遠い昔、はるかかなたの銀河で――――。
(〜某星大戦チックなバックミュージックと共に流れてくるテロップ)
トランスバール皇国にかつてない危機が訪れようとしていた。突如として襲来してきた帝王ゲルドン率いるガイラー星人帝国が全人類に対し、宣戦布告してきたのであr
……ってうぉいこれ全然違う話だよ下手したら空爆とかされてしまうよ何書いてんだよお前そうお前だよ今キーボード打ってるお前。
気を取り直して……
遠い昔、はるかかなたの銀河で――。
(〜やっぱり某星大戦チックなバックミュージックと共に)
トランスバール皇国にかつてない危機が訪れようとしていた。女王ヒミカ率いる邪魔大王国が永きに渡る眠りから覚め……
……ってこれも違う話だよなんかお父さんに勝手にサイボーグ改造されちゃいそうだよ。
次こそは……
遠い昔、はるかかなたの銀河で――。
(〜あの音楽で)
トランスバール皇国にかつてない危機が訪れようとしていた。黄金大帝率いるテロリスト集団。『凶鬼の掟』が誇るテロル闘人達の圧倒的な力を前に皇国軍はなす術も無く……
ちょっ……痛っ! 止めてこっちに向かって石を投げないですいませんすいません次こそしっかりやりますからたぶん。
遠い昔、はるかかなたの銀河で――。
(〜新3部作の音楽監督はジョン・ウ○リアムズのあの曲で)
トランスバール皇国にかつてない危機が訪れようとしていた。ヤーバン星の攻撃を受けて地球に逃げ延びたフリード星の皇子、デュークフリードは地球で牧場の仕事を手伝いながら平和に暮らしていた。だが、ついにはその地球にも、ヤーバン星人の魔の手が迫る。地球を守るために立ちあがったデュークは無敵のスーパーロボット、ガッタイダーに乗り込み闘いの日々へと……
……痛い痛……痛っ! ダメだってシャーペンの芯の先端を折ってこっちに弾き飛ばしてくるのはそれホントに痛いんだからいやホントマジで……
遠い昔、はるかかなたの銀河で――。
トランスバール皇国にかつてない危機が訪れようとしていた。突如として地球に飛来してきた機界生命体、ゾンダー。青く輝くこの美しい星を機界昇華させようと企む、ゾンダーに立ち向かうのは最強勇者ロボ軍団。この物語は熱き……
………………ちょっと待ってください? アァ……っ! そこの貴方! そう! こんな作品でも目を通して下さっている優しい心の持ち主である貴方のことです!! お願いだからページを閉じようとしないで!! 後生ですから……! 分かりました次は本当にしっかりやりますからですからそんな軽蔑の眼差しでこっちを見ないで……!
そろそろ本当に……
遠い昔、はるかかなたの銀河で――。
トランスバール皇国にかつてない危機が訪れようとしていた。空中に存在する元素を取り込み、ありとあらゆるものを生成できるという脅威の発明品。空中元素固定装置を無断で奪取した元エンジェル隊員、ミント・ブラマンシュが(その辺の下りは、短編「ちとせ、戦いの日々」を参照と何気に宣伝。)その脅威の力を用いて皇国に叛旗を翻してきたのである。
装置の力を用い、一夜にして絶対着ぐるみ制統国家「着ぐるみ帝国」を築き上げた彼女は、並み居る皇国軍の猛攻を何ら障害ともせず、自らの支配圏を急速に広げていった。
そして、遂にはトランスバール本星をも、その歯牙にかけようと動き出す。
この事態を重く見たエンジェル隊の指揮隊長――ウォルコット・O・ヒューイは、かつて、着ぐるみ皇帝ミントと共に任務をこなしていたエリート部隊『ギャラクシーエンジェル』に着ぐるみ帝国撃退の指令を下す。
命を受けたエンジェル達は、敵の激しい猛攻に耐えながらも……遂に、着ぐるみ帝国の本星でもあり、帝国の中枢でもある“デス・スター”ではなく、“キグ・ルミー”(なんか語呂悪いな……)への侵入に成功したのであった。
