ギャラクシーエンジェルBeloved
lovers
【陰謀詭計の種明かし】
ガサゴソ ばりぼり もさもさ
「さて、現在我々が直面している食糧問題でありますが・・・・」
エルシオールのブリッジで書類片手にレナードが話をしている、
パクパク もふもふ !!!!!
「白き月から逃走してから二日で食料がほとんど無くなり、」
パクッ もさもさ かちゃかちゃ パカッ
「既に数日間非常用の乾パンや缶詰めなどを食べるばかり」
と、そこでレナードは書類から目を離し半眼で前方を見る
ガサゴソ もさもさ かちゃかちゃ パクパク
「水もいい加減限界で供給に制限が出てきましたし、シャワーの水も出にくく・・・」
パクパク ガサゴソ もふもふ !!!!! パクパク
「で、出にくくなってきてぇ・・・それで・・・ってもう!」
パクパクパクパク カチャカチャガチャガチャ
「このカンズメ開かないぞ!」
「乾パンまずい・・・」
「塩味を聞かせないと」
「陛下もこんな食事を?」
「非常時だ、私だけ他の食事を食べ・・・歯に何か挟まって・・・」
「と言うか非常食もそろそろ無くなるけど」
「正規の乗組員じゃないのもいるんだ、口が多いからな・・・」
「食べないで話を聞いて下さい!」
好き勝手なこと口にする一同――タクト以下エンジェル隊や主要な人物――に対してさすがに我慢も出来なくなって書類が床に落ちる。
「でもレナード・・・」
持っていた乾パンを置きながら、代表でタクトがしゃべる
「食糧問題は深刻なんだよ・・・ブラマンシュ財閥も当てにはならないし」
この当てにならないというのは、一番近い財閥の支部からでも食料が届くのに六日かかるのだ、何人か倒れること請け合いである。
「この間みたいに基地によって襲われても困るし」
もしここに〈ギャロップ〉のストーム艦長がいたとすれば「学習能力はあるのだな」などと言うに違いない。
「ですからまず、私の知り合いの会社で補給をすればいいでしょう」
『え?』
さらりと言った言葉に全員がアホのような声を出す
「そんな便利な知り合いが?」
「はい」
「早く言ってよぉ」
「ここから3時間ばかり言ったところに〈ミリエルス重工〉の商業コロニーがありますのでそこで・・・」
「重工業なのに食料も売るのか?」
レスターの質問に即座にレナードが
「重工と名が付いているのは初期の頃は重工業専門だったからでして、規模がかなり拡大してきたので様々な方面に商売の手を広げています、シェアは国内でも五本の指にはいるかと・・・」
「何でそんなところに伝手があるんだ?」
「秘密です」
人差し指を立てて唇の前に寄せる、何か似合ってる。
「ところでミルフィー、ランファ、二人とももう起きて大丈夫なのかい?」
ティーラウンジでお茶をしているエンジェル隊の会話で、何気なくフォルテが聞いた
「大丈夫ですよ、丸一日寝たら体力も戻ったし、そもそも何か怪我した訳じゃないんですから」
笑いながらランファが答え、ミルフィーユもそれに同意する、しかし、ここにいる五人の話す全てが何処かぎこちなさを携えていた
「あ〜、ところでさ・・・」
再び話を切り出したのはやはりフォルテだった
「ちとせを見た奴いるかい?」
黙って全員かぶりを振る
「って事は今日も部屋にこもりっぱなしか・・・何かあったのかね?」
「さあ? 初めに戻っていらした時は特に変わった様子はなかったのですけど・・・」
ティーカップを両手で包み込むようにして持ち、ミントが言う
「実はあの二人の内どちらかがレナードの恋人だった! とか?」
あの二人というのはフェイツイ(前回出番無し)とシリアのことだ。
「それだったらエルシオールに戻ってきた時に様子が変になっているはずだろう?」
「あっ、そっか・・・」
あっさり自分の意見が否定されて再びランファが悩み初め、ミルフィーユが
「エルシオールに来てからちとせに何かあったなら・・・」
頭をひねってひねって
「あっ! 二人のお帰りなさいパーティーと歓迎会をやってない! ちとせそのことで・・・・」
「一体どうしてだろうねぇ?」
「全く・・・」
「分かりませんわね・・・」
「・・・・・・」
「(無視?)」
しばし気まずい沈黙が後ずれたところで、
「それにしてもお茶だけでケーキが一つもないテーブルも珍しい光景だよね・・」
隣のテーブルでいつの間にかタクトがお茶を飲んでいたりするがそれも無視
「えーっ!?」
無視
悩み悩み、ずっとウンウンうなってそれから
「レナードに聞けばいいか!」
初めからそうしろよ
ただし、実際に突っ込む者は一人もいなく、五人は立ち上がると全速力でレナードの部屋に向かった。そして、一人ティーラウンジで紅茶をすするタクト、背中が煤けて見える・・・
「そうですね、強いて言えば先日の夜の話」
レナードの私室(臨時)でエンジェル隊五人とレナードが向かい合う、
備え付けのイスとこれだけ引っ張り出したソファにそれぞれ腰掛け、片方は穏やかな顔、もう片方は深刻な顔でいる。
そこで出てきたこの言葉に
「それで、夜のベッドの上で何がどうなって上になったり下になったり・・・」
「誰もそんなこと言ってません、と言うか無理してボケなくて良いですから」
フォルテの言葉を遮りレナードが言い、そしてそのまま昨日の夜のちとせとの会話を一語一句逃さず話す。
回想シーン
終わり(面倒なのでカット)
「え? そうだったの?」
「その好きな人ってレナードさんがいたオブ」
「ミルフィー(ボソ)」
「あ」
ランファ、ミルフィーの順に話す。オブスティネートのことを聞くのはまだ早い。
「オブ? なんですか?」
レナードが聞き返す
「オブ、オブ、オオオオオ」
「は?」
「オ、オブラートって何で味がしないんでしょうね?」
どぐわしゃぁ!
