第六話「究極の修理・そして最高の笑顔を」

 

 

 

 

 

 

 

ローム星系を離れ二週間あまりが経ち、私たちはついに『白き月』まで辿り着い

たのでした。エオニア軍の本隊より早く着いたのは幸いでした。

 

 

エルシオールは『白き月』に通信を入れましたが不思議なことに返事が返ってこ

ず疑問を感じていたタクトさんは頭を悩ませていたところ、そこへシヴァ皇子

がブリッチに現れことの説明をしました。(ちょうど、私たちもその場にいまし

た)

 

シヴァ皇子の話によるとシャトヤーン様が使ったシールドとは外部からの干

渉を無効する方法でありいわば一種の『封印』というものでした。その解除方法

はシヴァ皇子が持っていたのでだからエオニア軍も血眼になって探していたので

しょう。

 

 

シヴァ皇子は雑談をした後封印を解除しに部屋まで戻っていきました。

シヴァ皇子が部屋に戻られてから数分した後エルシオール全体が突然光り始めま

した。

そして、光が収まったあとシヴァ皇子から通信が入ってきました。

 

「封印は解除した。もう一度通信をしてみるがよい。」

「わかりました。アルモ、もう一度やってみてくれ。」

シヴァ皇子との通信が終わりタクトさんはアルモさんに言い渡しました。

 

「返事が返ってくるのか?」

クールダラス副指令はそういいましたが逆にタクトさんは自信ありげな言い方を

していました。

「大丈夫さ。封印がちゃんと解けているのなら・・・・・・。」

そのときでした。『白き月』から通信が入りました。

 

「エルシオールのみなさん。無事で何よりです。」

声の主は『月の聖母』シャトヤーン様でした。

「シャ、シャトヤーン様!?『月の聖母』自ら通信してくるなんて・・・・。」

「ああ、驚きだな・・・・・。」

 

タクトさんと副指令は驚いていました。そして、タクトさんは落ち着きを取り戻

したあと、いつもより少しソワソワしていました。

 

「シャトヤーン様。俺は・・・じゃなかった私はエルシオールの司令官、タクト

・マイヤーズというものです。シャトヤーン様にお伺いしたいことがありここま

で来ました。」

 

「タクト・マイヤーズ・・・・・。そうでしたか・・・・。ではあなたがルフト

准将のおっしゃっていた『ふさわしき者』なのですね。ここまでエルシオールと

シヴァ皇子をお守りしていただき、ありがとうございます。さあ、とにかく

『白き月』お入りなさい。話は謁見の間でお伺いします。」

 

 

通信が終わってもなおタクトさんはソワソワしていました。

 

 

「あんた、なにいつまでソワソワしてんのよ?」

それを見ていたランファさんはタクトさんに質問しました。

 

「だって、シャトヤーン様といえば俺達のような軍人は滅多に会えないからね。

それに賢明な方といわれているし、美貌もあると聞いた。これが落ち着いて

いられるか!いや、落ち着いていられない!!」

 

 

それを聞いた私は少しショックでした。これがタクトさんの悪い所でもあります。

「は、ヴァニラ・・・・。」

私の目線に気づいたのでしょう、タクトさんは私を見ていました。

「・・・・・・・・。」

「あの・・・・・・ヴァニラ?・・・もしかして、怒ってる?」

「いいえ・・・・・・・別に・・・・・。」

 

私は怒ってなどいなかった。ただ、怒っているのを通り越してほんの一瞬だけ

『殺意』が芽生えたのは気のせいでしょうか・・・・・。

 

 

 

 

 

エルシオールから出て、私たちは謁見の間に行き、シャトヤーン様にこれまでの

経緯をお話しました。

 

 

話を聞いたシャトヤーン様は私たちの質問に答えてくれました・・・・。

私たちが言っていた自動兵器工場プラントは実在すること、紋章機が強力であっ

たために機体制限をつけたこと、『白き月』と『黒き月』が対となる存在であっ

たことなど私たちが知らないことがたくさんありました。

 

