注)この物語はギャラクシーエンジェル Eternal Loversから約半年後の物語です、設定上カップリングはタクトとミルフィーユになっています、

このカップリングは認めない! という人もいるかも知れませんが、

誰かと組ませなければいけませんので、気に入らない方はご了承下さい。

 

ギャラクシーエンジェルBeloved lovers 【最愛の恋人】

                              

 

 トランスバール暦414年1月(本星基準)

 

ヴァル・ファスクとの戦いから半年、皇国が被った多大な被害もだいぶ癒えてきた。

そして、とある惑星にヴァル・ファスク戦役での功労者、皇国の英雄タクト・マイヤーズ、

そして、その最愛の恋人、いや、最愛の妻、ミルフィーユ・桜葉が住んでいた。

 

この惑星基準では――春

 

「タクトさん」

「ん〜・・・」

「タクトさん・・・」

「む〜〜後五分・・・」

「って、ホントに言う人いたんですね・・・じゃなくて早く起きてくださいよ!」

とうとうミルフィーユは本気になってタクトの耳元で叫んだ。

「はうわぁ!? 頼むレスター! 書類はもう少し後に!?」

「タクトさん?」

どこから突っ込みを入れるべきかと迷っていたが、結局ミルフィーは

「タクトさん、いつまで寝てるんですか? もう十時ですよ! 今日は二人でピクニックに行くって約束したじゃないですか!」

するとタクトは、心からすまなそうな顔で

「頼む、そんなに早く仕事できるわけ―――」

「タクトさん!!!」

のどかな朝(もう遅いけど)に似つかわしくない大声が近所にまで響いたのだった。

 

【災いは突然に】

 

あくびをかみ殺しながらタクトは服を着替えていた、夜勤明けではないにしろ、日々の疲れはどうしてもたまる。

「(フォルテに鍛えてもらってなかったらもっとひどかっただろうな)」

退役前に体力強化訓練を受けたときのことを思い出した。元軍人の再就職先など相場が決まっており、タクトもまたその例に漏れなかったというわけだ、その時のために筋肉痛になっても全くの慈悲も加えずに訓練をさせられたのだ、そのおかげでまっとうな警備員(・・・)をできるのだが・・・

さて、タクトは現在警備会社に勤めている。退役した軍人や引退した傭兵などが警備会社に勤めることはよくあることなので、彼もその例に漏れず近所の警備会社に就職できたのだ。

退役して二人で仲良く暮らすなどと言い出したとき、タクト・マイヤーズは皇国の英雄なので、回りから反対の声が上がりまくったのだが、シヴァ女皇とルフト宰相の「消極的賛成」で認められたのだった。最終的には士官学校時代からのつきあいである副官からも祝福され、現在に至る。

「タクトさん、まだですか?」

扉の向こうからミルフィーのせかす声が聞こえると、タクトは止まっていた手を動かした、最近タクトに対して容赦が無くなってきているのは気のせいだろうか。

「(気のせいでありますように―――)」

 

 

 

某宇宙ドック―――エルシオール・ブリッジ

司令官席に座っているのはレスター、ではなく、蒼みがかった銀髪の男性。長髪を垂らしてゆったりと司令官席に座っている。そして彼の目の前ではエンジェル隊五人が何やら話している、内容は、タクトとミルフィーのこと。

彼はエンジェル隊を無視して携帯電話をいじっていた、そしておもむろに顔を上げる。右目の片眼鏡(モノクル)の位置を直して、彼は、

「まあ、皆さんにはつもる話があるでしょうけど、それはエルシオールに着いてからで良いじゃないですか。私はお二人を迎えに行くついでに軽く自己紹介でもすませますので―――」