盛大にこの場にいたほとんどの人間がずっこける。テーブルに突っ伏し、ソファから転げ落ち、イスは上下逆さまになる。
「ま、まあ好きな人とかの話はどうでも良いとして、原因がこのことかも知れないと言うことです」
「かも知れないじゃなくてほぼ確定だと思うけど・・・」
「どちらでも構いません、それよりもうすぐミリエルス重工のコロニーに到着しますので、これで」
イスから腰を上げ足早に部屋から出ようとする
「あ、ちょっと」
誰かが呼び止めようとするが、レナードはそのまま去ってしまう。
その表情が何処か陰っていることに、気付いた者はいなかった
ミリエルス重工応接室
「いやぁ、レナードくんからは話は聞いてるよ、食料から弾薬その他修理に必要な物と全面的に提供させてもらうからね」
レナードと同じ蒼みがかった銀色の長髪を後になでつけた男が軽い口調でそう言った。ミリエルス重工の会長、ジョハード・ミリエルスはかけているプレートタイプのサングラスの位置を直しながら革張りソファに腰掛ける。
「はぁ、ありがとうございます」
ひたすら恐縮した様子でタクトが言う、金額交渉のためにミントが隣の席に座っているが、こちらは対照的に堂々としている。
「いやホント、君たちも大変だねぇ。あ、安心して良いよ、このことを口外する気はないから」
「はぁ・・・」
阿呆のように返事をし続けるタクト、しかしミントはさすがブラマンシュ財閥の令嬢、早速交渉を開始する。
「それより会長、そろそろ支払いのお話を・・・」
「ああ、いいよいいよ、タダで」
「は?」
事も無げに言う会長にさすがにミントも言葉を失う
「僕自身彼には世話になってるし、商売上でも色々協力してもらってるしね。少しでも貸しを返していきたいところだけど、何年かかる事やら」
口元に笑みを浮かべつつ再びサングラスの位置を直す会長、癖なのだろうか。
先ほどから会長は軽薄な口調でしゃべっているが、声は低く落ち着いた物で、若干の違和感がある、まあ普通は気にならないほどの違和感だが。
「まあ、そう言うことだから。君たちは艦に戻って休んでてくれよ」
「はぁ・・・」
最後まで軽薄な口調の会長と、最後まで阿呆のように返事をするタクト。お互いにそこで別れ、タクトとミントの二人は廊下を歩きエルシオールが入港している格納庫へと向かう
「油断できませんわね、あの会長」
「さっきの人? まあ、どことなく胡散臭さがあるけど・・」
ブツブツと周りには聞こえない様に話し始める二人
「と言うよりおかしいのです、私のテレパス能力を受け付けない人など、レナードさんくらいだと思ってましたのに・・・」
「え? レナードの心って読めないの?」
「言いませんでした? 思考を読もうとすると妨害されますのよ・・・あの会長も頭の中を見ようとしても出来ませんし・・・」
「優秀な腹芸の出来る人間はテレパスも聞かないのかな?」
「さあ? あの二人以外でテレパスが聞かない人はいませんでしたので何とも言えませんが・・・」
などと言っている内に格納庫に到着する、二人はそのままエルシオールに乗り込み補給が終わるのを待った
コロニー廊下
「会長、コロニー周辺に敵影多数、15番格納庫に待機中のエルシオールに知らせますか?」
金髪の女性、あの〈スキーズ・ブラウニル〉に乗っているはずのセレス・キミットが会長に話しかける、スキーズにいる時とかわらぬ白いスーツ、両肩には三本の剣が合わさったエンブレムが付いている。
会長は後に流していた髪の一部を前に下ろし、口の中から小さな黒い物体を取り出した。
「いや、まだ良いだろう。それより〈スキーズ〉と〈ギャロップ〉を出して待機させよう、エルシオールに迎撃に出てもらうのはそのあとで」
黒い物体を取り出した音、声が変わり、高い女のような声になる。
「ですが、目標の数は予定よりもだいぶ少数です」
「だからおそらくエルシオールで乗り切れるだろう、あくまでも我々は保険だ。予想外の戦力が投入されなければいいが」
「遺志を継ぐ者の他に、司法の部隊が動き始めたと言うことです」
「三つ巴は困るなぁ・・・」
「我々も含めて四つ巴になる可能性もあります」
「エルシオールが我々を拒否すると?」
「可能性はあります」
「だが、全てはここを乗り切ってからだ」
そこで会長はサングラスを外し
「しかしここで窮地に陥るようなら私の見積もりが甘かったと言うことかな?」
エルシオールブリッジ
「と、いうことで、周りは敵がいっぱいです。戦うのは任せますので」
「って、いきなりそんなこと言われても・・・」
重工所属の管制官からエルシオールに現在の状況が淡々と告げられた。
「どうする?」
一方的に通信はとぎれ、後にはタダ呆然とクルー達
「何とも言えないな、ここにいれば安全かも知れないし、コロニーごと攻撃してくるかも知れない。どちらにも共通して言えることは、連中は俺たちを狙ってきていると言うことだけだ。あの遺志を継ぐ者とか名乗る連中だな・・・」
既にアルモに作戦図の表示をさせているので、メインスクリーンには周辺の地図と敵艦の情報がつづられている、いくつかは未確認の新型が混ざっている。
「敵の戦力は未知数だけど・・・コロニーを巻き込むわけにはいかない、いったんコロニーから離れて小惑星帯を陰にしよう」
「分かった、エルシオール発進する。ハッチ開放、前進三分の一」
格納庫(紋章機内部)
「あのときの連中? 食べ物の恨み・・・」
「あたしらがどれだけひもじい思いをしてきたか・・・」
ランファとフォルテの目に復讐の炎が宿っている
「宇宙ウサギのニンジンの恨み、取らせて頂きます・・・・・」
ウサギのニンジン!?
「駄菓子」
そんな物補給するな!
