ラストダンスが終わった直後エオニア軍の攻撃に遭い、命かながら私たちは

エルシオールに逃げ込み敵を迎撃しました。

(これは、クールダラス副指令のおかげでした・・・。)

 

 

 

しかし、これだけでは終わりませんでした・・・・・・。

 

 

 

 

『黒き月』の攻撃・・・・・・・。

あのときの惨劇は忘れようにも忘れられない出来事です。

惑星ロームは表面を激しく抉り取り、都市衛生ファーゴも直撃を受けませんで

したがかすめただけで多くの人々が犠牲となりました・・・・。

 

 

 

 

 

 

しかし、悲劇は終わらなかった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

ウギウギの死・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

そう、あれは突然の出来事でした・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

私は・・・・・・・また大切なものを失いました・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

(ここの会話はヴァニラとタクトを使い分けながら物語を進めていきます)

 

                    

 

 

 

 

                          第五話「突然の別れ」

 

 

 

 

 

 

私たちは必死になりエオニア軍を迎撃し、『黒き月』までたどり着くことができ

ましたが途中で奇妙な黒い光の影響で私たちを含む皇国軍の艦隊が動かなくなっ

てしまいました。

私たちがあきらめかけていたとき、あの白い翼が紋章機に生えエルシオールも

機能を取り戻し、『黒き月』に効果的なダメージを与えることができました。

(このあと翼は消えてしまいましたが・・・。)

 

 

 

そのあと、私たちはエルシオールに戻り戦況報告をしにブリッチまでいきました。

私たちがついた直後ルフト准将から通信が入ってきて、ルフト准将が総司令代理

をしていること、そしてタクトさんはひき続きエルシオールの司令官を

することとなりました。

 

 

 

そのとき私はホッとしたと同時にうれしかった。しかし、今の状況を考えるとな

かなか喜べなかった・・・・・。

そして、その場で解散となりました。

 

 

 

ブリッチを出たあと、私はクジラルームに行き次に医務室に行きました。

そして医務室での仕事が終わり自分の部屋に戻ろうとしたとき途中で

タクトさんとはちあわせになりました。

 

「や、やあヴァニラ。奇遇だね・・・。」

「はい・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

 

 

沈黙状態が続いたなか、私はタクトさんの様子が少しおかしいことに気がつきました

 

 

「顔色がよくないようですが・・・・・どうしましたか?」

「え?俺は別に普通だけど・・・・。」

タクトさんはそう言いましたが私から見ると顔色がよくないようでした。

「自覚できていないようですね・・・・・。医務室に行きましょう。」

 

そういうと私はタクトさんの腕を握りました。

 

「お、おい。」

「何事も早期発見・早期治療が大切です。それがどんな些細なことで

あっても・・・・・。さ、行きましょう。」

 

私は半分強引な形で医務室に行きました。普通の私ならこのようなことは

しなかったのですが今のタクトさんの様子を見ているとなんだか

心配になってきました。

 

 

医務室に着き、診療しました。これは案外速く終わりました

「診察、終わりました。脈拍など、全て正常です・・・・・。」

「だから大丈夫だって。言ったろ?俺は別に普通だって。」

「ですが、今のタクトさんを見ていると様子が変だったので・・・・・。なにか悩みなどがあるのですか?」

 

タクトさんは笑いながら私に言いました。

 

「いや、悩みなんてものはないよ。じゃ、俺はこれで・・・・。」

 

そういうとタクトさんは医務室をあとにしました。出ていく際のタクトさんの

顔は少し疲れているような顔をしていました。

私はすこし椅子に座っていたらケーラ先生があとから診療室に入ってきました。

「あら、ヴァニラどうしたの?」

「ケーラ先生、実はタクトさんの顔色がよくなかったので医務室に連れて

きたんです・・・・。今、診察が終わったところです。」

 

 

私は悩んだ末『ある迷い』をケーラ先生に相談することにしました。

 

「ケーラ先生、最近の私は少し変な気がするんです。」

「どうしたの?急に。」

「私は個人的な感情で人をここまで連れてきたのは初めてでした。

いままでここに来た人達だけを見てきましたが今のタクトさんの状態を

見ているとなんだか心配になったり一緒にいたりすると、とても心地よく思う

んです・・・・・。これは一体なんなのでしょうか?」

「そうね・・・・・。」

 

ケーラ先生は少し考えていました。そして・・・・・・・。

 

