「君を舞踏会のパートナーとして一緒に出席してもらいたい。」
そうタクトさんに言われたときすごくうれしかった。確かに私から誘いを申し込んだのですが、
本当に来てくれるとは思ってもいませんでした・・・・・。(花束つきで)
いいえ、心のどこかで『きっと来てくれる』と思っていたのでしょう。いまならわかる気がします・・・・・。
(現在のエルシオール・司令官室)
「ヴァニラどうしたんだい?」
私の後ろから声が聞こえてきて振り返ってみるとタクトさんは私がいれたコーヒーを手に話しかけてきました。
「タクトさん・・・・・・。少し昔のことを思い出していただけです。」
「へー、何を思い出していたんだい?」
「・・・・・・・・・・。」
思い出したのはよいのですが言葉でいうと恥ずかしかったです。
「・・・・タクトさんといっしょにダンスをしたときのことです・・・・・。」
「うーん、あの時か・・・・。今では遠い昔にようだな・・・・あのときはすごく緊張したなー。」
「なぜですか?」
私が質問するとタクトさんはマグカップを机のところに置き、
少し恥ずかしそうなしぐさをしながら答えました。
「いや、ヴァニラの部屋に入ろうとしたら余計に緊張しちゃってね。
こんな俺でもいいのかなって、考えたけどね。だけど今はそういうことはないし俺たちもう恋人同士だろ?
だから、あのときのダンスでヴァニラをパートナーとして選んだことは今の俺にとってとても幸せなことだよ。」
「タクトさん・・・・・・。」
そう、あのときからタクトさんは私にとって特別な存在になっていきていました・・・・。
第四話「お誘い・・・・、そしてダンス・・・・。」
都市衛星ファーゴの手前に着きました。そのとき私たちエンジェル隊はブリッチにいたのですが
みなさん休暇が取れたことがうれしかったのでしょう。ミルフィーさんは
はしゃぎ、ランファさんはブランドショップのチラシを見ていて、
ミントさんは一人計画をねって、フォルテさんは『ローム星系食い倒れマップ』をチェックしていました。
ファーゴ宇宙港から入港許可をもらいエルシオールはようやく入ることができました。
ここで解散となったわけですが私がブリッチから出ようとした直後、タクトさんが私に声をかけてきました。
「ヴァニラ、ちょっといいかな?」
「はい・・・・。なんでしょう?」
「ウギウギはどんな感じ?」
「ウギウギはとても元気です・・・・。時間もありますし、今から公園に散歩をしに行こうと思っています。」
私がそう言うとタクトさんはちょうどいいタイミングだなというような表情をしました。
「それだったら俺も一緒に行ってもいいかな?」
「はい・・・・・。では行きましょう。」
私はタクトさんと一緒に一回自分の部屋に戻り、ウギウギを連れて公園へむかいました。
「いやー、やっぱりここはいいな。」
「ウギウギは喜んでいるようです・・・・。いつも私の部屋で暮らしているのでこうして広い場所で
遊ばせたほうがよいとクロミエさんが言っていました。」
「そうか。それとウギウギがずいぶん遠くのほうへ行っちゃったけど、いいの?」
「え・・・・・?」
私がタクトさんと会話しているうちにウギウギが遠くへ行ってしまい必死になって追いかけました。
タクトさんは「限られた場所だから心配することはないよ」と言いましたが
私はウギウギが心配でしかたありませんでした。
私一人では到底無理だったのでタクトさんにも手伝ってもらいようやくウギウギを捕まえられました。
「ハァ・・ハァ、ようやく捕まえたよ。こいつ思っていたよりも結構速かったから苦労したよ・・・・。」
「はい・・・・・・。」
「ヴァニラ、息がそうとう切れているけど、大丈夫?」
「大・・・丈夫です・・・・。」
「うん、それはきっと楽しいからじゃないかな?」
「楽しい・・・・・・?」
楽しい・・・・・それは自分でもわからなかった。
ただウギウギと一緒にいるだけで心がなごむようでした・・・・・。
「そう・・・・私は楽しいんですね・・・・。」
「ヴァニラ・・・・・・・。」
「確かにウギウギの世話や散歩をさせるのはとても大変です・・・・・。