「ケーキがぁ・・・」
あんた黙ってろ
食べ物の恨みを晴らすべく、五人のエンジェル隊が闘志を燃やす中、
「ちとせさん」
シャープシューターのコックピット、全体の回線とは別の回線が開く
「オンリィになっていますから、誰も聞いていません」
「・・・・・」
レナードの呼びかけに対して、ちとせはただ黙っているだけだった
「ちとせさん」
「わたしは」
呼びかけすら止めちとせが言う、とても強い口調で
「負けません」
「は?」
レナードが予想していたどの反応とも違う
「たとえその好きな人が誰であろうと!」
「もしもーし」
「私の方が素晴らしいと・・」
「おーい」
「だからまだ諦めた訳じゃありません」
「私の言いたいのはそう言うことでは・・・」
要約すれば、相手がどんな人であろうと、自分の方がその人よりも良いのだと見せて勝ち取ると。まあこんな所か。
「・・・まあ、いいか」
彼女は考えていたよりも強い、やせ我慢か、本心かは計れないが彼女なりに・・・いや、この考えが行けない、つい昨日反省したばかりだ、自分のすることを思い出せ。
レナードは落ち着いてアークエンジェルの計器に目を走らせる、もともとH.A.L.Oには女性の方がリンクしやすく、男性は扱いにくい所を無理して扱っているのだ、いつツケが回ってくるか分からない。
それに・・・・・・
「ちとせのリンク率が平均値よりだいぶ上がっているな、何かやる気の出るようなことでもあったか?」
「さあ?」
やる気の意味が少し違うかもしれないが、彼女の中で解決しているから良い・・・のか?
「よし、紋章機は発進、敵の指揮官がいるはずだ、旗艦を撃滅する!」
『了解!』
「みんな、頑張ってくれ」
「うむ、期待しているぞ」
「って、ええぇっ!? シヴァ様!? いつの間に・・・」
あまりにも突然の登場に、おもわず某ゲームの8に出てくる元山賊のポーズをタクトが取る。
シヴァの横にはルフトがバツの悪そうな顔で立っている、相変わらずノアの姿は見えない。
「タクト、聞けば先日の敵、エオニア軍の残党と言うではないか・・」
「それは・・・お耳の早いことで・・・」
「目を泳がせるな、これは私にも十二分に関わりのあることだ、せめてブリッジにいるくらいは構わぬであろう?」
いつも以上に真摯なまなざしを向けられてはさすがに部屋にもどれとも良いづらく、ブリッジにいることを許可した(別にタクトが偉い訳じゃないけど)。
「取りあえずそこのいすに座っていて下さい」
「うむ、戦闘の邪魔はせん」
シヴァの言葉にタクトは肯き
「紋章機、発進!」
『了解!』
今度こそエンジェル隊は発進した、素速くトップスピードに乗った紋章機は、敵艦隊の中心に向かった。
再びブリッジ
「紋章機の前方にドライブアウト反応、七つ!」
「タクト!」
「なんなんだ、いったい?」
戦いの途中での増援ならともかくまだ一発のミサイルも放たれていない状況だ、タイミングを間違えたのか、それとも・・・?
ドライブアウトしてきたのは形状が全く同じ型のMH六機、そして中央には漆黒のMHが一機、計七機。紋章機の数とぴったり同じである。
「こうして話をするのは初めてだな、タクト・マイヤーズ、そしてエンジェル隊」
中央の機体からエルシオールと紋章機に通信が入る、アルモに回線を繋ぐように指示するまでもなく、開いている回線に強制的に割り込みをかけてきた。
「その口ぶりだと、何処かで何か接点があるように聞こえるな。だけど、取りあえずこちらに見覚えが無いんだ、人違いじゃないかな?」
モニターに映っている男は、端整な顔立ちに狂気の表情を貼り付けた、そんな男だ。血の色をした紅い両目が異様に目を引く。
しかし男はタクトの軽口には構わない
「レナード・ミルガルドとは、以前一戦交えたことがあるのだがな、あの丘の上で」
まるで挑発をするかのような口調、レナードはレナードで、いつもの表情から一変、冷たい表情が浮かび上がっている。
冷たい表情を浮かべたままで、レナードが口を開いた。
「そちらの放った自動歩兵が思いのほか役に立たなかったようでこちらも楽だった、弾数の少ないレイザーガン一挺のタクト・マイヤーズに敗北する木偶人形ばかりだ」
「あれはあくまで試作品、〈姫君〉を殺さぬようにと命令すれば、それを重視するばかりタクト・マイヤーズを殺し損ねた役立たずよ。そして我らが貴様をしとめ損なったのは自動歩兵どもの作戦が失敗したから」
「言い訳が下手だな、銃も刀も持たない頃の私に勝てなかったお前達が、今の私に勝てるとでも?」
「うぬぼれるな小僧」
双方共に挑発を繰り返すが、やはりお互い冷静さを失ってはいない。いや、これは冷静と言うよりも冷酷なのではないだろうか。
「おいおい、二人で何の話を・・・」
レスターが割って入ろうとするが、その横でタクトが呟く
「あのとき・・・」
「ん?」
「俺がエルシオールに戻るきっかけとなったあのとき、俺とミルフィーを襲ってきた武装集団だ」
「!! 確かに・・・言われてみれば・・・」
「おかしいと思ったんだ・・・ヴァル・ファスクが攻撃を仕掛けてきたのに、普通の歩兵が使われているようだった。でもこの会話が真実だとすれば、あのときの連中はその自動歩兵とか言う奴らで、ヴァル・ファスクとは何の関係も・・」
「その通りだ、タクト・マイヤーズ」
唐突に話の相手をレナードからタクトにその男は変えてきた
「貴様の言うとおり、あの一件は我々の差し金。白き月に送り込んだ自動歩兵の試作品を使ったが、案の定失敗した。さすがに貴様らに見咎められるのは好ましくないので、機体自体は回収したが、あそこまで役に立たないとはな・・・。白き月でもエンジェル隊をしとめ損ない、姫君を奪い損なった」
淡々と語る男に、しかしタクトは疑念の視線を向ける
「その、姫君というのは何だ!」
「ミルフィーユ・桜葉・マイヤーズ。門を開くための鍵となり、時すらも動かす我らが姫君」
あらゆる言葉に、この男の感情など存在しないのだろうか?
