ギャラクシーエンジェルBeloved lovers

 

【集え天使達】

 

 

「紋章機スタンバイ! いつでも発進できます!」

オペレーターの報告にタクトはうなずく。

『ねえタクト』

ブリッジにランファの声が響く、紋章機からの通信である。

「なんだい?」

『ヴァル・ファスクの男が帝国軍とか名乗ってたrねんちゅうの司令官だったわけでしょ? じゃあ帝国軍ってのはどうなったのよ?』

 

ランファの質問は全員が疑問に思っていたらしく、他のみんなの視線もタクトに集中する、

タクトは気まずげに目をそらし、

 

「あ〜、それがね、どうもこの皇国を乗っ取って帝国とするから帝国軍と名乗っていただけで、どうも、あのときの連中は皇国軍人の一部だったらしいんだ。」

 

『はぁっ!?』

「なんですか?それは!?」

 

あちこちから声が上がる

 

「あの人型兵器もヴァル・ファスクからの提供みたいでね、結局はただのクーデターなんだよ。」

 

クーデターを−ただの−扱いできるほど荒事に慣れたのは、あまり嬉しくないことだろう。

どう考えても喜べやしない。

 

『ってことは、あのときに全滅させた連中だけだったってことかい?』

フォルテの言葉を肯定するようにうなずき

「ああ、まあ、他にもどこかに仲間がいたかも知れないけど、ルフト先生との話だと、あれで、少なくとも壊滅状態になっただろうから、驚異とは見ないことになったんだ」

頭をかきながら言うタクトに、疲れたような言葉が投げかけられたが、あまり関係ないので割愛しよう。

 

 

 

「目標! 距離13000まで接近!」

ココが報告すると、

「よし、全艦に通達!これより我が軍はヴァル・ファスク艦隊に攻撃を仕掛ける!全艦攻撃開始!」

「全艦に通達! これより我が軍はヴァル・ファスク艦隊に攻撃を仕掛ける! 全艦攻撃開始! 繰り返す! これより・・・」

アルモが味方艦に通信を送り、レスターがエルシオールに細かい指示を下す。

「エンジェル隊! 俺たちは雑魚艦を味方に任せて敵の大型艦を直接落とす! エンジェル隊! 出撃!」

『了解!』

 

 

敵艦から連続で放たれるミサイルを紙一重でカンフーファイターはかわす、急降下しつつ(宇宙では上下はないがカンフーファイターから見ての真下)接近しミサイルを連続で叩き込む

「いくわよっ! アンカークロー!」

敵艦は真ん中から折れ曲がり爆発して沈む

しかし、その隙をついて攻撃しようとしてくる敵攻撃機、カンフーファイターの死角、真後ろからレーザーを放ち、いや、放つ前にパープルの機体が撃墜する。

カンフーファイターとハッピートリガーのパイロット、ランファとフォルテは視線を交わし、そのまま大型艦に向かって肉薄する。

 

 

大型艦から放たれたミサイルをトリックマスターはフライヤーからのレーザーで打ち落とす、脇からきたレーザーは回避不能の射線だったが、フライヤーをレーザーにぶつけ防御する。

「お行きなさい!フライヤー達!」

 

ミントは精神を集中し、フライヤーによる全方位(オールレンジ)攻撃(アタック)で大型艦――ヴァル・ファスクが言うにはデムル・ジオ――を攻撃する。

 

すかさず他の敵艦が接近し、トリックマスターを攻撃しようとするが、ラッキースターとシャープシューターが敵艦の攻撃を阻む。

二機が敵艦を牽制し、その敵艦にへばりつくようにして、人型兵器、MH状態のレナードの機体、アークエンジェルがミサイル発射口などを攻撃する、元々戦艦にここまで接近できる兵器など存在しなかった為、いったんとりつかれたら、自爆覚悟でミサイルを撃つ以外に自分自身で対応が出来なかったのだ、味方のMHがとりついた敵MHを攻撃して何とかするという方法があるが、ちょこまか動き回るMHにかわされれば味方同士でつぶし合うこととなる、MHの実用性はこういうところにも表れている。

 

 

しかし、戦況は時間がたつにつれ、皇国軍が不利になっていった、敵の本隊が到着するまで余裕を持っていた皇国軍は、囮に欺されて準備が完全ではなかった、シンの本体の到着により、現在数の上で不利である。

 

味方の増援はまだ数日かかる為増援はない、なおかつ、敵の数は今までとは比べものにならない、皇国軍の三倍弱はいるだろう、それを皇国軍は、エンジェル隊と、ルフトやディルスなどの戦略家達の作戦で何とか持ちこたえているのだ。

