ギャラクシーエンジェルBeloved lovers

 

【日常坐臥を取り戻すため】

 

エルシオール―――ブリッジ

「オブスティネート艦隊に合流しました」

「よし、高速指揮リンクシステムに艦隊を登録」

「了解」

「オブスティネート艦のスペックを出してくれ」

「了解」

 

等々、エルシオールのブリッジはにわかに騒がしくなる。ここまで近距離になると更に詳しいことが分かってくるのだが、こちらの動きを察知したのか敵艦隊は更に増強され自動操縦艦を多数配置していることが分かった。

敵艦の中で数隻のみが有人艦、その他ほぼ全てが自動操縦艦。数に物を言わせる戦い方をしてくる裏にはこういう事情があったのだろう。

 

「う〜ん、スキーズやギャロップを見れば分かるけど、オブスティネート艦のスペックはやっぱり高いね」

「ああ、だからといっても、敵の数を考えるとこっちが不利だ」

いつになく真剣な表情でタクトとレスターが話す。

 

本星を衛星軌道上から砲撃して壊滅させたエオニア軍の反乱。

 

オ・ガウブによる攻撃で復興し始めた方面軍の一つを再び壊滅近くに持って行かれ、本星近くまで攻め込まれたヴァル・ファスク第二次侵攻。

 

幾度となく破壊力に物を言わせた攻撃を受けた本星が、今度は静かに裏で占領されていっているのだ。

このまま時間が経てばいずれは本星に潜んだ反乱軍が決起して僅かな時間で占領されるだろう。

今までのように圧倒的な力で攻めるというのではなく絡め手で来ているために、以前のやり方は通用しない。

 

黒き月やオ・ガウブ、ギア・ゲルンの様な物は存在しなくとも、後ろ盾(ローハイド)が用意する大量の艦隊はやはり驚異、物量での不利を覆す作戦を考える必要があるのだが・・・

 

 

「参ったなぁ・・・・・・安全な作戦は思いつかないや」

「絶対安全な作戦なんてあるわけ無いだろ・・・」

「いや、そう言う事じゃなくてさ・・・」

タクトが暗い表情になる

「エンジェル隊が危険にさらされるのは当たり前、オブスティネート艦隊に被害が出るのも覚悟してるってレナードは言ってくれたし・・・でもさ・・・・・・」

そこで天井を見上げて―――

「何でか今回自信がないんだよね」

「お前らしくもない」

苦々しそうな顔をレスターがすると

「だってさ・・・連中本星近くに・・・大型ミサイル仕掛けてるし」

 

本星にほど近い地点、とんでもなく大型のミサイルが設置されていた、数は1。

見立てではエルシオールが食らえば一撃で撃沈されるだろう、無論付近の艦も巻き添えにして。

 

「まさかあんなトンデモ兵器まで用意してるなんて・・・切り札のつもりかな?

「何にしてもだ、要はスピード勝負だ。電撃作戦で一気に相手の懐に飛び込んで破壊する。―――お前の指揮する作戦にしては珍しく力押しじゃないか」

はぁ――とタクトがため息をつく

「やるしかないよね・・・」

「・・・ああ」

 

 

 

スキーズ・ブラウニル―――ブリッジ

「司令、あと23:35(23時間35分)で作戦開始です」

「そうか・・・」

レナードは司令官席に座りつつ作戦図を真剣に眺めていた。

強力な敵の兵器を発見し、作戦の変更を余儀なくされた、こちらに気付かれずにあんなものを用意できるとは・・・どのような手品を使ったのか―――

「(敵はすでに何度か単独クロノ・ドライブを実現している・・・おそらくはそのあたりの技術で運び込んだのだろうが・・・あの七人組のMHが吸収してくる可能性もあるとむやみにつっこむのも・・・・・・)」

