第二話「告白」
「まいったな・・・・・。」
戦闘が終わり、ランファ、ちとせ、ヴァニラがブリッチに戦果報告をしにきた・・・・・そこまではよかった。だがヴァニラが突然、胸が痛みだして
医務室へと走ってしまった。
心配になった俺は医務室へと行った。そしたら、また痛みだしたというのだ。ケーラ先生は口にこそ出さなかったが、そもそもの原因は俺に
あったらしい。ヴァニラはこの症状を治すためにランファに相談しに部屋に向かった。ヴァニラが医務室を出たあと、ケーラ先生は改まって
俺に言ってきた。
「人って変わるものね・・・・。あのヴァニラが恋わずらいにかかるなんてね。で、あなたはどうなのよ。マイヤーズ司令?」
「どうって言われても・・・・・・。」
「ヴァニラを泣かせたらどうなるか・・・・わかっているわよね?マイヤーズ司令。」
このときのケーラ先生はとても恐ろしく見えた・・・・。
こんなこともあり、俺は司令官室で悩んでいた。現在、エルシオールはクロノ・ドライブを経て他のエンジェル隊との合流ポイントに向かっている。
「まさか、ヴァニラが俺のことをそんな風に見ていたのか・・・・・。」
俺は椅子に座り込み今後の行動と一緒に考えていた。しかし、今俺の頭の中にあるのはヴァニラのことだけだった。
「ヴァニラはまだ自分が抱いている感情の正体に気づいていない。それにどうすればいいのか戸惑っている・・・。じゃあ、俺はどうなんだ?」
俺は自分に問いかけてみた。ヴァニラは俺のことを想っている・・・。しかし、俺はどうだ。俺はヴァニラを妹のようにしか見ていなかった。
そして、俺はその想いに答えなければならなかった。
「よし、ヴァニラの部屋に行こう。ヴァニラと話して安心させてそれから俺の気持ちを伝えよう。」
俺はそう決意し、司令官室を出てヴァニラの部屋に向かった。
しかし、部屋にはいなかった。ほかにもいろいろなところへ行ったが、見つけられなかった。そのとき、俺はあることに気がついた。
「ん?ちょっと待てよ。つまり、早い話『恋とは何か』ってことをヴァニラに教えることだよな・・・・?そんなこと話せるわけないじゃないか!!」
そんなこと、本人に言えやしない。心の中で悪戦苦闘しているときに声が聞こえてきた。
「あの・・・・、タクトさん。」
「おわっ!!」
その声の主はちとせだった。
「どうかしたのですか、タクトさん?」
「い、いや。なんでもない。それよりどうしたんだい?」
「はい、実は・・・・・・。」
内容はちとせに頼んだ例の正体不明のメッセージのことについてだった。ちとせの報告によるとコード変換などをかけて大部分は解読できたらしい
が、一部特に重要なところだけはどうしても解読できないらしい・・・・。
「率直に申し上げて、これ以上の解読は不可能です。せめて、この言葉の手がかりになるサンプルがあれば・・・・。」
ここまで来てあきらめるのはもったいない・・・俺は必死に考えた。そして、頭の中にひとつのことが浮かんだ。
「もしかしたら、あれが役に立つかもしれないな・・・・。ちとせ、すまないけど一緒に来てくれないか?」
「え?は、はい。」
そういうと俺はちとせをある場所に連れていった。
「ここは倉庫・・・ですね・・・。ここにサンプルが?」
「そうだ。ここにあるのは俺たちが半年の辺境調査で見つかったEDENの産物だ。もっとも、未知のロストテクノロジーなんてものは見つからな
くて、見つかったのはここにあるガラクタだけだったよ。」
すると、ちとせは置いてあるサンプルを手あたり次第に探し始めた。手に持って見たり、文字を調べたりその目はとても輝いているようにも見えた・・・。
「役に立ちそうかい?」
「たちますとも。これで解読できなかったところも解読できそうです。ありがとうございます、タクトさん。」
その言葉を聞いたときには少しうれしかった。半年の辺境調査が無駄にはならなくてよかったと心から思った。そのとき、俺の腹の虫が大きく