しかし、それもいつまで持つか、ルフトはタクトにデムル・ジオへの突撃攻撃を提案した、突撃といっても有名なカミカゼ・アタック(特攻攻撃)ではなく他の艦に微塵もかまわずに直接攻撃をかけると言うことなのだが、タクトはこれを了承し、全機がデムル・ジオへ総攻撃をかける。

 

 

「・・・きます」

落ち着いた声で、ハーベスターのヴァニラが言う、デムル・ジオの装甲の一部がスライドしたのだ、既に彼女はこれから来るはずの攻撃の威力を身を持って体験している。

一瞬何かが光り、紋章機に向かって打ち出される、正体は極薄の透明な刃なのだが、タネがばれている以上、かわすのはそう難しくはない

「こんな攻撃で!」

「あたしらをやれると思ってるのかい!」

即座にカンフーファイターとハッピートリガーが肉薄する、

「いきます、フェイタルアロー!」

ちとせのシャープシューターの援護で、二機は敵の主要武装をつぶそうと

 

「ぐぅ!」

いきなりの攻撃に反応がおくれた、衝撃で脳が揺さぶられ、意識がとぎれかける

二人は何が起こったのか分からなかったが、周りはその全てを見ていた

 

触手

 

というべきか、金属質のそれは二機を殴りつけると再び艦の中にしまわれた

「この艦はいったい・・・」

ミントが戦慄する

「エンジェル隊! 大丈夫か!?」

通信機から響くタクトの声に、ミントは全員無事だと伝える。

「いったん後退してくれ!体勢を立て直す!」

「了解ですわ」

 

 

 

格納庫はにわかに騒がしくなってくる、戦闘中ならば、本来は応急処置ですませるのだが、今回ばかりは完全な状態で送り出す為細かい点検作業も行っていた。

「やはり紋章機のリミッターがかかったままというのが痛いな・・」

レスターの言葉にタクトは肯きながら

「ああ、でも今はこの状態でやるしかない、リミッターを外す方法は分からないし、外せても、そもそも紋章機の調整が間に合わないしね・・」

『タクトさん!』

タクトの言葉を遮りいきなり目の前の画面にミルフィーユ、ミント、ちとせ、レナードが現れる。

「のわっ!」

よく分からない悲鳴を上げて司令官席にしがみつくタクトにかまわず

「まだ出られないんですか?」

「早くしないと味方に深刻な被害が!」

「早くして下さいませ!」

「中将の立場としてはこれ以上の被害は・・!」

凄い剣幕で迫ってくる四人に若干腰を引きつつも

「い、いや、やっぱり万全の体制で・・・ね・・・?」

「何をのんきなことを!」

「あれがオ・ガウブを元にして作られたことを忘れたんですか?」

「へ?」

タクトが間の抜けた声を出す

「司令!!!」

ココの叫びがブリッジに響く

「なんだ!?」

「これを・・・」

行ってスクリーンに映し出されたのは

「!! これは・・・」

デムル・ジオの艦首から、特大のレーザーが放たれ、皇国軍艦を打ち抜いていく、ほぼ一撃でなすすべもなく沈んでいく軍艦達に全員が目を奪われた

「くそっ、タクト、さすがにこれ以上は持たせられんぞ!」

レスターの緊迫した声に、さすがにタクトも限界を悟り

「しかたない、エンジェル隊! 出撃だ! エルシオールも前進!」

『了解!』

 

 そうして、絶望的な戦場へと進むのであった

 

 

デムル・ジオはエルシオール並の大きさではあるが、超巨大戦艦オ・ガウブのシステムや武装を取り入れてある、先ほどの金属触手はともかく、艦首砲の特大レーザーの存在を忘れていたのは完全なミスであった、既にデムル・ジオの付近の艦は壊滅状態にあり、大きな被害を与えられた。

「みんな、よく聞いてくれ。」

タクトが落ち着いた声で話す

「これ以上被害を広げるわけにはいかない、デムル・ジオの装甲を一点突破で貫き、破壊する。」

その言葉に肯くエンジェル隊

「全ての攻撃を一点に集中させるんだ、もう、他に方法はない、頼むぞ!」

『了解!』

 

 