 

そして、シャトヤーン様の協力で紋章機の性能を100%引き出せるあの翼を

出してもらうことと、エルシオールにはクロノ・ブレイク・キャノンを搭載して

もらうことになりました。

(これが本来のエルシオールの姿だとシャトヤーン様は言っていました。)

 

 

エオニア軍の本隊が明日の12:00に到着するのがわかり、私たちはいったんエルシオールに戻り解散となりました。みんな、明日の決戦のせいであんまり寝付けなかったそうです・・・・。

 

 

 

 

 

午後10時半過ぎ・・・・・・・

 

 

 

 

 

そのころ、私はクジラルームに行きました。

「あ、ヴァニラさん。こんばんは。」

 

クロミエさんが声をかけてきました。

 

「こんばんは・・・・・。あの、宇宙ウサギを見に行ってもよろしいですか?」

「ああ、それは別にかまいませんよ。」

「・・・ありがとうございます・・・・。」

 

そういうと私は宇宙ウサギの檻に入りました。クロミエさんは私を見た後部屋か

ら出て行きました。

私は少しずつでしたが心の整理ができていました。だから私はここにいます。

しかし・・・・・・・。

 

 

 

 

(ウギウギ・・・・・・・・・。)

 

 

 

 

私は一匹の宇宙ウサギを抱えると同時におもいました。

たとえ、姿や形が似ていてもここにいる宇宙ウサギ達はウギウギじゃない・・・・・・。私の知っているウギウギはもういない・・・・。

 

 

 

 

そう思うと余計に思い出してしまい悲しくなりました。そして、宇宙ウサギの世

話をしたあと私は部屋から出ました。

すると部屋の外から誰かが話していたので行ってみるとそこにはクロミエさんと

タクトさんがいました。

 

 

 

「あ、ヴァニラさん。ちょうど今ヴァニラさんの話をしていたところ

なんですよ。」

「私の話・・・・ですか?」

「そうだよ。ヴァニラ、もう大丈夫なのかい?」

 

 

タクトさんなりに私に気を使ってくれたのでしょう。

 

 

「はい。おかげさまで・・・・・。まだ完全に気持ちの整理ができていませんが

・・・・。」

「そうでしたか・・・・・。では、僕は管理室に戻りますがタクトさん達は

どうしますか?」

「ああ、俺はまだここにいるよ。なんか寝付けなくてね。明日が決戦となると

興奮しちゃって・・・・・ヴァニラはどうするんだい?」

 

 

私は飼育小屋に行ったあとはそのまま帰るつもりでいました。しかし、

タクトさんがいたことにより考えが変わりました。

「私も、もう少しここにいます・・・・。」

「わかりました。ではごゆっくり・・・。」

 

そういい終わるとクロミエさんは管理室のほうに帰っていきました。

クロミエさんの姿が見えなくなった後、私とタクトさんはその場に座り込み

ました。

 

「いよいよ、明日が決戦か・・・・・。ヴァニラにはこれまで以上に修理するこ

とが多くなるかもしれないけど・・・・・・。」

 

話を切り出したのはタクトさんのほうでした。

 

 

「いいえ、大丈夫です・・・・。それが私のすべきことですから・・・・。」

「わかった。俺も自分のできることをするから。」

「はい・・・・。あのタクトさん・・・・ひとつ聞いてもよろしいですか?」

 

私には一番気になっていることがありました。それはこの戦いが終わったあとの

ことでした。

 

「タクトさんはこの戦いが終わったあとはどうなさるんですか?」

「うーん、まだわからないな。多分終わった後も戦後処理や軍上層部からの命令

が下ると思うから俺はそれに従うさ。ヴァニラは戦いが終わったあとは

どうするんだい?」

「また、動物と楽しく暮らしたいです。それと・・・・・」

「それと・・・・・・?」

 

 

 

この気持ちは偶然でも偽りでもない。これは私の素直な気持ちでした。

 

 

 