唸ったのだ。思えば、ヴァニラのことを司令官室の中でずっと考えていたので食事もとっていなかった・・・・。
「食事を抜くなんて体によくありませんし、不健康ですよ?」
「ちょっとヴァニラのことを考えていてね。」
「ヴァニラ先輩がどうかしたんですか?」
「いや、なんでもないよ。それよりもお腹がすいたな。ちとせもよかったら一緒にどうだい?」
「よろしいのですか?では、お供させていただきます。」
ちとせはサンプルをその場におき、俺と一緒に食堂へ向かった。
食堂へ着いた。しかし、不思議な匂いが食堂の中を包み込んでいた。
「なにか、薬でも作っているのでしょうか?それに葉っぱの匂いがしますね。」
「いいえ・・・・。薬ではありません・・・・。スープを作っていました。」
食堂のちゅうぼうの中から、ヴァニラが出てきた。その手には、スープのようなものがあった。
「ヴァニラ先輩。その手に持っているのは・・・一体なんなのですか?」
「これは・・・・・ブルースープというものです。」
「ずいぶん、濃い色のスープだね・・・・。材料は何を使ったんだい?」
俺は、不思議に思いヴァニラに聞いて見た。ヴァニラが言うにはパセリ、大根の葉っぱなどいろいろな葉を使っているそうな・・・・。
(なるほど・・・・。ブルー=青、スープ=汁。つまり青汁ってことか・・・。)
「タクトさん・・・、どうぞ・・・。」
ヴァニラはそう言うと青汁の入ったスープを俺に渡した。本当は飲みたくはなかったがヴァニラがせっかく作ってくれたものを無駄にはできなかった。
「よし!こうなったら飲み干して、男を見せてやる!!」
「あの・・・タクトさん。どうしてそんなに気合が入っているのですか?」
ちとせはまだこのスープが青汁だというのにまったく気づいていないようだった・・・。そんなことはどうでもいい。一気に飲まないと気絶してしまうからな。俺は一気に飲み干した。
「ふー・・・・。」
「どうしでしたか、タクトさん?」
(まずい・・・・。)
そんなことは百も承知で言えなかった。そのとき、テレビで見たある台詞を思い出した。
「うまい!!もう一杯!!」
「では、おかわりを・・・・・。」
その言葉を聞いた瞬間、寒気がした。
「すまない!急に用事を思い出した。失礼するよ!!」
そういうと俺は急いで食堂を後にした。別に用事などはなかった。しかし、さすがにもう一杯飲んだらさすがにきついとおもった。
俺は仕方がなくブリッチに向かうことにした・・・。
(ブリッチ・・・・)
現在、エルシオールはクロノ・ドライブに入っている。
「げっぷ。まだ、口の中が青汁の匂いがするよ・・・・。」
俺がブリッチの椅子に座りそんな独り言を言ったときにアルモが突然質問してきた。
「マイヤーズ司令、マイヤーズ司令!!ヴァニラさんとはどうなったんですか?」
「もう告白したんですか?」
アルモに続いて、ココも俺に質問してきた。
「ブ!!なんで君たちがそのことを知っているんだ!?!?」
「また、その話か・・・。いい加減に聞き飽きた。」
レスターまでこのことを知っていた。
「で、どうなんですか?マイヤーズ司令?」
「私たち『ヴァニラさんを応援する会』としては早く言った方がいいと思いますよ。」
俺に追い討ちをかけるようにアルモとココが容赦なく言葉を浴びせてくる・・・。
(ん、ちょっと待て。)
「その『応援する会』ってなんだい?」
「はい、文字通りの意味です。ヴァニラさんの恋の行方を応援する会です。ランファさんがその会長なんですよ。」
(なるほど・・・・・。ランファだったら興味ありげだからな。だから、こんなに噂がたっていたわけだ。)
そんなことを思っていた俺はとにかくランファに事情を聞くためにランファの部屋に行くことにした。
(もうひとつの理由は質問攻めにされてもたまらないからだ)
「それと、ヴァニラ親衛隊の中に不振な動きがあるようなので気をつけてくださいね。」
