俺たちはレナ星系に向かっていた途中資源衛星レナミスから通信が途絶えてしまったことによりレナミスへとむかうこととなった。

その途中で補給などを受けた。(しかも、シヴァ様とクロノ・ブレイク・キャノンというなんともいえない組み合わせで・・・・。)

 

 

 

しかし、レナミスで俺たちを待っていたのは信じられないものであった・・・・。

 

 

 

 

 

『黒き月』の復活・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

復活した『黒き月』を破壊したあとに出てきた巨大戦艦・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

クロノ・ブレイク・キャノンが通じない上、絶体絶命の瞬間俺たちを救ってくれた『黒き月』のコア・・・・・・。

 

 

 

そして、『黒き月』の管理者ノア・・・・・・・

 

 

 

 

戦いはより厳しさを増して行く・・・・・・・・。

 

 

 

                                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                     第四話「二つの月の真実」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、どうしたものか・・・・・・・。」

俺は今、ノアに対する対策を練っている・・・・・。

 

 

現在、『黒き月』のコアは今倉庫にある・・・・。

 

俺たちを助けてくれたまではよかったがノアは俺たちにさんざんグチを言い早く『白き月』へ連れて行けといい、さっさと『黒き月』のコアに戻ってしまった・・・・。

 

 

ルフト先生とシャトヤーン様に連絡をしたあと俺たちは至急、本星に帰還することとなった。

先生の話によると俺たちがさきほど戦った巨大戦艦が本星へと侵攻しているという・・・。一刻の早く敵の情報がほしいため、『白き月』に連れて

きてくれと言うシャトヤーン様と先生の言葉に従い、現在クロノ・ドライブを繰り返し本星へと向かっていた。

その間にノアから話を聞こうとしたがまったく相手にしてもらえなかった・・・・。

 

 

 

 

 

 

そんなこともあり、司令官室に入りどうしたら話してもらえるかどうか考えていた。

悩んでいるときに部屋のインターフォンが鳴った。

 

「ヴァニラです・・・・入ってもよろしいですか?」

「いいよ、入ってくれ。」

 

そういうとヴァニラは部屋に入ってきた。

そのときヴァニラはお盆を持っていた。そのお盆の上になにやらいろいろなものが乗っていた・・・・・・。

 

「ヴァニラから来るなんて珍しいね。」

「カモミールティーを・・・・・お持ちしました・・・・。」

「紅茶か、ありがとう。」

「それからシフォンケーキに・・・・、こちらが駄菓子、抹茶も・・・・・。」

 

なんかすごい組み合わせだな。ケーキは腹に入りそうだが抹茶と駄菓子はさすがに入らないかもしれないな・・・・。

そんなことを思っているとヴァニラは俺のほうへ近づいてきた。

 

「ん・・・・・?」

「・・・・・・失礼します。」

 

 

バシッッ!!

 

 

そういうとヴァニラはいきなり俺の頭へと脳天チョップをしてきた。

これはかなり効いた。そして・・・・・・。

 

「しゃんと・・・・・しなさい・・・!」

「ヴァ、ヴァニラ!?」

 

いきなり頭を叩かれた理由は俺にはさっぱりわからないまま俺は唖然としていた。

 

「そう言えと・・・・・・フォルテさんが・・・・・・。」

「・・・・?いったいどういう・・・・・・」

「はい・・・・・・実は・・・・」

 

ヴァニラは説明をし始めた(ある人物をぬかして)それは一時間前のことだという・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私(ヴァニラ)は部屋にいてあることを考えていました。

それはタクトさんがなにか悩みなどがあるのではないかと思ったからです。私だけでは考えられなかったのでみなさんに聞くことにしました。

 

 

 

 

ミルフィーさんの部屋・・・・・

 

「どうしたの?ヴァニラ。」

「はい・・・・・実は・・・・」

 

私はなぜミルフィーさんの部屋に来たのか説明しました。

 

「う〜ん、タクトさんを元気づけることね〜。」

「なにか、ありますか・・・?」

 

ミルフィーさんは考えて唸っていました。そして、なにか考えたのか突然キッチンのほうに行ってしまいました。

五分後、ミルフィーさんがなにか手に持って私に差し出しました。

 

「ミルフィーさん・・・・・これは?」

「見てのとおり紅茶シフォンケーキだよ。冷蔵庫に余っているものがあったから切ってもってきたんだ。これならタクトさん元気が出るんじゃないかな?