「門? 時? おまえは何を言って・・・」
「貴様らが知る必要はない、姫君以外は殺して構わん、やれ」
『はっ』
その瞬間、脇に控えていた六機のMHが動く。
人型兵器であるMHの利点は武器の取り扱いが多彩であること、そして小回りがきき汎用性が高いこと。
六機のMHが直進し、紋章機に突っ込んでくる。しかし、持ち前の機動力でとっさに応戦する紋章機の射線をかわし、紋章機に肉薄する。接触する直前で急に軌道を変え、アークエンジェルを除く六機に一対一で躍りかかる、紋章機の隊列が崩れ、ドックファイトに突入する。
タクトが既にそれぞれに指示を出しているが、タイミングを合わせて艦隊がエルシオールに攻撃を仕掛けてきた。
「くそっ、紋章機の援護は?」
「無理です! 全機敵MHと交戦中、こちらまで手が回りません」
「ミサイル接近!」
「回避運動! 意地でもかわせ! 砲撃手は手を休めるな!」
ドォォォォン
ズ・・・ン・・・
被弾し、エルシオールに鈍い音が響く
「くっ、先生! シヴァ様を連れて早く・・・ブリッジは危険です!」
「しかしタクト!」
イスにしがみつきながらシヴァが言うが
「シヴァ様はこの国に必要なお方です、ここにいて何かあっては・・・」
「しかし・・・」
「陛下、ここはタクトの言う通りに・・・」
ルフトもシヴァを説得にかかるが
ドォォォォン!
「きゃぁぁぁ!!!」
「ぐぅ!」
紋章機の援護もなく、完全にエルシオールは袋だたきにされていた。
「ちぃっ!」
ハッピートリガーは紋章機の中でも重量があり、細かい取り回しが苦手だ。そのため、高速移動をする敵は特に苦手なのだ。案の定ハッピートリガーの攻撃は当たらず、MHから放たれる弾は確実のハッピートリガーの機体強度を削っていく。
いや、ハッピートリガーだけでなく全ての紋章機が機体強度を削られている。
戦艦以上の戦闘力を持ち、戦闘機以上の機動力を持つ紋章機・・・だが
「エンジェル隊! MHは機動力はあるが紋章機に比べて圧倒的に撃たれ弱い! 連携して・・・」
「させんよ」
通信に割り込みをかけながら、中央にいた男がアークエンジェルに躍りかかる。
「あのときの決着、つけさせてもらおう」
「くっ・・・」
アークエンジェルはMHに変形する、機体下部に取り付けられている巨大な盾がアークエンジェルの左肩に取り付けられる。
「たとえ紋章機といえども、所詮は機械、我らの早さに敵うはずもない」
そう言う間にも紋章機の耐久力は削られていく、対照的に七機のMHには傷一つ無い
「斬!」
中央にいた男が叫ぶと、一斉に六機のMHが刀のような物を取り出し、ヴァニラの紋章機を斬りつける。
「はぁっ・・・・」
強い衝撃で、コクピットが激しく揺れる。ヴァニラの額からは血が流れ始めていた、ナノマシンで治療を行い、すぐに血は止まる、揺れの時に何処かにぶつけたのだろう。素速く紋章機の修理を始めようとするが、
「ハーベスターを滅せよ」
男が言えば六機のMHはハーベスターに躍りかかる
「くぅ!」
すると、なんとトリックマスターがハーベスターの前に出る、自機の機体強度にまだ若干の余裕があると見ての行為だろう。しかしそんなことには構わずMHはトリックマスターに攻撃を仕掛け、
「っっっ!!」
既に悲鳴が声にならない。
「トリックマスター、リンク率低下! パイロットの意識が、くぅっ」
ズゥゥゥン!
ドン!
「まずい、どうすれば・・・」
今まで数々のピンチをタクトは乗り越えてきた、しかしそれは全て、紋章機の単体戦闘能力に頼ってのことだ。あの七機のMHは素早さで紋章機を圧倒している、撃たれ弱いという弱点は予想できるが、一機として追いつけないのではどうにもならない。つまりは、少なくとも今あのMHは紋章機より強い。
「エルシオールは全砲を乱射! いったん後退する! シヴァ様も早く!」
「くっ・・・」
悔しそうに表情をゆがめながらも、ルフトと共にブリッジを出ようとする
そこで、
「さて、そろそろ降参する気になったかね?」
通信にまた割り込み、しかし今度はあの男ではない。そして前回声だけだったマーシー・ウキタケでもない。
「私は遺志を継ぐ者の代表、バリトン・カーノだ、これ以上戦っても無意味なのは分かっているだろう。大人しく降伏したまえ」
名前の通り、低いバリトンの声でしゃべる。確かに戦力差は圧倒的だ、だが、
「お前達の目的は何だ」
タクトがまっすぐにバリトンをにらみつける、だが、相手も別に動じた風もなく淡々と
「この期に及んで質問をするとはな・・・度胸があるのか、馬鹿なだけか。こちらは〈姫君〉を明け渡してもらえればそれで良い」
「俺の思いつく限りだと、姫君に一番近いのはシヴァ陛下かな? だけど陛下はもう女皇様だ、姫じゃない」
「既に彼から聞いているだろう、ミルフィーユ・桜葉・マイヤーズをこちらに渡したまえ」
「断る」
にべもなくタクトはそう答えた
「だろうな、陛下が気にしていただけのことはある」
「エオニアのことか?」
しかしバリトンはその問いには答えなかった
「我々はシヴァ・トランスバールには興味がない、白き月は放っておくつもりだ」
「シヴァ陛下に対して敬称なしか・・・ずいぶんと無礼な・・・」
「我らにとっての陛下はエオニア様だけだ」
「・・・なるほど」
妙に納得してしまった
「あくまで逆らうか、ならば構わん、撃沈するまで。〈姫君〉の紋章機を回収すれば済むことだ」
そう、以前のエオニアとの戦いではエルシオールの中にいたシヴァを奪うため、幾度となく降伏を呼びかけた。しかし今回は、欲しい物が堂々と目の前においてあるも同然、状況が違う。
「くそっ」
通信もとぎれ、止んでいた攻撃がまた再開される。バリトンとの会話の間も、必死に打開策を考えていたのだが、どうあっても勝てる作戦が見つからない。敵が強すぎる。
「シヴァ様! 脱出ポットに・・・」
ブリッジから出るタイミングをバリトンの通信で失っていたシヴァは、しかしタクトの言葉に対し
「馬鹿を言うな! 私だけ逃げるなど、出来るわけが・・!」
「敵は今回シヴァ様を狙っていません、ここならミリエルス重工のコロニーで拾ってもらうことも出来るでしょう」
「そう言う問題ではない!」
シヴァは叫ぶ、
「私は共に戦ってきた友を失いたくはないのだ! 友をおいて、どうして逃げられようか!」
「シヴァ様!」
「その位にしておいて下さい・・・」
ブリッジにレナードの声が流れる、いやその声は紋章機にも聞こえていた。
「予定よりもだいぶ早いですが、仕方ありません」
「レナード、何を?」
何を言っているのか?