「なんでも『マイヤーズ司令妨害分隊』という組織ができているみたいですよ。」
突然、アルモとココがそんなことを言ってきた。
(そんな組織までできているとは・・・・。この艦って本当に不思議だな・・)
二人のことを無視してブリッチを出ていく際、アルモが大声を出してこんなことを言ってきた。
「男だったら、ビシッと決めてくださいよー!!」
ランファの部屋に着いたら、中から声が聞こえてきた。
「タクトが好きそうな服ね・・・・・。やっぱり女らしさを追及するならやっぱりチャイナドレスよね。ちょっと着て見てよ、ヴァニラ。」
「はい・・・・・。」
外からの解釈では部屋にはランファとヴァニラがいる。ちょうどヴァニラがいるから話をしようと思い、インターフォンを押した。
(もちろん、ランファの話も含んでいるが・・・。)
「おーい、ランファ。いるかい?」
「げ、タクト!?ちょ、ちょっと待って。今取り込み中だから!!」
(なんか、まずかったか?)←タクトの心の声・・・。
「ヴァニラ、タクトが来たわよ。準備はいい?」
「ランファさん・・・・。胸のあたりが足りません・・・・。」
「確かに・・・。じゃあこのオレンジ詰めてみようか?」
「これは・・・・不自然です・・・・・。」
なかなか扉が開かない・・・・。
「うーん、じゃあしょうがない。セカンド・ミッションはボツってことで。次のミッションに行きましょう。
タクト、ドキドキ大作戦。サード・ミッション、スタート!!」
(なんですとー!!一体、どんなミッションなんだ・・・?)←タクトの心の声・・・。
「さ、ヴァニラも言って。」
「あ、はい・・・・。タクトさん・・・・ドキドキ・・・大作戦。サード・・・・ミッション・・・スタート・・・・。」
「うんうん。我ながら、いい作戦名ね。やっぱり作戦名は大事よね。」
(・・・・・・・・。)
「これで・・・・私の症状は治るのですか・・・・・?」
「もちろん。これが成功したらハッピーになること間違いなしよ!それにこういうこと考えるのってなんかおもしろい気がしない?」
「私には・・・・よくわかりません・・・・。余計ドキドキします・・・。ですが・・・不思議で・・・あたたかな・・・。」
我慢できなくなった俺はもう一度インターフォンを押した。
「おーい、ランファ。まだかい?」
「はいはい。今、開けるから。さ、ヴァニラは次のミッションに入って。私も後で行くから。」
ようやく、扉が開いた。開くまでどれだけ待ったことやら・・・・。
「やあ、ランファ。それに・・・・・ヴァニラ・・。」
「ところで、何のよう?」
「タクトさん・・・・・。・・・失礼します・・・・。」
俺が部屋に入ってから、一分も経たないうちにヴァニラはランファの部屋から出て行ってしまった。俺は追いかけようとしたがランファに道を
塞がれて追えなかった・・・。
「ところで、私に用があったんじゃないの?」
「もちろん、ランファにも用があったんだ。・・・・ランファ。ヴァニラに何を吹き込んだんだ?それに『応援する会』って・・・・。」
「あんたがだらしないからに決まっているじゃない。」
いかにもランファらしい答えだ・・・。
「ほかに方法がいくらでもあったじゃないか。例えば、小説とか映画とか・・・・。」
「一緒に見たわよ。恋愛映画。」
「それで、ヴァニラは?」
ランファの話では全然ダメだったらしい・・・。内容は不治の病にかかった少女とそれを必死で治す青年医師の話だったらしいが、ランファがヴァニラに
感想を聞いたが『どんな難病でも一生懸命治療することが大切ですね。』ということだった・・・。
「男のほうに感情移入してどうするっていうのよ!それを聞いてわかったの。ヴァニラには乙女心がないってことが!だから、外面から
乙女チックを引き出そうってわけよ。」
「うーん。なんとなくわかるような、わからないような・・・・。」