「で。こうして無事に潜入できたわけだけどさ。これからどうしたもんかねぇ……」
かったりいなぁ、という口調でフォルテの声をした、『グロテスクな概観だけど鳴声は「キャハハキャハキャハキャへラーッ」と微妙に可愛らしいかもしれない、大きな一つ目で何でも吸収してしまうことが特徴の奇獣さん』の、着ぐるみが言う。(これでちゃんと伝わるんかいな
「何か上↑で大層なこと言ってる割には潜入するのって、凄く楽でしたからね〜。……何か、拍子抜けしちゃったわ」
何だかなー、という口調でゆかrぢゃなくて蘭花の声をした、『某大型テーマパークのマスコットキャラとして。はたまた世界中に名を知られている、大きなお耳の鼠さん』の、着ぐるみもそう言う。(これ以上書いたら俺は消される……
「まさか、『着ぐるみさえ着ていれば誰でも入国OK、年齢性別国籍不問!』だったなんて思いもしませんからね〜」
お気楽な口調でミルフィーユの声をした『GAアニメ版第1期7話に登場した食虫植物』の、着ぐるみが一言。(何かいいじゃないっすか、コレ
「………………」
「まったく。この格好してたら誰彼かまわず入国可だなんて、いい加減にも程がありますよ。これじゃあ犯罪者とか……何か裏がありそうな人間だって、入国し放題じゃないですか。そこら辺のこと何にも考えてないんですかねぇ、あの腹黒娘は」
つとめて冷静な状態の、『お腹が空いて困っている人に、自らの顔を食べさせるという冷静に考えるとちょっぴり怖いかもしれない行いを常とするヒーローとお知り合いのメロンでパンナな娘』の、着ぐるみと…ぶつくさと不平をこぼす不細工なぬいぐるみもそこに居た。(だって「中の人」同じだし
そんな彼女達が位置しているのは、着ぐるみ帝国本星“キグ・ルミー”の中でも、最も大きな中央都市『クックドゥードゥルドゥワップドゥタウン』だ。街を縦横にかけている大通りには、一体どこから集ってきたというのか……着ぐるみに身を包んだ人、人、人。その喧騒に囲まれて街の中心部に鎮座しているのは、着ぐるみ皇帝ミントの皇城。
何とかそこへの侵入を果たそうと、ここまでやってきたエンジェル隊であったが……。
流石に、皇帝の住まう城ともなれば、警備はかなりの厳重さを誇り、そう簡単に侵入出来る筈もない。
さて、どうしたものか? と思い悩む彼女達に、リーダー的存在であるフォルテが、巨大な眼球の中心から顔を出したまま声をかけてきた。
「おい、あんた達。あれを見てごらんよ」
フォルテが示した方向にあったもの――。それは、『皇帝閣下からのありがた〜いお言葉』と、でかでかと表記された巨大な立て看板だった。
「あ、何か色々と書いてありますね〜。えっと、読みますよ? ……何々〜?」
――『信頼なる我が着ぐるみ帝国の臣民の皆さんへ。本日も素敵な着ぐるみライフを楽しんでいらっしゃいますか? いきなり本題へと入りますが……実は私、只今とても暇しておりますの。皇国の軍隊の皆さんは弱すぎて、手応えがなさすぎですし。そこで、些か唐突ではありますが、この度、私と同じく着ぐるみを愛する皆さんとの、ささやかな語らいの時間を設けたいと思いついたのですわ。……ですが、着ぐるみ皇帝でもある私と対等に、着ぐるみについて、熱く語り合える程のソウルフルハートを持つお方としか私、お話したくありませんの。ですから、ちょっとした趣向を凝らしまして、本日の正午からタウン中央広場にて。私との、着ぐるみトークをするに値する資格があるかどうかを審査するちょっとしたイベントを用意しましたわ。見事! その審査を経過した方は、私と優雅なひと時を過ごす栄光が与えられますの。我こそは! という方は、奮ってご参加くださいまし。 それでは、皆さん御機嫌よう』――――。
だそうですぅ。と付け加えるミルフィーユ。
「何、この高圧的な態度? 何かムカつくわねー……」
むっとした表情で蘭花。
