「ヴァル・ファスク」その名は畏怖を込めて呟かれると共に、恐怖の代名詞でもあった。

 皇国内で記憶に残るヴァル・ファスク達、ネフューリア、ロウィル、ゲルン、そして、

二ヶ月ほど前の、サーベルト、無論、このほかにもヴァル・ファスクは存在するだろう、

しかし、敵の本拠地に乗り込んだ皇国軍は敵の捕虜をとらえることは出来なかった、全て

のヴァル・ファスクは、突入前に逃走をしたようだった。

 生き残りのヴァル・ファスクによる反撃が予想されたが、予想に反して抵抗はなかった、

だが、諦めたと考える者より、圧倒的に後の攻撃のために力を蓄えていると考える者が多

かった。

 ヴァル・ファスクにより支配されていたEDEN本星――惑星ジュノー――などのEDEN領土を、皇国内に取り入れるか、一つの独立国として認めるかで、皇国内で論議が飛び交った、統合派は、早急にEDENを復興させ、戦力を整える為すぐにでも皇国内に取り込む、としている、独立派は、現EDEN評議会の意向を尊重し、二国の状態を維持しようとしていた、更に言えば統合派では、早急に統合を行い、ライブラリの技術を使い、新型機の開発を行おうとしている。しかし、この論議が元となり対ヴァル・ファスク戦略としての、EDEN軍編成すらまともに出来ない始末、そのため、二ヶ月前の戦闘では開発途中の星系が多大な被害を受けてしまった。この事態により、各方面で今後の対策案がとられているのだが、今のところまともに決定がなされていない為、EDENでは、皇国軍が駐留し、仮編成された、EDEN予備軍が、共同編成されている状態になり、足並みをそろえるのに苦労しているようだ。

 

 

ギャラクシーエンジェルBeloved lovers

 

【喧々囂々?笑いなし怒号あり】

 

・・・・・・・以上のことから、今後本格的な大艦隊による侵攻に備え、EDEN予備軍の完全編成、

及び、完全に統制の取れていない一部領地の管理貴族への通告を・・・・・・・

 

タクトはそこで書類を読むのをやめた、このほかにも、今後の戦略プランが一戦闘に3、

4パターンの戦略プランが立ててあり、今後の軍編成についてなど、異常な量の書類が山

積みになっている。

「ほ〜、さすが、あの歳でとんとん拍子に出世するやつの頭は違うな」

向かいのイスで同じく書類を読んでいたレスターは感慨深げに肯いて書類をおいた、

「しかし、よくもまぁ、あんな短期間でこれだけの書類を残して去っていたな・・・・・・」

タクトが褒めているんだが呆れているんだか分からないようなセリフを言う

「まあ、レナードのやつは、お前がいない間お前以上の働きをしてくれていたからな、お

前がどれだけ仕事をさぼって俺に任せていたかよく分かる」

そう、この書類は、レナードが一ヶ月のうちに残していった書類なのだ。

「うう・・・」

レスターの痛いところをつかれてうめくタクト、

「まあ、前にもいったように、お前にはお前の仕事があり、エンジェル隊のテンションを

保つことが、お前にもっとも適した仕事だ、だから俺は取りあえず文句は言わない。」

「十分いっているようだけど・・・・」

「・・・・・とにかくだ、この書類は後回しだ、一時間後にシヴァ陛下とルフト将軍が会議室に

来るぞ」

書類をてきぱきと片づけながらレスターが言うと、

「え?そんな予定有ったっけ?」

「おい・・・」

半眼でタクトをレスターがにらみつける、場の空気が一気に下がっていった

「大事な話があるからと、わざわざエルシオールまで来るんだ、それをお前は・・・」

「うう、そう言えば・・・・」

などと言ってから、ふと思い出したように

「そういえば、何で向こうから来るんだろう、いってくれればこちらからで向くのに?」

「ふむ、」

レスターはタクトの言葉にしばし考えると

「よほど人に聞かれたくないことなのか、王室の側近達にすら聞かれてはまずいような事

ということか?」

「ふーん」

質問自体にたいした意味を持っていなかったようで、タクトは素っ気なく言葉を返しただ

けだった、しかし、この後怒る厄災には、誰もまだその時気が付いていなかった。

 

 

 

キューーン!