このような考えを巡らせながらもレナードは表情には出さないようにしていた、塀に不安を抱かせるわけにはいかないからだ、ある意味タクトも別の形でそれを行っている。

「(敵艦隊をどれだけ減らせるか・・・時間も足りない、状況がひどすぎるな・・・)」

しかし、それを言うわけにはいかない、とにかくレナードは

「敵艦隊を全滅させなくてはならない、全力でかかるぞ」

『アイ・サー!』

「(しかし・・・)」

―――敵の生身でのクロノ・ドライブ、あの技術を提供したのは軍需産業複合体ローハイドだろう。その技術で艦内に侵入されでもすれば敗北は必死―――味方のすぐ背後に艦隊を出現させることも可能だろう。そうなれば―――

「(スキーズとてひとたまり(・・・・・)もないか・・・)」

それに―――ミルフィーユを狙う敵の理由、時を操る姫君・・・このセリフが何かヒントに・・・

「とにかく、ラッキースターは守らなくては―――――」

 

 

 

作戦開始まであと約12時間

「ふぅ・・・さすがに緊張してきたわね」

ティーラウンジ、ここで一度集まって心を落ち着けようとしたのだが、集まっているエンジェル達の顔はどうにも優れなかった。

「白き月の周りはだいぶ重点的に固めてありますから、今までにないほどの混戦になりそうですね」

「ここまでややこしい戦いは始めてよ。ただの戦争じゃなくて、複数の思惑が絡み合って……そんなに平和が嫌なのかしら―――」

ちとせとランファがぽつりと呟く、どうにも表情が暗いのはともかくして、紅茶も冷めてどうにもお茶会という感じがしてこない

「あ、ところで・・・ミルフィーはどこ行った?」

ふと思い出したようにフォルテが言うと、ミントが

「たしか・・・タクトさんの所に―――」

 

 差し入れを持っていくそうですわ――――――

 

 

「ゴメンねヴァニラ、運ぶの手伝ってもらっちゃって」

「いえ・・・問題ありません・・・」

トテトテトテと通路を二人が歩いている、トレイの上にはブリッジにいる全員分の軽食がのせてある、サンドイッチと飲み物、揚げたてのドーナッツの上にチョコレートがとろりとかけてあって何とも美味しそうだったりする。

 

ブリッジでは現在ウンウンと呻って効率の良い作戦行動を考えているタクトとレスターがいるのだが、もちろん二人はそのことを知らない。

迷惑にはならないとは思うが・・・

 

 

 

エルシオール―――ブリッジ

 

シュン

 

音を立ててブリッジの扉が開く、まだああでも無いこうでも無いと喋っているタクトとレスターの邪魔をしないように、二人の横を通り過ぎてこことアルモにトレイを渡しておく。

「あら、おいしそうね・・・ありがたく頂くわ」

「ありがとうございます、ミルフィーさんヴァニラさん!」

お礼を言ってもらってミルフィーユも微笑んで

「みなさんで食べて下さいねっ☆ あ、タクトさんは・・・」

「司令はもうしばらく無理そう、待っています?」

「あ、いえ、邪魔になっちゃ悪いし・・・行こっヴァニラ」

「・・・失礼します」

丁寧にヴァニラがお辞儀をし、早足で立ち去っていくミルフィーユの後を追う

「ミルフィーユさん、司令のために作ったのにね・・・」

「それが司令の仕事だもの・・・でも・・・」

ココとアルモがミルフィーユの背中を見る

「ちょっと可哀想よね・・・」

 

 

 

ポンポンポン

きらりと刃がひらめき、鞘に戻る。

大和がしまわれると今度は撫子、皆さんの想像通りにレナードがスキーズの発令所で暇つぶしに刀に打ち粉をしていました。

ポンポンポンポンポンポンポン

「司令、発令所で打ち粉はしないで頂きたいのですが?」

「セレス・・・艦隊戦の後・・・本星に降り立った後が正念場だ、刀の手入れは欠かすわけにはいかないからね・・・」

「それとこれとは事情が違います」

「まあ、そうなんだけど・・・・・・これは秘密兵器の出番かな?」

陽電子砲(ポジトロン・キャノン)の調整は問題ありません、ダミーの準備も完了しています」

「うん、問題ないね」

「アイ・サー」

「あとは、時空歪曲場(ディストーション・フィールド)重力波砲(グラビティ・キャノン)か・・・」

「その二つは未完成です、少なくとも今回の戦いには」

新王馬(スレイプニル)のためだけど、一発限りの兵器としては有効だ・・・最終決戦には間に合わせたい」

「急がせます」

 