「へぇ、なるほどねぇ……って、待てよ? 今、何時だい!?」
「……正午から、10分と36秒前です」
はっとした表情で何かに気が付いたフォルテと、やはり冷静な様子のヴァニラ。
どうしたんですかー? フォルテさん〜? と訪ねてくるのは左手のハサミをガチガチさせながら、右手の触手をうにょうにょくねらせたミルフィーユであった。
「ふふぅん。ちょっといいこと思いついちゃってね。……なぁ? あたしらもこの広間のイベントに参加しないかい? ここに書いてある内容が本当なら、その審査ってのに通りさえすれば、一気に敵大将の喉下に食いつけるってわけさ」
なるほど、という表情になる一同。
「ほら! 急がないとそのイベントやらが始まっちまうよ!」
フォルテの言葉を聞いて、会場に向けてダッシュ! ……しようとした一同は次の瞬間。盛大に尻餅をついていた。
そりゃあ、そんなもっこりもっこりした着ぐるみを着たまま、いきなり走り出そうとすれば、そうなって当然である。
「あたたた……」
と声を上げる一同に対し、周りにいた通行人達がひそひそと何かを囁きあっていた。
曰く、「これだから初心者は嫌なのよねぇ……」「着ぐるみ初心者なら、そうと分かるように初心者マークをつけてもらわないと……」「ちゃんと免許持ってるのかしら……」とか何とか。
着ぐるみって免許制だったんだ、そりゃ設定考えた自分でも驚き。
まぁ、そんな話は置いといて。
慣れない姿で転んでしまった為か、なかなか起き上がれないでバタバタともがいているいる4人の着ぐるみルーキー達。
ふと、そんな彼女達に差し伸べられる手が……。
突然現れた親切な人物(といっても、やはり着ぐるみ装着ではあるが)の力を借りて、何とか起き上がることが出来た一同。
「あぁ……。わりい、何処の誰か知らないけれど、助かったよ。ありがとな」
リーダー格でもあるフォルテが一同を代表して礼を述べる。礼を受けた、大きなお耳とクリクリおめめが特徴の、その親切な着ぐるみは「気にしないで」、というような素振りを見せながら、ただ一言。
「ふもっふ」
とだけ残して、そそくさとその場を後にしていった。
今度は転んだりしないように気を配りながら、街を行きかう着ぐるみの人々の合間を抜け、何とか中央広場へと辿り着いたギャラクシー着ぐるみ隊。
広場の入り口には『着ぐるみゲットだぜ! 目指せ着ぐるみマスターへの道!! 選考会場は こ・ち・ら ですわ♪』という幟が高々と掲げられ、文字の横には、今や子供達に大人気となった某電気鼠のイラストがついていた。
既に広場内は無数の着ぐるみ着用者でひしめき合い、異様な熱気を放っている。
ふとその中で目に付いたのは……
「あ、さっきあたし達を助けてくれた、ふもふもの着ぐるみの人も居ますよ」
「ホントだ。あの人もこの選考会に出るのかしら」
ミルフィーユ達とそう遠くもない――人間10数人ほどの距離に見えるのは、その言葉の通り。先ほど自分達を助け起こしてくれたふもふもな人物に間違いなかった(中まで同じ人物であるかどうかは定かではなかったが)。
今は一人ではなく、どうやら連れの人間も一緒のようである。隣に居る、夜な夜な道行く女性に襲い掛かり、無理やりその髪形をポニーテール状にしてしまいそうな馬の頭をした着ぐるみと、何かしら言葉を交わしているようだ。
その会話内容に少し耳をそばだててみると……。
「ふもっふ。ふもふもも。ふも? ふもも?」
「ぽに。ぽにぽに。ぽに! ぽにぽに〜」
「ふも!? ふもも……ふもふも〜」
「ぽにに。ぽにぽに。ぽにっ」
「ふもっふ」
「ぽに」
会話の合間に、頷きや相槌を打つ素振りが含まれている所を見ると、「ふも」やら「ぽに」だけで互いに会話が成り立ってしまっているようだ。
あぁ、何で? とか聞いちゃ駄目だから。何でなのか俺も分かんないし。
