ツインスター隊。
それは僕、マリブ・ペイローと僕の双子の弟、ココモ・ペイロー、そして新入隊員の烏丸ちとせさんが所属する、僕たちの自慢の軍隊!
そんな僕たちツインスター隊は、今日も仕事で大忙しです。
ツインスター隊奮闘記?
今日の僕たちの仕事はロストテクノロジーの整理。
僕たちツインスター隊やライバル、エンジェル隊などが回収してきたロストテクノロジーを、重要な物からA、B、C、Dとランク分けをして、それぞれの箱に入れるという作業だ。
そんな作業を、僕とココモとちとせさんの三人で続けていた。
「よいしょ…っと。ふう………エンジェル隊めぇ………!」
ちとせさんは作業しながら、少し殺気づいた声をあげていた。
どうやら、この間エンジェル隊から受けた酷い仕打ちの事を、未だに根に持っているらしい。
「この恨み、はらさでおくべきか………!!!」
しまいには手に持っていたロストテクノロジーを投げ捨て、代わりにワラ人形とエンジェル隊の写真、それから釘と金づちを持ち、さらに、いつの間に着替えたのか白装束、そして額にろうそくの上に鉢巻きという、いわゆる「八ッ墓村」スタイルをしていた。
…どうでもいいけど、ロストテクノロジーは投げ捨てないでほしいなあ。
「わーい、ちとせ、もっとやれー」
鬼気迫る表情で釘を打ちつづけるちとせさんをココモが煽る。
あまり煽らない方がいいと思うけどなぁ…。
とりあえず僕は気を取り直して作業を続ける。
「あの、マリブさん。このロストテクノロジーは何ですか?」
僕は声をした方向に振り返ると、いつの間にか元の軍服に着替えていたちとせさんがいた。
しかもその顔は清々しい顔をしていた。
先程の呪いの行動でスッキリしたらしい。
色々言いたい事はあったのだが、これ以上何か言う事は、ちとせさんの神経を逆撫でする事になりかねないので止めておこう。
とりあえず僕は、ちとせさんにこの事を悟られない様に、ちとせさんが持っているロストテクノロジーの見てみる。
少し古びたバスターのようだ。
「ちょっと待っててください…」
僕はロストテクノロジー専用識別端末にかけてみる。
しばらくすると識別結果が出た。
「あ、出ました。えーと、それは先文明EDEN時代に活躍したという、伝説の青き英雄が使っていたバスターだそうです。名前は『エックスバスター』だとか」
「それで、どの箱に入れればいいでしょうか?」
「ええと…『重要度A』と表示されていますから…Aの箱に入れてください」
「はい、わかりました…………使ってみたいなあ」
何やらちとせさんの小さな呟きが聞えたような気がするが、僕は気にせずココモの所に行った。
何故ならココモがロストテクノロジーを持ちながら、手で「ちょいちょい」と、僕を呼んでいたからだ。
「…なあ、マリブ、これって何だ?」
そういいながらココモは機械の棒のような物を見せた。
「ちょっと待ってて」
僕は再びロストテクノロジー(以下略)にかけてみる。
「あ、出た出た。えーと、それもちとせさんの『エックスバスター』と同じく、先文明EDEN時代に活躍した赤き英雄が使っていたセイバーだって。名前は…『ゼットセイバー』だってさ」
「えぇぇっ! すっげーかっこいいじゃん! うはー、これ、今でも刃出るかなあ!?」
ココモは目を輝かせながらロストテクノロジーの使い方を模索している。
あちゃー…教えるんじゃなかったかなぁ…?
まあ、先程の検索結果によれば、二つとも扱いが非常に難しいらしく、その伝説の英雄たちにしか扱えなかったらしい。
それが『重要度A』の由来でもあるらしい。
じゃあ大丈夫か…と思いかけたが、ここで僕はある事に気付いた。
「そういえば、前に聞いた事があるけど…使い込まれた武器や道具は、その人の魂が宿っていて、他の人が不用意に触ると、その人の魂が取り付く…とか」
まさかね…と思考を振り切ろうとした、その時。
ドコォン!!!