「できれば・・・・・タクトさんのそばにいたいです・・・・。タクトさん、

前におっしゃいましたよね、今を精一杯生きると・・・・・。私は今タクトさん

と離れると私はきっと後悔すると思います。だから・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

 

タクトさんは驚いてはいましたが動揺はしていませんでした。

 

「すみません・・・・・変なことを言ってしまって・・・。ご迷惑でしたね。」

「いいや、迷惑なんかじゃないよ。・・・・・俺もヴァニラと一緒にいたいな。」

「え・・・・・・・?」

 

 

私は自分の耳を疑いました。

 

 

「うまくは言えないけれど、ヴァニラといると心が和むんだ。ちょうどヴァニラ

と同じ気持ちかな・・・・。」

 

 

「タクトさん・・・・・。」

私は変なことをいっていまいタクトさんに迷惑をかけてしまったと思いました。

けど、その言葉を聞いたとき私の心はうれしさでいっぱいでした。

 

 

「タクトさん・・・・・私、とてもうれしいです。シスターが亡くなられて私は

ずっとひとりぼっちでした。いままではそれを不便と感じたことはありませんで

した。しかし、タクトさんと一緒にいるとシスターと暮らしていたように

心地よいのです・・・・。」

 

「俺も同じだよ。ヴァニラといるととても楽しいよ。・・・・・ヴァニラ、明日

の戦い必ず勝とう。」

「はい・・・・。私、一生懸命がんばります・・・・・。」

 

 

 

こうして、この日のクジラルームでの二人だけの時間が終わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、午前12;00・・・・・・・・・。

 

「エオニア軍、まもなく戦闘宙域に入ります。」

艦内は張り詰めた空気になっていました。そのころ、私たちは紋章機内で待機し

出撃命令を待っていました。

 

そのとき、ランファさんから通信が入っていました。

 

「ヴァニラ、ちょっといい?それからこの通信がみんなに聞こえないように

してくれない?」

「はい・・・・・。わかりました。」

 

そういうと私は他の人たちに聞かれないように総受信にプロテクトをかけました。

 

「これで大丈夫です。ランファさん、なんの御用でしょうか?」

「私、トレーニングの帰りにクジラルームに行ったのよ。なんだか寝付けなくて

ね・・・・。そしたらなんか声が聞こえると思ったから行ってみるとあんたと

タクトが話していたから思わず聞いちゃったのよ。」

「え・・・・・・・。」

 

その言葉を聞いたときに顔が真っ赤になりました。あのときタクトさんと私しか

いないはずでした。しかし、事実ランファさんは木のところに隠れて一部始終

を見ていたらしいです。

 

 

「別に責めているわけじゃないわよ。タクトはあんたを選んだからあたしがどう

こう言うことはないけどね。ヴァニラ・・・・・タクトのためにがんばりなさいよ。」

「はい・・・・・わかりました。」

「そう・・・・、じゃこれで話はおしまい。プロテクトを解除してもいいわよ。」

 

 

 

私がちょうどプロテクトを解除したときにタクトさんからエンジェル隊のみなさんに作戦内容が伝えられました。

 

 

「敵の編成は大型戦闘母艦、ヘル・ハウンズ隊の大型戦闘機、高速突撃艦、装甲

ミサイル艦、それにレーダーが大型艦をとらえているこれがエオニアの艦だろう。

君たちにはこれらの艦隊をつぶしてもらい、道を形成してくれ。

今のエルシオールと翼が生えた紋章機ならきっと勝てる。内容は以上だ。

エンジェル隊、全機出撃!!!」

 

 

 

 

私たちは出撃しました。この無意味な戦いを終わらせるために・・・・・・

そして、これを最後とするために・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

(戦闘省略)

 

 

 

 

 

 

 

「クロノ・ブレイク・キャノンのチャージはどうなっている。」

「チャージ完了まであと10分ほどです!!」

「わかった。エオニア旗艦に標準合わせだ!!」

 

 

タクトさんにクールダラス副司令、それにアルモさんが話をしているなか

戦闘宙域に残っていたのはエオニア旗艦、ヘル・ハウンズ、そして『黒き月』

を残すのみでした。

 