 

 

 

作戦開始まで・・・・・・後――11時間32分

 

 

 

 

エルシオール―――ブリッジ

「あ・・・」

 

モフモフ

 

ファヒ(はい)? ファンフェフハ(なんですか)?」

「何食べてんの?」

ミフヒーハンホホーハッフヘフ(ミルフィーさんのドーナッツです)

 

モグモグ

 

「ミルフィーのドーナッツ!?」

「お前はお前で何で分かるんだよ・・・」

レスターがツッコムがタクトはそんなことお構いなしだ

「俺の分は!?」

「ちゃんとありますよ、ここに・・・あれ?」

ココのこめかみを汗が一筋・・・

「ど・こ?」

タクトの顔が怖い

「えっと、はっ、まさかアルモ!?」

 

ブンブンブンブンブン

 

首がもげそうな勢いでブンブンと横に首を振る。

「他の人?」

 

ブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブン

 

同じようにとんでもない勢いで首を振るブリッジの人たち。

「なら・・・だれが・・・」

 

 

タイトル改【事件発生! ドーナッツを盗んだ犯人をぶち殺せ!】

 

 

「だぁぁぁれぇぇぇだぁぁぁ!!??」

ガオーガオー

目に復讐の炎を宿らせてタクトは暴れまくる。

すぐ側にいたレスターも急いで飛び離れ、他のオペレーターもイスにしがみついて震え出す。

「た・・・タクトが暴走した・・・」

「副司令」

「なんだ!?」

「犯人は――――――あれです」

ココがピッと指さす

 

ミュー

 

「子宇宙クジラ・・・クロミエの奴は何を・・・」

苦々しそうに呟くレスターだが、タクトは既に子宇宙クジラに視線を向けていた。

子宇宙クジラの口にはドーナッツのカス、言い逃れ不可能! そもそも意思疎通不可能!

 

ミュ?

 

「ククク・・・まさかこんなところで貴様と決着をつけることになろうとはね・・・」

 

ミュミュッ?

 

「ドーナッツ返せぇ!!」

おりゃぁぁぁぁ!!!

と声を上げて子宇宙クジラに飛びかかる、オペレーターはあたふたと逃げ回るばかり。

『あ、お〜いタクト、ミルフィーそっちに行ったって・・・おい? タクト、何やってんだい!?』

フォルテが通信をしてきたのだが・・・異様な光景で目を見開く。

「返せぇ!!!!」

ミュミュミュッ!?

いつになく真剣な(使い道を間違ってます)表情で戦い始め、なんと子宇宙クジラを取り押さえた。

「返してくれぇ!」

ミュミュミュ!?

じたばたと子宇宙クジラが暴れ出し、タクトがいきなり泣き出して―――

 

シュン

 

「追加持ってきました〜!」

いきなりミルフィーユとヴァニラが現れてトレイに乗せた大量のドーナッツ・・・

「よかった、おいタクト! クジラ苛めは止めて入り口を見ろ! エサだぞ!」

「人を動物みたいに言うなよ!」

タクトがレスターに向かって叫び、入り口を見ると

「あ、タクトさ〜ん!」

とミルフィーが手を振り

「ワンワンワンワン!」

「アホだ・・・」

タクトがドーナッツに飛びついた。

「とりあえず、後でタクトをしかるか・・・」

 

 

 

「で、ブリッジで馬鹿やって部屋の隅で「の」の字書いてる・・・と?」

スキーズ――――発令所

ジト目でモニターを見つめレナードはそう漏らした。

『ああ、まあ・・・あの馬鹿が更に馬鹿になっただけだが・・・』

「あんまり馬鹿馬鹿言わない方が・・・」

さすがにこめかみに汗が流れるレナード、レスターは口で言うほど怒ってもいないようだが。

『今更だが、ミルフィーはあいつの女房だったんだよな。で、愛妻弁と・・・愛妻ドーナツを取られて怒ったと・・・なんだか怒るべきか怒らざるべきか―――まあもう怒ったがな』