「でもあんたのこと二人は知らないんだから、とりあえず誰か―――」

「子供のお使いじゃありませんよ、大丈夫ですから」

やんわりとフォルテの申し出を断り、席から立ち上がると

「では、とりあえず行ってきますね。すぐ戻ります」

シュン

そう言うとブリッジから立ち去る。

ブリッジに残されたエンジェル隊は、

「あらあら、行ってしまいましたわ」

「いいじゃないですか、結局エルシオールには来られるのですし」

ミントとちとせの言葉にヴァニラは

「……問題ありません」

「そうか?」

「前々から思ってたけど、たまにレナードって有無を言わせないようにするわよね」

フォルテのツッコミ(?)はともかく、ランファの言葉はもちろん彼―――レナードには届いていない。

 

バチッ

片手でレナードは携帯を開き、改めて先ほどのメールを読んだ。

―――Q1、○ Q2、○ Q3、× Q4、自分で聞け

なお、連中は警戒ポイントBを襲撃しようとしている。試作品も持ち込まれているらしい。―――

「頼りにしてますよ、先輩」

メールの内容に苦笑しつつも、レナードはエルシオールを出て、そして宇宙港からも出る。そしてレナードは携帯をしまい。

「試作品、自動歩兵か……のんびりしていられないな」

スッ、と表情が真剣になり、レナードの姿がかき消えた。後に残ったのは、地面に残った薄い靴後だけである。

 

 

 

「う〜ん、やっぱり外の空気を吸わないと人間だめだよなぁ」

草むらに仰向けに横になり、タクトは言った。流れゆく雲を見つめ、先ほど食べたミルフィーの弁当の味を思い出す。

「(ああ、やっぱり最高だよ。おっと、よだれが……)」

これで皇国の、EDENの英雄というのだから、何というか人生不公平だ。

ミルフィーも近くに寄ってきて一緒に寝ころぶ、

「こうやって平和にタクトさんといられる日々が、ずっと続けばいいですね」

「そうだね、もう大きな戦いは困るから、でも、ミルフィーを守るためなら―――」

と、ちょっとタクトが(自分では)かっこいいと思える台詞を言おうとしたときに――

 

ダダダダダダダダッ!

 

生存本能か、それとも軍人としての勘か、タクトはとっさにミルフィーの腕をつかんで緩やかな傾斜を転がった。先ほどまで彼らがいた場所の草がはじけ飛ぶ。銃撃だ。

「おお、さすがフォルテ、鍛え方が尋常じゃなかった……」

などと軽口を言いつつも、油断無く周囲の様子を探る。護身用にと渡されたレーザーガンを手に取り、そろそろと移動する。

「タクトさん…!」

「静かに……まったく、せっかくの平和な休日を……ピクニックを楽しみにしてたのに」

などといいつつ、自分が寝坊しまくったことは忘れているらしい。

そうこうしているうちにも銃撃の犯人達は姿を現す。全部で十人ほど、顔はなにやら仮面のような物が着いており、一本の赤い線が入っている。全身は黒いコートに包まれ、袖からはマシンガンがのぞいている、なぜかそれを持つ手は見えず、しかも全員が片手で扱っている。

「(妙に動きがぎこちないな、変にカクカクして、ロボットみたいだ)」

そんなことを考えつつ、音を立てないように慎重に移動する。戦わないに越したことはない。

ガサッ

「(しまった!?)」

敵は一斉にタクト達の方を向き、マシンガンを向ける。

「クソッ」

瞬間的に一番近い相手に二連射、その後ミルフィーごと坂を転がり落ちて茂みにと煮込む、二人ともあちこちにする傷を負った。初めは動揺していたミルフィーだが、さすが軍人だけ会って、その後は声を出さずについてきている。しかしタクトはこれ以上一緒に逃げてはまずいと考えていた。