 

そのときでした。ヘル・ハウンズ隊の紋章機(ニセ)に変化が起こったのは・・・・。

そして、敵の戦闘機にも翼が生えパワーアップしました。

しかし・・・・・様子が変でした。まるで魂の抜け殻のように・・・・・・。

そう・・・・彼らの魂はすでに彼らのものではない。『黒き月』の力によって

戦闘マシンになっていたのでした・・・・・。

 

 

敵の戦闘機は『黒き月』へのコースを反転し、こちらに向かってきました。

翼が生えたせいで完全に私たちの紋章機と互角になっていました。

 

 

「ど、どうしましょう!?タクトさん!!」

ミルフィーさんは混乱していました。

 

 

「もう戦いたくないのに、倒すしかないんですか!?」

通信のなかでミルフィーさんは言いましたが、倒さない限り彼らの魂は

開放できないのだから・・・・・。

 

 

「・・・・それでも倒すしかない・・・・。敵機を撃墜する!!」

そういうとタクトさんは作戦内容を伝えました。

 

「現在、エルシオールはここにいる。しかし、敵の大型戦闘機によって道を

塞がれている。クロノ・ブレイク・キャノンを撃つにはどうしてもここを通ら

なければならない。よって目標は戦闘機の撃墜。射線を確保したら、

エルシオールでエオニア旗艦を攻撃する。ただし、敵の戦闘機は今の紋章機と

互角だ、みんな気をつけてくれ。エンジェル隊、戦闘開始だ!!」

 

 

 

 

「了解!!」(エンジェル隊一同)

 

 

 

 

 

 

(戦闘省略)

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは苦戦しながらも撃墜できましたが、喜ぶ気も勝った気もしません

でした。ただ複雑な感情だけが残りました・・・・。

 

 

 

「タクト、正面が開けたぞ!いまならエオニアの艦を攻撃できるぞ!!」

「エネルギーチャージ100%!!発射可能です!」

「エオニアだけは俺の手で倒す!目標、エオニア旗艦!!

クロノ・ブレイク・キャノン、撃て――!!!」

 

 

タクトさんの号令により発射されたクロノ・ブレイク・キャノンは見事エオニア

の艦に直撃、閃光と共に消えてしまいした。

 

 

 

「・・・・終わったな・・・・・・。」

「ああ・・・・悪党にふさわしい末路だ・・・・。」

 

エオニア艦を撃墜した直後タクトさんとクールダラス副司令はどっと腰を下ろし

そうつぶやきました。

 

 

「無くしたものを必死に追い求めて、歪んだ理想にとらわれた男の悲劇さ・・・・・。」

フォルテさんの声も聞こえてきました。(通信はダイレクトに繋がっていますので)

 

 

「ですが、その悲劇も幕を閉じました・・・・・。」

続けざまに私もつぶやきました。

 

 

「他の無人艦も動きを止めたようですわね。」

「ああ、俺たちの勝利だ。」

 

その瞬間、艦内で歓声が湧き上がりました。

すると少し遅れて到着したルフト准将から通信が入りました。

「タクト、よくやったな。これでこの戦いも終わった。」

「そうですね、やっと肩の重荷が取れましたよ。さてと・・・・終わったこと

だし『白き月』で凱旋でもするか!!」

「お、いいねー。じゃ、今日はハデにバーっとやろうかね!!」

「ははは・・・・・。」

 

『ふふ、ふふふふ。』

突然、外部から強力な割り込み通信が入ってきました。

 

『人間というものには感心させられた。『白き月』のH・A・L・Oシステムを

使いこなし私の最高傑作を打ち破るとは・・・・・。だがそのおかげで私も

進化することができたわ・・・・。』

 

スクリーンにはひとつの人の顔が映し出されました。姿は少女で金髪の髪でした

。その顔を見た瞬間タクトさんは気が付いたような表情をしていました。

 