「きっとそれはヴァニラがマイヤーズ司令のこと・・・・・・・・」

「え・・・・・・・?」

「い、いいえなんでもないわ。そうね・・・・、私にもあんまり詳しいことは

わからないわ。」

「そうですか・・・・・。では私はこれで・・・・。」

 

私はケーラ先生に一礼したあと医務室をあとにしました。しかし、ケーラ先生がいいかけた言葉・・・・・それは私の心にわずかながらの疑問を残しました・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(タクト・サイド※1)

ヴァニラの診察を受け終わり俺は司令官室に戻っていた。司令官室の椅子に座りさっきのヴァニラとのやり取りを思い起こしていた。

(しかし、今日のヴァニラは少し強引だったな・・・・・。)

そう考えていた。

 

 

 

しかし、今日の俺は少し疲れているように見えたのか・・・・・・・・・?

 

 

 

確かにそうなのかも知れない・・・・・・。舞踏会が終わった直後にエオニア軍

の攻撃で艦隊は被害を受けさらに『黒き月』の攻撃でファーゴを半壊・ロームは

大きく表面をえぐりとられてしまっている。クレータ班長が紋章機に生えた翼の

ことについて調べてもらっているし今後のことを考えると頭が痛くなる・・・・。

いつも、気楽にやっている俺だが今回は頭を悩ませている・・・・・。

 

 

 

ええい!!考えてもラチがあかないな・・・・・・・。

 

 

 

 

そう思っていたときだった。インターフォンの音が俺の部屋に響いた。

時間は10時半を回っていた。

「誰だろう?はーい。」

返事をすると外から声が聞こえていた。

 

(レスター?いや、あいつがこんな時間に来るはずはない。じゃあ、誰だ?)

声の主はヴァニラだった・・・・・。

「ヴァニラですが・・・・・。入ってもよろしいですか?」

「ああ、かまわないよ。」

「失礼します・・・・・。」

 

ヴァニラが入っていた。そのとき俺の目に写ったのはヴァニラの手にあるお盆と

それの上にあるコップとポットがあることだった。

 

「ヴァニラ、それは一体・・・・・。」

「ハーブティーです・・・・。ミントさんのようにうまくはありませんが、

私なりにブレンドしたものです。」

「あ、ああ。ありがとう、ヴァニラ。いただくよ。」

 

俺はヴァニラが作った紅茶をもらった。飲んでみるとなかなかうまかったし、

なんだか楽になった気がした。

 

「お口に合いましたか?」

「うん、なかなかうまかったよ。でも急にどうしたんだい?」

 

いつものヴァニラでは考えられない行動だった・・・・。

 

「ナノマシンでは傷は治療できますが、心の傷や悩みは治療できません・・・・

・。だから・・・・気休め程度ですが・・・・・」

「そうだったのか・・・・・・。ありがとうヴァニラ、助かったよ。」

「いいえ・・・・・。最後にひとつだけ聞かせてください。本当に悩んでいるこ

となどはないのですね?」

 

ヴァニラは再確認するように俺に尋ねてきた。

 

「ああ、大丈夫だよ。俺はこのとおりピンピンしているさ。」

「そうですか・・・・・。わかりました。では私はこれで・・・・・」

 

 

そういうとヴァニラは部屋を出ていった。

正直な気持ち、俺には悩みがたくさんあった。しかし、話せなかった。

気持ちはうれしかったが逆にヴァニラを不安にさせるんじゃないのか、

そうおもったからウソをついてしまった。

 

 

 

司令官はタフな仕事だな・・・・・・。

 

 

 

あのとき、クジラルームでフォルテに言われたことがふと頭のなかによぎった・・・・・。

 

 

 

 

「マイヤーズ司令とエンジェル隊は至急ブリッチまで来てください。

繰り返します・・・・。」

アナウスが鳴り俺は起きた。

いつのまにか寝てしまっていたようだ、俺は寝起きの顔を洗いブリッチに急ぎ

ブリッチに着くともうみんな集まって待っていた。

そこにはクレータ班長とシヴァ皇子の姿があった。

 

 

 

頃合いを見計らいクレータ班長は話し始めた・・・・・。

 

 

クレータ班長の話によるとあの白い翼が出現している間、紋章機の出力が爆発的に

上がっていること、そのときのH・A・L・Oシステムの同調率が100%を

超えていたこと、紋章機とエルシオールのシステムそのものが書き換えられてい

たことなど信じられないことが起きていた。

 