既に攻撃は皇国軍の艦では対応できないレベルにまで達していた、紋章機のスピードでならばかわせるのだが、動きの遅い艦はすでに射的の的になっているだけである。

「っこれは・・」

ハーベスターの脇をレーザーがかすめる

「つらいわね、当たったらやばいわ!」

ランファの戦慄した声に、みんなが同意をする

何とか攻撃をかいくぐったと思えば、金属触手によって行く手を阻まれる、まさに攻守一体。

「ランファさん!後ろ!」

レナードの叫びによってカンフーファイターは右に動き回避しようとするが、

「ぐぅ!」

「ランファ!」

「ランファ先輩!」

ミルフィーユとちとせが悲鳴じみた声を上げる

「つつっ、大丈夫、よ・・、ヴァニラ、お願い・・」

「分かりました」

ハーベスターがカンフーファイターに近づき、カンフーファイターが淡い光りに包まれる。

「長引けばこっちが不利になる!」

フォルテが言う、それにミントも肯き

「ええ、もうこれ以上持ちません、一気に行くしかありませんわね」

エンジェル隊は肯き、自機の持てる全力で、デムル・ジオに向かっていった

 

 

まさに光りの矢のごとく、七機の紋章機はデムル・ジオに向かう、しかし、デムル・ジオの艦首砲が微妙な動きを見せる。

艦首砲に光りがともり、

「!!」

いち早く気が付いたのはレナードだった、素早くMHに変形し、

「必要最低限のエネルギーを残し、他は全て前方のシールドに回せ!」

レナードが語気も荒くコンピューターに命令する

「警告、その場合、エネルギー回路が焼き切れる可能性があります、また、前方のみに集中した場合にかかる機体への」

「後にしろ!」

了解(ラジャー)

コンピューターが淡々と答え、その間にレーザーは放たれる

素早く軌道を計算し、他の紋章機を守るのに最適な位置を計算する

「ぐぅ!」

思わず苦痛の声が漏れる

「レナードさん!」

「レナード!」

あちこちからから心配する声が上がる、

 「ぐっ、がぁっ!?」

 「ちょ、ちょっと、レナード!?」

 

 ――誰かが声をかけている

――――だれだ?

 

 

「ぐぅ! 急げ! そう長くシールドは持たない!」

 

「え?」

「レナードさん?」

口調が完全に変わっていた、目の色は濁っているようにも見える。

「はやく!」

『は、はいっ!?』

大急ぎで斜線上から紋章機が離れる、途端に交戦は途絶え、アークエンジェルは動きを止めた、衝撃で慣性運動状態になっているが―――

「はやくしろ!」

 

 

 

交戦を放った後は、どうにも隙が出来るようだ、攻撃システムの一部が瞬間的に停止し、その時だけは攻撃の手がゆるむ。

その瞬間を逃さずに

「フライヤーダンス!」

トリックマスターから放たれたフライヤーによって、デムル・ジオは一時防御のみに専念しなくてはならなくなった、その隙を見逃さず

「ストライク・バースト!」

「アンカークロー!」

ハッピートリガーの全武装が集中して命中し、そこにカンフーファイターのアンカーが打ち込まれる、

「フェイタル・アロー!」

連続で放たれる長距離攻撃(アウトレンジアタック)に装甲が悲鳴を上げる

「ハイパー・キャノン!!」

とどめとばかりのラッキースターのハイパー・キャノンで、ついに堅牢な装甲を貫く!

 

 

「なぜだ?」

サーベルト、デムル・ジオを操るヴァル・ファスクはつぶやく、目の前で、自分の足もとで、艦が破壊されていく

「なぜだ?」

彼はまた誰も答えることのない質問をする

「なぜ? 人間に、我らヴァル・ファスクが、ネフューリア、ロウィル、前総帥ゲルン、そして、私か・・・」

くっくっくっ

「これが、奴らの言う、力だというのか?」

サーベルトは天を仰ぎ、ひときは大きな声で叫ぶ

「どういう事だ! 答えろ! ビヴァレッジ!!」

彼は炎に包まれ、そして・・・

 

 

 

デムル・ジオは爆発した、あっけないほどに、

「やった、の?」

「え、ええ。」

ランファが呆然とつぶやき、ミントもやや戸惑い気味に答える

「・・・、勝ったんだよね?」

今度はミルフィーユがつぶやく、

「ああ、俺たちの勝利だ!」

タクトの声が響く

程なく、皇国軍は歓声に包まれたという

 

 

「!! 距離23000に複数のクロノ・ドライブ反応!」

「なに!?」

ココが戦慄しつつ報告する

ブリッジのざわめきも大きくなる

「どういう事?」

「まさか? 敵の増援?」

エンジェル隊からも不安の声が上がる

「今の私達の状況では、勝てる見込みは・・・」

レナードが乾いた声で言う

「識別信号! これは、ヴァ、ヴァル・ファスク・・・」

「総員!第一戦闘配置!」

あちこちから上がる悲痛な声を黙殺し、レスターが指示を下す

「いや、まだ何とかなるか?」

レナードがつぶやく、みんなの視線がレナードに集中する

「なにか、方法が?」

タクトが聞くと、レナードが肯く、タクトはレナードの少しの変化を見逃しはしなかったが、あえて何も言うことはなかった。

 