きっとお腹がすいていると思うから。」

「ありがとうございます・・・・。」

「どういたしまして、ヴァニラもがんばってね。」

 

何をがんばるのか・・・・・・・。

私はそんなことを思いながらミルフィーさんの部屋から出て一旦自分の部屋に戻り、もらったケーキを冷蔵庫に入れてから次はミントさんの部屋にいきました。

 

ミントさんの部屋・・・・・

 

「なるほど・・・・・タクトさんが心配だから元気づける方法・・・ですか。」

「何かありますか・・・?」

「私からはとりあえず駄菓子を用意しますわ。あれからタクトさんは少し暗いように見えましたからね。それにしても・・・・・・」

 

ミントさんは、なにやら改まって私に言いました。

 

「ヴァニラさんはタクトさんが本当に好きでいらっしゃいますね。タクトさんのために自主的に取り組むなんていままでのヴァニラさんにはなかったことですから。これも恋人になったからかもしれませんね・・・・・。」

「・・・・・・・。」

「ふふ、冗談ですわ。ちょっと待っていてくださいな。」

 

そういうと、ミントさんは駄菓子が入っている部屋へと入って行きました。

 

しかし・・・・・・

 

今の私がここにいるのはタクトさんのおかげでした。だから、ミントさんが言ったことは冗談を含めて本当のことを言っているものだと思いました。

 

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます・・・・。」

 

私はミントさんから駄菓子をもらったあと、その足でちとせさんの部屋へと行きました。

 

 

 

 

 

ちとせさんの部屋・・・・・

 

「タクトさんを元気づける方法・・・ですか?」

 

なんだかみなさんほとんど同じことを言っているような気がします。普通に聞いたらこう答えることをわかるのですが・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・。」

「ヴァニラ先輩、どうしたんですか?」

 

そんなことを思っているうちにちとせさんが声をかけてきました。

私は我に帰りました。

 

「・・・あ、すみません。少し・・・ぼーとしていました。」

「そうでしたか、今から抹茶をもってきますね。元気づける方法は私にはこのぐらいしか思いつきませんでしたから。」

「いえ・・・・、ありがとうございます。」

 

 

 

「どうぞ、ヴァニラ先輩。」

 

ちとせさんが持ってきたのは抹茶の葉っぱでした。(私は私が飲む抹茶かと思いました。)

 

「この葉っぱは疲れている体によく効きますから、お茶にしてタクトさんに持っていってあげてください。」

「ありがとうございます。それでは、失礼します・・・。」

 

私はそのままフォルテさんの部屋に行きました。

 

 

 

 

 

フォルテさんの部屋・・・・・

 

「・・・・・で、今みんなに聞いてまわっているわけだね。」

「はい・・・・・。」

 

今フォルテさんは机の上にコレクションの重火器を並べ、ひとつずつ丁寧に磨いています。最初入ったときは一瞬戸惑いました。

 

「あたしなら、ビシッッと脳天チョップをくらわせるよ。」

「・・・・脳天チョップ・・・・・・。」

 

いかにもフォルテさんらしい意見でした。しかし、脳天チョップというのは少しやりすぎじゃないでしょうか・・・・。

 

「理由が聞きたいかい?」

「はい・・。」

「司令官がそんな元気がなくてどうするのって意味さ。司令官だったら司令官らしくちゃんとしろってあたしならいうけどね。ま、あたしができるアドバイスと言ったらこれくらいだけど。やるか、やらないかはヴァニラの自由だよ。」

 

フォルテさんの言う意見にも一理ありました。

 