そんなこんななこともあって丁度、正午となったのであろう。広場中央に特設されたステージ上にマイクを持った着ぐるみが一体現れ、声高にこう告げてきた。
「レディース&ジェントルメン!! 本日は皇帝陛下との憩いの権利をポケ○ンゲットだぜっ! ……する神聖な戦いの場、『ドキッ! 着ぐるみだらけの着ぐるみずぎ大会…ここで「着ぐるみ」と「水着」をかけてるんだ分かったかい(イェイ!)野朗ども(イェイ!)あーゆうれでぃ? う〜わお!! エンジェルろけんr(自主規制)』にようこそ!!」
ここで、地を揺るがす程の大歓声。
ここまで一気に言葉を告げてきた司会者らしきステージ上の、ムキムキマッチョなボディに額に書かれた『肉』の文字が特徴的なマッスル超人――だが、その口調は何故か某錬金術兄弟と、お知り合いのマッチョの軍人さんそっくり(おそらく、割りと壮年の人が中に入っているのだろう)な、着ぐるみが、広場に集った人々の興奮した様子を見て大仰に頷く。
「さぁ! 今回の選考会では、着ぐるみ皇帝と互角に渡り合える程の着ぐるみ力を持つ人間にしか合格の道はないぞ!! 覚悟はいいか!? ちなみに着ぐるみ皇帝の着ぐるみ段位は5963段、ワシは4649段だ。この場でワシに敵わぬようでは皇帝陛下には接見できぬと知れ!」
歓声に次ぐ大歓声。更なる熱気に包まれる会場内。既に気力150突破して、下手したら300に到達してそうな勢いである。
誰しもが例外なく歓声に沸く、大観衆の中。ある一画に居た数名だけは、その雰囲気についていけず呆然……というか、面倒臭そうに佇んでいた。
――正直な話。そんなに着ぐるみ好きなわけではない彼女達、エンジェル隊はその状況について行けないでいる。
そんな様子が、周りと比べてみれば目立ってしまったのだろうか。ステージ上のマッチョがエンジェル隊の居る場所を指差しながら、
「そこのお前達! やけに余裕がある態度だな? なかなか肝が座っているようで宜しい。……どれ、ちょっと近くでその姿を拝ませてもらおうか。……とうっ!!」
言うなりステージ上をBダッシュで走り抜け、助走をつけた大ジャンプ!
ドスンッ!! という音を立てながら、エンジェル隊の目の前に巨大な肉の塊が降り立つ。
そのまま、一同の中では一番名前が売れてそうな着ぐるみを着た蘭花のもとへ。むぅぅぅぅぅん……という効果音が似合いそうな勢いで顔を近づけてきた。
「ふむ。なかなか良い造りの着ぐるみだな……これなら、なかなかいい線までいけるかもしれん」
「ちょっ! 近! 近いって!! おじさん! ただでさえ、こんな着ぐるみ着てて、人口密度も高くて暑苦しいっていうのに、おじさんみたいなのが居たら、もっと暑苦しくなるじゃない! ……だから、近いって! あぁ、もうなんか鬱陶しいわね……殴っていい?」
「駄目ですぅ〜、落ち着いてください蘭花さ〜ん」
と、何やら物騒なことを言い始める蘭花をなだめるミルフィーユ。ふと、その時……
パアァァァンッ!!
突然、鳴り響いたのは――銃声。
グラッ……とその場に倒れこむマッチョ。
何とか、まだ息はあるようだ。
流石はマッスル超人である。
このくらいの傷では、やられはしないのだ。
「あぁ、わりい! あまりに暑苦しかったから……思わず銃、ぶっ放しちゃったよ!」
テヘッという、「やっちゃった♪」的な笑顔を浮かべながら、どこからどうやって取り出したのか……。おそらく、硝煙反応が残りまくりの拳銃をクルクル回しながら、もっと物騒な人。……大きな目玉の着ぐるみフォルテの無茶苦茶な一言。
「ぶっ放しちゃった♪ じゃねえよ。おめえ何考えてんだよ」
「と……取り押さえろぉぉぉっ!!!」
ノーマッドのツッコミと、会場警備兵達(それでも全員、着ぐるみ)の怒号が響いたのは、ほぼ同時だった。