ですが、その疲れを心地よく思う私がいます・・・・。」
「そうか、それはいいことだよ。」
「そうですか・・・・・。では・・・・・・」
なぜこの言葉を発したのかわからなかった。けど、無意識の内の言ってしまいました。
「私は・・・最近タクトさんと一緒にいると、とても心地よく思います・・・・。
それもよいことなのでしょうか?」
「ヴァニラ・・・・・・・。ヴァニラにそういってもらえるとすごくうれしいな。」
「よかった・・・・・・。」
私はタクトさんからの言葉を聞いてホッといた反面、
『心地よい』と言った自分が少し恥ずかしくなっていました。
「おっと、シヴァ皇子のところに行かなくちゃいけないんだった。それじゃヴァニラまた後で。」
「はい・・・・。失礼します・・・・・・。」
こうしてタクトさんはシヴァ皇子をファーゴに連れていくため公園をあとにした。そしてこの後、
タクトさんが三日後エルシオールを解任させられるという知らせがブリッチで伝えられた・・・・・・・。
タクトさんが解任される知らせを聞いてみんな反対しました。しかし軍上層部の決定事項だったので
仕方がありませんでした。その代わり、三日後の舞踏会にエンジェル隊全員参加だというのです。
(ドレスの支払いは軍が払ってくれるそうで・・・。)
話が終わった後、解散となり私は自分の部屋をめざしました。
(三日後にはタクトさんはいなくなってしまう・・・・・。だから、最後の思い出に・・・・)
そう思いながら歩いているうちになぜか司令官室のドアの前に立っていました。
なぜ自分がここにいるのかわかりませんでした。
しかし、『最後の夜はタクトさんと一緒にいたい』そのような願いがありました。
そして・・・・・・・。
ピーンポーン・・・・・・・・。
私はインターフォンを押しました。
すると、中からタクトさんの声が聞こえてきました。
「誰だろう?どうぞー」
「ヴァニラです、失礼します・・・・・・・。」
そして、私は司令官室に入りました。
「ヴァニラ、どうしたんだい?」
「・・・・・・・・。」
「ヴァニラ?」
私は黙ってしまった・・・・、言うこと自体恥ずかしかった・・・・・。
「あの・・・タクトさん。舞踏会には出席しなければいけませんか?」
「うーん、なるべく出席してもらいたいな。君たちだってシヴァ皇子を守ってここまできたんだし、
せっかくの機会だからね。ヴァニラは舞踏会とかって嫌い?」
「はい・・・・。ああいうところは少し行きづらいです・・・・。」
「俺だってそうだよ。それだったら舞踏会が終わるまで角のほうで見てようか。」
そして、勇気を振り絞ってタクトさんに言いました。
「ですが・・・・私はタクトさんとだったら一緒に踊りたいです・・・・。」
「・・・・・・・。」
タクトさんはキョトンといた顔つきでわたしをみていました。
「すみません・・・・。変なことを言ってしまって・・・・・・。」
「ヴァニラ・・・・・・。」
「部屋に戻ります・・・・。もしタクトさんがよろしければ・・・・・部屋まで来てください。」
私が出て行く際、タクトさんは悩んでいるように見えました。
これはあとから聞いた話なのですが私が来る前に
ミルフィーさん・ミントさんの順番でタクトさんへのパートナーの立候補をしていたらしいです・・・・・・。
部屋に戻り、私は緊張していました。タクトさんは来てくれるのだろうか・・・・と思いました。
そして20分後・・・・・・・・
インターフォンを音が部屋に鳴り響いた。
「ヴァニラ、タクトだけど入っていいかい?」
「どうぞ・・・・・。」
扉が開く・・・・・・。
「どんな御用でしょうか?」
「ヴァニラ、これを受け取ってもらえないか?」
そういうとタクトさんは後ろに隠していたバラの花束を私の目の前に出しました。
「これは・・・・・・・?」
「君を舞踏会のパートナーとして一緒に出席してもらいたい。」
「・・・・・・・・。」
私は驚きを隠せないでいました・・・・。
「どうしたんだい、ヴァニラ?」
「私、うれしいです・・・・・。とても・・・・・うれしいです。」