「わかりました・・・・。やってみます。」

「そうか、がんばりなよ。それにこれだったら案外タクトもシャキっとするかもよ。」

「はい・・・・・では、失礼します。」

 

私は部屋を出て最後に残していたランファさんの部屋に行きました。

 

 

 

 

 

 

ランファさんの部屋・・・・・(これはみなさんだけに教えることでありタクトさんには説明しませんでした。)

 

 

「・・・・・で、タクトが心配だから何かできることはないかってことよね。」

「はい・・・・・。」

「そうだ、ちょっと待ってて。」

 

そういうとランファさんは本棚をあさり始めました。「あれでもないし、これでもない。」と一人ごとをいいながら時間が過ぎていきました。

 

 

十分後・・・・・

 

「あった、あった。これよ。」

 

ランファさんは私に一冊の本を渡しました。

本の題名はこんなものでした・・・・・・・・。

 

 

 

 

『あなたに教える彼氏を元気づける方法 100の手順 これで彼の心をゲット!!』

 

 

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

すごいタイトルです・・・・・。私は一瞬固まってしまいました。

 

「ヴァニラこれ読んだらきっと見つかるわよ。」

「は、はい。では・・・・・」

 

私はその本を読み始めました。

しかし、この本の内容には私が望んでいるようなものはありませんでした。

 

「どう、なにかあった?」

「・・・・・ありませんでした。」

「ウッソー!!なんでないの。これには恋の集大成がぎっしりつまっているのよ!!」

 

そんなことを言ってもないものはなかったから仕方がないじゃないですか。

そう思っていた私のところにランファさんが迫ってきました。

その顔には少しばかり殺気が入っているような気がしました。

 

「しょうがないわね・・・・・。ヴァニラちょっと耳を貸して。」

 

そういうとランファさんは私の耳元でつぶやきました。

私はこの言葉を聞いた瞬間、顔が真っ赤になってしまいました。

 

「この『元気が出るおまじない』をやればタクトもなにも言えないわ。」

 

一瞬戸惑いました。

しかし、私がタクトさんの恋人であり以上これが一番効率がいいとランファさんは言いました。

 

「わかりました・・・・・できるだけやってみます。」

「そうよ。なんでも挑戦しなくちゃ意味がないんだから。ヴァニラ、がんばってね。」

「はい・・・・・。」

 

こうして、みなさんからの意見を参考にタクトさんの部屋まで行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ということです。」

 

なるほど、それでこの差し入れか・・・・・。

そうかもしれないな。フォルテの言うとおり、もっとシャキっといないといけないな。

 

「・・・タクトさんは・・・・なにか困っていることがあるのですか?」

「実はノアに話をしてもらいたいんだけど相手にしてもらえなくてね・・・・。」

「ノアさんはなんと言っているのですか・・・?」

「『話たくない』の一点ばり。」

「でしたら・・・・ムリだとおもいます・・・。」

 

ヴァニラは静かに答えた。しかし、『白き月』に着く間に少しでもノアから敵についての情報が聞きたかった。

 

「ノアさんの・・・・・ノアさんの気持ちはどうなのでしょう?」

「ノアの・・・・・気持ち・・・?」

 

 

ヴァニラの質問に対して俺は疑問に思った。いきなり知らない人に教えてくれと迫られてもいやな気分になるだろうな・・・・・と、そのときの俺はそう思った。

 

「ノアさんのところへ行きましょう。」

「ヴァニラが行くのかい。でも、これは俺の仕事だから・・・・・」

「一緒に・・・・です。いつも一緒だと・・・・・」

「そうだったな・・・・・・ヴァニラ、ありがとう。」

 

そういうとヴァニラは顔を赤くしながらコクリとうなずいた。

部屋を出ようとした際、ヴァニラに聞きたいことがあった。みんなからの差し入れをもらったのは5人だけでランファのものがなかった。

 

「ところで、ランファには聞いたのかい?」

「え・・・・?」

「元気づける方法。」

「いいえ・・・・、うかがいました。」

 

(ランファのことだからまだろくでもないことを教えたんだろうな・・・・。)

 