「!?宇宙クジラ!?」

いつもは和らいだ表情をこわばらせ、クロミエは声の方―――宇宙クジラがいる海―――

を向く。

「そんな・・・・・、まさか・・・・」

クロミエが絶望したような声音を出す、だが、追い打ちをかけるかのように、

グワシャァ!!

ぐぎょぉぉぉぉ!!

ベキィィ!!

謎の叫び声と共に、何かが破壊されるような音が聞こえる

「宇宙食虫植物・・・・・」

クロミエが戦慄した表情でそう呟いた。

 

 

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

エルシオール中に警報が響き渡った、総員五百名ほどの乗組員達が緊張する

「総員!第二種警戒態勢!」

第二種警戒態勢、艦内に敵が存在する場合のことだ、

ブリッジに居たレスターがブリッジ要員に指示を下し、更に艦内放送で

「敵はクジラルームの植物園より逃走した宇宙食虫植物三体!情報によると、その宇宙食

虫植物たちはいささか特殊で、危険なウィルスを保有しているという、非戦闘要員は直ち

に自室に戻りドアをロックせよ!戦闘要員も、防護服を着用の上で対処せよ!」

実際の所、部屋の扉にウィルスを防御できるような機密性はない、だが、取りあえず無い

よりましという考えの元の命令だった。



「エンジェル隊は至急ブリッジに、そこで防護服を配布する、万が一目標と接触した場合

は、速やかに退避!目標との交戦は絶対に避けろ!」

レスターの口調にも焦りが見え始めている、タクトもさすがにまじめな顔つきになり、コ

コに艦内をスキャンさせていた。

ウィン

ブリッジの扉が開き、フォルテが入ってくる、続いてランファ、ミント、ヴァニラの順に

到着し、

「ミルフィーは?」

司令官席まで戻ってきたタクトが聞くと、揃って全員が首を横に振る

「何をやっているのだ、あいつは・・・・・」

頭を押さえながらレスターがぼやく

「だいたい、今日は忙しい日だってのに、あと少しでシヴァ陛下とルフト将軍が・・・・・・」

と、言ってからレスターは言葉を止める、重大な過ちに気が付いたのだ、

「陛下と将軍が死んでしまうぅぅぅぅぅ!!!!!!」

事情を知らないあの二人がエルシオールに入ってきて、食虫植物の一体とでも出会ってし

まえば、ウィルスに感染するか、そうでなくても元々危険な本体に食われるか、どちらに

しろこの艦の中に一度入ったら、生存確率は限りなく0に近くなる。

「今すぐ防護服を配る!とにかく一分一秒でも早く、食虫植物を捕縛!いや、悠長なこと

は言ってられん!燃やせ!ウィルスも熱処理すれば問題ない!いそげぇぇ!!」

血相変えて叫び出すレスターに周りが引き始める、横ではタクトが俺の立場は?と言った

風に立ちすくんでいたりする

「そんなに怒鳴ると血管きれるよ?」

フォルテが取りあえずなだめようとするが、聞こえているのか居ないのか

「とにかく、ここにある防護服を付けて今すぐ退治してくれ!俺も後で行く!」

脇からズルズルと人数分の防護服を引っ張り出してくる

「私たちには大きすぎますので・・・・」

「サイズは合わせてある」

にこやかに辞退しようとするミントの意見を切って捨て、見るからにミントサイズの防護

服を取り出している、ついでにもう片方の手には、ヴァニラ用と思われる、これまた小さ

な防護服がある。

「君たちの方に、皇国の未来がかかっている!頼むぞ!」

激励するのは俺の役目・・・・などと言った表情でやはり立ちすくんでいるタクト、言っては

何だが、結構笑えた。

 

 

 