「(ここはミルフィーを逃がして、自分が―――)」

ミルフィーにその場に残るように言って、レーザーガンを手にして敵の後ろに回り込もうとする。

バシュバシュッ

二連射、敵の内一人に当たり相手は倒れ込む、マシンガンを連射しつつ敵はゆっくりと近づいてくる。タクトは木々を縦にやり過ごし、さらに三人を倒した。

「(統率はとれているのに動きが遅くてねらいやすいし、だいたい自分の身を守ろうという気が見えてこない、本当に人間か?)」

さすがに敵との距離が詰まってきたので、姿勢を低くして位置を変えようとする。その間も敵の射撃は容赦なく続く、そして銃弾の内一発が腕をかすめる。

「うお!」

急いで場所を変え、木を背にして一息つく。傷はたいしたことはない、だが長くなれば負ける、助けを求められる相手がいれば……

「(無理して戦わなくても、何とかこの場から離れられれば―――)」

タクトはミルフィーの元まで何とかたどり着いた。

「タクトさん、そのケガ!?

「大丈夫、それより速く逃げよう、まだ敵は――――」

しかし、そこまで言ったところで、既に敵は二人にねらいを定めていた。

「タクトさん!

「くぅ!」

ミルフィーを引きずり倒し、デタラメに撃ちまくる、敵は倒れるが、エネルギーが切れた。

「逃げるぞ!」

「は、はい!」

急いで駆け出すが、しかしすぐにマシンガンの雨が行く手を塞ぎ、木の陰に隠れる。

「どこだ、逃げ道、どこかに……」

体力も限界、すでにどこに敵が潜んでいるかすらも分からない、武器もなくなった今、どうすることも―――

ガシャ

木々の影から現れた敵がタクト達に銃口を向ける。二人にはそれがスローモーションのように見えた、そして

ヒュゥ

風でも吹き抜けるようにして何かが抜けていった。そして

ガァァン!

強い衝撃を受けたようにして目の前の敵が吹き飛んだ、数メートルほど吹き飛んだ敵はどこかに消えた、視界からはずれていたのでよく分からない。

さらに数人の敵が現れるが、先ほどの攻撃(と呼んでいいのかは分からない)の主、もしくは原因が分からずに、まともな行動ができていない。

なすすべもなく敵がやられていく、そして

「お怪我はありませんか?」

木々の間を縫うようにして、背の高い中性的な顔立ちの男性が現れる。女と見まごうばかりの美形で、歳はタクトより少し上、蒼みがかった銀髪は腰まで伸び、右目には片眼がね(モノクル)をつけている。

「こ、皇国軍の方ですか?」

ミルフィーがそう訪ねた。彼の着ている服はロングコートタイプの制服で、階級は中将になっている。

「はい、私は皇国軍近衛部隊ムーンエンジェル隊司令官、レナード・ミルガルドです。いきなりで申し訳ありませんが、お二人には私についてきていただきたいのです」

「いったいなにが……」

呆然とタクトがつぶやく、ミルフィーユも呆然としている。

「突然でしたからね、驚くのも無理はありません。しかし、少々時間が惜しいのです、ま

ずは宇宙港に来て頂きたい、そこでエルシオールが待っています」

「エルシオール!?」

「まってくれ!どうして俺が……」

「あなたの力が必要なのですタクト・マイヤーズ、皇国の英雄であるあなたが」

口調は変わらぬままだが、その言葉は誰にも有無を言わせぬようであった。

「あなたが軍を退役した理由は重々承知ですが、こればかりはどうしようもないことです。

詳しいことは、エルシオールで説明致します、お二人ともこちらへ」

 

有無を言わせぬ雰囲気に結局二人は、レナードについて行くことになった。

 

 

 

宇宙港・エルシオール通路

「そう言えば、さっきの敵は何で倒されたんだろう?

「あ、そうですよねぇ。なんかいきなりドカーンって、何でですか?

「・・・・・・」

話を振られているが、レナードは振り向かない。

「あの、中将?