そんなことを思っていたら、ヴァニラはずっと俺の顔を見ている。

おれの顔に何かついているのか・・・・・。

 

「・・・・・・届かない・・・・。」

「・・・・ん、なにか言ったかい?」

「い、いいえ・・・・なんでもありません・・・・。行きましょう。」

 

ヴァニラはあわてて部屋の外に出て行った。確かに小言でなにか言ったが俺の気のせいだろうと思い、問いかけないでノアのいる倉庫へ向かった。

 

 

 

 

 

ノアの説得にはだいぶ時間かかってしまった(説得というのは少し変かな)

経過を話すということになる。

最初、ヴァニラはノアに艦内を案内するためノアを誘った。すると、簡単にコアの中から出てきて一緒に艦内をまわった。その途中クジラ・ルームに行くことになった。そこでもノアはグチを言ったがヴァニラが宇宙ウサギを連れてきたことにより変わった。ヴァニラは少しずつだがノアに聞かせた。

ノアは黙って聞いていたがヴァニラが『意思を持つことが大切で「なにができるか」ではなく「なにがしたいか」』と言うとノアは自分自身に納得したのか話す決心をしてくれた。

 

 

 

 

そして、ブリッチに俺たちは集まりノアの話を聞くことになった。

 

 

ノアの話は俺たちの想像をはるかに超えていた・・・・。

 

 

あのネフューリアが『ヴァル・ファスク』のひとりであるということ。そして、その『ヴァル・ファスク』はかつてEDENと戦っていたという事実。

俺たち人類とは別の種族でありなんのインター・フェース(俗にいう機械人形のことだ)もなしに自分の身ひとつで多数の機械を同時制御できることなど気の遠くなる話を聞いた。

 

さらにノアは話を続けた。

「こんなときのために『白き月』と『黒き月』があった・・・・はずだったけど。」

「それはどういうことだい?」

「『白き月』と『黒き月』はもともとEDENを防衛するために作られたシステムだからよ。」

「『白き月』と『黒き月』はEDENを守るために作られた?」

 

(だんだんスケールの大きい話になってきたな・・・・・・)

 

「そうよ、外敵と戦うためにより強力な兵器に進化すること、これが二つの月が作られた目的よ。」

「シャトヤーン様からはそんな話はひとつも聞いたことがないな。」

 

シヴァ様はそのことを聞くとそうつぶやいた。

そのシヴァ様の言葉を聞きノアはため息をついた。

 

「そんな情報まで欠落してなんてね・・・。せっかく私が敵の再来を知らせていたのに。」

「だから、あなたはあのメッセージを・・・・・・。」

「そうよ、あの女が『ヴァル・ファスク』だとわかったから。それにしても・・・・。」

「どうしたんだい?」

 

話の途中でノアが怒りの声をあげた。

 

「あー!思い出しただけでも腹が立つわ!!」

「腹が立つっていうのはネフューリアのことかい?」

 

「あたりまえじゃない!あいつはコアだけになってしまったのをいいことに自分の支配下においたのよ!いそいでプロテクトをかけたから完全に支配されなかったけど、結局あいつは『黒き月』の力を利用してオ・ガウブを作り上げてしまった・・・・。外敵から守るために作られたものがその敵に使われることは私にとって屈辱に等しいわ!!」

「ノアさんの気持ち、少しわかります気がします。私だってあんな人に利用されたくありませんから。」

 

話はもっともだ。俺からも例えるとエンジェル隊のみんなのために働くのは光栄だがあんな敵にこき使われるのはまっぴらだ。

 

「さてと・・・・・・ほかに質問とかある?」

「そうだ、肝心なこと聞くのを忘れてた。」

「何・・・・・?」

 

これは俺が最初ノアを見た瞬間から思っていたことだ。コアの中に閉じこもっていたから聞けなかったが、今なら聞けると思いノアに質問した。

 

「あのときの『黒き月』と戦った際にもノアっていう名前の子がいたけど、あれは君だったのかい?」

 

 

俺のその質問に対してノアはあっさり否定した。

 

