敵の先遣隊を倒した私達はノアさんに呼ばれて一旦『白き月』に戻ることとなりました。
呼び出された理由はあの巨大戦艦に対抗できる策が見つかったとのいうものでした。
第五話「決戦兵器」
「遅いわよ、あんた達。」
「ごめん、ごめん。入航するのに時間がかかって。」
タクトさんのことは気にせずノアさんは話の本題に入っていきました。
「時間がもったいないから手短に話すわよ。答えは簡単にあの巨大艦のネガティブ・クロノ・フィールドを打ち消せばいいの。」
「ちょっといいかい?ノア。」
「なによ?まだ話始めたばかりじゃない。」
「それはなんとかフィールドってなんだい?」
ノアさんが言うには私達が最初に『黒き月』と戦ったとき、ローム星系での戦いのとき使われたのがそのネガティブ・クロノ・フィールドらしいです。
「みなさん、これを見てください。」
そういうとシャトヤーン様はスクリーンにあるグラフを出しました。それが何を意味しているのか私を含めわかりませんでした。
「シャトヤーン様・・・・これは?」
「ネガティブ・クロノ・ウェーブのおおまかな概念を図面として表したものです。」
「あんた達のオムツでもわかるようにね。簡単にいうと特殊波長の時空波の衝突よって・・・・・」
ノアさんが説明していましたが全員頭の上に「?」が浮かんでいました。
「これを受けるとクロノ・ストリング・エネルギーだろうが何だろうが強制的にクロノ・スペースに転移してしまうの。つまり、こちらの次元においては干渉がないってこと。敵はそれを利用して一種のシールドを形成しているの。まぁ卵のカラみたいなものね。」
「じゃあ、どうやって突破するの?」
「この波を打ち消せばいいのよ。そうすれば、敵は丸裸も同然。」
「だから、どうやって?」
ランファさんは必要以上にノアさんに質問しています。ノアさんはランファさんの質問に対して少々ため息をついていました。
「逆位相の衝突のよる無効化で可能になるわ。」
「・・・・え・・?」
「だから、逆位相の衝突による無効化。」
ランファさんはさっきの説明を理解していなくミルフィーさんに聞いていました。しかし、ミルフィーさんもわからなかったようです。すると、ちとせさんがスクリーンの下のあるパネルを操作しながらいいました。ちとせさんにはわかったらしいですが・・・・。
「つまり、このようにこの波長と正反対の波長をぶつけることによって相殺する。そういうことでしょうか、ノアさん。」
「なんだ、わかってるじゃない。」
「まぁ、理論上はね。あの戦艦を守っているフィールドの出力はハンパじゃないわ。それに対抗できるだけの膨大なエネルギーをどっから持ってくるか・・・・そこが問題ね。」
「だけど、突破口が見つかっただけでもいいじゃないか。」
タクトさんの言葉に対しノアさんはあきれたように言いました。
「お気楽でいいわね。」
「そこがマイヤーズのいいところなのだからな。」
「はぁ・・・・ここにはお気楽バカしかいないの?」
「君もそのうちの一人だけどね。」
タクトさんは付け加えるようにノアさんに言いました。
「そんなことないわよ!・・・・いや確かにそうかもね。私も相当バクっているわ、こんな連中に手を貸すなんて。」
「こんな連中だけど、よろしく頼むよ。」
そして、この後シヴァ陛下たちは『白き月』を対策本部としておき、巨大艦撃破のための兵器を開発することとなりました。
一日後・・・・・・
「こら〜、待てーー。」
「タクトさん・・・・そんなに追いかけると逃げてしまいます。」
私とタクトさんは散歩をかねてネギネギたちを連れて公園にいます。そして、タクトさんはルギルギを捕まえようとしています。
「だって、危ないじゃないか遠くまで行ったら。」
「大丈夫です・・・・。ここからは出ませんから。」
「そうだけど、やっぱり危ないじゃないか・・・・うわっ!!」
ルギルギを追いかけているうちにタクトさんは足を滑らせて転んでしまいました。そばまで行くとタクトさんの手から血が出ていました。その傷を私はナノマシンを使って治療しました。
「すごいな、一瞬で治った。」
「最近、治療の効果が上がって来ているようです・・・・・。」
「そうだね。あのときのハーベスターの活躍もそれのおかげかもね。」
タクトさんはそう言いました。
しかし、私が活躍できるのもタクトさんもおかげでした。
そのとき、レスターさんから連絡が入りました。