「あ!思い出した。君は確か格納庫で見かけたノアっていう・・・・。」

 

タクトさんが言い終わらないうちにそのノアという人が語り始めました。

 

『人間とはまことに興味深い。それだけの力と能力を持ちながら私の作ったイン

ターフェースにはいとも簡単に騙されるのだからな。』

 

インターフェース・・・・・俗にいうアンドロイドのことを指す。

 

『もっともエオニアが騙されたおかげで私は再び『白き月』にめぐりあえた。』

「エ、エオニアだと!?」

『あの男はなかなか便利な存在だった。私の言うことをすんなり信じ込んでくれ

たのだから利用するのは簡単だったわ。』

 

 

そう結局エオニアはこのノアの手によって騙されていただけだった・・・・。

 

 

「いったい、お前は誰なんだ!!」

『私は・・・・・『黒き月』・・・・・』

 

 

以外な答えが帰って来た。今話しているのは『黒き月』本体でした。

 

 

「『黒き月』!?じゃあ、あれは意思をもっているのか!?」

『私のことを忘れてはいまい『白き月』よ。さあ、いまこそ我々の使命をはたそ

うぞ。お前と一つになったとき私はさらなる進化を遂げることができる。

ははははは!!!!』

 

 

通信が切れ、『黒き月』の形が変わり始めまた『白き月』も形を変え始めどんど

ん本星の軌道上からそれていきました。気がかりだったのは『白き月』にいる

シャトヤーン様とシヴァ皇子のことでした。タクトさんはすぐに『白き月』に

通信を入れました。

 

 

「シャトヤーン様、シヴァ皇子。ご無事ですか!?」

「マイヤーズ司令ですか、システムが制御不能となっておりこちらでは手のうち

ようがありません。『黒き月』の力があまりにも強すぎるのです。それにマイヤ

ーズ司令よく聞いてください。」

 

 

シャトヤーン様の話によると『白き月』と『黒き月』は融合しようとしていると

いうのです。お互いの持つ機能を一つにして進化するように設計されていたそう

です。『黒き月』を破壊するには『黒き月』のコア(中心にある赤いクリスタル)

をクロノ・ブレイク・キャノンで撃ち貫く方法しかありません・・・・

そうシャトヤーン様はおっしゃいました。途中で通信マヒにより途絶えてしまい

ました。

 

 

 

「みんな、聞いてのとおりだ。これからエルシオールで『黒き月』を破壊する

!!エンジェル隊はチャージが終わるまで援護してくれ。」

 

 

私たちのところへ作戦図が転送されてきました。

 

 

「これから、『黒き月』を破壊しに行く。本当ならもっと近づいて撃ちたいんだ

が図を見てのとおり新型の攻撃衛星がズラリと展開している。それとさっき

入った情報によるとまだ残っている無人艦隊がこちらに向かってきている。

エンジェル隊には攻撃衛星を攻撃してもらい突破口を開いてくれ。そうしたら

エルシオールは指定されたエリアまで行く。これが最後の戦いだ、みんな俺に

命を預けてくれ!!」

 

 

「はい、タクトさんに従います。ご命令を・・・・・・。」

「ありがとう、ヴァニラ。それじゃ・・・・エンジェル隊、全機出撃!!」

 

 

 

「了解!!」

 

 

 

私たちは二手に分かれて攻撃衛星を撃墜していきました。左手はフォルテさんと

ミントさん、右手はランファさんとミルフィーさんそして私が担当でした。

(途中、残っていた無人艦隊が来ましたがこれはルフト准将の艦隊が倒してくれ

ました)。

その間エルシオールチャージ率98%にまで達し、指定エリアまでもう一歩のと

ころまででした。

 

 

 

 

 

 

『なぜだ・・・・?』

 

 

 

 

『黒き月』は一人呟く・・・・・・・。

 

『なぜ『白き月』の落とし子が私の邪魔をするのだ。私はお前と一つになりたい

だけだというのに・・・・・。私は進化の仕方が間違っていたのか・・・・・?