「もしもーし」

「・・・・・・」

聞こえているのかいないのか……

「着きましたよ」

シュン

やはり無視されていたのだろうか? ブリッジへの扉が開き、中には―――

「レスター!」

「あ! みんなも!」

「久しぶりだなタク―――」

「ひさしぶりミルフィー!! 元気だった?」

「ミルフィー! タクトとは仲良くやってるかい?」

「お久しぶりですわ、ミルフィーさん」

「……お久しぶりです」

「ご無沙汰しておりました、ミルフィー先輩!」

「おい! 俺は今タク―――」

レスターは無視されまくった。

 

「お久しぶりです! マイヤーズ司令!」

「やっぱりマイヤーズ司令がいた方がエンジェル隊は嬉しそうですね」

「やあ、アルモ、ココ、久しぶり、まあ、もう『元』司令だけどね」

アルモやココとも挨拶を交わす、

「まったく、おまえが久々に来たらまた馬鹿騒ぎか……」

やれやれとため息をついているが、実際のところいい加減慣れっこである。

「まあ、そう言うなってレスター」

「やはりマイヤーズさんは皆さんにすかれていらっしゃるんですね」

レナードが少し可笑しそうにそうつぶやく。いや、それはどこか自嘲的な笑みにも見えた。

「って、そうだ! レスター、何で俺たちはここに? せっかくのんびり暮らしていたってのに」

「ああ、そうか」

レスターが言う、

「まだちゃんと説明してなかったな……説明しよう、アルモ」

「はい」

内容は言わなくても分かっているのか、アルモがパネルを操作し、メインスクリーンにいくつかの画像と文書が写される。

「これは?」

「一週間前に皇国の第四方面辺境地域クラウル星系駐留艦隊によって撮影された物です」

レナードが説明を始める。

映像に映っていたのは宇宙に蒼い色の戦艦が多数移っており、それがカメラのある方に向かってきているようだった。

「この艦隊は?」

「詳しいことは不明です、情報によるとこのレベルの艦隊がクラウル星系の星々に出現したとのことです」

「な!!」

「そんなに!」

タクトとミルフィーユが驚きをあらわにする、この映像に映っているだけでも、戦艦や巡洋艦、駆逐艦クラスと思われる数種類の戦艦が十隻ちょっと、それがいくつも出現しているのだから、辺境艦隊では太刀打ちできないほどの数になる。

「この艦隊の出現によって、クラウル星系は完全に制圧されました。」

「そんな!」

「幸い、開発途中でしたので、一般市民の移住はされていませんでしたが、駐留艦隊は全

滅、開発プラント等で働いていた人間もおそらく……」

レナードはそこで言葉を切る。

「この事件は、国民の混乱を招くとのことで、一般には発表されていません。せめて、事態がある程度解明されてからと……この事態を重く見た軍はムーンエンジェル隊に艦隊の調査、可能ならば殲滅を命令、ルフト将軍の命により、タクト・マイヤーズを再びエンジェル隊の司令官へ、ミルフィーユ・桜葉をエンジェル隊へ、とのことです。これが、お二人をここに連れてきた理由です、おわかりいただけたでしょうか?」

「ああ……」

「はい……」

二人が小さい声で言うと、レナードは満足そうに肯き

「では、エンジェル隊の司令官復帰、エンジェル隊への再入隊もして頂けますか?」

「それは・・・!」

タクトは狼狽する。レナードは相変わらず笑みを崩さない、狼狽する心も、自分自身が言おうとする言葉も、すべてを見透かされているかのようだ。そしてたぶん、断ってもそれを認めようとはしないだろう、どうあってもエルシオールに二人を戻す気だ。

「わかっています、あなたがたはもう戦いたくない、これ以上血を流させたくない、その為に軍を辞めた。ですが、これはかつてのエオニア戦役、ヴァル・ファスク戦役でのマイヤーズさんの指揮能力を買ってのお願いなのです」

レナードは落ち着いた声音でそう言った。しかし、どうにも彼が見えてこない・・・彼の本質と言うべきものが・・・・・・

「だが・・・!」

「わかりました・・・」

「ミルフィー!」

タクトが驚きを見せる、

「いいのかい?」

「はい、私達が戦わなきゃ、また、多くの人たちが・・・・・・タクトさんと、また平和に暮らす為には、私達がやらなきゃ・・・!」

「……分かった、俺もやるよ」

「申し訳ありません」

 レナードが頭を下げる。

「あなたが謝ることはないですよミルガルド中将。俺だって、戦いたくはない、でも、ここで逃げるわけにはいかないんだ」

「話はまとまったようだな」

レスターが言うと、意地の悪い笑みでいくつもの紙を束で渡す。

「なら、おまえはこれで司令官に復帰だな、それじゃあ、早速この資料に目を通しておけ」

「引き継ぎの書類? あ、あれ? 通常業務まで?