「ま、まあそうですね」

『何にしても、これから戦いに行く奴のする行動じゃないな・・・』

レスターのため息と、レナードの苦笑、お互いが交錯し・・・

「ですが、そうやって場の雰囲気を暗くしすぎないようにしただけだと―――」

と、そこで画面の後でタクトが何故が「ジャーマンスープレックスホールド」をランファにかけられていた。

「あ、そのまま3秒ホールドすれば勝ちですよ」

『レナード・・・煽ってどうする・・・』

「あはは」

『ごまかすな』

 

 

 

エルシオール―――ブリッジ

座談会

「さてみんな、なぜここに集まったか分かっているかい?」

司会はタクト・マイヤーズでお送り致します

「さあ?」

「しらん」

「それよりさっきまでの会話とかはどうするのよ、オチとかついてないし」

「それより作戦はどうした作戦は・・・悩むのは終わりか?」

 

シャァァァラァァァップ(だまれ)!!!」

 

「それ、私のセリフです・・・・・・」

「別に良いだろレナード、説明する役があるんだから」

「はいはい」

バカトークはこのくらいにして―――

「まあ、とにかくさ」

場を仕切り直すためにタクトが再び話す

「作者も懸念していた事態が起こったワケだよ・・・」

「なに?」

オウム返しでランファが聞く

「設定が多すぎて読者が覚えていられない、そもそもこの話まで読んでもらえてるのかどうか分からない」

「後者はどうしようもないけど・・・前者はどうにかしないと・・・」

「そのと〜り!」

 

「と、いうわけで!」

 

 

第一回 一応話に整理をつけて、作者もすっきり、読者の頭もすっきり整理整頓しようじゃないかの会

 

『長っ』

「まあまあ、それじゃあ早速」

 

敵はだれ? どんなやつ? 説明してください

 

「説明しましょう!!!!!!」

「元気だなー」

レナードがやはり大きな声で画面全体に顔を出す

「さて・・・第1部第1章で敵の兵隊がタクトさんとミルフィーさんを襲いました、しかし実際には敵の開発した試作型自動歩兵でした。当時は大した性能がなかったのでタクトさんでも倒せましたが、先日出てきた最新型はレイザーガン一挺で戦おうとしないで下さい」

「もう戦いたくないけど・・・」

「さて、敵の自動歩兵を開発したのはおそらく軍需産業複合体ローハイド。ローハイドがエオニア軍の残党の一部に協力し、さらに皇国軍の中の不穏分子とも手を結びました。しかも不穏分子の中にはそれなりの高官も混ざっているらしく、事後処理のことを考えると頭が痛いです。

さて敵が用意している大量の自動操縦艦。これはローハイドの提供でしょう。第1部で出てきたヴァル・ファスクは一体どうして出てきたのか・・・設定はあるけどまだ発表されていません」

「そもそもこのシリーズ楽屋ネタ多すぎ・・・」

「そこ黙ってくださいね。さてと――――」

 

今後の展開

 

「既にオブスティネートの艦隊と合流したので、予定時刻になったら本星付近に侵攻し、敵艦隊を殲滅、最優先で白き月を解放します。白き月を解放した後には、エルシオールは白き月で修理、オブスティネート艦隊も同様に、エンジェル隊の皆さんには静かに心を癒してもらえる場所を用意して最終決戦に向けて休んで頂きます」

「へ〜」

「それは初耳」

「場所は?」

「秘密です」

人差し指を立てて口の前に持ってくる

このポーズ、似合ってる――――

 

そういえば・・・・・・

 