「タクト、はやく会議に来い。」
「今から行くよ。さて・・・・・行きたいところだけど、その前にルギルギたちをクジラ・ルームに戻さないと。」
「大丈夫です・・・・。気が済むまで遊ぶとそこの木の下の影で眠ってしまいますから。」
「そうか、それなら心配ないな。それじゃ行こうかヴァニラ。」
「はい・・・・・。」
『白き月』の通路をとおりながら、今私達は謁見の間に向かっています。外にはエルシオールが見えます。私はふと疑問に思ったことがありました。それはエルシオールからクロノ・ブレイク・キャノンが取り外されていたことです。
「どうしたんだい、ヴァニラ。」
「エルシオールからクロノ・ブレイク・キャノンが取り外されていたので・・・・。」
「うーん、実は俺も取り外された理由はわからないんだ。多分、調整のためにはずしたんじゃないかな。」
そんな話をしているとレスターさんがやってきました。
「お前たち、まだこんなところにいたのか。」
「あれ、レスターじゃないか。どうしたんだ。」
「お前らが遅いから探しにいたんだ。もう会議が始まるぞ。」
「すまない、それとレスター。なんでクロノ・ブレイク・キャノンがはずされたか知ってるか?」
タクトさんはレスターさんに尋ねましたがレスターさんも知らないようでした。しかし、レスターさんの話ではそのことも今回の会議で出ることだし心配しすることはないと言っていました。
『白き月』謁見の間・・・・・・・
「・・・・とう言うわけでフィールド・キャンセラーを搭載した対巨大戦艦用兵器が急ピッチで進まれているわ。ただこれはあのバカでかい戦艦を破壊するためだけに作られているから注意してね。」
今ノアさんは作られている兵器のことについて説明をしています。あの巨大艦を破壊するためだけ・・・・・つまり通常では使用できないということです。
「そこで、おぬしたちの出番というわけじゃ。おぬしたちでなんとしてでも決戦兵器を守ってほしい。」
私たちの任務はとても重要なものでした。しかし、『今』の紋章機で対抗できるか・・・それが心配でした。
「ですが・・・・先の戦いで敵の戦力が強大だということがわかりました。紋章機だけで対抗できるでしょうか?」
「それについても手は打ってある。」
心配そうにしているちとせさんにシャトヤーン様は諭すように言いました。
「紋章機の最大の力が出せるようにリミッターを解除しました。先の戦いでは間に合いませんでしたが、今回はみなさんの役にたってくれるでしょう。」
「そして、確実を期すためにそれをエルシオールに積んで敵のフィールドギリギリまで運んでもらうわ。」
「え〜!!エルシオールで!?」
「そうじゃ。決戦兵器をエルシオールの下部にとりつけて到着と同時に射出する。」
「差し詰め、私たちは決戦兵器のエスコート役というわけですわね。」
エルシオールでギリギリまで運ぶ・・・・そう聞いたときぞっとしました。それはタクトさんを危険にさらすと同じことでした。だから、私は改めてタクトさんを守ると誓いました。
「それでは、エルシオールからクロノ・ブレイク・キャノンが取りはずされたのはそれが理由だからですか?」
「・・・・・・・。」
タクトさんがクロノ・ブレイク・キャノンの話をした途端にルフト将軍を始め、シャトヤーン様まで深刻そうな顔をしていました。
「その件については、改めて話をしよう。」
「ルフト将軍、お聞きしてもよろしいですか?」
「なんじゃ、ちとせ君。」
「現在の敵の位置と到着時間を教えてもらえませんか。」
「うむ、それもそうじゃな。これを見てくれ。」
ルフト将軍は皇国全土の地図を取り出し説明を始めました。地図には敵と思われる印がついていました。
「巨大戦艦を中心した敵の艦隊は周囲の資源衛星やエネルギー・プラントを吸収しながら進んでおる。観測結果ではおよそ72時間後、つまり三日後というわけじゃ。」
「決戦兵器が完成するのが早いか、それとも敵艦隊が来るのが先か・・・・どっちにしてもわからないわね。」
「これで、会議は終了じゃ。各自解散してくれ。」
こうしておお細かな内容は終了し、各自解散となりました。しかし・・・・・
「タクト。お前は残ってくれ。」
「ヴァニラ・・・・・あなたも。」
謁見の間を出ようとしたとき、ルフト将軍とシャトヤーン様に私たちは呼び止めました。話とは一体何なのでしょうか・・・?
