ギャラクシーエンジェルBeloved lovers

 

「タクトさ〜ん!」

扉の向こうから、少女の声が聞こえてくる、鏡の前に立つ男、タクトは振り返りながら、

「ミルフィー?先に会場に行っても良かったのに」

タクトはいつものことだが貯まっている書類を整理させられていた為、今までずっと執務

中であった。

「もう、タクトさん・・・」

どことなく不満そうな言葉が返ってくる

「女性をエスコート無しで会場入りさせるつもりですか?」

実際のところ、エスコート無しでもいいから、早く行きたいなどといって、とっとと会場

入りした女性クルーもいる。

「ああ、そうか、ごめんミルフィー、今行くよ!」

「早くして下さいね!タクトさん!」

 

【舞え軽やかに】

 

「おれ?タクト、ミルフィー遅かったわね」

会場に入ってまず話しかけてきたのはランファだった

「やあ、ランファ」

「タクトさんが今までお仕事だったからなかなか来られなくて。」

ミルフィーユの言葉にランファは

「うわ、レディを待たせておくなんて、あんた、夫として失格じゃないの?」

「な、なにもそこまで・・」

こめかみに一筋汗を垂らしながらタクトは反論を試みるが

「男なら言い訳するな!」

「は、はい!!!」

双方凄い大音量だった

「ランファ、ランファ」

ミルフィーユがランファのドレスを引っ張ってきた

「なに?」

「何かみんなこっち見ているよ?」

言われてランファとタクトもあたりを見れば、近くの人のほとんどがこちらを見ている、

無論、先ほどのやりとりをおもしろがっている連中である

「ふ、二人とも!ど、どっか別の場所に移るわよ!」

「そ、そうだな!」

右手と右足同時にだしながら、二人は逃げていく、その後ろをミルフィーユが

「あ、まってくださ〜い!」

と、走っていった。

 

 

「あら、マイヤーズ司令、どうしたの?」

走った先にいたのはケーラだった。





「あ、いや、別にたいしたことじゃありません。」

「そ、そう?ところで、」

行ってケーラは視線を別の方向にうつす

その視線を追ってみると、エルシオールの男性クルー、50人くらい、が、なにやら騒い

でいる、よく見るとそこから少し離れたところにヴァニラとちとせ、レナードもいる。

「あれ、どうにか出来ないかしら?」

「何をやってるんです?」

ランファが聞く

「さあ?近づいていってもまるで反応がないのよ」

ケーラが困ったように肩をすくめる

「しかたない、いってみようか?」

「はい!」

「しょうがないわね」

タクトの問いにミルフィーユはさも当然といった風に、ランファは少々面倒そうだったが、答える

「ごめんなさいね」

行ってケーラは三人を先導する

 

 

近づいてみると騒いでいるクルー達の顔もよく分かる、事情を聞こうと話しかけてもまるでこちらに気が付かない

「仕方ありません」

人だかりの近くに立っていたレナードが言う、レナードはヴァニラの方へ歩いていき、彼女の前に立つと

「ああ!ヴァニラさんがすごくかわいらしい表情になっています!!」

と、大声で叫ぶ

すると、人だかりは一瞬にして動きを止め、申し合わせたかのごとく一斉にヴァニラの方

を向く、長年コンビを組んでいたお笑いコンビでもこうはいかないだろう。

もぞもぞと人だかりは動き出す、まるで、互いを牽制し合うかのように、そして

『うおぉぉぉぉぉぉ!!!!』

一斉に駆け出す!

レナードがヴァニラの前に立っておいる為に、人だかりからはヴァニラの顔が見えないの

「な、なんなんだ?」

タクトが呆然とつぶやく、しかし、

「あ!」

真実をいち早く知ったのも彼であった

「どうしたんですか?タクトさん?」

「こ、これは・・・」

驚愕の表情で一歩下がるタクト、

「なによ?早く言いなさいよ」

ランファがせかすが

「こ、これは・・・」

タクトは見つけてしまったのだ、人だかりの中に、ヴァニラちゃん親衛隊の副隊長の顔を、

幾度となく、親衛隊としたくもない関わりを持ったタクト、その副隊長の顔も既に覚えて

いた。

そう、恐ろしい人だかり、その全ては、ヴァニラちゃん親衛隊だったのだ!!