「とにかく、がんばりなさいよ。さてと・・・・・次の作戦があるからさっさと出ていって。」
そういうとランファは俺の首のあたりをつかんでいきなり部屋から追い出されてしまった・・・。仕方がなく俺は違う場所に行くことにした・・・・。
「思えば、俺がしっかりしてないからな。早くヴァニラを見つけて話をしなくては。これ以上変な噂が立たないうちに・・・・。」
こうして、ヴァニラを探すことにした・・・。
どうもこうも行く場所がない・・・・。俺はリフレッシュをしにクジラ・ルーム行くことにした。クジラ・ルーム行くとランファとちとせの姿があった。
「やあ、ちとせ、ランファ。なにしているんだい?」
「あれ、タクト?なんでここにいるのよ?」
(俺が来てはいけなかったか・・・・・。)
「別にいてもかまわないだろ。それに二人の足元にあるそのボックスは?」
「これですか?これは・・・・・」
ちとせが言いかけたとき、ランファがあいだに割り込んできた。
「あー、ダメ!!これは秘密なんだから!!」
「そうなの・・・・ですか?」
「ランファ、またなんか企んでいるだろ?」
「いやね、人聞きが悪い。女のヒ・ミ・ツってやつよ。」
そのとき、ヴァニラがクジラ・ルームにやってきた。
「お待たせしました・・・・。あ・・タクト、さん。」
「これで全員そろったわね。じゃあね、タクト。私たち奥のほうにいるから、あんたはクロミエのところにでも行ってきなさい。のぞいちゃダメよ。」
そういうと三人は奥のほうに行ってしまった。それにランファが言っていた『のぞいちゃダメよ。』ということ言葉に妙な殺気と気迫を感じたのは
俺だけだろうか・・・。
管理室に行きクロミエと少し雑談をし、宇宙クジラにエンジェル隊の心の中を見せてもらいクロミエにお茶をごちそうになった。そろそろ、
他のどこかに行こうとしたとき、外からランファの悲鳴が聞こえてきた。
「あ!ダメです!!」
「ダメ・・・・おとなしくして・・・・。」
他にもちとせとヴァニラの声もしたので管理室を出て、ヴァニラたちがいるところへ急いだ。着いてみるとランファとちとせの体が毛糸で絡まっており、
ヴァニラはムギムギを追いかけていた。
「ダメ・・・・ムギムギ。それはオモチャじゃないの・・・・・。」
「タクト、その宇宙ウサギを捕まえて!!」
状況のできないまま俺にも毛糸が絡まってきた。
「えーと、まずはこの糸を引っ張ってみるか。」
しかし・・・・・・。
「あーそれはダメ!どんどん解けていっちゃうじゃない!!」
その糸はどうやら編んでいたものにつながっているようだ。
「じゃあこの糸はどうだ!?」
だが、これも・・・・・。
「タ、タクトさん。それはダメです。毛糸が・・・・く、食い込むんですけど・・・。」
次に俺が引っ張ったのはランファとちとせに絡まっている毛糸らしい。だんだんワケがわからなくなってきた・・・・。
「タクトさん・・・・・・ムギムギがそっちに行きました・・・。」
ムギムギを追いかけていたヴァニラが俺に言ってきた。確かにムギムギを先に捕まえるのが先決だな。
「よーし、おとなしくしていろよ・・・・・・よし!捕まえた!!」
ようやくムギムギを捕まえることができ、次にランファたちに絡まっていた毛糸を解くことにした・・・・。
ランファの話によるとヴァニラに編み物を教わっていたらしくヴァニラがセーターを編んでいるのをみていたら、自分たちもやりたくなったらしい・・・・。
一休みをしていた際、ヴァニラに宇宙ウサギを見せてもらっていたがムギムギがきれいな毛糸を見てはしゃいでしまい、
悲惨な結果になってしまった・・・・。
「すみません・・・・・・。」
「ヴァニラがあやまることはないわよ。もう一回作ればいいんだから、作り終わったら弟たちに送ってあげようっと。」
「私は母に送ってあげたいです。ヴァニラ先輩は誰に送るんですか?サイズも大きめですし・・・男の人の色も使っているようですが両親や兄弟に?」