「今回の戦い、完璧にあたし達巻き込まれただけだけど・・・報酬とか慰謝料とかでないの?」

「あ、そういえば・・・」

レナードが考えて

「わたくしもタダ働きはいやですわね・・・」

「でも別に(むこう)のねらいがエンジェル隊であって、私たちの方が協力しているようなものですし。一応皇国軍から休暇と特別給与くらいは・・・」

『よし』

「最近私の立場、エンジェル隊の皆さんよりひどくなってません?」

 

「えっと・・・俺は?」

タクトが自分を指さして出てくると

「・・・・・・・・・・・・まあ、給料と休暇はあげます」

「うわぁ・・・俺って適当な扱いうけてるなぁ・・・・・・」

主人公なのに

 

 

 

で――――

作戦開始時刻まで後―――――0:48:26(0時間48分26秒)

『って、スグかよ!』

「格納庫まで来てから突っ込まなくても・・・」

クレータ班長が苦笑い

エンジェル隊の面々は紋章機に乗り込む途中。

さて―――紋章機の性能は、知っての通りパイロットのテンションで決まる、紋章機とのリンク率が物を言うのだが・・・

 

エルシオール―――ブリッジ

「あれ?」

アルモがモニターを見つめて疑問の声を上げた。

「どうしたアルモ」

タクトと話していたレスターが振り返ってアルモの方を見る

「あ、いえ、5番機と6番機のリンク率が少々低いようで・・・」

「ヴァニラとちとせ・・・?」

タクトが聞き返すとアルモが肯く。

「う〜ん?」

「テンション管理はお前の役目だろ? 何か原因は思いつかないのか?」

「全然・・・で、戦闘は?」

「戦闘には支障はないでしょう、ですが、反応速度も低下しますし、決戦前には、痛い損失かと・・・」

アルモが言うと、タクトとレスターが表情を暗くした。

「何が原因だ?」

「今回は俺にもさっぱりだ・・・」

 

 

原因――――レナードの過去の話。そして彼の思う人・・・

 

 

「まあとにかく・・・ギャグもコメディももう終わりだ」

「このサイトでギャグとコメディの判断基準を理解している奴は何人いるんだろうな」

「とりあえず蒼穹はダメダメなのは確か」

「司令も副司令も・・・シリアスモードに入るんじゃなかったんですか?」

『おっと』

 

 

モードチェンジ(既にこの文章自体がコメディ)

 

 

「作戦開始時刻まであと30分です!!」

「クロノストリングエンジンの出力をあげろ! シールドの最終チェック!」

「紋章機のリンク率をだします!」

「やはりハーベスターとシャープシューターのリンク率が低いな」

レスターがぽつりと呟く、だがタクトは

「低いことは低いけど、最近と比べると・・・だろ?」

「確かにそうだが、最終決戦前にテンションが下がるか?」

「本当の最終決戦はもっと後だけどね」

タクトが嫌そうな顔をする

「まあ確かにな・・・いや、そうじゃなくてだ―――」

「大丈夫、リンク率二人とも60%以上だし、戦闘中に上がってくれるならそれはそれでOKだ!」

「・・・・・・まあ、お前が言うならそれで良いが―――――」

「足りない分は指揮で補うよ」

「任せる」

ぶっきらぼうにレスターが言うと、オペレーターになにやら細かい指示を与えに行った。

「でも、俺の心の不安はNGだな」

誰にも聞こえない声で、タクトはぽつりと呟いた。

 

 

 

スキーズ―――発令所

MK−U、全機スタンバイ!」

起動(マニューバ)に問題ありません!」

「スキーズ、ギャロップともに出力安定しています。全武装オンライン」

オペレーターが様々な報告を返し、セレスがそれぞれに的確な指示を与える

「司令、全機能問題ありません、戦闘可能です」

静かに報告したのはスキーズの操舵手の少女―――異様に白い肌と薄い灰色の瞳。彼女の席の周りには、あの時のようにいくつもの環―――数式によるリングが浮かんでいる。これが全て戦場の情報であり、彼女が瞬時にそれを読み取っているのだ。