「皇帝陛下。選考会広場で狼藉を働いた不届き者を連行して参りました」
「……通しなさい」
その言葉を受け、謁見の間に通されてきた不届き者達。言わずもがな、お騒がせのエンジェル達。
あの広場での騒動の後、大挙して押し寄せてきた警備兵達に、為す術もなく取り押さえられてしまった彼女達。今では着ぐるみ剥がされ、元のエンジェル隊の制服姿へと戻っていた。
彼女達をここまで連行してきたのは、二人の着ぐるみ兵士。――皇城勤務の兵士ですら例外なく着ぐるみ姿である。その姿を見た、エンジェル隊の中では最も俊敏さに自信があるであろう蘭花が「あんなんじゃあ、とっさの時に動きにくいでしょうに……。わっかんないわねー」とか文句をこぼしたりもしていた。
その二人の兵士が着用してる着ぐるみは、それぞれ某ふしぎな星の双子のプリンプリンプリンセス〜の姿を模した物であった。顔を含め、身体全体が完全に隠れてしまうタイプの着ぐるみである。
「この者達の処遇……如何、致しましょうか?」
と訪ねる不思議兵の声は何とも野太い声。その着ぐるみ姿で、その声では子供達の夢がブチ壊しである。
その言葉を受け。こちらに背を向ける形となっていた、小じんまりとした玉座をクルッと回転させて、その姿を見せてきたのは……
黒マントに黒ボディ。自分の意に沿わないと、フォースの力で首を絞めてきたりする味方ですらも恐れる存在。「シュコーッ……シュコー……」と独特の吐息を漏らす、黒光りするマスクがあまりにも有名な、彼のベイダー卿だった。
ぶっちゃけ「着ぐるみ」というより「コスプレ」やがな。
だが、そんなことは気にせずに響いてくる声。
「……久しぶりですわね。皆さん(シュコー……)」
だが、その声は……。その声だけは。エンジェル隊達のよく知る――あの腹黒パタパタ娘の声だったのだ。
「なっ、お前! ミントか!?」
「ミント『様』とお呼びなさい。この下等生物どもがっ!!」
まるで某ちびっ子先生のような暴言を吐きながら、シュコッ! と告げてくるミント・ベイダー。
「この国では、着ぐるみを着ていないものは生きている価値もない、いつ殺されてもおかしくはないのですよ? それを、こうして元同僚のよしみで生きながらえさせてあげていますのに……」
何だか、とてつもなくムチャクチャなことを言いながら、
「そう。元同僚のよしみですわ。私も鬼ではありません。今、一度。着ぐるみと、この私。我が着ぐるみ帝国に、忠誠を誓うというのであれば……その命、助けてあげないこともありませんわよ? さぁ、誓いなさい」
と、某薔薇乙女そのまんまの口で告げてくる。
むしろボクが誓っちゃいたいくらいですよグヘへへへ。
……おっと失礼。
「何言ってんだよ、ミント。こんな下らないこと止めて、さっさと降伏しちまいな! 軍部の連中はどうか知らないけど……。あたしらは、別にあんたをどうこうしたいってわけじゃないんだ。後のことはあたし達で何とかしてやるから……! 一緒に基地へ帰ろう?」
おぉ、フォルテさん結構いいとこあるじゃないですか。
そして、フォルテ以外の皆も一様にして、
「ミントさん、お願いですから戻ってきてください〜」
「やっぱりエンジェル隊は5人全員が揃わないと……少し、寂しいじゃない」
「……みたらし団子」
「まぁ、ヴァニラさんがそう言うなら、私は別に構いませんけど。何て優しいんだ貴方は〜。天使だ女神だあぁヴァニラさ〜ん」
優しい言葉をかけてくる。
だが、しかし。着ぐるみ皇帝ミントは……わなわなと震えながら、
「『下らないこと』ですって……?」
その単語がどうにも気に食わなかったのか……突然、腕を前方に突き出し、そこから不可視の力を解き放つ。
その力は、ミントの逆鱗に触れる言葉を放ってしまったフォルテへと向かっていき……その力で捉えたフォルテを空中に浮かび上げ、そのまま壁面へと叩きつける!