「いいえ・・・・・・私には・・・・家族は・・・・・。」
「え・・・・。す、すみませんでした。私、無神経なことを言ってしまって・・・・。」
「いいえ・・・、いいんです。ちとせさんは悪くありません・・・・。」
なんか暗い雰囲気になってきたのでランファが別の話し始めた。
「・・・でも、エンジェル隊ってなんか姉妹みたいじゃない。私はヴァニラのこと妹のように思っているし。」
「いまいち頼りないお姉さんだな、ヴァニラ。」
「余計なお世話よ。」
「ランファ先輩はりっぱで頼りあるお姉さんですし、それにタクトさんも優しいお兄さんです。」
「優しい?どうみてもヒヨヒヨじゃない。」
(相変わらず容赦ないな・・・・ランファは・・・。)
「あの・・・・・・。ひとつ聞いてもよろしいでしょうか・・・。『きょうだい』と何人もいるのですか?」
沈黙を保っていたヴァニラが口を開いた。
「うーん、私の家の場合は結構多いほうかな・・・。」
「みんな・・・・同じ・・・なのですか・・・?みんな・・・同じくらい・・・大切なものなのですか・・・?」
「そうよ、弟や妹たちもヴァニラも私にとっては大切なきょうだいよ。タクトもそう思うでしょ?」
「ああ、俺にとってエンジェル隊はかけがいのない大切なものさ。」
すると、ヴァニラは深く考え込んでいた。
「みんな・・・・同じ・・・・・。なにかわかる気が・・・・・。」
その様子を見ていたランファは直接口には出さなかったが、ヴァニラにヒントらしきことを言った。
「あー、なるほどね・・・・・。ヴァニラにとっては兄貴じゃだめなのよね。」
「どうしてですか?」
「だって、きょうだいだったら『特別』にはなれないじゃない。ね、タクト?」
ランファにそういわれたときはじめはわからなかったがすぐに言葉の意味を理解した。
「ランファ先輩が特別なのですか・・・?タクトさんの。」
「へ?ち、ちがう誰がこんなやつなんかと。」
すると、ヴァニラが胸のところを押さえ始めた。
「ヴァニラ、どうしたの?苦しいの?」
「また・・・・胸のあたりが苦しくなってきました・・・・。」
「ヴァニラ・・・・・聞いてくれ。それは・・・・。」
「ダメです・・・・・、もう・・・・。」
そういうとヴァニラは走って出てしまった・・・・。
「タクト!この甲斐性なし!せっかくいいチャンスだったのに!!なんで早く言わないのよ!!」
(言うつもりだったが、ランファが話をややこしくくるからだろ・・・。)
「あの・・・・・ランファ先輩。どうしてヴァニラ先輩は走っていってしまったのですか?」
「ちとせもなかなか大物ね・・・・・。ま、そのうちわかるわよ。」
「はあ。そうですか・・・・・。」
この出来事の後、俺はヴァニラを探したが結局、見つからなかった。
(司令官室)
ヴァニラが見つからず、俺はいったん司令室に戻っていた。そして、エルシオールが通常空間に出たので、ブリッチに行こうと考えていた。
そのとき、部屋のインターフォンがなった。
「誰だろう、はーい。」
「・・・・タクトさん・・・・。入ってもよろしいですか・・・・?」
声の主はヴァニラのものだった。
「ああ、もちろん!実はヴァニラに大事な話が・・・・。」
その続きの言葉が言い終わらないうちにヴァニラが入ってきた。
「失礼します・・・・・。」
そのときの姿はまさに驚くべきことだった。ヴァニラの姿は軍の制服姿ではなくメイドの服を着ていたのだった。
「え!?ヴァニラ・・・!?」
「・・・・・お茶をお持ちしました・・・・。」
「どうしたんだい?そのかっこは?」
「・・・・・・・・・・。・・お・・・・お茶・・・。」
ヴァニラがお茶の入ったコップをずっともっていたので悪いと思いもらうことにした。
「あ、ああ。いただくよ。で、どうしたんだいそのかっこは?」
「ランファさんからお借りしたものです・・・・・。・・・おかしかった・・・ですか?」