「えっ、何の音!?」
ちとせさんがいた方向から凄い破裂音が聞えたので、その方向を見ると、何やら青いオーラに包まれたちとせさんが立っていた。
その腕には先程のロストテクノロジー…『エックスバクター』が装着されていた。
「ち、ちとせさん! そのロストテクノロジー、まだ箱に入れて無かったんですか………っツ!?」
僕はちとせさんに忠告するために近づこうとしたが、近づくにつれて何とも言えないプレッシャーを感じ、近づく事ができない。
「ま、まさか…本当に!?」
僕は、先程ちとせさんの小さな呟きを流した事を今頃になって後悔した。
ちとせさんは『エックスバスター』を構え、すでに戦闘態勢だ。
「ち、ちとせさん、危ないって!」
その僕の声も、今のちとせさんには聞えていないようだ。
目は尖り目になっているものの、その目には何も映っていない。
僕がどうしようか悩んでいると、ちとせさんが甲高い声で叫ぶ。
「ボクは…ボク達は・・・誰かを縛り付ける為に戦っているんじゃない!
誰かを傷付ける為に戦っているんじゃない!
ただ…誰とでも手をつなぎ合わせられる世界を作りたいんだ!!!」
ちとせさんはそれだけ叫ぶと、『エックスバスター』を天井に向かって連射する。
僕はその光景を見ながら思った。
ちとせさんが「ボク」と言う筈が無いし、あそこまで強気にはきはきと(エンジェル隊に対する愚痴を除いて)喋る筈が無い。
「これが…青き英雄の“魂”なのか…」
僕が感心していると、隣からまたもやあの何とも言えないプレッシャーを感じた。
ま…まさか…。
僕は隣を恐る恐る見てみると、僕の嫌な予感は的中した。
そこには、赤きオーラに包まれた、ちとせさんと同じ顔をしたココモがいた。
その腕には『ゼットセイバー』の刃が発動状態になっていた。
「コ、ココモも…!?」
最悪だ…。
僕はそう思っていると、『ゼットセイバー』を振り回しながら、ココモがちとせさんに負けず劣らずの甲高い声で叫ぶ。
「オメガ…もう一人のオレと戦ってやっと分かった…今までのオレがどんな戦い方をしてきたのか…今までのオレの悩みが一体なんだったのか…今なら言える!
オレの力は、破壊するためのものじゃない!
友と…友の信じるものを守るための力だ!!!」
オメガ? もう一人のオレ? 戦い方? 悩み? 友? 力?
色々と突っ込み所が満載だが、間違い無く、今のココモも赤き英雄の“魂”に取り付かれている。
それだけは確かだった。
どうやら今の二人は戦闘中らしい。
今は普通に落ち着いては行けない時なのだろうが、今の二人の鬼気迫るこの状況の前ではどうしようもない。
今の僕にできる事…それは二人からロストテクノロジーを守る事だけだった。
こんな事もあろうかと高性能バリアを作っておいてよかった…。
二人は目の前の壁を敵だと思っているらしく…いや、恐らく昔の記憶で今いる所に敵がいたのだろう、重点的にそこを攻撃していた。
攻撃を終えると、二人は隣り合わせで扉の前に立つ。
ちなみに、先程まで二人が攻撃していた壁は、隣の隣のそのまた隣が見えるほどに大きい穴が何列も貫通していた。
本当に恐ろしい攻撃力だ…。
そう思っていると、二人はまた甲高い声をあげる。
「消え去れ……オレの悪夢よ!」
「さよなら……ボクの宿命!」
そう叫びながら、二人はゆっくりと構え始める。
「こ、この構えは…!」
僕は先程のロストテクノロジー(以下略)の検索結果を思い出す。
『なお、青き英雄のバスター、赤き英雄のセイバー、二人の武器がそろった時、始めて使用可能の必殺技がある。それは―』
自分の顔が青ざめているのが自分自身にでもわかった。
かなり危険な二人の合体技が、発動される…!