いや、私は正しい!!私が間違うはずはない!!!間違っているのは『白き月』

のほうなのだ。そして、融合を阻むものは・・・・・・消えてなくなるがいい!!!!』

 

 

 

 

黒き月から新手の攻撃衛星が出てきて到達する前のエルシオールに攻撃して

きました。

 

 

「うわっ!!!」

「く、『黒き月』が攻撃を始めました。これでは近づけません!」

「さきほどの攻撃で機関室に直撃!これではオーバーロードしてしまいチャージ

がストップしまいます!!」

 

 

有無を言わさず5基の攻撃衛星がエルシオールに突っ込んできました。

 

 

「なんとしてでもかわすんだ!!」

「だめです!!直撃、来ます!!!!」

「うわああ――!!」

 

 

 

 

 

 

その頃、私たちは攻撃衛星を落とすのに精いっぱいでした。最初にエルシオール

の異変に気づいたのはミルフィーさんでした。

 

 

「見て、エルシオールが!!」

外からみてもエルシオールのそこらじゅうから火が出ていました。

 

 

 

「この攻撃衛星、なんでこんなに強いのよ!!かといってエルシオールまで戻れ

ないし・・・・・ヴァニラ、行ってあげなさい!!」

「え・・・・・でも、ミルフィーさんとランファさんが・・・・。」

 

私は戸惑いましたがランファさんは叱咤激励するかのように私に言いました。

 

「私との約束を忘れたの!?タクトためにかんばりなさいって・・・・。

エルシオールが落ちたらどうなるのよ、今がそのときなのよ!!大丈夫、

ここは私とミルフィーだけでなんとかするから、ヴァニラはタクトのところへ!!」

 

「・・・・・わかりました・・・・・。ミルフィーさん、ランファさんご無事

で・・・・。」

 

 

そして、私はエルシオールのもとに向かいました。エルシオール・・・・

そしてタクトさんを助けるために・・・・。

 

 

 

私は到着すると同時にハーベスターに搭載されているナノマシンを放出しました

。これだけ大きい艦を一瞬で修復するのは無理だと思いました。しかし、

翼があったおかげか一瞬にしてエルシオールを直すことに成功しました。

無事を確かめるために通信をいれました。

 

「タクトさん、ご無事ですか?」

「ヴァニラ、すごいじゃないか。あれだけ壊れていた箇所を一瞬で修復する

なんて。」

「・・・・・・・・。」

「ヴァニラ?」

「い、いいえ・・・・・。」

 

 

私は反応に困っていました。エルシオールが無事だったこともありましたがなに

よりタクトさんが無事だったので本当によかった・・・・。

 

 

修理できたおかげでエルシオールはオーバーロードせず、指定エリアまで到達

しました。

 

 

「クロノ・ブレイク・キャノン、発射可能です!」

「『黒き月』までの距離、約3200!!」

 

 

アルモさんとココさんの声がブリッチに響き渡りそれを確認したタクトさんは

立ち上がりました。

 

 

「目標・・・・・『黒き月』・・・・。クロノ・ブレイク・キャノン、発射!!!!」

 

クロノ・ブレイク・キャノンが『黒き月』貫き、『黒き月』はバラバラと

なりました。

 

 

「終わった・・・・。俺たちの勝利だ。」

 

ガッツポーズをとりながらタクトさんはそう叫びました。

 

「やれやれ・・・・・、一時はどうなることかと思ったけどね。」

「俺もそう思ったさ、フォルテ。だけど、君たちががんばってくれたおかげさ。

ヴァニラの行動でエルシオールも無事だったからね。さ、帰ろう。

『白き月』へ・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

『白き月』に帰り、私たちは祝勝会をすることになりました。司会はもちろん

タクトさんでした。

「エルシオール、それにエンジェル隊のみんな。君たちの活躍で『黒き月』を

そしてエオニアを倒すことに成功した。本当に感謝している・・・・。

さて、今日は盛り上がっていこう!!それでは皆さん、乾杯!!!」

 

 

 