また、ランファの仕業か・・・・。そういえば、ホールでランファが言っていた作戦4の衣装がなくなっていたと言っていたがこれのことだったのか・・・・。
俺はふとそんなことを思い出していた。
「い、いや、そんなわけじゃないんだ。ただ、こうして見ているとなんか新鮮な気が・・・。」
「・・・・チ・・・・・・。」
「・・『チ』・・・・?」
「・・・・・・チーズケーキも・・・・・・あります・・・。」
そういうとヴァニラはチーズケーキのひとかけらをスプーンの上に乗せて俺のほうへ向けてきた。
「・・・・・・・。」
「スプーンの先は俺の方に向いているけど・・・・・。」
「・・・あ・・・・・・。・・・・あ・・・・・は・・・・・。」
「?」
ヴァニラはなにか言いかけているようだがどうもなかなか言えないらしい・・・。
「はい、あーん・・・・・・・。」
「ヴァニラ!?」
「・・・・あーん・・・・・。」
少し、恥ずかしい気もあったが俺はヴァニラの言うとおりに口を開けヴァニラはスプーンを俺の口の中に入れた。
しかし、どうも変だ。チーズケーキと言っていたがどうも味がしなかった。
「・・・・ん?このざらつきと味は・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「おいしいよ。この・・・宇宙トウフ・・・。」
「・・・トウ・・・フ・・・?」
ヴァニラは自分が持っていたものはずっとチーズケーキだと思い込んでいたようだ。
「間違えました・・・・・。チーズケーキを持ってくるはずだったのに、隣にあったトウフを持ってきてしまいました・・・・・・。」
「でも、俺のために持ってきてくれたんだろ。ありがとう、ヴァニラ。」
「・・・・・うまくいきません・・・・。・・・・どうしても・・・・。・・・失礼します・・・。」
そういうとヴァニラは部屋を出て行こうとした。しかし、ここで話をしなかったらランファにもうしわけがたたないと思った俺はヴァニラの手を引き、
そして止めた・・・。
「待ってくれ!ヴァニラ!!」
「ダメです・・・・・。私・・・・どんどんひどくなってきています・・・。もう・・・・タクトさんの声を聞くだけで、胸がすごく痛むのです・・・・。」
「ヴァニラ、よく聞いてくれ・・・・。ケーラ先生が言っていたようにその症状は病気じゃないんだ。多分・・・・俺が治せると思う・・・・。」
すると、ヴァニラは答えを求めているようにも見え、また不安そうにも見えた。
「タクトさんは、私の症状を知っているんですか・・・・・?・・・・・・・ランファさんの教わった方法では・・・・直らないんです・・・・。」
「ヴァニラ、それは多分・・・・・・」
「多分・・・・・?」
「多分・・・・・・『恋』だと思うよ・・・。」
「・・・・・・コイ・・・・?」
ヴァニラは首をかしげながら俺も顔を見ている。俺は順々にヴァニラに説明することにした。
「俺も言えないけど、『特別』に人を好きにこと・・・・かな?」
「『特別』に・・・・・好き・・・・?」
俺はヴァニラにいくつか質問をした。
「ヴァニラはエンジェル隊のみんなやケーラ先生、それにムギムギは好きかい?」
「・・はい・・・・・。」
「俺のことも好きかい?」
「・・・はい・・・・・。」
「じゃあ、みんなの『好き』と俺に対する『好き』はどうだい?」
「・・・・・・それは・・・・・。」
「それとも何かが違うかい?」
ヴァニラは顔を赤らめながら、必死に考えていた。
「・・・そう・・・だと思います・・・・。皆さんに抱いているものとタクトさんに抱いているものとでは何かが違います・・・・。みんな・・・同じ『好き』なのに・・・・。」
「それが『恋』っていうものだよ。」
説明することは俺にとって恥ずかしかったがこれでヴァニラの症状が治るのなら安いものだ・・・・・。
すると、ヴァニラはようやくわかったように答えた。