「レナード・ミルガルド!貴様は・・・」
「黙れ!」
殺気のこもった一声と共にアークエンジェルは敵MHを蹴りつける。
レナードはアークエンジェルのパネルを操作、オープン回線(全ての機体に通信が流れるようにする、救難信号もこの一種)を開く
「最優先命令! 光学迷彩解除! 全砲門解放、敵艦隊の殲滅を開始せよ!」
『アイ・サー!』
レナードの突然のセリフに、どこからか複数のこえが応える
次の瞬間に劇的な変化が起こった、エルシオールのレーダーに新たに複数の艦影がとらえられた。暗い宇宙にシミが出来るかのようにして出てきたのは、二隻の巨大な戦艦。
「なんだ!? どこから現れた!」
「クロノ・ドライブではありません! 文字通り突然現れて・・・」
「そんなことが・・・・」
ココとレスターがモニターを見つめている、アルモも、
「副司令! 味方とも敵とも識別コードが違います!」
「何だって言うんだ・・・」
どぉぉぉん!
ずぉぉん!
「今度は何だ!?」
「二隻の艦がエルシオールの周りの艦を攻撃しています、なんて圧倒的な火力なの・・・?」
エルシオールのブリッジが混乱に陥る。二隻の艦から放たれるのは、強力なレーザビーム、異常なまでの早さを見せる高速ミサイルなど、通常の皇国軍の装備ではあり得ないほど高度な技術を有していた。
「エルシオールは取りあえず後退! 紋章機は何とか敵を振り切って」
「あ、マイヤーズ司令! 敵MHと複数の正体不明のMHが戦闘を開始、あの二隻の艦から発進したものと思われます」
「ええっ!?」
さっきから驚いてばかり
「それじゃあ景気よく一発目!!」
二隻の戦艦の内、〈スキーズ・ブラウニル〉から発進したMHのうち長銃身ライフルを持った機体が紋章機と戦うMHの一機に銃口を向ける。
宇宙空間なので撃った機体以外に音は聞こえないが、マズル・フラッシュと共に打ち出されたレールガンの弾は、トリック・マスターにとどめを刺そうとする直前に、持っていた刀型の武器を撃ち抜かれた、続く第二射で右腕を撃ち抜かれ、中破した機体は後に下がる。
「くぅ、隊長!」
「狼狽えるな」
正体不明の敵が突如として現れたにもかかわらず、あくまで男は冷静だった。
男男と言っても分かりにくいので、これからは隊長と呼ぼう。
「翼すら無き紋章機は敵にあらず、先に奴らを倒す」
紋章機を無視し、残りの機体が隊長を中心として正体不明のMHに向かう。
「何なの? このMH」
「正体・・・不明です・・・・」
紋章機のコックピットで誰かが呆然と呟く、既にしゃべった本人も何を言ったか分かっていないのかも知れない。
「くそっ、舐められたもんだねぇ」
フォルテが背中を撃とうとして―――やめた。
卑怯だからとか言う以前に、下手すれば自分たちを助けてくれたMHも攻撃しかねない、お互いのスピードが尋常ではないのだ。
先ほどまで自分たちと戦い、苦しめていたはずのMHを互角かそれ以上の戦いをするMHたち。突然現れた灰色の機体の数は敵の数に合わせたのか七機、持っている武装を除けば機体の外見は告示している。ただしそのうち三機だけが、頭の形が違っていた。
「大丈夫かな? 俺の天使ちゃん。あ、そうそう、俺の狙撃どうだった? たしか黒髪の美人さんが狙撃の名手だって・・・・」
『は?』
前触れ無く聞こえた軽薄な声、通信画面が開き美形な金髪の男が現れる。
どうやら戦いながら話しているようだが、あまりにも余裕がありすぎるのでは無かろうか。ちなみに着ている服は、つや消しの黒に数本のラインが入ったパイロットスーツだ。
「おー、やっぱり噂で聞くようにかわいい子ばっか、後でお茶飲みに行かない?」
「はぁ!?」
ただただ呆然とするばかり
「バーカ、何ナンパしてんのよ、少しはまじめにやりなさい」
「くだらない」
「うっせーよ」
金髪の男の横に若い女の顔と落ち着いた男の顔が現れる、初めの男と女は二十代くらいだろうが、三人目は三十代くらいだろう。
お互いに冗談交じりの会話をしながら、互角に戦う、常識はずれのパイロット達
「くく、〈オブスティネート〉の犬共か・・・」
「犬は犬でも猟犬だぜ、とびきり獰猛な!」
灰色のMHの内一機が隊長機に躍りかかる、隊長の機体は攻撃をかわすが、そこに散弾砲が叩き込まれる。
「ぬう・・・」
男がうなる、それに、
「よそ見をするとはな、戦場では命取りだ、次は胴体を吹き飛ばす」
三人目の男が落ち着いた声で言った。散弾砲を至近距離で叩き込まれたのだ、直撃すれば即死だろう。
「退却」
男が言うと七機全てのMHが集まり、あっさりとクロノ・ドライブで逃走する
「あ、こら!」
「逃げるな!」
「ケツも拭かずに逃げるなよ・・・」(お下品)
エンジェル隊並みに軽いノリで戦う謎の集団、その正体は
「無論〈オブスティネート〉です」
エルシオールの格納庫に戻ったレナードは、事情を聞いてくるタクト達に対してそう答えた。
「詳しい話は、向こうの艦で聞きましょう」
レナードが落ち着いた声でそう言うと、二隻の艦の内〈スキーズ・ブラウニル〉がエルシオールに近づいてきた。
「あの、マイヤーズ司令、接近中の艦から操縦をこちらに回せと言ってきているのですが?」
「なに?」
「そんなこと出来るわけがないだろう」
にべもなくダメだしする二人だが
「おねがいしますよ」
否定的なタクトとレスターに通信でレナードが呼びかける
「話をする場所をセッティングするだけですから」
「・・・わかったわかった、まったく・・・・」
渋々操縦系統を解放すると、二隻の艦の相対速度が合わさっていく。
「ドッキング?」
「あの艦、〈スキーズ・ブラウニル〉はエルシオールに合わせて設計し、宇宙空間でドッキングして、双方を行き来できるようにしたんですよ。もう一隻の艦、〈ギャロップ〉にもその機能があります」