 

「違うわ、あれは『黒き月』のインター・フェース。私に似せて作った、ただの機械よ。私は普段コアの中で眠っていて必要なときにだけ起きるの。

だから、私が眠っているときに人への応答はインター・フェースに任せているの。」

「・・それは、言い逃れのつもりか?」

「え・・・?」

 

 

ノアの言い方に対してシヴァ様は言った。

その声には怒りも含まれていることを俺は感じた。

 

 

「半年前、『黒き月』が行った破壊と虐殺を忘れたわけではあるまい。それともあれは自分の意思ではなくインター・フェースが勝手にやったとでも開き直るつもりか?」

「なんだ、そんなことか・・・・。」

「そんなこと・・・・・だと!?」

「あれは間違いなく『黒き月』の意志よ。もちろん私の意志でもあるけど正確には月を作ったEDENの民の意思よ。あんたが『黒き月』を非難するのは勝手だけどそれは客観的な見方でしかないわ。」

「だが、平和であったトランスバールが『黒き月』によって混乱したのは事実だ!!」

 

 

シヴァ様の声は段々大きくなっていった・・・・。

対するノアはあくまでも冷静で、動揺した顔をしていない・・・。

 

 

「平和!?戦いがないからといって刃を研がないのは愚か者のすることよ。兵器としてより強力に進化することが本来の月の目的。『白き月』も同じだってことを理解してほしいわね。」

「その兵器のためだけに、多くの人の命が失われても仕方がなかったとでも言うのか!?」

「感情に流されるのは悪いクセね・・・・・。」

「貴様・・・・・言わせておけば!!」

 

 

シヴァ様はノアに掴みかかろうとしたが

それはよくないと思い俺はシヴァ様を引きとめた。

 

 

「シヴァ様、落ち着いてください!」

「だが・・・・・・・・!」

「ここは耐えてください。俺たちにはどうしてもノアからの情報が必要なんです。ここは俺たちにまかせてシヴァ様は休んでください。」

「マイヤーズ・・・・・・・。」

 

そういうと掴んでいたシヴァ様の体から力が抜け、引き下がっていった。そして、シヴァ様はブリッチを出た。

 

「他に質問はある?」

 

ノアの問いかけに誰も答えることはできなかった。

 

 

「言葉もないって感じね・・・・・。」

「要はそれを受け止めてどう対処するかってことだね・・・。」

「そうだ、だから俺たちは一刻も早く『白き月』に帰らなければならないんだ。ノア、ありがとう。話してくれて。」

「別に礼なんていわなくてもいいわ。じゃあ話が終わったから『白き月』に着くまで適当に休ませてもらうわ。」

 

 

そういうとノアはブリッチから出て行った。

ノアが出ていった後、俺たち一同深いため息をついた。

 

 

「まさか、EDENの話までさかのぼるとはね・・・・・。」

「タクトさん、私たちはどうすればいいんですか?」

 

 

ミルフィーが不安そうな表情で言った。他のみんなの士気の低下は俺から見てもわかった。

俺も本当の所はわからない。しかし、士気を下げないのも司令官である俺の仕事だ。

 

「ほらほら、みんなそんな顔しないでスマイル、スマイル!!」

「そうは言ってもね・・・・・・。」

「はい・・・・・。」

「とにかく話は終わったからこれでお開きにしよう。」

 

そう言ってみたもののやはりみんなやりきれない気持ちだった。

 

「そうだね・・・・・あたし達にはあたし達の仕事がある。それにこういうこと考えるのは司令官の仕事だからね。」

 

さすがはエンジェル隊のリーダーだ。その場の状況を判断し、その場にあったことを言う。このフォルテのおかげで何度か助かったことか・・・・・。

 

「でも・・・・フォルテさん。」

「さぁ行こう。私達も疲れているんだからちゃんと休まないとね。」

「は〜い・・・・・・・。」

「それでは・・・・失礼します・・・。」

 

みんな浮かない顔をしながらブリッチを出た。

 