「それにしても・・・」

シューコー

「クールダラス副司令があそこまで血相変えるだなんて・・・」

シューコー

「いやランファ、冗談抜きでシヴァ陛下やルフト将軍にも下のことがあったら・・・・」

シューコー

そうなったときのことでも想像したのか、フォルテが身震いする

「・・・ミルフィーユさんが居ないのは、今回の件と何か関係があるのでしょうか・・・・」

シューコー

ヴァニラがそう呟くと、全員の視線が集中する、

全員の脳裏には、最悪の状態も想像された、彼女はいつもおちゃらけたりしていて天然ボ

ケではあるが、まじめな人間である、いくら何でも十分以上集合におくれるなど、絶対と

までは言わないが、まずあり得ない、となれば・・・

「まさか、ミルフィー・・・・」

シューコー

ランファが呟くと、それを遮るように

「縁起でもないですわね、ランファさん」

シューコー

「でもミント!」

シューコー

「ミルフィーさんがそう簡単に宇宙食虫植物にやられはしませんわ、彼女はお強いですか

ら」

シューコー

強運―――それは幸運でもある、そして悪運でもある、両極端な強い運、いまは、その運

が幸運に向いていることを願うしかない。

「・・・いったんここで二手に分かれよう、四人いっしょに固まってるんじゃ、効率が悪い。」

シューコー

フォルテの提案に一同が肯くと、ランファとミント、フォルテとヴァニラに分かれて、左

右の通路に分かれた。

「って、さっきからシューコーシューコーって、ダース・●イダーじゃないんだから」

シューコー

「防護服を着ているのですから、呼吸音がそうなるだけですわ」

シューコー

 

 

 

コツコツコツ

無人の廊下を、二人の人間が歩く、一人は背の小さい少女、だが、顔つき体つき共に年相

応なのだが、その目だけは、何かを悟ったような、大人びた感じを醸し出していた。

隣を歩く長身の老人の目は、老練なように見えるが、今はいぶしかむかのように、細まっ

ている。

「なぜ誰一人いないのだ?」

少女、この国を統治するシヴァ女皇は老人に聞く

「私にも分かりませぬ・・・・」

老人、この国の軍と、政治を取り仕切るルフト将軍はそう答えた、

「いくら何でも、誰一人の顔も見えないというのは・・・・・」

そこに、ルフトの声を遮るかのように

キシャァァァァァ!!!!

どこからか怪物じみた声が聞こえてきた

 

 

 

「いないわねぇ・・・・」

ランファがぼやくと、隣を歩くミントが、

「ぼやいていても仕方有りませんわ、あとは、このフロアは食堂が残っていますわね、時

間からすれば食事中のお客はそれほど居なかったと思いますから、大丈夫だとは思います

が・・・・」

なぜ食堂が一番最後になったのか、二人とも出来ればいきたく無かったのである、食虫植

物などと名前はついているが、実際には人間すら喰おうとする(タクトだて、喰われかけ

た)、人の集まるところでもあるし、そうでなくても、料理や、その材料があるのだ、どう

もそこに食虫植物が居るような気がして、なんとなく避けていたのだが、

怖いので返ります

などというわけにもいかないので、二人は食堂のドアの前まで来ると、

「3,」

「2、」

『1,』

体勢を低くして、

『0!』

いきよい良く開くドアの間をすり抜け、二人は食堂に飛び込む、ランファは得意のカンフ

ーの構えをとり、ミントはレイザー銃を構える、そこに、

シャァァァァ!!

叫び声と共に二人にツルが襲いかかった

 

 

 

ダンッダンッダンッ!!

連続した発砲音、硝煙のにおいがあたりに立ちこめる、

キシャァァァァ!!