「ヴァニラにそういってもらえるとうれしいよ。ヴァニラのドレス姿かー早く見てみたいな。」
「そのことについてなんですが・・・・・、
私は舞踏会など行ったことがないのでドレスは持っていないんです・・・・・・。」
「そうか・・・・。よし、今から買い物に行ってドレスを見に行こうか。」
「はい・・・・・・・、ありがとうございます・・・・・。」
こうして、私とタクトさんはファーゴに買い物に行くことになりました。
ファーゴの商店街は店がいっぱいあり私の目を釘付けにしました。
その途中でタクトさんとはぐれてしまいました。
「タクトさん、どこですか?」
声を出したのですが人が多く私の小さな声は人ごみの中へ消えていきました。
そのとき、タクトさんも私がいないのに気がついたのでしょう。
人をかきわけ私のところまできてくれました。
「よかった、ここにいたのか。」
「すみません・・・・お店を見ていたらいつのまにかはぐれてしまって・・・・。」
「いや、俺も目をはなしてすまなかった。ところで、どこでドレスを買うんだい?」
「ミントさんからよく行くお店を紹介してもらいましたので、そこへ・・・・。」
「よし、じゃあそこへ行こうか。」
途中まで私とタクトさんは歩きましたが私はまたいつはぐれてしまうのが恐かったので
私はタクトさんの腕に掴まりました。
「・・・・・・・・。」
「ヴァニラ、ちょっと強く握りすぎだからもうすこしリラックスしたら・・・・・・。」
「す・・・すみません・・・・。」
「いや、誤ることはないよ。まあ、これはこれでいいんだけどね。」
「はい・・・・・・。」
私はタクトさんの腕に掴まりながら目的のところまで着きました。
中に入ると豪華そうなドレスが何着もありました。
私は買ったことがなかったので、タクトさんの好みに合わせると言いましたがタクトさんは
『ヴァニラがいいと思ったものを選べばいいし、それに気に入ったものがあれば試着してみればいいよ』
と言ったので私は試着室に行き何点か店員の人に紹介してもらいましたがなかなか自分の好みにあったものが
ありませんでした。
半ば諦めかけたとき、私の目に『あの』白いドレスが入ってきました。
「あ・・・・・・。」
「お、ヴァニラはあのドレスが気に入ったみたいだな。せっかくだから着てみれば?」
「はい。では・・・・」
そして私はこのドレスを着て、タクトさんの前に出てみるとタクトさんはとても驚いていました。
しかし・・・・・。
「ですが、私のようなものが着たらこれを作った人々に申し訳ないような・・・・・・。」
「なにを言っているんだい。ヴァニラに着てもらっているんだから職人さんだって喜ぶと思うよ。」
「こちらでよろしいですか?」(店員)
「はい・・・・・・・・・。」
こうして、ドレスを買うことができました。タクトさんも新しい靴や手袋なども買い一段落したところで私たちは近くの公園で休憩をしました。
「ふー、久しぶりだな。外の空気を吸うのも。」
「ここも人口的な環境ですが・・・・・。」
「おいおい、それを言うなよ。」
「ふふ、そうですね・・・・・・。あの・・・・タクトさん。」
「何だい?」
私は心配だった・・・・・。いや、それはわからなかった。
ただひとつ言えることはタクトさんの気持ちを聞きたかった・・・・・。
「本当にいいんですか?わたしで・・・・・。」
「ヴァニラだから、お願いしたんだよ。それにこれは俺からのささやかな礼のつもりさ。
ヴァニラ、ありがとう。これが理由のひとつ。」
「もうひとつはなんですか・・・・。」
「二つ目はヴァニラを主役にしたかったこと」
「私が・・・・・。主役?」
私はこれがなにを意味しているのかわかりませんでした・・・・・。
「いつもヴァニラはエンジェル隊やみんなの後ろにいてあんまり目立たないだろ。
だから、今回の舞踏会で『俺のパートナーはこのヴァニラだ。
エンジェル隊のなかにもがんばってここまで来た人もいる』ってみんなに言い聞かせたいんだ。」
「タクトさん・・・・・・・・・。」
タクトさん考えを聞けて私はホッとしました。