「まずいな・・・・・・エンジェル隊の士気が落ちてしまっているな・・・。」

「無理もありませんよ。こちらの兵器が効かないとなると・・・・・・。」

「『白き月』がまさかEDEN防衛用に作られていたなんて・・・・・」

 

アルモにレスター、そしてココが重々に語っている。俺も考えてはみたが何も思いつかなかった・・・。

 

「おい、タクト。」

「ん?」

 

 

考えていた俺にレスターが声をかけてきた。

 

 

「あの女、信用できるのか?」

「ノアのことか?」

「ああ、俺にとって『ヴァル・ファスク』とかいう連中はむかつくがあのノアは言い換えれば『黒き月』そのものなんだぞ。」

「・・・・・まぁ、なんとかなるさ。それにノアはそんな悪い子じゃない・・・そう思うんだ。」

「はぁ・・・お前のその能天気な性格が今はうらやましいよ。」

 

レスターがため息をつきながら俺に言った。うらやましいもなにもこんな性格ですから。

 

「タクトも少しは休め。あれから休んでないだろ?」

「そうだな・・・・じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。ついでにエンジェル隊のみんなの様子を見てくるよ。」

「ああ、お前のその能天気さを振りまいてこい。」

 

 

そして、俺はブリッチを後にした。

みんなの様子を見に行ったが案外普通だったので少し安心した。しかし、みな不安に思っているだろう・・・・・この戦いはどうなるのか。

さまざまの思いを乗せエルシオールは『白き月』に着々と近づいていた・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後・・・・・・。

エルシオールは敵と遭遇することなく無事『白き月』に到着した。そして、ノアはシャトヤーン様と会った。そこで俺たちは艦内で話しを聞いたものより詳しい話を聞いた。

 

 

それは『白き月』と『黒き月』はお互いに進化していく。しかし、それだけ最終形にはならないということだ。

 

「じゃあ、そそ最終形になれば敵さんを倒せるんですね。」

「っていうかそんなものがあるんだったら何でそれにならなかったのよ?」

 

ミルフィーとランファはそう言った。それは俺も少しばかりそう思った。なぜ早く最終形にならなかったのだろうか・・・・。

 

「そうもいかなかったのよ。なぜなら600年前に『ヴァル・ファスク』との戦いは終わってしまったから。」

「え〜〜〜〜!!」

 

俺は思わず大声を上げてしまった。

 

 

 

「時空震(クロノ・クェイク)・・・・・ですね。」

 

 

 

時空震・・・・・・言い方を変えればクロノ・クェイクとも言う、600年前にEDENを襲った未知の大災害である。

 

 

「ご名答。あのとき、時空震の起きたせいでEDENと『ヴァル・ファスク』との間の空間がズタズタになってしまったのよ。」

「それでなし崩しに戦争どころじゃなくなったってことか・・・・。」

「あの戦いが続いていたらどちらが勝っていたのか・・・・・・今となってはわからないわ。

だけど当時のEDENの技術レベルならともかく今のトランスバール皇国の技術レベルじゃ負けるのは必死ね・・・・・・。こんなときに『黒き月』が存在していたんだけど、一方はその役目を忘れてしまったようね。」

「それは違う。EDENがなくなっても人類は滅んではいなかった。だから、『白き月』は我々を育み、慈しんできたのだ。現に『黒き月』と戦った時もそうだ。」

 

シヴァ様は言葉ではやはり『黒き月』を憎んでいる。シヴァ様は俺達と一緒にロームでの惨劇を見ているのだから・・・・。

 

「それは本当の敵を忘れていたからでしょ?EDENの外敵と戦うことを。・・・・まぁ、いいわ。この話には続きがあるの。」

「続き・・・・だと。」

「二つの月はまったく正反対のロジックで作られているの。」

 

ノアはひとつずつ月の構造を俺達に話した。

 

 

 

 

『白き月』の場合・・・・・

「人間という不確定要素や突然変異を取り入れ、その変動の触れ幅を最大限に利用して高出力を引き出すのが『白き月』・・・。」

 

 

 

 