「エルシオールのほうはパワーアップとかしていないのかい?」

俺はクレータ班長に聞いてみた。紋章機だけ能力が上がっているのに

エルシオールの能力が上がっていないのが気になっていたからだ。

「はい、エルシオールもシールド出力をはじめとする防御面が強化されています。」

「攻撃面は強化されていないのか?ただでさえこの艦は武装が少ないって

いうのに・・・。」

 

レスターはグチを言うように言った。

 

「はい。今のところ、ですが。」

なにかひっかかる言い方をしたのでまた俺はクレータ班長に聞いてみた。

すると何かの見取り図を取り出し説明し始めた。

それはまるで工場プラントのようだ。

クレータ班長が言うには調査しているうちにエルシオールの追加武装のデータと共に出てきたのであるという・・・・・。

 

「これのことはシヴァ皇子が知っているようです」

「皇子が・・・・ですか?」

 

「ああ、私も確証があるわけではないのだが一度だけシャトヤーン様に

見せてもらったことがある・・・。」

「どこなのですか?これは?」

 

するとシヴァ皇子の口から信じられない言葉が出てきた。

 

 

 

 

 

「それは・・・・・・『白き月』だ・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

「私も耳を疑いました。しかし、もっと信じられないかもしれませんが

『白き月』は最初から巨大な自動工場プラントの可能性が高いとおもわれます。」

 

俺を含む全員は耳を疑った。ロストテクノロジーの恩恵を与え今では皇国の象徴

である『白き月』が自動工場プラントだったなど信じられなかった。

しかし、『黒き月』の例もあるので否定はできない。

 

「信じるか、信じないかはそなたたちの自由だ。どうするのだ、マイヤーズ?

決定権はそなたにある。」

 

 

俺の隣でシヴァ皇子はいった。

 

 

 

 

 

俺の答えは決まっていた・・・・・・。

 

 

 

 

「よし、行こう!『白き月』へ!!幸い、エオニアの本隊はここにいるし、

いまならトランスバール本星にいる艦隊はほんのわずかなはずだ。」

 

 

「そうだな。こうしていてもラチがあかないからな。」(レスター)

 

 

「よし、エルシオールはこれより『白き月』に向かう!みんな、

俺についてきてくれ!!」

 

 

 

こうして、俺たちは『白き月』向かうことになった。しかし、

『黒き月』を含むエオニア軍本隊も俺たちのあとを追ってローム星系の

重力圏から離脱していた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ヴァニラ・サイド)

『白き月』に行くことが決まり現在エルシオールは艦の修理と補給物資調達の

ため惑星ブラマンシュにいました。そのころ私は自分の部屋にいて

ウギウギにエサをあげる時間だったのでウギウギのところまで行きました。

 

 

しかし、私が近づいてみるとウギウギの様子がすこしおかしかったのです。

 

 

「ウギウギ、どうしたの・・・?」

私はウギウギに話しかけましたが反応がよくありませんでした。

どこか体調が悪いと思い心配になった私はナノマシンを使いました。

しかし、なぜか効きませんでした

 

 

 

どうして・・・・・・・・・・。

 

 

 

心配になった私はケーラ先生に通信をいれました。

「ケーラ先生・・・・・。ご相談があるのですが・・・・よろしいですか?」

「あら、ヴァニラじゃない。どうしたの?」

「すみませんが、私の部屋まで来ていただけませんか?それと・・薬もください。」

 

 

ちょうど、タクトさんも偶然医務室にいたようでした。通信を入れていると

タクトさんの声も聞こえてきました。

 

 

「ヴァニラ、具合でも悪いのかい?」

「いえ・・・・、私ではなくウギウギのほうです。さっきエサをあげようと

ウギウギのところまで行ってみたら様子が変だったもので・・・・・。」

「わかったわ、今からそっちに行くわ。」

 

数分後、タクトさんとケーラ先生が到着し、ウギウギの体調を見てみました。

 

「全身がかなり弱っているみたいね。一応、栄養剤を投与したけど動物のことに

なると私もここまでしかできないわ・・・・・。」

「・・・・・わたしのせいです・・・・・。」

 

そう、舞踏会が終わったあとウギウギの面倒を少し怠ったせいで・・・・・・・。

私は自分を呪いました・・・・。

 

「仕方がない、今くやんでも・・・・・・・・。ところでナノマシンは試したの

かい?」

横からタクトさんの声・・・・・。

 