言う間にも、エルシオールのハッチに合わせて通路のような物が伸び、完全にドッキングが完了する。
「ハッチを通って、〈スキーズ・ブラウニル〉に乗り移って下さい、出来ればエンジェル隊の皆さんもつれて」
不信の色を隠せない二人だったが、結局は了承しエンジェル隊と共に(ミントもナノマシンですぐ治る程度の怪我なので同行)もう一隻の艦〈スキーズ・ブラウニル〉に乗り込んだ。
「ようこそ、〈スキーズ・ブラウニル〉に、我々はあなた方を歓迎します」
にこやかに出迎えるレナードに対して真っ先に飛び出すのはやはりランファ
「歓迎以前に! とにかく事情を説明しなさい! 事情を!!」
「むぅ」
微笑は崩さずにレナードがうなり
「まあ、説明の前にここにいるメンバーだけでも紹介しておきましょうか」
言うとレナードは振り返る、
「お疲れ様でした、ミルガルド司令」
セレス・キミットが感情の希薄な声でそう言った
「ありがとう。彼女はセレス・キミット大佐、私の秘書官兼スキーズ副艦長です」
それから、とレナードが首を巡らせ
「お帰りなさい、レナード君」
「いい加減君付けで呼ぶのはやめてくれませんか? 同い年な訳ですし・・・」
「あら、貴女が私にさんをつける限りこれは変わらないわ」
「はいはい・・・こちらがオブスティネート副長の神楽坂蒼乃少将です。皮肉が得意な優秀な副官です」
「(そりゃレナードもだろ)」
〈オブスティネート〉のメンバーも含めた全員がそう思った。
「さて、詳しい話はミーティングルームあたりで話しましょう」
オブスティネート側の人間は、レナード、セレス、蒼乃の三人だけ。エルシオール側の人間が圧倒的に多い、不安をあたえないようにとの配慮だろう、スキーズの通路は硬質な床といくつものドア、等間隔で消火装置や通信用パネルなどの設備がある。
「ねえ、さっき艦内案内図とか貼ってあったわよ?」
「ああ、来客の方が道に迷うと困りますから」
「(来客!?)」
「いるのか?」
タクトが本気で質問すると
ポン、と手を打ち
「ああ、そうか」
言うとレナードは皇国軍のロングコートからクラッカーを取り出す。セレスと蒼乃も同様にクラッカーを取り出し
パンッパンッパンッ
「初のお客様です! テープカットはありませんが、後で記念品を・・・」
「この妙なノリはある意味エンジェル隊を超えるな・・・・」
頭を押さえながらレスターがぼやくと
「一緒にしないで頂きたいですわね」
「変わらん変わらん」
ミントとレスターが掛け合い状態に陥り
「だいたいこの艦って何なのよ」
「全長1021メートル全幅202.4メートル。クロノストリングエンジン12基搭載・・・」
「12基!?」
「あり得ないだろ・・・」
との反応を最初から予想していたかのように、レナードは歩きながら
「クロノストリングエンジンは本来そのエネルギーを引き出すことが極端に難しいのです。そこでエンジンを並列化することによってエンジンを起動させる確率を上げているのですが、そうすると反比例するかのようにエンジンの出力が落ちてしまうのです」
ちなみに科学的に見ると、宇宙空間では空気抵抗がないので、全ての物体はある一定の速度まで加速が可能なのである、つまりは最大速度というのは長い間エンジンを前回にして推進力を出していればいつかはたどり着けるのであって、紋章機レベルの出力ならば、大した時間も掛からず皆同じ速度に収まることになる。(無論GAでは無視)
「そこで、オブスティネートの研究部が考えたのが、《下手な鉄砲数撃ちゃ当たる計画》というもので・・・どうしたんですか?」
計画名を発表したとたんエルシオール組が全員床に倒れ込んだのだ、いや、ミルフィーユとヴァニラだけはそのまま、変わりにナノマシンペットが床の上で痙攣している。
「あれ? みんな、どうしたの?」
「あんた、こんな下らない状況で、よく平然としてられるわね・・・」
「???」
ミルフィーユとランファのバカトークには構わず次の質問をぶつけるのは
「で、この艦にはだいぶEDENの技術が使われているようだけど?」
『ノアァァァ!?』
「最近出番がないと思ったら、あんたいつの間に居たんだい?」
「ノアさん、引きこもりだったのですか?」
フォルテの的確なツッコミと意味不明なちとせのツッコミ、と言うかちとせおかしい
「別に、私は私の研究意欲がそそられる物にしか興味がないの」
物憂げな表情でノアが言う、
「だいたいからして、わたしは白き月で色々と忙しかったのよ。こんな下らないことにかかわっている暇はないの」
「・・・・・・・・・」
沈黙
「・・・・まあ、この艦に採用されているエンジンの方式はリボルバー・エンジンシステムと呼んでいます。たしかGA本編でも解説されていたと思いますが、クロノ・ストリングエンジンの並列化数が低いと出力が上がります、その代わり機動確率は下がる。そのため、12基のエンジンをリボルバー拳銃の弾倉に込められた弾のように配置、12もエンジンがあれば一つや二つは起動するだろう、そんなコンセプトで作られています」
「適当な・・・」
「次にノアさんの指摘ですが、ライブラリから発掘した技術をMHや装甲板、ミサイルなどに使用しています。詳細は機密事項につき話せませんがね」
「何かやましいことがある・・・とか?」
タクトがさらりと言うと
「はい」
レナードがあっさりと応える
「いや・・あの・・・」
「皆さんをだます形になったことは謝ります、ですからこちらもある程度誠意を持って謝罪し、信用を得ようと考えているわけですが・・・」
と、そこでいったん言葉を切り