「あ・・・・・・・・。・・・・恋・・・・!」
「ようやく、わかったようだね。」
あとは、ヴァニラに自分の気持ちを伝えることだけであった。しかし、突然エルシオール全体に警報が鳴った。
「タクト!ブリッチに来てくれ!!敵襲だ。」
「わかった!今からそっちへ行く!!」
(さっきの戦闘も今の戦闘もそうだがなんでこうもタイミングが悪いんだ。)
俺はそう思った。
「私も・・・・出撃準備があるので・・・・・・失礼します・・・・。」
「ヴァニラ、ちょっと待ってくれ。ヴァニラと・・・いっぱい話がしたいんだ・・・。」
「でも・・・・敵が・・・・。」
「わかっている。だから、戦闘が終わったら話をしよう。」
「戦闘が終わったら・・・・・・・・・。わかりました・・・・・。私もタクトさんと話がしたいです・・・・・。」
「ああ、それまでお互いがんばろう。」
それから、俺はブリッチのほうに向かいヴァニラは自分の部屋に戻っていった・・・。
(ブリッチ)
「おまたせ!レスター。状況は!?」
「現在、敵の無人艦隊は目の前にズラリと展開している。幸い、敵のリーダーが乗っていたタイプはいないようだ。どうする、タクト?」
現在、通信障害が起きているし増援を送ってもらうにしても時間が足りない。だったら一気にここを突破するしかない。
「ここは正面突破するしかないな。それに無人艦ならパターンも読める。」
「わかった。」
「エンジェル隊、聞こえるか。今から、正面の敵を突破する。きわどい戦いになるかもしれないが、頑張ってくれ。」
「大丈夫よ。いつものようにボコボコにしてあげるわ。」
「了解しました、タクトさん。」
そして、ヴァニラの顔がスクリーンに出される・・・。
「ヴァニラ・・・・・。」
「タクトさん・・・・・・。」
「また後で・・・・・・な。」
それ以上のことは言わなかった。ヴァニラにもそのことはわかっているはずだ。
「はい・・・・・・。私・・・・がんばります・・・・。」
その通信を聞いたアルモとココが急に騒ぎ出した。
「ねーねー、ココ!聞いた!?」
「うん。目と目で会話してるって感じだったわよね!!」
「ついに告白を!!」
それを見ていたレスターに二人とも怒られたのは言うまでもない・・・・。
(戦闘省略)
戦闘はヴァニラの活躍のおかげで勝つことができた。俺はみんなをねぎらうために格納庫へ向かった。
「みんな、お疲れ様。」
「あ、タクトさん。」
俺の言葉に一番反応していたのはちとせだった。
「タクトさん、私の今回の戦い方はどうでしたか? 今回は訓練以上の成果が出ました。」
「うんうん、たいしたものだよ。おかげで助かったよ。」
一方、ランファのほうは・・・・
「オ〜ホッホッホ。私にかかればチョチョイのちょいよ!」
「相変わらず、ランファはすごいな。」
ところがヴァニラの姿が見当たらなかった。ちとせに話では上のブロックに向かったそうだが・・・・。
(また、行き違いか・・・・・・。)
「と・こ・ろ・で。」
ランファがいきなり話の話題を変えてきた。
「タクト、ヴァニラにはちゃんと・・・・。」
「ああ、いまから伝えに行くつもりだ。」
「そう?ならいいんだけど。」
俺がヴァニラを探すと言ったときにちとせは『自分も探しにいきます』といったがランファがうまくまとめてくれたおがけで俺は一人ヴァニラを
探すことにした。ランファには感謝が絶えない・・・・。
俺は今ヴァニラの部屋の前にいる・・・・。
とうとうこの時が来てしまった。
俺は緊張しながら部屋のインターフォンを押した。
「・・・・・・・・・。」
反応がない・・・・・。
もう一度押してみたがまったく反応がなかった。どうしたらいいかわからくなり困っていたところ突然、声がした。
「あのー・・・・・。」
「うわぁ!!」
よく見てみるとそれは『ヴァニラちゃん親衛隊』の隊長だった。
(びっくりした。しかし、どっから出てきたんだ・・・・・・・・?)