「なんですか、ルフト先生。」
「い、いや・・・・・・・その・・なんだ・・・」
「そなたたち・・・・にだな・・・」
「・・・・・・・。」
ルフト将軍、シヴァ陛下そしてシャトヤーンととても言いにくそうな表情をしながら私たちに話しかけてきました。
「まったく・・・・見ていられないから私から話すわ。話っていうのは他でもない決戦兵器のことよ。」
「・・・・今回の作戦には七番機を使用することになりました。」
七番目の紋章機・・・・・そのことは私もタクトさんも知らされていないことでした。もちろん他のみなさんも含めて。
「前に言ったわよね。奴のフィールドを破るは膨大なエネルギーが必要になるって。それをまかなえる方法がひとつあったの。それは、H・E・L・Oシステムよ。」
「H・E・L・Oシステムはパイロットの精神的テンションによってクロノ・ストリング・エンジンの出力を上げることができます。」
「H・E・L・Oを使えばクロノ・ブレイク・キャノンのエネルギーとフィールド・キャンセラーとエネルギーを一気にまかなうことができるわ。」
「幸い、それに使える紋章機がひとつだけありました。六番機のシャープ・シューターと共に発見されたまだ外装がされていなかった七番目の紋章機が・・・。」
「待ってください!それじゃあ、まさか!?」
私もそのことを考えていました。つまり、クロノ・ブレイク・キャノンとフィールド・キャンセラーを搭載した七番機で敵の目の前まで行きフィールドをこじ開け敵を撃破するという大変危険なことでした。
「なるべく、テンションが高い人間じゃないきゃダメだからそこにいる子にパイロットをやってほしいのよ。」
そのパイロットには私が選ばれました。私だけこの場に残ったということは何かがあるとは思ってはいましたが・・・・・。
「待ってください!!どうして、ヴァニラなんですか!?」
「現時点でもっともテンションが高いのは彼女だからじゃ。それは実際に指揮をとっているお前がよく知っていることだろう。」
「他のパイロットでもいいの?そしたら成功確率は極端に下がるわよ。」
「・・・・・・・・。」
「タクト・・・わしらは負けるわけには行かんのじゃ・・・・・。」
「・・・・・無礼を承知で申し上げます!!それでは彼女にすべてを押し付けているようなものじゃないですか!!」
タクトさんは、私のため抗議してくれました。しかし・・・・
「マイヤーズ、落ち着け!」
「作戦の変更をお願いします!!今なら他にも手段が・・・・・!」
「他の手段があるなら取っている!!」
「・・・・!!」
「愛する者を危険にさらさなくてはいけない・・・・・それは私にもわかる。許せ、マイヤーズ。私はトランスバールの王としての責務を果たさなければならないのだ・・・・。」
私は決心しました。私にしかできないことならそれをやり遂げるまでです。
「わかりました、お引き受けします。」
「ヴァニラ!!」
「落ち着いてください、マイヤーズ司令。実は・・・今回の紋章機は複座なのです。つまり、もう一人必要なのです。サポート役はパイロットのテンションを最大限に引き出せる人ならより効果的です。ヴァニラは酷のようですが、もう一人はあなたが決めてください。」
「・・・・・わかりました、検討してみます。では、失礼します。」
私はただ一人、謁見の間を出ました。
『白き月』の通路
「待ってくれ!!ヴァニラ!」
「・・・・・・・。」
私が通路を歩いているとタクトさんが息を切らしながら走ってきました。私を追いかけてきたのでしょうか・・・・。
「ヴァニラ、まだ間に合う。作戦の変更を頼んでみよう。」
