[異世界の住人]
五章
前回に引き続きエルシオールを探索中のカナ。
――――――格納庫――――――――――
「どうもクレータさん」
「あれ、カナさん?帰る方法ならまだ見つかっていませんよ」
カナの訪問に疑問を感じたクレータが現在の状況について報告する。
「いえ、しばらくお世話になることになったんで探索ついでのあいさつです」
「ああ、そうでしたか」
「班長〜〜、この前注文したアニーズのDVDの中に変なのが混じってました〜〜!」
整備班の一人が何やら通販の問題点を報告している。
「きゃ〜〜〜〜!今はカナさんがここにいるのよ!!?」
どうやらクレータは自分のイメージを大事にしたいのか必死に隠そうとする。
「アニーズってあのアニーズですか?」
だが整備班の一人は大声で叫んでいたため隠そうとするだけ無駄のようだ。
「え!?カナさんもファンなんですか!!?」
新たなるアニーズファンクラブの一員ができることを期待しているのか凄く嬉しそうだ。
「いえ、向こうの蘭花さんが・・・・・」
「あぁ・・・・そうですか・・・・・」
期待していただけに凄くがっかりしている。
「で、変なのっていうのは?」
気を取り直して先程の報告に対して質問する。
「はい、これなんですけど・・・・」
そう言って整備班の一人は一枚のDVDを取り出す。
「宅配の人が間違えたのね・・・・・にしても何なのかしらこれ・・・・?」
「そ・・・・・それは!!?」
その間違いDVDを見てカナは驚愕の声を上げる。
「知ってるんですか?」
「知っとるも何も“マペット・パペット”のDVDやないですか!!!!」←大のお笑いファン
「「マペット・パペット??」」
カナは知っていて当然のように語っているが二人にはさっぱりのようだ。
「知らへんのですか!!?あの可愛いらしいウシ君とカエル君の絶妙なブラックギャグを!!?」
何やら今までにない程に熱弁している。
「よく分からないけど、つまりカナさんはこれが欲しいんですね?」
一見、親切な行為だがその顔は何かを企んでいるようにニヤついている。
「くれるんですか!?!?」
「良いですよ、8200ギャラで!」
「・・・・・・・・・・・・くれるんちゃうんですか!!?っちゅうか軽く元値の倍以上しとりますよ!!!」
つまりあれだ、元値の倍以上の価格で売ってその金をまたアニーズグッズに使うつもりらしい。
「あれ〜〜〜、いらないんですか?ここしばらくは補給とかなかったと思いますよ〜〜〜〜〜??」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
結果
「・・・・・・・・・買ってしもた・・・・・・あたし意思弱いなぁ・・・・・」
結局あいさつというよりDVD一枚買って(大損で)格納庫を去っていった。
――――――クジラルーム―――――――
「広いなぁ・・・・・・・ほんまにこんな所に管理人やおるんやろか?」
確かに見回す限り、海(人工の)と浜だらけで本当に艦なのかどうかも疑わしい光景を見ていると人がいるのかどうか自体疑わしくなる。
「何かご用ですか?」
急に背後から声が聞こえてきた。
「ひゃっ!?」
「すみません驚かしてしまいましたね。僕はこのクジラルームの管理人、クロミエ・クワルクです」
クジラルームの管理人を名乗った少年はカナとたいして変わらない背丈に柔らかそうなオレンジ色の髪に軽装で肩にクジラのぬいぐるみのような物を乗せていた。
「管理人!?言うたかてまだ11歳前後でしょう!?」
背丈は自分とたいして変わらないが声の高さからして恐らくそのくらいだろうと判断していた。
「いえ、今年でもう15ですよ」
「あたしより年上!?まぁ、それでも若いけど・・・・・」
男で、しかも15歳でカナと同じくらいというのは珍しいだろう。しかも全く声変わりした様子がない。
もっとも、それを言ったらカナも14の割には小さい方なのだが。
「まだこの歳ですけど、クジラルーム内のことでしたら全て把握してますので何でも聞いてくださって結構ですよカナ・アルフォートさん?」
「ええ!?あなたもテレパスなんですか?」
ものすごく嫌そうな顔で聞いている『またこのネタ?』と言わんばかりに。
「いえ、テレパスなのは宇宙クジラの方なんです」
「はい・・?(もしかしてイタい人?)」
ザァァァァ・・・・・・
「ほら、もうすぐ来ますよ」
「・・・・ほんまにクジラがおるんですか?」
真実味の出てきた話に好奇心から波打ち際に近づいていく。
「あ、あんまり近くに行くと・・・・・・・」
カナの行動にクロミエが注意しようとするが
ザッパァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!