「か……はっ……!?」
かすれた悲鳴を上げるフォルテに対して、不可視の力――フォースの力は、ギリギリと彼女を押さえ込む力を更に強めていく。
「下らないことですって!? 貴方は着ぐるみ愛好家達が受けてきた虐待の数々、常に世間の狭間へと押し込められ、ひっそりと辛酸の日々を送り続けた我々の決起を……下らない! とそう仰ったのですね!?」
「いやー……。虐待やら辛酸やらっていう大それた話よりも、ただ単に着ぐるみ好きな人が少なかったっていうだけじゃ……ってうぉわ!!」
余計なことを言ってしまったそのぬいぐるみは、まずフォースの力に捕らわれ宙に浮く。
続けて、フォルテの口がフォースの力で無理やり大きく開かれ……ノーマッドはそこへ向けて勢いよく投げ込まれた。
「もがぁっ!! ……もごもぐぉぉっ!」
「うわー! これは悪夢のようです! なんで私がこんな危険物女の口蓋の中へと叩き込まれなければならないんですか!? ……これがヴァニラさんだったら私は喜んで貴方の血となり肉となり……。ってぇぇぇ、そんなこと言ってる場合じゃない! 誰か助けてー!!」
「もごおぉぉぉっ!!」
最早、美少女アニメにあるまじき――鼻コンセントにも勝るすっごい表情で、もがもが言っているフォルテさん。
「………………」
ふと、何を思ったのか。不意に、フォルテ達を束縛から解放するミント。
ドサッという音と共に地面に降り立ったフォルテ&ノーマッド。安堵の吐息と共に、「あー、酷い目にあったー……」「あぁ、ヴァニラさん……」と口々に、そうこぼす。
「気が変わりましたわ。……衛兵! この者達を地下牢へ。今後は、私が直々に着ぐるみの何たるかを調教し、私を怒らせてしまったことを、後悔させてやりますわ。……さぁ! ザー○ンさん、ドド○アさん、やってしまいなさい!」
皇帝のその言葉を受け、即座に動き始めた兵士達に取り押さえられた一同は、地下牢へと連行されていった。
ガッシャーンッ!!
鳴り響く大きな音。地下牢の扉が閉じられるその音は、暗い石造りのそのフロアに、殊更に大きく響いたように感じられた。
その地下牢の一室で……
「フォルテさんが余計なこと言って、あの子を怒らせるからこんなところに閉じこめられちゃったじゃないですかー」
「何だよ蘭花! あたしだけが悪いっていうのかい!? そりゃあ、あの一言は不用意だったかもしれないけど、結果的には城内に侵入できたわけだし。……それに、お前だって結局、あの状況で何もしてないじゃないかよ。大胆なのはその格好だけかぁ?」
「何ですってー!!」
「おぅ、やるか!?」
「二人とも喧嘩は止めてくださいぃ〜」
険悪な雰囲気で、キッシャーキッシャーと互いを威嚇し始めた蘭花とフォルテを何とかなだめようとするミルフィーユ。
そんな3者の様子を知ってか知らずか、
「……今のミントさんは着ぐるみの暗黒面。“ダーク・サイド”に捕らわれています。……力に溺れた者に待つのは破滅だけ。何とか私達でミントさんを救い出さなければなりません」
ポツリとヴァニラ。その言葉を聞いて、少しは冷静にでもなったのだろうか、フォルテ、蘭花、ミルフィーユがヴァニラに詰め寄ってくる。
「何だいヴァニラ? その“ダーク・サイド”っていうのは?」
「あの子を助けられるの!?」
「ヴァニラさんって物知りなんですね〜」
彼女達のその言葉を――これも聞いてか聞かずか、ヴァニラは一人解説を始めた。
「“ダーク・サイド”とは。ミントさんの着ぐるみを愛する心が、怒りと哀しみに支配されてしまった世界のことを指します。ですが、彼女の心の中には微かではありますが、まだ善の心が残っています。私達でその心を呼び起こすことができれば、ミントさんを救うことができる筈です」
「あぁ、ヴァニラさん……何てお優しい」
ジョ○ジ・ルー○スも多分、驚くんじゃないかという見事なヴァニラの状況説明を聞いて。とりあえず、ヘンテコなぬいぐるみの言うことは無視し、一同はこれからどうすべきか考えることにした。
「ミントを救い出すって言っても、まずはここから抜け出さないことにはねぇ……。それに、武器とかも取上げられちまったし」
すぐに途方にくれてしまう。
そこに……
カツーン……
何者かの足音が響いてくる。
カツーン……カツーン……
という音は、次第に彼女達の捕らわれている地下牢へと近づいてきて……
そこに現れたのは……
「ふもっふ」
あのふもふもの着ぐるみだった。
〜続くっぽい〜