『黒き月』の場合・・・・・

「逆に普遍性を重視し、不確定要素を徹底的に排除して変動の触れ幅を最小限に抑えつねに一定の出力を出すのが『黒き月』。」

 

 

 

 

「えーと・・・・・よくわからないんですけど・・・・・。」

 

ノアによる説明が終わった直後、ミルフィーが困った声で言った。

俺でもわかることになのに・・・・・・。

 

「こんなに簡単に説明してもわからないの?しょうがないわね。

 人間と協力しようというのが『白き月』。

 人間と協力しないというのが『黒き月』。これならわかるでしょ?」

 

「つまり、パイロットを必要する紋章機とパイロットを必要としない無人艦・・・・と言ったところですか。」

「まぁ、そんなところね。だけどそれだけでは完全体とはいえないの。だから、二つの月はお互いに戦いの中で進化してきたの。」

 

 

あのエオニアとの戦いのときか・・・・・。

 

 

「お互いの性能を確かめ合うことによって経験値を積む・・・・・。つまり、二つの月は兵器であると同時に巨大なシミュレーション装置だったわけですね。」

 

「正解よ。仮にも『白き月』の管理者だけあるわね。そして、二つのシステムは一つのなるはずだった・・・・。どちらかが勝って負けたほうのシステムを飲みこむことが本当の『融合』。両者のシステムを融合させることによってどちらが適任か判断することによって単体の月だったころよりも何倍もの力が発揮されるの。これが最終系、EDENを守る最強のシステムの完成よ。」

 

「馬鹿な!?『白き月』と『黒き月』は元々ひとつになるために作られたと言うのか!?あり得ん!そんな話、信じられるか!!」

 

ノアの言葉を聞きシヴァ様は激怒した。

 

「事実は事実よ。だけどそれもできなくなってしまった・・・・。役目を忘れた『白き月』とその『白き月』の兵器を使って『黒き月』を破壊してしまった・・あんた達のせいでね。」

 

ノアのその言葉を聞いたとき俺達はなにも言えなかった。まさか、二つの月がそのために作られていたとは全然知らなかった。

しかし、あのとき『黒き月』を破壊しなければエオニアは皇国を支配していたかもしれないから複雑な気持ちだ。

 

「まさか、あんなことになるなんて想定範囲外だったわ。はぁ・・・・。」

「では、せめてコアだけでも融合すれば・・・・・」

 

シャトヤーン様は案を提案したがノアの答えはNOであった。ノアが言うにはコアだけ融合しても奴らに対抗できる力にはならないと言うのだ。つまり、勝つ方法はないのだ。

 

(なにかないのか・・・・?)

 

俺は考えた。他に方法はないのかと・・・・・。そして、ある考えが浮かんだ。それは融合ではなく協力するということだ。

 

「なぁ、ノア。ひとつ聞いていいかい?」

「なによ?」

「本当に融合しないと無駄なのか?」

「・・・・はぁ・・?」

「だから、俺が言いたいのは融合じゃなくて、『白き月』と『黒き月』が協力できないのかということなんだ。例えば、クロノ・ブレイク・キャノンを『黒き月』の技術で改良するとか。」

 

これが俺の浮かんだ考えだった。例え融合できなくても協力し合うことによって敵に対抗できるのではないかと思った。

 

「あのね!『白き月』と『黒き月』はまったく違うロジックで作られているのよ。だから、どちらかが片方を乗っ取ることしかできないのよ。」

「そうとも限らないさ。男性も女性も作りが違うだろ?だけど手を取り合い、助け合うこともできる。そうだろ、ヴァニラ?」

「はい・・・・・、私とタクトさんは違います。けれど、違うからこそ助け合うことができるんです・・・・。」

 

「そう簡単に言うけど・・・・・・。」

 

だろうな。しかしやってみないことには変わりはない。

「でも、試してみる価値はあると思うよ。そうですよね?シャトヤーン様。」

「私もそう思います。あの詩にもこうあります『真白は不確か。されど無限』と。例え未来は不確かでもそれを変える力は無限にあります。」

 