と、その時。
「ねぇー。マリブ、ココモ、ちとせ。ロストテクノロジーの整理は終わった?」
この何とも絶妙なタイミングで部屋に入ってきたのは、僕達ツインスター隊を統率しているメアリー少佐だった。
「め、メアリー少佐! 危ないよ! 早く逃げてー!」
そう叫んだが、時すでに遅し。二人は技を発動した。
「「ファイナルストラァァイクゥゥ!!!」」
ドゴオォォォォォォン!!!
倉庫は完全に破壊された…。
その後。
僕達はこの件でメアリー少佐からこびっとく怒られ、ちとせさんもココモも、土下座して謝った。
ちなみに、あのあとちとせさんとココモは、メアリー少佐がハリセンで頭を殴ったら、元に戻った。
なぜハリセンで元に戻ったかは、全く定かではない。
この英雄達はハリセンに弱かったのか?
まあ、そんな事はどうでもいいとして、僕達はその後の事後処理をさせられている。
もちろん、残業手当も無し。
まあ、懲戒免職にならなかっただけ、ましと言うべきか。
それになりより、ロストテクノロジーが無事だったというのが、せめてもの救いだっただろう。
「ちぇー、何で俺達がこれの事後処理をしなきゃいけないんだよう」
ココモが愚痴る。
これはしょうがないと思うけど…。
「まあまあ、ココモ。これが終わったら、イチゴパフェをおごってあげるから」
僕はココモにこう言うと、ココモは目に見えて嬉しそうに作業スピードを早めた。
僕の弟ながら、単純な性格。
「おのれ…ギャラクシーエンジェル…私にここまでさせるとは…」
ちとせさんはそう言いながら、鬼気迫る表情のまま、作業を続ける。
ちとせさん、今回ばかりはギャラクシーエンジェルは関係無いと思う。
そう思ったが、あえて口にはしなかった。
「ふう…それにしても、疲れたなあ…」
さすがに数時間も作業をしていたら、さすがに疲れてくる。
それに、ご飯も全く食べていないので、お腹も空いた。
「何かご飯を買ってこようか…二人とも、何かいる?」
僕はそう言うと、二人は顔を見合わせた後、お茶目な顔をして僕を見た。
どうやら、二人ともご飯を食べていなかった事に今頃気付いたらしい。
「やれやれ…それじゃ、買ってくるよ」
「頼んだぜ」
「頼みましたよ」
ココモとちとせさんは大きく手を振って「行ってらっしゃーい」と言って僕を見送った。
…何だか『はじめてのおつかい』みたいで嫌だなあ…。
そう思いながら、僕は宇宙コンビニで、おにぎりやらジュースやら弁当やらを買い、そしてあの倉庫に戻ろうと、足を進めようとし―
「はあ…また怒られちゃいました…もう、先は長くないのでしょうかねぇ…」
何だか疲れた老人のような声が聞えたような気がして、その方向を見ると、そこにはエンジェル隊の統率者、ウォルコット中佐だった。
「どうしたのですか?」
僕はその様がどうしても哀れ過ぎて、僕は声をかけた。
「…ああ、マリブさん。いえ、実はエンジェル隊の皆さんが、先の任務でまた失敗をやらかしちゃいまして…。それでまた私が上層部からお叱りを受けまして…。」
ウォルコット中佐は凄く疲れた顔をして話す。
殆ど僕の予想通りだった。
この人が疲れている時って、大体エンジェル隊がらみだからなぁ…。
ウォルコット中佐の顔を見て、どうしても聞きたくなった。
何でこの人って、あの人達の為に、こうも一生懸命になれるのだろう?
あんな人の迷惑を考えない、自己中心的な彼女達を。
「それはですねぇ…」
ウォルコット中佐は、僕の言いたい事がわかったかのように話し始めた。
…もしかして、心の中を読まれた?