一足遅かった。ぶつかりこそしなかったものの全身に波を被ってしまった。
「大丈夫ですか?よかったらあとで僕の服を貸しますけど・・・」
「・・・・・・・に・・・・・・た・・・・・・・・」
「え?」
「ごほっ・・・・ごほごほっ・・気管に・・・・っちゅうかほとんど肺に・・・・・入りました・・・・・・ごほっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・とりあえず着替えましょうか・・・・・」
結局、服が乾くまでカナはクロミエの服を着ることになった。
本来なら女が初対面の男から服を借りるのは多少問題あるだろうが、この二人の場合、別に問題はないだろう。
その間に宇宙クジラはテレパシーで心を読むことができ、クロミエはその宇宙クジラの言葉が分かるということを聞かされた。
――――――――植物園――――――――――――
「あの〜〜・・・・ひとつ聞いても構いませんか?」
「なんですか?」
「ギョヒョヒョヒョヒョ・・・・・・・・グヒュヒュヒュヒュ・・・・・・・ヌギョギョギョギョ・・・・・・ハァッ!!!」
そこにはあからさまに不気味な声を上げ5・6メートルはあろうかという程の身の丈にひとつ目と牙がついて触手が絶えず動いているという漫画などで“人食い植物”として描かれそうな巨大植物だった。
「あれ、ほんっまに大丈夫なんでしょうね!!?」
「ええ、最近育ち盛りであんなになっちゃいましたけど、とっても良い子なんですよ」
「いや・・・・あたしは別に大きさだけでそんなこと聞いた訳では・・・・・・」
巨大植物を我が子を見るような笑顔のクロミエに対し論点のズレを修復しようとするカナ。
「元気ハツラツでしょ?」
「いえ、殺気ハツラツです・・・・」
というかクロミエはこんな物を一体どこで手に入れたのだろうか?ひょっとして彼にはミルフィー同様、強運でもあるのだろうか?
「なんでしたらあの子の心の声を聞いてみます?」
「え?できるんですか?」
「僕と手をつないで宇宙クジラのテレパシーを通してあの子の心の声を聞くんです」
「な・・・・・なるほど」
そうしてさっそく手をつないでみると徐々に何か声のようなものが頭に直接届いてくる。
『・・・・・・・・・食ってやる・・・・・・・・・・・』
「・・・・え?」
『・・・・もう少しだ・・・・!!』
「あの〜〜・・・・・」
『あと少しでも近づいて来たら・・・・・・・・・・この触手で・・・・・・・・ギュフフフフフフ・・・・・・・・・』
「もしも〜〜し・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・さあ来い!!!!』
「く・・・・クロミエさん・・・・・さっき良い子がどうとか言うとりましたよね・・・・?」
ちなみにこちらの言葉は巨大植物に聞こえることはない。
「あははっ、ダメだよ、そんな冗談ばっかり言ってるから友達もなかなかできなんだよ?」
この後におよんでまだクロミエは“我が子のしつけ”的な雰囲気で巨大植物に語りかける。
「(な・・・・・なんちゅう偉大な包容力・・・・・・息子がグレても笑顔で見守りそうなタイプや・・・・・)」
そんな時
ボトッ
先ほどクレータから買った(ぼったくられた)DVDがポケットから落ちてしまった。巨大植物の方へと・・・・・・
反射的にそれを拾おうとした次の瞬間思い出した。先程聞いた『もう少し近づいて来たら・・・・』と言っていた巨大植物の心の声を・・・・・・
だが時の流れとは無情なもので
ギュルルルルッ ガシッ
カナのDVDを拾おうとした手は巨大植物の触手に絡まれ・・・・・・
ガブゥッ!!!!!
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
結局それが原因でナノマシンでも直りきらない怪我を負い、その後しばらくカナは医務室で全身の痛みに耐えながらも満足げにDVDを鑑賞していたという。
〜〜〜〜おまけ〜〜〜〜〜〜
注)本編では上のような表情はほとんどしません(境遇上)
年齢:14歳
階級:曹長
身長:145cm
好きな食べ物:たこ焼き、うどん
特技・趣味:ツッコミ(自称)、暗記(瞬間記憶能力者)、お笑い鑑賞
悩み:お笑いライブでよく周りの客から「あんた笑い過ぎ」と注意されること
専用紋章機:シールドガーディアン(防御力重視の中距離型紋章機)
必殺技:リフレクトウォール(一定時間のみ全機の防御力を2倍にする)
座右の銘:“命あっての物種”(その割に一番生傷が絶えない)
ツッコミに全青春をかける京弁少女
Cana Arphor
カナ アルフォート
「っちゅうか、またあたしは巻き添えですか?」
あとがき
今回も前回同様エルシオール探索編にした訳ですが“マペット・パペット”というのはベタでしたでしょうか・・・・・?
ただ“ジャニーズ”も“アニーズ”になってた(どうだろう・・・?)のでこれでいけるかなと思ったのですが・・・・・
おまけに関しての設定ですが本編にはほとんど関わりありませんので、完全にただのおまけです
絵のほうはペイントで直に作ったもですので、いくつか雑な点はありますが、そこは見逃してもらえるとありがたいです
とりあえず次回はバレンタインデーネタに挑戦しようとは思ってますがほのラブは期待しない方が懸命です