「いいえ。誰かが行かなければならないのでしたら・・・私でよかったと思っています。」
「ヴァニラ・・・・・。」
「ルギルギたちを公園に置いてきていますので失礼します。」
私はタクトさんの心配をよそに公園に行き、ルギルギたちをクジラ・ルームに連れ帰ったあと、部屋に戻りました。
誰と選ばなければならない・・・・・。
そう感じながら私は眠りにつきました。
早くも二日が過ぎてしまい作戦開始は次の日にまで迫っていました。その間、自分の部屋でコンピューターを使って計算したり、シュミレータールームで訓練したりいろいろな計算をした結果、答えはでましたが私自信納得がいきませんでした。
そして、私は心を和らげるためクジラ・ルームに行き、宇宙ウサギに話かけました。私は一体どうすればいいのか・・・・そのことを考えながら話をしていました。
(ここだけ会話が多くなります)
どれくらい話をしていたのか・・・・私にはわかりませんでした。
「大丈夫・・・・、必ず守ってあげるから・・・・。もし、私が・・・・・・でも、あなた達なら大丈夫よね。クロミエさんがいるから・・・・。でも・・・」
タクトさんはどうなるのか・・・・・・。
そうしているうちに後ろからタクトさんの声が聞こえてきました。
「あ・・・・・。」
「ここにいたのか。もしかして昼からずっとここに?」
タクトさんに言われて気づきましたが、もう夜になっていました。
「あ・・・・・いつの間にか夜になっていたのですね。」
「パートナーは決まったかい?」
いきなり、本題に入ってしまうとはいかにもタクトさんらしいです。私はタクトさんに現在の状況を説明しました。
「現在の私のテンションとみなさんとのテンションを合わせて試してみました。」
「どうだった?」
「ひとつの仮想ミッションにおいてはじきだされた結果によると、ミルフィーさんが56%、ランファさんが54%、ミントさんとフォルテさんが共に53%、ちとせさんが52%でした・・・・。」
「じゃあ、確率的にはミルフィーなんだね。」
そう・・・・確率的はミルフィーさんと一緒が一番いいのですが、しかし・・・・
「よし、決まりだな。」
「いえ、待ってください。」
次の瞬間、タクトさんは思いがけない言葉を口にしました。それはタクトさん自身がサポート役になると言うのです。
私は反対しました。しかし、逆に諭される形になってしまいました。
「じゃあ、今からシャトヤーン様に報告しにいこう。」
「・・・・・ダメです・・・・!」
私はタクトさんの服をひっぱりタクトさんを止めようとしました。
「ヴァニラ、これじゃ行けないじゃないか。それともヴァニラも一緒に行く?・・・ってそれはヴァニラが決めることか。」
「・・・・・ダメです!・・・。タクトさんが危険なことをするぐらいなら・・・・私は・・・。そうです・・・・誰も選べないのなら私に一人で行きます。」
「ヴァニラ、待ってくれ。」
タクトさんの言葉が入らずに私は一人事を言いながら決めました。私だけ・・・行けば・・・
「ヴァ〜ニ〜ラ〜!!」
「え・・・・・?」
突然タクトさんが大きな声を出したので私は我にかえりました。
「ヴァニラの悪いクセだよ。「自分だけ、がんばる」なんて」
「でしたら・・・・・・私はどうすればいいですか・・・!?よくないことだとわかっていても・・・・・タクトさんが危険なことをするのは絶対にダメです・・・・・。」
「・・・・・・俺は君のなんなの?恋人・・・・・だろ?それとも、そういう風に思っていたのは俺だけかな。」
「タクトさん・・・・・。」
「一人で決戦兵器に乗る?俺だけ取り残して俺にただ見ていろと言うのか?」
「私は・・・・・!」