「過去に、ミルフィーさんが強運の力を失ったことがありました、その時に発揮した力は、エルシオールを一瞬にして復活させたりと、既に常識では考えられ内レベルの力を発揮しました」

言いつつも、レナードはアークエンジェルの向きを敵艦隊へと向けている

「その時の反動というか、代償というかで、ミルフィーさんは強運を失いました、ならば、」

既に一部の者は彼がこれから何をする気か悟っただろう、彼の顔に、揺るがぬ決意の色が宿っていた。

「初めからこちらが代償を払えば、その力は大きなものとなるのでは、と」

「!! アークエンジェルとのリンク率が急激に上昇?」

オペレーターが驚きの声を上げる

「と言うわけで、あまり私は命を張ってと言うのは好きじゃあないんですが、これもまた仕方がないとも・・・」

「レナードさん!」

ちとせが何とか止めようとするが

 

「ちとせ」

 

レナードが笑顔を向ける

 

「ありがとう」

 

ただ一言、そうつぶやいた、そして、紋章機に生えた天使の翼、命を代償として生まれ出た白き翼を羽ばたかせ、アークエンジェルが敵艦隊へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

「と、命を張っておきながら、どういう訳かしっかり生き残ってましたね」

宇宙港ロビー、軍服ではなく私服姿のレナードは相変わらず笑顔でそう言って、ランファにヘッドロックをかけられていた。

「あー、で、そろそろ本当に頭の形が変わりそうなので解放してくれませんか?」

さすがに冷や汗掻きつつレナードが訪ねる。

「まったく、どれだけの人間があんたの心配したと思っているのよ・・」

ランファがあきれた声を漏らす

「でも、本当に行くのかい? 別に紋章機の操縦もちゃんと出来るだろう?」

フォルテが聞くが、レナードは頭を振る。

「いえ、私は完全な状態で、皆さんと共に戦いたい」

あのあと、レナードは気絶していたが、命に別状はない、しかし、彼の特殊能力

『力ある言葉』が失われていた。紋章機のリンク率もだいぶ低下していたのだが、ある程度の戦闘ならば耐えられるレベルだった、

「今まで嫌っていた自分の力を、今度は取り戻そうとする、おかしなものです」

レナードが自嘲気味に言う

「いえ、あなたの力に救われたことも何度もありますわ、なくした物を取り戻したら、また、戻ってきますのよね?」

ミントが訪ね、レナードが肯く

「レナードさん、頑張って下さいね、超能力!」

「いや、超能力って言えばそうなんでしょうけど、なんだか・・」

ミルフィーユの言葉に脱力するが、取りあえず姿勢は保つ

「お元気で・・・」

「ええ、それでは」

ヴァニラの言葉に笑みを返し、レナードは歩を進める。

 

 

 

「で、やはり私といっしょにいるよりも、エンジェル隊といっしょにいた方が良かったんじゃないか?」

まだ慣れていないのか、若干不自然に語るレナード

「レナードさん一人じゃ、どんな無茶するか分かりません、しっかり付いていってあげます。」

「う〜ん、信用ないなぁ、わたしも・・」

こめかみに一筋汗を垂らしつつレナードは言う

「まあ、それじゃあ、宜しく頼むよ」

レナードは振り返り

「ちとせ」

「はい!」

 

 

【あとがき】

よし、ネタの仕込みは終わったと(謎)

やっと本格的な話しへの前ふり編が終わりです(前ふり!?)

なんというか、第一部とでも言うべきこの全九話、これから本格的に話が進む

ギャラクシーエンジェルBeloved loversのネタ仕込みの為です、MHを出したのは、あのネタの為、エンジェル隊5人とちとせ、レナードを離した理由はつっこみが多すぎるから(それだけじゃないけど、大きな理由の一つ)(いや、本当に)

そんな感じでこれからの為のお話も取りあえず終わり、それじゃあ、これから本格的にこの話が進みます、それまでしばらくお付き合い下さい、それでは。

 

                    後書き作成課課長 蒼穹一

 

 

追記2006/7/8

 ぎゃぁぁぁぁぁ!!!

 読み返すと死にたい・・・下手だ・・・

 修正しても仕切れない駄文はもうどうにもなりません。

 うう・・・もう少し頑張りますので見捨てないで下さい。