「あ、それ私の今日の仕事なんですけどね、、マイヤーズさんが司令官になるからやらないでおきました」

「できれば終わらせて欲しかった……って、まさか無理矢理にでも司令官にしようとしたのは!?

「ええ、もう午後になっていますし、今更司令官やらないって言われたら、この仕事私がやらなきゃいけないじゃないですか」

「そんな理由かぁぁぁ!!

ブリッジで思わず絶叫。

「良かった良かった。これですべて丸く収まった」

「どこが!?

するとタクトの耳元にランファが

「レナードって時々かなり性格悪くなるから気をつけた方がいいわよ」

「色々謎が多い方ですし」

続いてミントまでひそひそ話、ちなみにレナードにはすべて聞こえているが、彼は効かないふりをしている。

「まあしかたない、それで辞令とかはどうするんだ?」

「それは大丈夫ですよ、私が許可しますから。戦いが嫌で平和が一番だからと言う理由以外に、これ以上面倒な仕事をしたくないというのが辞職した理由だとか・・・・・・」

レナードが笑いながら言う

「仕事が嫌なのは分かりますが、これも運命だと思って諦めて下さい」

今まで見せなかった意地悪な笑みを見せる、って、運命じゃなくてあんたが仕組んだことだろう。

「しくしく」

「とはいえ、さすがに初日に無理はさせないさ。ある程度は俺がやってやるから、はエンジェル隊とでも話をしていればいい」

そのセリフにアルモとココが、

「(アルモ、クールダラス副指令らしくないわねあのセリフ)」

「(ほんと、やっぱりマイヤーズ司令が帰ってきて嬉しいのかな?)」

「(そりゃあ、親友だもの、嬉しいに決まってるじゃない)」

「(ココもそう思う?やっぱりクールダラス副指令はああいうところもあってステキ!)」

「何をこそこそ話してるんだ?おまえら・・・・・・」

レスターにはあまり聞こえていないようだが、驚くアルモ

「い、いえ! なんでもないです!」

「? そうか?」

 

一時間後のエルシオールのティーラウンジ

既に乗組員の一部を使って、二人の荷物をエルシオールに運び込んだ、エルシオール内には二人部屋がない為渋っていたが、結局二人とも元の部屋に収まる形となった。

いまは、タクトとミルフィーユを囲み、エンジェル隊の面々とレナードが話しをしていた。

「そういえば、ミルガルド中将は何でエルシオールに?」

「レナードでかまいませんよマイヤーズさん、慣れない敬語もしない方がよいでしょう」

「あ、それじゃあ、おれもタクトで」

「わかりましたタクトさん。それで、私がエルシオールに入った理由でしたね、実は白き月で新たな紋章機が発見されました」

「紋章機が!?」

「はい、当初はこれを紋章機8番機と呼んでいたのですが、基本的なところは同じなのですが、実はこれは他の紋章機とはだいぶ違う物のようなのです」

「と、いうと?」

「この紋章機は変形機構が存在したのです、つまりは、戦闘機タイプともう一つのタイプに変わる機体、可変型紋章機だったのです」

「へ、変形? 昔のアニメみたいに?」

「はい、変形後は人型機械へと変わるのです」

「またまたアニメっぽいなぁ」

レナードは苦笑しながら、

「そうですね、この人型形態をMHとよんでいます正確にはMobility ManなのでMMなのですがモービルヒュームともよばれています、そのため、現在軍ではMH、モービルヒュームで通っています。この特殊な紋章機は、全ての紋章機の元となった機体のようで、それぞれの機体の特徴が僅かですが現れた機体です。そのため、プロトタイプ紋章機か、全ての紋章機を組み合わせた最終形かで論議が起こっている始末で、これは紋章機Σ(シグマ)機アークエンジェルArchangelとよばれています。アークエンジェルとは天使の階級で8番目ですが、トップクラスの権力と能力を備えているというのが天使の階級の一般的解釈です、で、この機体名はそこから取られた名前です」