「全艦の戦闘準備が整ったようだ・・・」

レナードは席を立ち、

「スキーズ部隊! 全艦進撃を開始せよ!!」

 

 

 

「スキーズ部隊が発進しました!」

ココの報告にタクトは肯く。さて、念のためもう一度作戦をおさらいしよう

 

スキーズ・ブラウニルを中心としたオブスティネート艦隊の6割(42隻+スキーズ)は光学迷彩を使わずに堂々と真正面から進軍する。スキーズ部隊を迎撃しようと、敵艦隊が中央から進軍するスキーズ部隊に集中したところで、光学迷彩で隠れたエルシオール部隊とギャロップ部隊が両側から挟撃。(なお、エルシオール部隊とギャロップ部隊はそれぞれオブスティネート艦隊の2割ずつ、14隻が味方につく)そしてエルシオールはタイミングを見計らい白き月を解放する。

 

なお、スキーズ部隊には、ハリボテ―――エルシオール、ギャロップ、紋章機6機、MH適当な数を用意してあるので、傍目には敵の艦隊を突破して来たと思わせる。(つまり被害に構わず突撃して破壊優先と言う作戦のフリ)

 

「よし、エルシオール部隊も発進する!」

部隊の旗艦となるのはもちろんエルシオール、普通は堂々と全面か、一番後方でどっしり構えるかの二択だろうが・・・エルシオールに光学迷彩機能がないので他の艦に囲んでもらっているのだ。かっこ悪い―――

ちなみに今回エルシオールには秘密兵器装着! なんとスピード勝負のこの作戦のためだけに、【今回の作戦こっきりの使い捨て! スピードアップ・エルシオールブースター!】を装備! エルシオールの移動スピードはスキーズ並みにアップ!!! 作戦は絶対成功させよう!(ちなみに無茶して使うと壊れます、使用上の注意と制限速度は守りましょう)

 

作戦開始より10分(スキーズ部隊交戦開始から7分)

「スキーズ部隊優勢のようです・・・ですが、宙域の艦隊が一気に押し寄せています。戦力差は二倍強・・・・・・ですね。宙域の艦隊を全て相手にしたら4倍以上・・・」

ココがレーダーで敵を確認し、その恐ろしさを伝えた

「スキーズが今回一番危険だからな、そのためにも・・・俺たちが速やかに任務を遂行することが求められているわけだ・・・」

タクトが静かに目を閉じて

「いくぞ! 敵艦が戻ってくる前に、手薄な敵艦隊を撃破! 白き月を解放する!」

タクトが立ち上がり―――

 

 

「全艦戦闘開始!!」

 

トランスバール暦414年6月中旬、本星付近宙域にて決戦が始まった。

 

つづく―――

 

【あとがき】

エンジェル隊の大奮闘はまた次回! それじゃ!

       超高速で逃げに走るあとが――

あ、だめ? とりあえず今回は決戦前に色々と整理が・・・

とにかく次回で一段落つける予定なので、皆さんもうしばらくお付き合い下さいませ。

 

そういえばなんだかんだといつの間にか第二十回目を迎えています、やっぱり長いかなぁ? 短くまとめたかったんだけどなぁ? でも三十回とは行かないまでもあとそれなりに話数あるような・・・えっと・・・・・・1.2.3.4.5.6.7―――――あ、三十回行くかも・・・・・・ゴホンゴホンッ!

 それではまた次回のあとがきで!!

                      ホントごめんなさいのあとがき

 

【次回予告】

レナード「知ってますか? このシリーズ、第3部までやる気らしいですよ?」

ランファ「うわ、方々にご迷惑書けたこの作品、無理矢理そこまでやるかしら?」

レナード「さすがにそれで終わりらしいですけどね。まあ皆さんの出番は今後どんどん増やしていきたいと作者も言っていますし」

ランファ「やりすぎて話数だけならサイトナンバーワンになったりして」

レナード「本人としてはあんまり喜べないでしょうけどね」

ランファ「ところでここフリートークの場所じゃないような・・・」

レナード「え〜、それでは次回【懐宝夜行の作戦を決行】を宜しく」

ランファ「ご期待下さい」

レナード「期待に応えられるかどうかは未定」

ランファ「え゛?」

 