「やれやれ、本当に甘いわね。現実が見えていない夢想主義者ほどタチの悪いものはないわね。」

「ですが未来があるからこそ人は生きていける・・・・違いますか?」

「・・・・・・。」

 

そんな話の中、レスターから通信が入ってきた。内容はあのネフューリアが星間ネットを乗っ取り皇国全土に向けて声明を発表しているというものだった。俺たちはさっそくその声明を聞くことにした。

ネットをつけるとそこにはネフューリアの姿があった。

 

 

『いいですか?力弱き人間のみなさん。我々は何もあなた方を滅ぼそうとは思っていません。使えるものは使う・・・・・皆さんも機械を使っておられる、それは私たちも同じこと。それが有機体であるか、無機体であるか・・・・それだけの違いです。あなたたちのような弱小種族は私たちによって始めて意味がなされるのです。』

 

 

なるほど、要は俺たちに『支配下に入れ』と言いたいのだろう。

それにしても・・・・・こいつの言っていることは確かにろくでもないことだな。

 

『我らへの帰属を望まないもの、意義を申し立てたい者、抵抗したい者はどうぞご自由に。ただ、あなた達のもつオモチャでは私のオ・ガウブは止められませんのでそのつもりでいてください。フフ、フフフフ。』

 

そして、画面からネフューリアの姿が消えた。

終わると同時に先生は大きくため息をつきながら言った。

 

「奴の言うとおりじゃ・・・・。わしにはなにもできない自分が情けないわい。」

「いや、そなたのせいではない。責任は女皇である私にある。第三方面軍のこともそうだ。私のせいで多くの犠牲を出してしまった・・・・・。」

 

俺は黙ってそれを聞いていた。先生や陛下のせいではないというのに・・・・。

このような事態になるとは誰も予想できなかったのだから。

 

「あーもう!うるさいわね!!」

「なんだと!!」

「自分を責め続けたって意味がないって言っているのよ!!あんた達でどうこうできたわけじゃないしこれが時間の無駄だってどうしてわからないのよ!?」

「貴様、この言いぐせはなんだ!!目の前で民が殺されているんだぞ!!」

「そうよ、殺されているのよ。・・・私のせいでね。」

 

ノアのせいだと言うがそれはどういう意味なのか俺にはわからなかった。

しかし、ノアの表情はさっきと比べてなんて悲しげなのだろう・・・。

 

「『黒き月』の生産能力とネガティブ・クロノ・ウェーブを使って奴は殺しているのよ。私の守るべき・・・・人間達をね。」

「ノア、自分を責めることはありません。過去のことよりも今は目の前にあることを解決しなければなりません。そうですよね?みなさん。」

「はい。私達にはまだ力があります・・・。」

「力のない人達に代わって私達がなんとかしなければなりません。」

「あんた達・・・・・。」

「ノア・・・・・。」

 

ノアはシャトヤーン様や他のみんなの言葉を聞き納得したようだ。

 

「そうよね・・・・・・。それが二つの月の使命だったわね・・・・。」

「そのとおりです。」

「タクト!!あんたの案、採用するわ。『黒き月』と『白き月』の融合、なんとしてでも成功させてみせるわ。」

「ありがとう・・・・・、ノア。」

 

俺はうれしさのあまりノアに感謝した。

 

「あんたのためじゃないわ、自分自身のためよ。このままやられっぱなしにはしない・・・・。絶対に!!」

 

これで俺達の決意は固まった。

しかし、話が終わると同時に先生の通信機が鳴った。それは敵艦隊が出現したというものだ。俺達も急いで敵の侵攻を止めるため出撃するのであった・・・・。

 

 

 

 

                                                第四話「二つの月の真実」終

                                                   第五話に続く・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき・・・・・・。

 

ややこしい・・・・・・実にややこしい。真実の内容をカットしてはみたのですが最後のほうが言葉だけになってしまった。

さらに最後のほうでシヴァとノアの会話を省いてしまい・・・・・なんかカットしているところが段々大きくなっていく気がします・・・。