「う〜ん、」

タクトが腕を組み考える

「なんで、あの副隊長、あんなにボロボロになってるんだろ?」

そういえば、という風にミルフィーユ、ランファ、ケーラも視線を移す

そうしている間も、親衛隊はヴァニラに迫り

「ひゅ!」

レナードが鋭い呼気と共に飛び出す、首筋に手刀(しゅとう)をいれ、

腹部に拳を叩き込む。

次々と親衛隊が地に伏せさせていく。

半数ほどを倒したところで

「さあ!そろそろ諦めて止まりなさい!」

「くぅっ」

うめいて隊員達はおとなしくその場に止まる

「まったく、あなた達は何をやっているんですか?」

「そ、それは・・・」

隊員達が狼狽する

「わ、我々親衛隊は、ヴァニラちゃんのエスコート役として誰がふさわしいかを72時間

35分41秒16かけて検討していたのです」

「こ、細かい・・・」

レナードのこめかみに一筋汗が垂れる

「しかし、しかし!そこで副隊長が抜け駆けをし、ヴァニラちゃんといっしょに・・・・・!

ああ!!!思い出しただけでもぉぉ!!!」

「うぉぉぉぉぉ!!!」

「ころせぇぇぇ!!」

「副隊長は生きている資格などない!!!」

「怨!!」

「という訳で、抜け駆けをした副隊長を私刑(リンチ)にしようとしたわけです!」

力説する隊員達、変な熱気に引きながらも、鋼鉄の意志を持って何とか鎮めなければと

レナードは

「これ以上騒ぎを続けるというなら、私にも考えがあります」

「ほぅ、なんですか?それは?」

なぜか不敵な笑みを浮かべてくる

「ヴァニラさんのプロマイド写真没収」

『ぐはぁぁ!』

「ファンクラブの活動中止命令を出すとか」

『ぐぉぉぉ!』

「エルシオール勤務から外してヴァニラさんと会えなくするとか」

『ぬぐぉぉぉぉ!!』

「いっそヴァニラさんに近づけないように・・・・」

『や、やめてくださぁぁぁい!!』

親衛隊の悲痛な叫びにも負けず、レナードは不適な笑みを浮かべ(演技だが)

「ならば、こういった場所での狼藉は控えてもらわねば、ねぇ?」

「わ、分かりました、も、申し訳ありません」

などといって謝り倒すメンバー達、本当に変な連中である

 

 

ところ変わって会場のテラス、月明かりに照らされて二人の人影が浮かび上がる

「それで、どんなご用ですか?」

銀髪の長髪の青年、レナードが問いかける

「い、いえ、ただ、以前のお礼がしたかっただけです」

黒髪の少女、(いまは髪をポニーテールにしているが)ちとせが答える





「お礼?」

思い当たる節がないのかしばし黙考する

「ほら!お父様についての話しを・・・」

なかなか思い出さないのに焦れたのか少し大きな声でちとせが言う

「ああ!5話前の話ですね!第3章でしたよね。」

「よ、よく分かりせんが、あのときにレナードさんに話して、心のつかえが

少し取れた気がします。」

「ふふ、それは良かった。」

彼は小さく笑った

BGMとして流れていた曲も終わり、次の曲に変わろうとしていた

「あ、ちとせさん、ダンスが始まりますよ」

行ってレナードがちとせの手を取る

「あの、レナードさん」

ちとせの声に反応してレナードが振り向く

「なんですか?」

「あの・・・」

ちとせは小さな声でレナードの耳元でささやく

一瞬レナードが驚いたような顔をして、苦笑しながら

「ふふ、それじゃあ、いこうか?ちとせ。」

「はい、レナードさん。」

 

 