 

懐宝夜行―――宝を抱いて夜を歩く。つまり危険な行動の喩え

 

 

おまけ

作戦開始前のミルガルド家の一コマ

「ああ、お兄様と連絡が取れなくなってからどれだけの月日が経ったでしょう…私は一二位先週の思いで帰りを待っているというのに――――」

「大して経っていないだろう。家に半年以上帰ってこないこともざらだというのに、たかだか半月ほど会っていないだけで―――」

レナが窓辺で空を見上げて呟くと、冷めた目でディルスがツッコミを入れる。

「いいえ、お父様。お父様には分かりません……あのサラサラの蒼銀色の髪の手触りの良さ。ツルツル、スベスベ、プニプニの肌。意外と厚い胸板。あの声、吐息、仕草、そのすべてが愛おしくて愛おしくて…ああ!! 抱いて! 強く抱いてくださいお兄様!」

いろいろとアブナイ事を口走っているレナをみて、珍しくディルスは顔をゆがめて頭を押さえた。

「妹がブラコンなら、兄はロリコンか…」

レナードが聞いたらロリコンじゃない! と、そして9歳差だからまだセーフ、と言うだろう。

「まあ――――」

ディルスは窓から空に目をやった・・・・・・

「あいつの心が晴れるなら、あいつが認めた女なら、それでもかまわんがな………」

「あ…そ、そこはだめ! 恥ずかしい…アアーーッ!」

「アホだ―――」

しばらくディルスは頭を抱え、レナは身もだえまくったという。

 

 

キャラクター解説

NO.2

神楽坂蒼乃

身長−175センチ  体重−53キロ  年齢−23  誕生日−2/19  血液型−AB型  階級−少将(スキーズ・ブラウニル副官)  特技−酒豪(レナード並み)・人を苛めること(からかう)・銃で撃たれても平気なこと(特殊能力)  趣味−見晴らしの良い景色を見ること・澄んだ空気の中にいること  特殊能力−衝撃吸収能力・衝撃解放能力

 

レナードの副官となる彼女、勤務態度はまじめなのか不真面目なのか―――

価値観が似通っているのか、とにかくレナードと気が合う。人をからかって遊ぶところもそっくりだ。レナードとは酒を飲み交わす間でもある、仕事の話はもっぱらセレスにするのだが・・・

大人の女性とかを意識して考えた・・・ってこの時点で画像がないので分からないでしょうけど、えっと―――髪は黒で長い、真ん中から左右に分けていて・・・・・・って、スキャナー直ってくれないかなぁ(切実)

特殊能力は衝撃吸収・解放能力です。エルシオールで七人組と戦った時のが伏線。エネルギー(科学的に熱量)と認識できるものは全て吸収可能、棒で殴られようが銃弾が当たろうが、レーザー当てられようが全て吸収! 防御力は最強かと思いきや、もちろん限度あり。限度を超えれば自身の肉体を破壊することになる。

能力の効果があるのは自分の体(及び自分にふれているもの)のみなので、みんなを護って盾になる、などと言ったことは不可能。

吸収した衝撃は攻撃として解放できる、使い道は様々だ。

 

 

 

NO.3

セレス・キミット

身長−170センチ  体重−49キロ  年齢−19(ランファと一緒)  誕生日−8/23  血液型−A型  階級−大佐(スキーズ・ブラウニル司令官秘書、戦闘指揮代理)  特技−暗算・遠くの物でもよく見える・射撃  趣味−書類整理・射撃訓練  特殊能力−瞬間移動能力

 

あんな性格の蒼乃ですから、あんな性格のエンジェル隊ですから、まとめるためにはこんな人が必要かと・・・実は出来た順番はレナードの次で二番! 特技にある射撃ですが、武器は蒼乃の時と同じように伏線を張った回で二丁拳銃が登場、ちなみに神速のようにして消えていたのはこの瞬間移動能力のせいでしたというオチ。