「ですが我々にも限度があります。話せること話せないことはあるのです、そこは分かって頂きたい」
「まあ、それは良いけどさ」
意外とあっさりと追求をタクトは諦めた
「どこで説明をしてくれるのかな?」
「ミーティングルームです」
スキーズ・ブラウニル―――ミーティングルーム
楕円形の机にレナード、セレス、蒼乃の三人が腰掛け、数人分席を空けたところからエンジェル隊とタクト、レスターが座る
「さて、それでは今回の一件の説明を一から始めましょう」
1.敵は一体誰なのか
「皆さんが分かっているとおりに、今回の敵はエオニア軍の残党です。
更に敵の使用しているMHはどうやら戦時中から繋がっていた企業が開発した物のようです。戦艦も同様なのですが、まだどの企業なのかは特定されていません。首謀者はバリトン・カーノ、戦時中は主に第四方面の制圧に向かっていたようです」
「出番ゼロねぇ・・・まあオリキャラだし、しかたないか」
とフォルテが呟くと
「あ、司法部はまだよく分かっていないので説明しませんよ」
『(バレてたぁーーー!?)』
2.事件のあらまし
「彼らが初めに動き始めたのが数ヶ月前、白き月を襲撃した自動歩兵(あのロボット)のプロトタイプです。幸い機能が低いため、タクトさん一人で何体か倒せたわけです、最終的には私の能力で倒しましたがね。ちなみにその時、タクトさんを助ける前ですが、先ほど襲撃してきた七人と戦いました。
あの丘でタクトさんを抹殺、エンジェル隊の戦闘能力を削ぎ、ミルフィーユさんを奪おうとしていたのでしょうけど、失敗したらしたで何ヶ月も何処かに身を隠す、気の長い話です」
「能力って言えば、レナードの能力って使えないままなの?」
「ええ、残念ながら」
表情を変えずにさらりと言う、皆さんは分かっていると思うがウソである。
3.オブスティネートについて
「皇国軍の一部という情報を流したり、誤情報を大量に流してごまかしていますが、実際には独立した一個の機関となっています。小規模なゲリラ活動、クーデターの鎮圧、表沙汰に出来ない事件を秘密裏に処理する特殊部隊、それが〈オブスティネート〉です。
先ほど皆さんを援護したMHは新型で、このような通常兵器を扱う戦闘部隊と、私の様な特殊能力者を集めた部隊が合わさって〈オブスティネート〉が作られています」
「いや、特殊能力者って、結局どういう事だ?」
「あれ? 私の能力を説明した時のでは足りませんか?」
「全然」
「説明するときりがありませんから、単純に普通の人とは違う変わった人とか思えば十分です」
「そう言うもんか?」
4.エンジェル隊の司令官になったのが怪しいなぁ
「すみません、実のところあれは父様、ディルス・ミルガルドからルフト将軍に伝えてもらいエンジェル隊の司令官にわざと推薦してもらったんです。まあ、紋章機は本当に偶然あやつれたのですが。
エンジェル隊の戦力がどの程度のものかを計るためには、データだけでなく実際にこの目で見るのが一番だと思いまして。」
「通りで初めてあった時からあたし達の名前を知ってたわけね・・・」
「データは全て調査済みです」
5.で、まとめると
「以上で終わりです、何か質問はありますか?」
「はい」
「はい、タクト君」
タクトはイスから立ち上がり
「能力者って結局どういう人間なんですか?」
との質問に、レナードはウンウンと肯き
「それは先ほども言ったように説明するには時間がありませんから、読者も長い文章読んで疲れると行けませんし。というか、もうこの文章だけで疲れそうですし」
次の人
「はい」
「はい、ランファさん」
「あのナンパ男達は誰ですか?」
「MHのパイロットについては次回です」
「おい」
「次の人?」
三度手が上がると
「はい、レスターさん」
「何でお前達は初めから協力しようとせずに、あのわけの分からん透明化機能で隠れていた?」
もっともな質問、しかしやはり表情を変えないレナード、笑みを浮かべた状態からどんな質問にも答えるあたり、かなり腹芸の出来る男だ。
「予定では、エルシオールが何度も敵の追撃を振り払い続け、業を煮やした敵が大艦隊を送りつけてきたところで我々が側面や背後を突いて一気に殲滅、敵の戦力大幅に削ぐという予定だったのですが・・・・」
と、呆れたようにわざと(あえて強調)肩をすくめてため息までつき
「予想以上に皆さんが弱かったというか何というか・・・まああの七人組が出てきたから仕方ないと言えば仕方ないような・・・紋章機では相性が悪いですからね・・・」
と口では言いながらも本気の落胆ぶりはにじみ出ているのが感じられた
「まあ、皆さんも今日は疲れたでしょう、ミリエルス重工のコロニーで修理をしますから、ドッキング解除後、ドックに入って下さい。他の説明はまた明日と言うことで」
落ち着いて話を切り上げた後、来館記念の粗品を持たせてタクト達を送り返した、それとすれ違うかのように、いつの間にかオブスティネートの隊員がレナードの荷物を詰めた段ボールを運び出していた。
「予定よりもだいぶ早まったから大変だ・・・次回もまた、説明から始めることになりそうだな・・・」
「はい、ですがのんびりしている時間はありません。司法部が動き出したという情報が入りました」
セレスがレナードに対してやはり淡々と言う、後では壁により掛かり蒼乃が
「レナード君の言うとおり、三つ巴は確実ね」
「困ったものですよ・・・」
口調とは裏腹に微笑を浮かべるレナードの目には、いくつもの設計図が映っていた。
画面に映る数々の設計図、
Black moon
Sleipnir
Gravitaty Blast
Pogetoron Canon
「さあ、これからが本番だ・・・」
つづく
【あとがき】
オブスティネートの説明が長い!!