 

「乾杯――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後・・・・・・。

「あれ、タクトさんは?」

 

タクトさんがいないのに気が付いたのはミルフィーさんでした。

 

「おかしいね・・・。さっきまでこの辺にいたはずなのに・・・・・。」

「私・・・探してきます・・・・・・・。」

 

私はタクトさんを探しましたがどこにもいなかったのであきらめて戻ろうとした

ときタクトさんが『白き月』の大広間にいました。

 

「タクトさん・・・・どうしたんですか?」

「あ、ヴァニラ。あそこは結構疲れるところだったから少し散歩しながらここに

いたんだ。」

「そうでしたか・・・・・。あの・・・・タクトさん。

私と踊ってくれませんか?」

「ど、どうしたんだい?急に・・・。」

 

ラストダンスの際、私は戸惑っていたので自分の納得のいくようなダンスが

できませんでした。今ならできる・・・・そう思いタクトさんに伝えました。

ここなら誰にも見られないと思ったからです。

 

それを聞き、タクトさんの答えは・・・・・・・・・

 

「いいよ・・・・。ヴァニラがそう望んでいるのなら、俺も喜んで君と踊るよ。」

「タクトさん・・・・・ありがとうございます。」

 

 

 

そして、私たちは大広間でダンスをしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい感じじゃないのかい?あの二人・・・・。」

「そうですわね・・・・・。」

 

大広間の間からフォルテさん・ミントさん・ミルフィーさん・ランファさんが

私たちの様子を見ていました。帰りが遅いので見に来たそうです。

(そのとき私は気づきませんでした・・・・。)

 

「わーいいなー。私もあんなふうに踊りたいな。」

「ちょっと!?ミルフィー、あまり大声ださないでよ!バレちゃうじゃない!」

 

「ん?」

「どうしたんですか?タクトさん・・・?」

 

ダンスの途中で止め、タクトさんはあたりをみまわしました。

 

「いや、なんか誰かに見られているような・・・・・。ごめん、気のせいだ。

さ、続けよう。」

「はい・・・・・・・・。」

 

 

私たちは祝勝会を忘れ、踊り続けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時が流れ・・・・・・半年後・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

タクトさんは新しく辺境調査の司令官に選ばれ、旅立つこととなりました。

私もこの調査に同行することになりました。私は宇宙港でみなさんと別れの

あいさつをしたあと、エルシオールの公園に私は動物たちを連れていきました。

少し遅れてタクトさんがきました。

 

 

「す、すごい数の動物だね・・・。」

「クジラルームから連れていました。これが宇宙マルハチドリ、それと・・・・

宇宙ウサギです。」

「ヴァニラはずいぶん笑うようになったね。」

 

タクトさんにそういわれたとき自分がいままで以上に笑うようになったことに

気づきました。

 

「そうでしょうか?・・・・でもタクトさんのおかげで変われたことができまし

た。・・・タクトさん、これからもずっと一緒にいてください」

 

「ああ、もちろんさ。これからもなにかとあるかもしれないけど、ヴァニラは

俺が守るよ。」

 

「ありがとうございます・・・・・タクトさん・・・・。」

 

 

 

こうして、私たちは辺境調査の旅に出ました。

その間、私はタクトさんと他の動物たちと共にする時間が多くなりました。

そして、タクトさんと過ごしているうちに『恋愛感情』というものが芽生え始め

ていました。しかし、私はまだわたしには『恋愛』というものがわかりません

でした。そして、身体の異常だとそのときのわたしは思っていました・・・・。

 

 

 

 

             

 

 

 

                     第一部第六話「究極の修理、そして最高の笑顔を」 終

           第二部Moonlit Lovers編へ続く・・・・・。

 

 

 

 

 

 

とうとう第一部、完結しました。まさかこれだけ長くなるとはおもってもいませ

んでしたね・・・・。バンバン書きたいのですがまだMLとELの本編をゲーム

でやっていないのでここで少し休憩にさせていただきます。

ではまた後ほど・・・・・・・