あちこちに銃弾を受けながらも、まるで何事もなかったかのようにつっこんでくる宇宙食

虫植物、倉庫を点検していたときに、コンテナをあさっていた食虫植物を発見し、味方に

知らせようとしたのだが、運悪くコンテナの中身に足を取られ、音を立ててしまったので

食虫植物に気がつかれてしまったのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

フォルテは持っていた連射可能なアサルトライフルを食虫植物に向かって撃ちまくる、し

かし、いくら撃たれようともその動きは衰えることはない、食虫植物がツルを伸ばして攻

撃してくる、一撃目は何とかかわしたが、間をおかずに放たれた二撃目はアサルトライフ

ルを盾にして防ぐしかなかった、7.56口径のライフルはあっさり折れ曲がる、更に続

く三撃目は、ライフルを棍棒代わりにして防ぐ、しかし防御も長くは続かず、ツルがつい

にフォルテの首を掴む。

「ぐぅっ」

宙づりにされるフォルテを助けようと、ヴァニラが向かおうとするが、ツルが牽制するの

で思うように近づけないでいる。

フォルテは慌てて新たな銃を取り出す、FNハイパワー、

「(なんでシングル・アクションの銃なんて持ってたんだ?あたしは・・・・)」

撃鉄を起こすのももどかしく、首を締め付けるツルに向かって発砲する、ツルを打ち抜く

と、フォルテは激しく咳き込むと転がってツルの射程圏内から逃げる。

更にまた新たな銃―――SOCOMという、45口径の銃―――を弾倉が空になるまで打ち

続ける、痛みを感じるのかどうか知らないが、銃撃を受けて出来た隙を逃さず、ナノマシ

ンで動きを縛る、そして更にフォルテが取り出すのは使い捨て捨てのロケット・ランチャ

ーを取り出す、

ランチャーの直撃を受け食虫植物が焼き飛ぶ。

「やったか・・・・」

空になったロケット・ランチャーを放り捨て、フォルテは感極まったようにそう言った。

「・・・・今の武器はどこから出てきたのですか?」

ヴァニラがそう聞くと、フォルテは、

「世の中には、常人には計り知れないようなことがあるんだよ」

「・・・・・・・・・」

ヴァニラはそのまま黙っていたが、頭の中で

(常人に計り知れないと言うことは、フォルテさんは変じ・・・・・)

「・・・・とにかく、ここは終わったので、次の場所へ向かいましょう」

話を切り上げると、ヴァニラはフォルテと共に、出口に向かおうとして、

「ん?シュトレーン君、アッシュ君。」

角から歩いてきたのはシヴァとルフトだった

「シヴァ陛下、ルフト将軍!ご無事で?」

フォルテがそう言って二人に駆け寄ろうとすると

キシャァァァァァ!!!!

角から伸びてきたツルの一撃がルフトに襲いかかった。

 

 

 

「右上ですわ!ランファさん!」

ミントが叫ぶと、ランファは左後ろにとび下がる、一瞬前までランファが居たところを、

食虫植物のツルが叩く、ランファはそのまま食堂のテーブルに飛び乗るが、すぐさまツル

をしならせて攻撃を仕掛けてくるので、うかつに手が出せないのだ、だが、

「左!右下!上下!」

ミントのテレパス能力により、食虫植物の攻撃はことごとくランファがかわす。

先ほど載っていたテーブルが砕かれ、破片があたりに飛び散る、とっさに顔をかばうラン

ファだが、破片に紛れてツルが伸びる。

「んなっ!」

とっさに身を引くが、ツルは腕に絡まる、ツルを無理矢理引きちぎろうとするが、それよ

り先に更にツルが伸びてきて・・・・

ヒュン!

キッチンからとんできた包丁がツルを切断する、

ランファが素早くとび下がる、更にキッチンから調理用油が飛んできて食虫植物にかかり、

ミントが食虫植物にレイザー銃を撃つ、レーザーに熱せられて瞬時に油が炎上し、食虫植

物を焼き尽くす。

「ランファ〜、ミント〜!」

『!!』

奥のキッチンから良く覚えのある声が聞こえる

「いまの!」

「ミルフィーさん!?」

生きていた、その事実が二人の緊張をといた、ミルフィーユが取りあえず生きているとな

れば、少なくとも直接おそわれたわけではないだろう、万が一ウィルスに感染していても、

ナノマシン治療をすれば治る、二人はそのまま奥のキッチンへ向かい、

『!!!』

二人は予想外の事態に体をこわばらせ、硬直した。

 

 

 