「あのとき、約束したろ?ずっと一緒だって。」
私のなかからなにか熱いものがこみ上げてきました。
「はい・・・・。ずっと・・・一緒に・・・。」
「よし、じゃあもう一度指きりをしようか。」
そういうとタクトさんは私の手をとり指きりをしました。そのとき、私はタクトさんへの感謝でいっぱいでした。そして・・・・・
「よかった。俺との約束を忘れたかと思っていたよ。」
「・・・・あのタクトさん。少し・・・かがんでいただけませんか?」
「なんだい?」
「・・・・・かがんで・・・・くだ・・・」
「ごめん、よく聞こえなかった。なんだい?」
波と私の声が小さかったせいかタクトさんはよく聞こえなかったようでした。私は恥ずかしながらも声を出していたのに・・・・・タクトさん・・・少しいじわるです・・・。
そう思いながら私はタクトさんの手を引き、強引な形で体をかがませてランファさんから教えてもらった『元気が出るおまじない』をタクトさんにしました。それをした後、タクトさんの顔は赤くなっていました。
「ヴァ、ヴァニラ!?」
「・・・感謝の気持ちを表すときにするものだとランファさんが言っていました。」
「でも、誰にでもこういうことはしちゃいけないぞ。」
「しません・・・・・特別な人にだけするものだそうです。・・・・タクトさん。・・・・必ず帰ってきましょうね。」
「ああ、じゃあシャトヤーン様に報告しに行こうか。」
「はい・・・・・。」
そして、作戦開始直後ルフト将軍からみなさんに7番機のことが知らされ私がそのパイロットになることもタクトさんがそのサポート役になったこともみなさんに伝われました。みなさん最初は反発しましたが私とタクトさんが決めたことだからと言ったらこころよく賛同してくれました。
作戦名は『エンジェル・スラップ』・・・・直訳すると『天使のビンタ』と言う意味です。作戦名が決まった直後レスターさんから通信が入りました。内容は敵の艦隊が来たというものでした。しかし、決戦兵器はまだ完成していなくエルシオールの下部に取り付けてそこで最終調整を行うこととなりました。
『白き月』最終防衛ライン
私たちの紋章機も翼を展開させた状態でエルシオールと共に防衛ラインに配置されました。
「これより皇国防衛最終作戦を発令する!!頼んじゃぞ、タクト。」
「はい。任せてください!!」
タクトさんは今回の作戦のマップを出し内容を説明しました。
「現在エルシオールはここに位置していて、友軍の艦隊はこのポイントにいる。決戦兵器がまだ完成していないから今から二時間なんとしてでも守ってくれ。エンジェル隊、全機攻撃を開始せよ!!」
こうして、皇国をかけた戦いが始まりました。
(戦闘省略)
「敵の全滅を確認。周囲に敵影ありません。」
「今のうちに紋章機の補給と整備をしてくれ!決戦兵器の準備は!?」
「機体そのものの調整はほぼ完了しました。あとはH・E・L・Oの調整になります。」
「そうか、ヴァニラ聞いてのとおりだからエルシオールに戻ってきてくれ。」
タクトさんに言われ私は戦線から離脱してエルシオールに戻り決戦兵器に乗り込みました。調整の途中、敵の第二波が接近しネフューリアからエルシオールへと通信が入ってきました。その会話は決戦兵器のなかでも聞こえていました。
『がんばっているようね。で、新しいオモチャの準備はできたの?』
『オモチャなんかじゃないさ。これは俺たちの・・・・いや人類の希望だ。』
『・・・・その瞳・・・気にいらないわね。反抗し決して服従しようとしない者の目。自分たちが搾取され支配されるべき存在だとまるで自覚していない・・・とても不愉快だわ。』