一方、ウォルコット中佐は気にせずに話を続けた。
「彼女達は…私にとっては『子供』のようなものだからです。子供を守らない親はいますか? 彼女達の為なら、たとえ火の中風の中、彼女達を守って見せます…それが私の“誇り”でもありますから」
ウォルコット中佐は、先程までの哀れな様子が嘘のように、嬉しそうに話し始めた。
エンジェル隊がどう思っているのかは置いといて…ウォルコット中佐はこの仕事をとても誇りにしているんだ…。
そう思うと、僕は少しだけギャラクシーエンジェルとこの人の事を見直した。
「そういうマリブさんは…何か“誇り”はありますか?」
「えっ…!?」
不意打ちだった。
まさかここでそういう質問を返してくるとは…。
だが、これに関しては答えはもう決まっている。
それは―
「ツインスター隊さ!」
それが、僕の“誇り”だから。
ウォルコット中佐は、それを聞くと、安心した様子で、
「そうですか…。それでは、その“誇り”を大事にしてくださいね…」
それだけ言って、立ち去っていった。
「さて、ココモとちとせさんが待ってるし、帰ろっか!」
僕は、行きの時の憂鬱な気持ちとは違い、帰りの時はとても気持ちが晴れたような気がした。
僕は鼻歌交じりに倉庫の前へ来た。
―がんばろう、僕の“誇り”のために!
そう思い、扉を開こう…としたら、何か中から声が聞えた。
「行くぞ………バトルチップ……」
「了解だよ………プログラムアドバンス……………」
はきはきした声は…ココモで…おとなしそうな声は…ちとせさん!?
「一体、何をしているんだろう……!?」
僕は嫌な予感がして、扉を急いであけた。
それが、すべての終わりだった。
「「ギガキャノン!!!」」
ドゴオォォォォォォン!!!
またもや、倉庫は完全に破壊された…。
その後。
僕達はこの件でまたもやメアリー少佐からこびっとく怒られ、ちとせさんもココモも、またもや土下座して謝った。
ちなみに、あのあとちとせさんとココモは、メアリー少佐がハリセンで頭を殴ったら、やっぱり元に戻った。
ちなみにそのあと、事後処理を任されたのは言うまでも無い。
(“誇り”って、難しいなぁ…。)
僕は心の底から思った。
〜後書き〜
どうも、タコチューです。
今回はGAアニメ版、しかもツインスター隊がメインの小説に挑戦してみましたが、いかがだったでしょうか?
ただ、「先文明EDEN時代」など、ちょっと原作の設定も混ざっておりますが、そこも味という事で理解していただくと嬉しいです。
さて、せっかくなので、パロディの説明でも。
まずは、ちとせとココモが乗り移った部分の解説。
「ボクは…ボク達は・・・誰かを縛り付ける為に戦っているんじゃない!
〜「「ファイナルストラァァイクゥゥ!!!」」
この部分は、「リマスタートラック ロックマンゼロ・テロス」のドラマCDのエックスとゼロの会話です。
ちなみに「青き英雄」がエックス(ちとせ)を指し、「赤き英雄」がゼロ(ココモ)を指しています。
そして、最後の
「行くぞ………バトルチップ……」
「了解だよ………プログラムアドバンス……………」
「「ギガキャノン!!!」」
この部分は、「ロックマンエグゼ」の必殺技、プログラムアドバンスです。
しかも、「ギガキャノン」ということは、「4」以降のプログラムアドバンスということですね(誰に聞いている?
ちなみに補足ですが、ココモが「光熱斗」(上の文)、ちとせが「ロックマン」(下の文)という事になっています。
…それにしても、ロックマンネタばっかりですな、私(笑)
まあ、確かに好きではありますけどね。
さて、最後に、この小説を最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
そして、エンジェル隊を登場させなくて、本当に申し訳ありませんでした;
タコチュー