俺は親衛隊隊長を見ながらそんなことを考えていた。
「マイヤーズ司令が来るのをお待ちしていました。ヴァニラちゃんは銀河展望公園に向かいました。それと・・・・・これを・・・・。」
親衛隊隊長が手に握っていたものを俺に渡してきた。それはヴァニラに作ってあげた花冠の一部のシロツメグサの花だった。
「・・・・・行ってあげてください・・・。」
「・・・いいのか?だって君たちは・・・・・。」
「確かに、親衛隊全体ではマイヤーズ司令の存在は許しがたいです。でも・・・・俺たちじゃ・・・ダメなんです。だから行ってあげてください。」
隊長の目にはわずかながら涙が出ていた・・・。
「・・・・わかった・・。」
「ですが!!ヴァニラちゃん泣かせたりしたら総勢52名の親衛隊隊員が黙ってはいませんから!!!」
(確かにこの人たちを怒らせたらなにをしでかすかわからないからな・・・・。)
「とにかく、教えてくれてありがとう。」
俺は隊長に感謝し展望公園へと向かった。
(銀河展望公園)
銀河展望公園に着いた俺はヴァニラを捜した。しかし、付近を捜してもヴァニラは見つからなかったが、きっとあの花畑にいるのだろうと思い
丘のほうに行った。そうすると、ヴァニラは一人ぽつんと立っていた。
「ヴァニラ・・・・・。」
俺がそう呼びかけるとヴァニラはこっちを向いてきた。その顔には驚きの声も含まれていた。
「タクトさん・・・・どうして・・・・ここに?」
「ヴァニラが公園のほうに向かったって聞いたからね。花冠・・・・・まだ持っていたんだね。」
「はい・・・・・・私にとって、大切な・・・・宝物ですから・・・。」
そういうとヴァニラは司令官室での会話の続きを話し始めた。
「私が・・・・・タクトさんに特別な感情を持っているのはさきほどの話で理解できました・・・・。しかし・・・・・タクトさんは・・・どうなのですか?」
ヴァニラは俺に問いかけてくる。俺からいざ言おうとしてもなぜか言葉が出なかった・・・。
「私は・・・・タクトさんの・・・・妹・・・・なのですか?」
(ヴァニラ・・・・・・。)
「妹では・・・・イヤです・・・・。私はタクトさんの・・・・特別に・・・・。」
「・・・・『特別』になりたい・・・です・・・・。それでは、いけませんか・・・?」
その言葉を聞かされたとき、俺は唖然としてしまった・・・・。本来俺が言うべき言葉なのに・・・・・。
「・・・・けっきょく先に言われちゃったな・・・・。」
「え・・・・?」
「そうさ、君は妹なんかじゃない。俺にとって君は特別だ。俺も君の『特別』になってほしい。」
そう・・・・これが俺の今の気持ちだ。ヴァニラの顔はとても華やかだった。
「タクトさん・・・・・・。ずっと・・・・一緒にいてくれますか・・・?」
「ああ、もちろんだ。ずっと、ずっと一緒だ。」
俺はそういったあと、ヴァニラと指きりをした。これからもぞっと一緒にいようという証として・・・・・。
第二話「告白」 終
第三話に続く・・・・・。
なんだか、タクトの場合同じ男だから感情移入ができるが、ヴァニラの場合表現が結構難しいですね。(なんせ女性ですから)
いかがでしたか?今回はタクトになったつもりで書いてみましたが抜けている部分があります。(最後のブリッチの場面)など・・・・。
やっぱり、なんか私の場合なんか台本みたいに文章ができてしまうのでとても情けなくおもえます・・・・・・。
できれば、読み終わったあとに意見または感想をお願いします。
(できれば、どうしたら台本みたいにならないか教えてください)