「・・・・な、なるほど」

タクトは言葉を失っていた、いや、新しい紋章機のすごさではなく、レナードの説明の仕方に、彼は今の説明をほとんど間を開けずにしゃべってのけた、専門家並みに紋章機を熟知しているようでもある。というか説明が好きなだけか?

「随分凄い機体なんだね」

「ええ、扱いも大変ですよ、ラッキースター並みではないですが―――」

レナードはちらりとミルフィーユの方を見る、

「ミルフィーさんはすごい、あのラッキースターを難なく動かしてみせるのですから」

「いえ、そんな」

ミルフィーユは照れたように少しうつむき加減になる。

「いえ、本心からですよ、エンジェル隊の中でも一際リンク率が高いそうですし・・・・・・ね」

「えへへ、なんかうれしいです」

照れ笑いを浮かべるミルフィーユをレナードはしばし見つめた。

「時空の女神、そしてゲート―――」

「え?」

ぽつりとレナードが呟いた言葉に、タクトが反応する

「いえ、何でもありませんよ」

 

 

 

「そういえば、レナードはだいぶエンジェル隊になじんでるようだけど」

「ああ、レナードはタクト達がエルシオールを離れてからすぐに配属されてきたからね、あたしらは最初どんな偉ぶったやつが来るのかと警戒したものさ」

フォルテが言う

「ほんとほんと、ミルガルド家って言ったら、結構有名な軍人一家の貴族だもの、金と権力に物を言わせてきたんじゃないかって噂したわ」

ミルガルド家は大貴族の一つに名を連ねており、多くの優秀な軍人を輩出している。

「ランファ先輩! それは言い過ぎかと・・・」

「いいんですよちとせさん、貴族の現状はそういわれても仕方ないですから・・・・・・」

「はぁ・・・」

ちとせがなぜか納得いかない様子である

「本来の貴族は、民草を導き、指標となり手本となり、常に人々のためにあるべき存在なのに、対価として与えられた権力にどっぷりつかって本来の目的を忘れる、悲しいことですよ」

「で、でもレナードさんはちがいます! まじめですし! 仕事はタクトさんと違ってサボらずしっかりとこなすし!」

「途中に不適切な発言があったけど?」

タクトが嫌な汗を流している。

「あら、ちとせさん、随分レナードさんをかばいますのね? どうしてですの?