とにかくまじめ一本で行くという点はストーム艦長と繋がる面がありますね。

彼女がこんなに無表情、無感情でいるのにはワケがあるのですが・・・それを書く機会はまた別に―――

射撃の腕はかなりのレベルで、レナードのサポート役としてあちこちで活躍しています。軍人という物の見本であるかの如く、階級に忠実、自分より階級の上の物にはしっかりと従い、下の者には厳しく指導し(威張ることはしない)、同じ大佐は(タクト)経歴や実力で態度を決める(タクトは英雄であるが性格があれなのでまだ認めてもらえず)

彼女の瞬間移動能力は水の中だと急激な水流が発生し自分自身を傷つけてしまうので使用できない(無理すれば出来るのだが)

こちらも設定画がまだ無い、髪型は金髪の長髪、左目が長い髪で隠れている。(別にリリィのマネしたワケじゃない、一年以上前に考えたキャラなんだから偶然です)

 

 

 

キャラクター解説

NO.4

いい加減しつこい? 残り話数少ないから一気に行こうと思って

アルベルト・ウォン・ストーム

身長−189センチ  体重−76キロ  年齢−53  誕生日−8/1  血液型−O型  階級−少将(ギャロップ艦長、補佐官)  趣味−学術書読破・専門書読破・トレーニング  特技−ちくりと嫌味を言うこと・果物の皮を早くむける(リンゴ一個2.05秒!)  特殊能力−不明

 

オッサン

オブスティネートのトップ(十門会議除く)はレナード、蒼乃、ストーム、セレス、ソラト、ジュリアの6人、1人だけ年齢がぐっと上なのが私のミス、もう一人オッサンがいれば良かった(そうか?)・・・・・・そもそも彼が出てきたのはトップが若すぎるから誰か老獪(ろうかい)な人が欲しい、長い間オブスティネートにいた人がほしいと思って作りました。

なかなか出番は来ないけど、さりげなくお気に入り。

細いメガネを掛けてにらみをきかせる艦長、副官のフリフリドレス女と性格は相反しているが、意外と上手くやっているようです―――

右手の甲には傷跡があり、昔の戦闘で付いた傷らしい、彼はあえてこの傷を消そうとはしていない・・・・・・

 

 

ついでにここで解説!

ミントが調査したキーワードの中には未だ本編で明かされていない物がいくつかあるので解説!

十門会議−オブスティネート最高決定機関、十人の議員での話し合いが行われる。

ちなみに議員は作戦部・情報部・研究部のトップ、各方面代表(皇国軍のようにオブスティネートもある程度部隊分けがされている。ただし方面部隊の規模はだいぶ小さい、予算はいつもギリギリで、規模の拡大もなかなかできない)中央代表(レナードのこと)、出資者一名、研究部博士の合計十名だ。

レナードは現在、とある事件で議員権利を一時剥奪(期間は一年間)、もうすぐその期間も切れるのだが―――

ちなみに出資者というのはオブスティネート設立にも大きく関わっている・・・

 

(つるぎ)(剣の連中)−オブスティネートの(あざな)、もしくは俗称、隠語。オブスティネートは極秘の機関だが、その存在を完璧に隠蔽は出来ない。オブスティネートの制服の肩についている三本の剣が合わさったエンブレムが目にとまり、オブスティネートは『剣の連中』と呼ばれるようになっていた。警察や、一般の軍人、裏世界に通じている人間はこの名前で呼んでいることが多い。

 

シャドゥランス−オブスティネートの前身、オブスティネートは今から十数年前に再設立された物で、シャドゥランスはそれより前の組織の名前。ギャロップ、スキーズなどの新造戦艦計画や様々なプロジェクト、皇国内での不穏な動きに対処するため、大幅に組織を改編したので名称が変わった。命名者はディルス・ミルガルド、彼が妙にオブスティネートに詳しいわけも気になる―――気になりません?

 

さてと、大体これくらいか・・・思い出したらまた次回書きます。

それではまた次回も宜しく!