「何度か試してはみたのですが効果がありませんでした・・・・。」

「ナノマシンは小動物にも有効なはずなんだけど・・・・

もう一度やってみたら?」

「はい・・・・・。」

 

私はもう一度やってみましたが効果が現れませんでした・・・・。

 

「そんな・・・・、ナノマシンでも治せないものなんて・・・・。」

 

タクトさんがそうつぶやいたとき艦内アナウスが流れました。

「マイヤーズ司令はブリッチに戻ってください。繰り返します・・・・」

 

「すまないがヴァニラ、今からブリッチに行ってくる」

「私もこの宇宙ウサギについて調べてみるわ。」

そういうとタクトさんとケーラ先生は部屋をあとにしました。二人が出て行き私はウギウギの治療を再開しました・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

補給が終了し、エルシオールは再びクロノ・ドライブに入りました。

どのくらい時間が経ったのでしょうか・・・・・・いいえ、時間などどうでも

よかった。私はウギウギを助けたい・・・・・その一心で治療を続けていました。

すると、仕事を終えたタクトさんが私の部屋に来ました。

 

 

「ヴァニラ、ウギウギの体調はどうだい?」

「いいえ、あんまりよくありません・・・・・・。あれからずっと治療を続けているのですが・・・・・。」

 

するとタクトさんは驚きました。

 

「あれからって・・・・・・、もう4・5時間は経っているじゃないか!!」

「時間など、関係ありません・・・・。」

 

 

私は治療を続けました。すると見かねたタクトさんは私の手を取り静止しようと

しましたが私はその手を払いました。

 

「治療の・・・・邪魔を・・・・・しないでください。」

「邪魔をする気なんてないよ。けど、今のヴァニラは少しおかしいよ」

「私は・・・・正常です。問題ありません・・・。」

 

するとタクトさんは私に言い聞かせるようにいいました。

 

「いや、おかしいよ。さっきだって『今度こそ失敗しない』とか

『シスター・バレルのようにはさせない』とか言っていたじゃないか。」

「え・・・・・。私はそんなこと言っていましたか・・・?」

 

 

言った覚えが全然なかった・・・・・。いつの間にか口にしていたのだろう。

 

 

 

「ほら覚えがないじゃないか、少し落ち着くんだ・・・・・。ヴァニラ、

君とシスターの間で何があったんだい?」

「・・・・・・・・・。」

「無理に話す必要はない。だけど、このままヴァニラをほおってはいられないよ。」

 

 

 

少しながらの沈黙・・・・・・。

 

 

 

私は静かに語り始めました・・・・・・・。

 

 

 

「シスター・・・・・・・は、シスター・バレルは身寄りのない私を引き取って

くれました・・・。シスターの家に迎えられた私はそこでナノマシンの技術を

教わり、私はシスターを親のように慕いました。この幸せな日々がいつまでも

続く・・・・幼い私はそう信じていました。しかし・・・・・・、私が8歳にな

ったある日シスターは突然ベッドの上から起きられない身体になって

しまいました。そして日を送るたびにどんどん衰弱していきました・・・・・。

私もナノマシンを使いましたがいっこうに効果が現れず、息を引き取りました

・・・・・。」

 

 

 

「死因はなんだったんだい・・・・・・?」

「老衰だった・・・・・・と後で聞かされました・・・。」

「だったら仕方が無いじゃないか!!寿命だったんだろ?」

 

そう寿命・・・・・しかし、私は納得できませんでした・・・・。

 

「いいえ、私のせいなんです。あのときシスターの様子に気をくばらなかった

せいで・・・・・・。だから、あの時のようにはさせません・・・・。

・・・・長話をしてしまいましたね。治療に戻ります・・・・。」

「・・・・・・・わかった。ヴァニラがそこまで言うのなら俺はもうなにも

言わない。・・・・ウギウギ、元気になるといいな・・・。」

「はい・・・・。ウギウギは必ず治します。」

 

 

会話が終わりタクトさんは部屋を出て行きました・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(タクト・サイド)

 

俺は部屋に帰り、ベッドの上で深い眠りについた・・・・・。

 

 

通常空間に出る30分ぐらい前に俺は起きた。

(ヴァニラはあれからどうしたんだろうか・・・・・。

無理してなければいいけど・・・。いや、ヴァニラならやりか

ねないからな・・・・・。)

 

 

そう思っていたとき通信が入ってきた。

「マイヤーズ司令、ちょっといいかしら。今からクジラルームに来てほしいのよ。」

ケーラ先生からだった。・・・・。

「わかりました。いまから急いでいきます!!」

 

 

(もしかしたら、治療法が見つかったのか?)