ルフトは何とかツルの攻撃をかわした、が、体勢を崩し、なおかつシヴァ女皇との間が開

いてしまった、そこに二本目、三本目のツルが伸びてきて、シヴァを攻撃しようとする、

「陛下!」

「うわっ!」



ルフトはツルの一本を掴み、持っていたレイザー銃でツルを焼き切る、もう一本は、フォ

ルテが正確な射撃で打ち抜いた。

「陛下はお下がり下さい、ぬぅっ!」

シヴァを片手で後に下がらせたとき、ルフトは突然うめき声を上げた

「な!まさかウィルスに!」

フォルテが戦慄するが

「くそっ、不覚じゃ、久々に動いたから、腰にきたぞ、グキッと・・・。」

腰を曲げた状態で硬直するルフトを視界の端に納めながら―――取りあえず無視―――フ

ォルテは対策を考えていた。

「(さっきのようにロケット・ランチャーで攻撃すれば、この狭い通路をバック・ファイア

で全員ただじゃすまない、どうする・・・・せめてもっと広いところに・・・・)」

急いで頭の中で考えをまとめると、フォルテは動けないルフトを引っ張り

「ヴァニラ!シヴァ陛下を!取りあえず逃げる!」

「はい・・・・」

フォルテはルフトを担いでいるせいで動きが鈍くなってはいるが、それでもヴァニラが付

いてきている、思いのほか足が速いようだ。

そのまま一同はあちこち走り回り、エレベーターホールに着いた。

すると、ヴァニラがフォルテの裾を引っ張る、

「ん?」

ヴァニラは無言でエレベーターを指さすと、

「ああ、なるほど、よし、それでいこう。」

ルフトを自動販売機横のベンチに横にさせ、シヴァもその隣に座らせておく、素早くフォ

ルテは銃―――先ほどから出ているSOCOM―――を抜き、三連射、伸ばそうとしたツル

を撃ち抜かれ、動きが止まる。

鋭利な刃物となったナノマシンが食虫植物に斬りつける、怒りにまかせ―――感情がある

のかどうか知らないが―――ヴァニラのナノマシンを攻撃しようとする、ナノマシンはエ

レベーターに入ろうとし、その直前で空気中に霧散する、勢いが付いていた食虫植物はそ

のままエレベーターに突っ込んでいき、完全に体がエレベーターに入ったところで扉を閉

める、完全に閉まる直前に、フォルテは手榴弾を二個取りだし、ピンを抜いてエレベータ

ーに投げ込む。

グォォン!

何となくエレベーターの扉が膨らんだように見えたあと、隙間から煙が吹き出す、

「ふぅ」

フォルテはやっと片づいたと言わんばかりにひざをつくと、大きく息をついた。

サラサラサラ

「ん?」

砂がこぼれるような音が耳に入ってくる、ヴァニラも気が付いたのかあたりを見渡し・・・

 

 

 

「なによこれぇぇ!?」

ランファは思わず叫び声を上げた、防護服の中で、自分の服が崩れていくのが分かる、丈

夫なはずの防護服も、一部がぼろぼろになっている、完全に崩れるのは時間の問題だろう。

「わからないよ〜〜!」

近くにあったタオルを体に巻き付けて、胸やら何やらを隠しながらミルフィーユが言う。

「変な植物さんが入ってきて、取りあえずここに隠れてたら、服がぼろぼろに・・・・・」

「これは、いったい?」

ミントが頭に指を当てて考えているが、答えは見つからなかった

ただ、彼女たちの服どころか、防護服すら崩れて砂に変わろうとしていた

 

 

 

「ですから、ウィルスじゃなくて、バクテリアです」

クロミエが困ったように言った。

「どこが違うんだ!!」

ブリッジでレスターが叫ぶ、横にいたタクト(今回めっきり脇役)も、

「どんな効果を持ったウィ、バクテリアなんだ?」

「プラスチックとかの石油製品を分解するバクテリアがあるのは聞いたことがありますよ

ね、あの宇宙食虫植物は、どういう進化を遂げたのか、ポリエステルやナイロンを食べる

バクテリアを体に住まわせて居るんですよ。」

ポリエステルにナイロン、言うまでもなく衣服を構成する石油から作られる繊維である。

「食虫植物本体から離れると、1,2時間くらいで死滅するんですが、それまで石油製品

を身につけると大変なことになります、コットンとかシルクでなくてはダメです。」

「何か対策は!?」

レスターがクロミエに詰め寄るが

「ありません、時間が経つのを待つしか・・・」

シルク製の服を身にまといながらクロミエが淡々と答える。

「取りあえず、トレーニングルームのタオルは綿100%ですから、これを巻いて下さい」

先ほどから配っているタオルを、席の後に隠れているアルモやココに手渡す。

「で?」

額に青筋を浮かべながらレスターが問う

「つまり、死に至るわけではないので、取りあえずは安全と言うことです。」

にこやかにクロミエが答える。

しかし、先ほどクロミエが大丈夫と言ってブリッジにきたとき、うかつに警報を解除した

為、既に乗組員は外に出てきている、そのため、

キャーー!

わぁぁ!?

いやーー!!!