二人は一通り踊った後、一時分かれてそれぞれ行動した。

レナードは一人、会場を歩く、

「いつまで後ろをついて回る気ですか?」

「おまえが私と話す気になるまでだな」

振り返りもせずに言った言葉に、間をおかずに答えが返ってくる。

「それで?父上、何かご用ですか?」

「あの女、おまえとはどういう関係だ?」

質問に男―――五十代くらいのレナードの父ディルス・ミルガルド―――は質問で返す、





しかし、それが既に答えになっていた。

「べつに、同じ仕事仲間ですよ、私はエンジェル隊の参謀役ですからね、彼女は私の直属の部下と言うことになります。」

「そんなことは分かっている」

ディルスが冷たく言い放つ

「私が言っているのは、階級では圧倒的に上であるはずのおまえがなぜ大佐や中佐レベルの人間を自分の上に立たせているかが疑問なのだ」

「いったでしょう?彼らの方が適任なんですよ、それに、わたしは紋章機の操縦と部隊の指揮を同時にやるなんて、結構つらいんですから。」

口調とは違い、レナードノその目は細められ、ディルスからそらそうとはしない。

「ふ、よく言うようになったな、おまえも。」

急にディルスの表情がゆるみ笑い出す

「父上は父上で、いい加減にそういう話しの切り出し方はやめたらどうです?」

「ふん、まあ、冗談はおいておくとしてだ、レナード」

「はい」

再びまじめな顔に二人は戻る

「烏丸ちとせと言ったな、おまえが色恋に足をつっこむのはもうしばらく後のことだと

思っていたが、おまえが決めたのなら文句を言うつもりはない、だが、忘れるな、おまえには・・・」

「分かっています」

遮っていった言葉には、強い力がこもっていた

「・・・・・そうか、なら、いい・・・・。

それだけ言うとディルスは背を向けて去っていった

「分かっていますよ、父上、でも、私は普通の人間だ、限界は、ある・・・・・。」

 

 

「なに!!」

ルフトはいきなり大きな声で叫ぶ

「ど、どうしたんです?ルフト先生」

タクトが戸惑いつつ問いかける、つい先ほどまで拓人と話していたルフトだったが、通信が入り通信機の向こうの相手と話していたのだが、いきなり叫んできたのである。

「くそ!してやられた!」

「どういう事です!?」

再度質問する。

「ヴァル・ファスクめ、我々が本隊と思って警戒して逐った部隊は全ておとりだったようじゃ!それに倍する艦隊がもう、ここに迫ってきておる!」

「なんですって!?」

「話しじゃと、到着まで後40分ほどじゃ、こんなに接近されるまで気が付かんとは・・」

ルフトが苦い顔をする

「タクト!至急エンジェル隊を集合させい!十五分後に作戦会議室じゃ、5分でブリーフィングののち全部隊を発進させる!」

「分かりました!ミルフィー!」

「はい!いきましょう!」

近くに立っていたミルフィーユに声をかけ、急いで走り出す、タクトは胸元の通信機を手に取り、エンジェル隊とレナードに呼びかける

「大変なことになったな、ルフト。」

「ディルスか、まったくじゃ」

いつの間にか後ろに立っていたディルス・ミルガルドにも驚いたようには見せず、ルフトは答える。

「わしはシヴァ陛下をお守りする、おまえさんは艦隊の指揮を取ってくれ」

「おまえの方が適任なのではないか?」

ディルスが言う

「緊急時の作戦無しの戦況下では、おまえさんのほうが成績優秀じゃぞ」

「未だに士官学校時代の話しをするあたりが年寄りだな」

「おまえさんもたいして代わるまいて」

ルフトが苦笑しながら答える、二人ともそれなりに親しい間柄のようだ

「ふん、それでは、このディルス元帥、ルフト将軍の頼みとあらば、か?

まったく、疲れる仕事だ・・・・・・。」

「お互い様じゃろう。」

ディルスは疲れ切ったように首を振りつつ歩く、が、

その目は鋭く細まり、戦場へ赴く戦士の顔へと変わった。

 

 

【あとがき】

いつの間にか第八章、相変わらずの蒼穹一、本日も後書き主任を務めさせて頂きます(謎)

というわけで、なんの前触れもなく登場してきたレナードの父親ディルス・ミルガルドさん、同時に設定画も遅らせて頂きましたのでそちらもご覧下さい、そういえば、第七章を送る少し前にレナードの設定画を出したんだったなぁ,皆さん見て下さいましたか?(遅いです)

う〜ん、どうしようかなぁ、今回の話、フォルテとミント出したかったんだけど、う〜、そちらのファンの皆さん今後の話でこの二人が活躍する予定のやつがあるのでそちらをお待ち下さい。

それでは、次回も後書きでお会いしましょう。