 

 

そう思った俺は急いでクジラルームに急いだ。クジラルームに着いた。

そこにはケーラ先生のほかにクロミエの姿もあった。

「ああ、マイヤーズ司令ごめんなさいね。こんな時間に呼び出して・・・・。」

「それよりも治療法が見つかったんですか?」

「・・・・・・・・・。」

「速く教えてください!!」

ヴァニラも心配だったのもあるがウギウギのほうが心配だった。ヴァニラにとってウギウギは『家族』のようなものだから・・・・・・。

 

 

しかし、クロミエの口から告げられた事実は衝撃そのものだった。

 

 

「治療法は・・・・・・・ありません・・・・・。」

「なん・・・・だって・・・?」

「あの宇宙ウサギはもう寿命なんです・・・・・・。」

 

 

俺の全身から血の気が引いていった・・・・・。さらにそれに追い討ちをかける

ようにケーラ先生の口が開いた。

 

「私も医務室で調べてみたのよ・・・。そしたら、ヴァニラが飼っている種類の宇宙ウサギは寿命がとても短いのがわかったのよ・・・・もって、今日だと思うわ・・・・。」

 

 

俺はヴァニラから聞いたことを思い起こした。

 

「それじゃあの時と同じじゃないか!くそ・・・・!!」

「あのときって?」

「シスター・バレルのことです、シスターも老衰が原因で亡くなったんです。

ヴァニラはシスターとウギウギを重ね合わせていて『今度こそ助けたい』と

必死で治療をしているんです・・・・。」

 

それを聞いたケーラ先生は・・・・

 

「・・・・きっと、幼いヴァニラにとって身近な人が死ぬのが信じられなかった

と思うわ。そして、助けられなかった罪滅ぼしとして精神のバランス

をとった・・・・。でも、それはあんまりだわ。」

 

俺には気になっていることがもうひとつあった。このことをヴァニラに話したか

ということだった。

ケーラ先生たちの答えはNOであった・・・・・。理由を述べるなら

『必死に看病している姿を見ていると言おうにも言えない状態』であった。

 

 

俺は急いでクジラルームを出てヴァニラの部屋まで走った。

 

(このことは俺がヴァニラに直接伝えなければならない・・・・。

俺がなにも考えもせずヴァニラに動物を飼えばと言わなければ・・・・・・)

 

 

走っている内に自分のなかにも罪の意識があった。

 

 

 

そのとき、ちょうどエルシオールは通常空間に出たところだった。

しかし、運悪くエオニア軍の足止め部隊がいたのだった。当然、

俺がブリッチにいないものだからレスターが俺に通信をかけてきた。

 

「おいタクト、敵の奇襲だ。早くブリッチに戻れ!!」

「すまない、レスター。大事な用があるんだ。すぐに戻る!!」

「なにバカなこといってやがる、指揮以外に大事なことがあるか!

っておい、タクト!!」

 

 

話の途中で通信を切った俺は走りの速度を上げた。当然、エンジェル隊にも出撃命令が下る。その前にヴァニラに伝えなければならない・・・・。

 

 

 

部屋に着いたときちょうど、ヴァニラが部屋を出るところだった・・・・。

「あ・・・・・・・。タクトさん・・・・。」

ヴァニラは俺がここにいることに少し驚いていた。

「あれからどうだい?ウギウギは?」

「まだ、治療中です・・・・・・。」

「ヴァニラ、言っておかなくてはならないことがあるんだ。それは・・・・」

 

やはり俺もこのとき真実は言えなかった。ヴァニラの行動をいていると、

とても言えることではなかった。そして・・・・・

「出撃、がんばってくれ・・・・・・・。」

 

俺はうそを言ってしまった・・・・。

 

「はい・・・・・・・。」

ヴァニラはそういうと格納庫に急いだ。俺はすこし立ったまま、

言えなかったことを後悔した。俺も急いでブリッチに戻った・・・・。

 

 

 

 

そして、戦闘が始まった・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が終わり、俺はエンジェル隊のみんなをねぎらいに格納庫に言った。

みんなさっきの戦闘のことについての雑談をしていた。するとヴァニラだけ

いなかったのである。

「あれ?ヴァニラは?」

俺が質問すると

「さっき一番に戻ってきたよ。なんか急いで医務室のほうに走っていった

みたいだったけど・・・・。」

 