どこからか遠い悲鳴が聞こえてきたりする、犠牲者達の断末魔の悲鳴だ、これから、どん

な地獄絵図が繰り広げられるのか、そして、騒ぎの現況となる食虫植物の管理責任者がど

んな事態に陥るのか、どちらにせよ、

「う〜ん、僕はそろそろ逃げた方が良いのかも知れませんね」



相変わらずにこやかな笑顔のまま、クロミエは急いでブリッジを飛び出した。

彼の命は、そう長くはないだろう。

 

 

 

で、バクテリアが完全に死滅したと思われる時間になり、やっと当初の目的を果たすこと

となった。

エルシオール内の会議室、そこに、タクト、レスター、シヴァ女皇、ルフト、さらには、

エンジェル隊も揃っていた。

「今回わざわざここまで出向いてきたのは、やはり他の人間に聞かれるのはまずいという

事じゃ」

ルフトが話を切り出し始める

「実を言うと、今回の件は、お主達も他の者には話さないで欲しい、絶対に部外秘じゃ。」

その言葉に一同は肯く、それを見てルフトも肯き、

「最近、軍内部に不穏な動きが見える、主に研究部と司法部じゃ。」

普通、軍隊には三つの部署が存在する、実際に作戦行動を行う「作戦部」、作戦部の為に情

報収集を行う「情報部」、武器などの兵器、薬品、敵の兵器を入手した場合はそれの研究も

含めた仕事を担う「研究部」。

だが、皇国軍にはもう一つ部署があり、軍愛撫での三つの部署の監視役を担う「司法部」という物がある、ただし、司法部は三つの部署の監視役ではあるのだが、司法部を監視する物が居ない為、司法部の監視は同じ司法部でと言うことになる、そのため、司法部の存在をどうするかで論争が続いた時期などもあったのだが・・・・

「司法部か・・・、あそこは前から言い噂を聞かなかった・・・・・」

「ですが、主にと言うことは、他にもあると言うことですの?」

ミントの質問にルフトは肯き

「うむ、言ってしまえば、どの部署にも少なからず不穏な動きがある、そのため、陛下の

側近も信用は出来ない。」

「出来れば私も信用したいのだが、事態が事態だからな・・・・・・」

シヴァが少しつらそうにするが

「それで、我々にどうしろと?」

フォルテが真剣な目つきで問いかける

「何をする、と言うわけではないが、お前達には話しておかなくてはと思ってな」

言ってルフトは数枚の紙が束になった資料を取り出す。

全員にそれぞれ資料が行き渡ると

「その資料に書いてあるのだが、それの3ページ目から・・・・・」

言われてそれぞれページをめくり

「作戦部で疑いをもたれている中に、気になるのがあってな、そこが・・・・・」

ルフトはいったん言葉を切り

「第一特務機動部隊〈オブスティネート〉・・・・・・」

「特務機動部隊?」

ミルフィーユが疑問の声を上げると、フォルテが

「少数精鋭部隊を運用する特殊部隊だよ、確か第6部隊くらいしかないはず・・・前王の時代

には場合によっては汚い仕事もやっていたみたいだけど・・・・・・、って、〈オブスティネー

ト〉!?そいつは・・・・」

フォルテが何かに気が付いたのか声を上げる。

「ああ、〈オブスティネート〉・・・・・」

沈痛な顔のまま、ルフトは言う

「レナードの指揮していた部隊じゃ」

思い沈黙が一同に落ちた。

 

つづく

 

 

【あとがき】

今までに比べると間が開いたような、毎度おなじみ蒼穹一です。

やっと物語も再スタートするはずなのに、初めのネタは一体なに?といった感じですが、

そもそもネタ自体ギリギリだし、とりあえずあとは次の話で番外編っぽいものは終わる予

定、さて、本格的にいきますよ!

 

さて、この物語では、細かく時間が変わる為、ここで一度年表のようなものを

 

だいたい413年一月ごろ   EL終了

413年二月         レナードが司令官就任

それから約一年間経つ

414年一月下旬       謎の艦隊出現

二〜七月          ヴァル・ファスクとの大戦

八月中           大戦終了からレナード・ちとせ、長期休暇開始まで

九月〜           第二部から

 

 

そういえば、「ギャラクシーエンジェルU」というのが発表されましたが、あれって、ELから何年後なんだろう、もし2年後だったら、次回作への間をあまりに近づけるのはまずいので、色々変えないと。

さらに、ミルフィーユの妹「アプリコット」、レナードの元秘書の名前と同じになってしまった!!第一特務機動部隊〈オブスティネート〉時代の秘書、名前の設定変えなければ、よかった、まだ発表して無くて。

それでは、また次回

 

生涯口座「あとがき」コース   蒼穹一

                             (意味不明)

 

次回予告

浮かび上がる疑惑

ちとせへとそのことを伝えようとする彼女たちだが

まだちとせはそのことを知らなかった

次回

就職活動?臨時雇いと奇跡の薬草

ちとせの日常が、今、崩れ始める