・なんや久しぶりに人として対処されたような気がします」

 

「そうよね〜・・・あんな仕打ちをされるくらいだものね・・・・」

 

 

「まぁ、これくらいやったらノーマッドさんも・・・・・・・・あれ!?」

 

自分の置かれた状況をこれくらいと言いつつヴァニラの方を見て驚く。

 

「ど・・・・どうしたの急に・・・?」

 

 

「ヴァ・・・・ヴァニラさん!?なんでこないな所におるんですか?確か今日は『神、汝らが困難を救わんがため

光を与え雫に変え行く』ノーマッドさん訳『今日はさー、コケシとにんじんとツルハシが大安売りなんだよねー』

とか言いながら出かけてませんでした?」

 

 

かなり不思議な会話である。当然周りの人間は多少なりとも引くだろう。

 

更に言うなら「どんな大安売り!?!?」と突っ込まれそうな内容だ。

 

「・・・・・・・ってそういやノーマッドが見当たりませんけど、またどっか破けて綿でも出ました?」

 

「ノーマッド・・・・さん?」

 

 

「ほら、いつもヴァニラさんが抱えとった、人工知能のやたらと毒舌はくブッサイクなピンク色のぬいぐるみですよ

・・・・・・ってあれ?」

 

 

「私が普段携帯しているのはこのナノマシンペットぐらいなのですが・・・・」

 

 

 「ヴァ・・・・」

 

 

「ヴァ?」

 

 

 

 

 

「・・・ヴァ・・・・・・ヴァニラさんが普通にしゃべった〜〜〜!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

ということで、ブラックホールの行き先は原作の世界でした

 

 

ちなみにカナの言っていたヴァニラのセリフの内容はデタラメですのであしからず

 

 

それにしてもやはり、最初に比べると暴走の度合いが明らかに下がってますね・・・・・・

 

 

やはりムーンエンジェル隊まで暴走してしまうとカナがせっかく原作の世界にやって来た意味がなくなって

 

 

しまうので結果これからも所々まじめな会話になるやもしれません

 

 

というか単にあのテンションを持続していく自信がありません

 

 

 とはいえこれはあくまでギャグ小説ですからちゃんと笑いは入れていくつもりです