フォルテがそういったとき、はっと俺は気がつき医務室に急いだ。

 

 

「ケーラ先生!!ウギウギは!」

「すこし静かにして、ウギウギもヴァニラもあそこよ・・・・・。」

 

中に入ってみるとヴァニラはウギウギに対してナノマシンを使っていた。

 

俺はあのとき言えなかったことをヴァニラに伝えた。

「ヴァニラ、すまない。さっき言えなかったけどウギウギは・・・・

もう寿命なんだ。だから・・・・」

 

「・・・・・・・例えそうだとしてもウギウギは必ず治してみせます。

私はあのときよりも成長している・・・・・。だから、今度こそ・・・・・。」

 

 

 

ナノマシンの光が部屋の中で輝いた。

 

 

 

二度・三度・・・・・・・。

 

 

 

 

 

光るたびにヴァニラはウギウギを励まし続けた。

 

 

 

そして・・・・・。

 

 

「もういい・・・・・。もうやめるんだ、ヴァニラ。」

俺はウギウギの様子を見てヴァニラを止めた。

「いいえ・・・・。ウギウギはまだ・・・・・・。」

「いいんだ・・・・・。もうウギウギは・・・・・息を・・・・

引き取っている・・・・。」

「え・・・・・・・・・。ウギ・・・ウギ・・・・・・。」

 

少しながらの沈黙・・・・・・・。

 

そして、ヴァニラは俺の中に飛び込んで泣いた・・・・・。

「うぅ・・・うぅ・・・ウギウギ・・・・ごめんなさぃ・・・・・。」

「ヴァニラ・・・・・・・。泣くといい・・・・・、

泣きたいときはおもいっきり泣いていいんだ・・・・・。」

 

気がつくとケーラ先生は医務室から出ていた。このヴァニラの姿を見るのが

忍びなかったのだろう。

 

「私は・・・・・もうわからなくなりました・・・・・・。

自分が努力すれば大切な人は死なずにすむとおもっていました・・・・・・。

しかし、私はシスターもウギウギも助けてあげることができなかった・・・・・。

タクトさん・・・・・私は間違っていたのでしょうか?」

 

 

それ答えは俺のもわからなかった・・・・・・。それは正しいのか、正しくなかったのか・・・・。

 

 

 

「うまく答えられないけど・・・・、少なくてもウギウギが死んだのはヴァニラ

のせいなんかじゃない・・・・。寿命は誰にも変えられない・・・・・、

けど今を精いっぱい生きたウギウギは幸せだったと思うよ。」

「今を・・・・精いっぱい生きた?」

 

ヴァニラは涙を止め俺の目を見た。

 

「ヴァニラはウギウギやシスターと一緒に暮らしていて幸せだったかい?」

「はい・・・。幸せでした。」

「きっとウギウギもシスターも同じ気持ちだと思う。

確かに大切な人が死ぬのは悲しいことだ。その人と一緒にいた時間の

分だけ・・・・・・・だけど、その人と一緒にいた時間を心の中に残して

その人の分まで生きなければならない。自分の時間が終わるまで・・・・

そうだろ?」

「・・・・・・・・・。」

 

すると、ヴァニラはなにかを悟ったように見えた。

 

「少し・・・・わかる気がします。私はウギウギと過ごした時間を忘れません。

そしてウギウギの分まで精いっぱい生きます・・・・・・。」

「うん、それがいい。」

「タクトさん・・・・・ありがとうございます。一つお願いがあります。

もう少しだけ・・・このままでいてもよろしいですか?」

「ああ、ヴァニラの気が済むまで・・・・・・・」

 

 

ヴァニラはまた静かに泣き始めた・・・・・・。

 

 

「うぅ・・・・う・・・ウギウギ・・・・・。」

 

 

そして、この日ヴァニラが泣き止むことはなかった・・・・・・。

心配になってきたエンジェル隊に俺がこのことを教えたのは

後のことだった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

                       第五話「突然の別れ」終

     「第六話(第一部完結)究極の修理・そして最高の笑顔を」に続く

 

 

 

 

 

※1

サイド・・・・この場面はヴァニラだけでは到底書くことが困難だったので

タクトの視点も入れてみました。

 

 

ふー、どうもバージルです。いかがでしたか?

とうとう次回で第一部完結です。

では投稿を待っていてください。