「というわけでヴァニラ、舞踏会のときはよろしく・・・・・・。」
「こちらこそ、よろしくお願いします・・・・。」
「じゃあ、そろそろエルシオールに戻ろうか。」
「はい・・・・。」
こうして、私とタクトさんはエルシオールに戻りました・・・・・・。
そして、舞踏会当日・・・・・・・・。
エンジェル隊のみなさんは(私を含む)舞踏会が始まる一時間前に到着しましたがタクトさんは
乾杯のときにもいませんでした・・・・。
一時間後、息を切らしながらタクトさんはやってきました。
そして、私と目があいました。
「あ・・・・。・・・・・こんばんは・・・・・。」
「やあ、ヴァニラ。遅れて申し訳なかった。こうしてドレス姿を見るのは二度目だけど、とてもきれ」
タクトさんがそういいかけたとき隣から声が聞こえていました。第三方面軍総司令官
ジグナルド・ジーダマイア大将とその側近でした。
ジーダマイア大将は私たちを見ると一緒に写真をいいだしたので、
怒ったランファさんとフォルテさんに文句を言われ、しぶしぶどこかへ言ってしまいました。
こうしている内に舞踏会が始まりました。
ミルフィーさんたちは先に行き、その場には私とタクトさんしかいませんでした。
「では、私たちも行きましょう・・・・。」
「そうだな。そうだ、さっき言いかけていた言葉だけど・・・その・・・とても」
「とても・・・・?」
「とてもきれいだよ、ヴァニラ。」
とてもうれしかった。タクトさんからこの言葉を聞いたとき私は来てよかったと思いました。
「・・・・・ありがとうございます・・・・。ですが本当は・・・迷っていました。」
「なにを迷っていたんだい?」
「この会場に来ることです。やはり私には場違いなのではないのか・・・・。
そう思っていました。しかし、さっきのタクトさんの言葉を聞いて安心しました。」
そして、会話が終わったあと、横から声をかけられました。『一曲いかがですか?』と。
私は断りましたがその人は結構食らいついてきていましたのでしたがないとおもいつつ、
私は踊りにいきました。タクトさんは『ラストダンスのときに向かえにいくよ』といい、
ほかのエンジェル隊の様子を見に行きました。
ダンスが終わると私はそのままバーラウンジの角っこにいました。
「やっぱり・・・・、私には無理・・・。」
そう思ったときでした。タクトさんが私を探していました。
「よかった、ここにいたのか。」
「・・・・・・・。」
「ヴァニラ、どうしたんだい?」
私は本当のことを言いました。
「タクトさん・・・・。私、やっぱり遠慮させていただきます・・・・。」
「急にどうしたの?」
「私はダンスがヘタなんです・・・・・。タクトさんの迷惑になるし足を引っぱってしまいそうで、
だから・・・・・。」
「・・・・・・。ヴァニラ自信をもつんだ。君はいつだって努力してきたじゃないか、
だから今もいつものように努力して踊ればいい。・・・・俺と一緒に踊ってくれないか?」
「はい・・・・。ですが・・・・・」
やはり、私にはできない・・・・・。
そう考えているうちにラストダンスの曲が流れ出しタクトさんは右手を私の前に出し私を誘いましたが
私は迷っていました。そのとき、タクトさんは私の手を取り『右手はここ、左手はここ。』
とニッコリ笑いました。
私はこの笑顔に答えなければならない・・・・・。私は無言をうなずき、タクトさんと踊りました。
私は気がつきませんでしたが、少し顔が赤くなっていました・・・・・。
ダンスが終わり、『これでタクトさんともお別れ・・・・・。』
そう思いました。しかし、終わった直後エオニア軍がせめてきたのは思いもよりませんでした・・・・・・。
第四話「お誘い・・・・、そしてダンス・・・・。」終
第五話「突然の別れ・・・・。」に続く
いってー!!痛い!!どうも、バージルです。現在、手術を受け終わり家で安静状態が続いております。
どうでしょうか、今回はとうとうダンスの場面になり第一部も終わりに近くなっております。
なんか書くことがないので今日はこれで・・・・・・。
8月4日