相変わらずこういうのは苦手な蒼穹一です。 ついに登場、読者の皆さんはおわかりなスキーズ・ブラウニル(略称はスキーズ)とギャロップの登場です。オリキャラ達の数も増えてきて、私は書きわけるのが大変です。(自分のことを私と呼ぶ奴が二人いたり、口調がほぼ一緒の奴が居たりすると、いちいち誰が言ったの何だのと書かないと分からなくなる)さてさて、次回もいきなり説明会が始まる予定なのですが、果たして読みやすい文章ができあがるのかどうか責任が持てません。(コラコラ)
それにしても、読み返してみるとこのシリーズ、なんだか一番初めの話と書き方が変わりすぎて自分の変化が大きすぎるのを感じます、統一感というか・・・ああ、それじゃあ少し加筆修正をするかなぁ? ねえ、どうしたらいいと思います?(誰に聞いてるんだ?)
それでは次回もあとがきでお会いしましょう
小説(2)のほうにこの作品が入ったかぁ、当初の予定ではこんなにオリキャラ活躍しないはずだったのに、エンジェル隊も活躍してもらわないと困るよ、と思うあとがき
(長いよ・・・)
【次回予告】
タクト「あれ? ついに次回予告の人がいなくなったよ?」
ミルフィーユ「あ、じゃあここで好きなだけしゃべっても良いんですね?」
タクト「いや、好きなだけって訳じゃ。まあいいや、それより俺たちは夫婦なのに本編じゃそれらしいところが一つもないのが不満」
ミルフィーユ「そうですよね・・・私も料理をしているシーンが一つも」
タクト「そう言えば食事をしているシーンがないけど俺たちって飯食った!?」
ミルフィーユ「あ、そう言えばおなかがすいていたのに食べるシーンが一つも、後ケーキ」
タクト「って、何かそんな話押していたら空腹が収まって、何かコロニーで食事をしているシーンが頭の中に!? き、記憶が改ざんされていくぅ!?」
蒼穹「すみません、忘れてた」
タクト「なんでだぁぁ!!」
蒼穹「次回【以卵投石は防がねば!】」
タクト「無理矢理終わらせるな!!」
ミルフィーユ「ケーキ・・・」
タクト・蒼穹「・・・・・・」
おまけ
「ところで、レナードの好きな人って誰よ」
ランファが好奇心がにじみ出るような瞳でレナードを見る
「あの、ランファさん・・・あまりそう言うことは詮索しないで欲し・・・」
「何よっ! 人のことはさんざん聞いてきたくせに!」
「いや、そんなことありませんでしたから」
「ひどいっ! あの夜のことは遊びだったのね!!」
「いつ!?」
などと漫才をやっているところに
「レナードさんの好きな人ってランファ先輩!?」
「ちとせさん〜〜!? 違います! 勘違いは・・」
「じゃあ、誰なんですか!?」
「それは・・・」
ちとせから視線を外す、そこに廊下の先からレスターが歩いてきて
「お前ら、廊下であんまり騒ぐな。それよりレナード、スキーズに荷物を運び終えたから部屋にきて欲しいと言っていたぞ」
「え、ああ、分かりました」
と、視線を合わせる二人を見て
「男同士!?」
「何がだ!!」
「いきなり何を言い出すかと思えば・・・ランファさん。そう言う冗談は笑えな・・・」
「笑えません! 泣きます!」
「ちとせさん!?」
「よくよく考えてみれば、クールダラス副司令がいつの間にかレナードさんをファーストネームで呼んでいること自体不自然です!」
とちとせが力説
「確かに・・・」
「いや、それはだな・・・」
「相手は中将という階級なのに! そんなにフランクに話すなんておかしいと思ってた・・・」
「いや、いろいろとあって」
「色々!?」
「その色の部分を詳しく!」
「いい加減にしろぉ!!」
ソロソロ
すぅーーー
数分後
「はぁはぁ、いい加減にしろ・・」
「はぁはぁ、叫びすぎで息が続きません・・」
レスターとちとせが肩で息をして、まだ少し余裕のあるランファがまた何か言おうとしていったん言葉を止める
「どうしたランファ」
「先輩?」
「レナードがいない!」
「逃げたぁぁぁぁ!!!」
「事の張本人の方がいなくては話しになりません!!!」
「結局副司令とレナードの関係はどうなのよ!」
「しつこい!!」
レナードとレスターの関係はどうなのか!? 次回その真実が・・・
「何もないと言っているだろうが!」
以卵投石 無駄で利益のないこと、損害ばかりで利益にならないこと