ミントがいたずらっぽく言うと、

「い、いえっ、そんな! 私は別にそういうつもりでは!?」

「あら? 私そこまで言いましたかしら? そういうこととは何ですの?」

「せ、先輩!」

ちとせの顔が真っ赤になる

タクトとミルフィーユもなるほどという顔をする、まあ半年過ごせばいろいろと関係も―――

「?? 何の話をしてるんです?」

『・・・・・・・・・』

レナードが質問して、フォルテ、ランファ、ミントの三人に沈黙がおりる。

「半年たつけど相変わらず鈍い男だねぇ」

「まったく、ちとせがかわいそうよ」

「ここまで鈍いというのは、既に犯罪じゃありません事?」

「?????」

レナードは首をかしげるばかりだった。

「まあ、とにかくレナード当人と会ってやっと信用出来るようになったって訳だ、頭も切れるし。あ、そういえばタクトを司令官にすると、あんたはどうするんだい?」

「私は参謀官です、サポート役になりますね」

「そっか、ま、あんたなら何やらせても問題なさそうだけど」

「・・・・・・・・・今は信用しているフォルテさんも、以前は懐に拳銃を―――」

それまで黙っていたヴァニラが口を開く

「え!? フォルテさん、レナードさんを殺す気だったんですか!?」

「ミルフィー! 人聞きの悪いこと言うんじゃないよ! あのときは貴族のボンボンだと思ってたからちょっと気を入れてやろうとしただけさ!」

「焼きを入れるの間違いじゃ……」

「あたしは不良か? って、ランファだって似たような―――」

「えー!? あたしは別に、顔が美形の割にはときめかなかったし―――」

「誰もそんなこと聞いてない!」

一気に騒がしくなり始める

「相変わらずだなぁエンジェル隊は・・・・・・」

「得難い物ですよ」

タクトのつぶやきにレナードが答える。

「何にせよ、これから宜しくお願いしますよ、タクトさん」

「こちらこそ」

二人は握手を交わした。

 

 

 

「タクト・マイヤーズ、ミルフィーユ・桜葉両名、エルシオールに合流しました。その際、自動歩兵数体と交戦、完全に撃破しましたがOPRTの回収班は間に合いませんでした、ネジ一本も残さず回収されており、検証は不可能かと」

暗闇の中、無感情の女の声が響く

「この一件は本件とは関係がないのかね?」

不機嫌な男の声が聞こえ、その声に先ほどの女の声が応える

「はい、司令が交戦した7名はいずれも逃走しましたが、組織名らしきものを名乗りました、少なくとも今回の一件とは関係のない別組織と考えられます」

「情報を混乱させるためのブラフの可能性は?」

「ありません」

「ふむ・・・・・・」

二人の会話だけが聞こえる中、新たな声が増える

「そうなると、今はまず本件に関する正体不明の敵を断定するのが先かしら」

何処か楽しげにも聞こえる女の声

「それで、その7名が名乗った組織名は何かね?」

新たに落ち着いた低い男の声

「はい、遺志を継ぐ者―――と」

「ほぉう」

また新たな声がする、とんでもない美声

「どうやらその連中は本当に無関係だな、蒼い艦隊との関係は×と出た」

「彼女が言うなら間違いないだろう」

落ち着いた男の声が言うと、他の声も賛同する

「ところで――――」

無感情な女の声が聞く

「副艦長は?」

「ドレスとリボンが決まらないそうだ」

不機嫌な男の声が更に剣呑さを増す

「では…以上で定例会議を終わります」

最後まで感情の見えない声で女が締めくくると

「ところで―――」

先ほど楽しげに聞こえた女の声が、今度は疑問を多くふくんだ声になっていた

「電気つけません?」

「雨漏りで回線がショートした」

不機嫌な声が応える

「あんな(ふね)に投資するより先に、雨漏りの修理を先にした方が―――」

「それも一理あるが・・・・基地要員のバケツリレーで何とか持っている・・・・」

「いいから雨漏り――――」

「定例会議を終わります」

有無を言わせず再び宣言すると、足音が遠ざかっていく。

それにつられるようにして、一つ、また一つと、足音が消える、最後の一人がいなくなったところで―――

 

パッ

 

停電が治った

『遅い!』

何処か遠くから複数の声が響いた。

 

 

【あとがき】

皆さん初めまして、(そう)(きゅう)(はじめ)です。

これはギャラクシーエンジェルELの半年後のお話となります。

ELはトランスバール歴413年の話なのですが、ここではELは半年で終わったと仮定して、413年後半からレナードが

エルシオールに赴任、そして414年の一月からBeloved lovers(以降の作品等ではBLと略す)が始まります。

タイトルに最愛の恋人とあるように、この言葉がキーワードになって今後の話が進んでいきます。

 

なお、この後書きは2006/11/27に修正された物であり、第二章はまだ修正されていないので、この第一章

との矛盾点が多々あります。修正されるまで、もう少しお待ちください。

 

 

それでは、また次回の後書きで―――

 2006/11/27 蒼穹一