『そいつは結構。俺もお前の不愉快な顔が見られてうれしいよ。・・・俺たちはお前を楽しませるために存在じゃない。俺たちは自分の意思を持って生きているんだ。一緒に笑ったり、泣いたり、愛し合いながら生きているんだ。だから、どんなことがあろうとも俺たちは決してお前には服従はしない!!』
『・・・口だけでは達者のようね。じゃあ、じっくり楽しませてもらうわ。ふふふふ・・・!!』
こうして、ネフューリアからの通信は切れました。タクトさんは気にせず、新たな作戦図をモニターにだしました。
「現在の敵の配置はこうなっている。エルシオールの現在位置はここだ。」
「近くの友軍艦隊とは連絡がついていない・・・・・・。俺たちだけでなんとかするしかあるまい。」
「目標はこのラインまでエルシオールを運んでその後はヴァニラの決戦兵器でトドメを刺す。目的位置までエルシオールを守ってくれ。今回はハーベスターの修理はできないからみんな気をつけてくれ。以上だ。」
「よし・・・それじゃ・・・」
レスターさんがそう言うとタクトさんはまだ言うことがあると言って少し出撃をとめました。それはみなさんに祝勝会の担当を決めるというものでした。
「よし、改めて・・・・・・エンジェル隊!全機発進せよ!!」
私を除いたみなさんは出撃していきました・・・・。
(みなさん・・・・・お気をつけて。)
(戦闘省略)
「ヴァニラさん、目標地点まで到達しました。後はマイヤーズ司令が来るまで待っていてください。」
「わかりました・・・・。」
クレータさんからそう伝えられ、いよいよ私の出番となりました。そして、数分が経ったころタクトさんがやってきました。タクトさんもパイロットスーツを着ていました。
「ごめん、ごめん。パイロットスーツを着るのに手間取っちゃってね。ヴァニラも似合っているよ。」
「ありがとうございます・・・・。」
「・・・・・怖くないかい?」
「少し、怖いです。・・・・・・タクトさん、私にも『おまじない』をしてください・・・。私に・・・・・勇気をください。」
「・・・・わかった、目を閉じて。」
私は目を閉じ見ないようにしてタクトさんから『おまじない』をしてもらいました。とても・・・ドキドキしました。
「どうだい?」
「少し・・・・ドキドキしています。ですが、怖くありません。」
「そうか・・・。」
タクトさんと私が少し雑談しているとクレータさんから通信が入ってきました。
「お二人とも準備はいいですか!?」
「はい・・・・・!」
「システム・オールグリーン!!これより決戦兵器を射出します。」
「了解・・・・!射出後、最大加速!敵巨大艦に向けて突撃します・・・!」
そして、私たちを乗せた決戦兵器はいよいよ射出されました。
距離7000・・・・・
ラッキー・スターのハイパー・キャノンが敵を一掃し・・・。
距離6000・・・・・
カンフー・ファイターのアンカー・クローが敵の進路をズラし・・・。
距離5000・・・・・
トリック・マスターのフライヤーダンスが敵を撃ち・・・・・
距離4000・・・・・
ハッピー・トリガーのストライク・バーストが敵戦艦を蜂の巣のし・・・・
距離3500・・・・・
シャープ・シューターのフェイタル・アローが敵を撃ち抜き・・・・・
そして・・・・・
「敵包囲網突破!!距離2800・・・2600・・・2400・・・・2000!!よし、エネルギーをすべてクロノ・ブレイク・キャノンとフィールド・キャンセラーにまわす!!」
「了解・・・・。フィールド・キャンセラー始動!敵フィールドの中和を開始します!」
「じゃあ・・・行こうか!ヴァニラ。」
「はい・・・・・!」
敵巨大艦の目の前まで来た私たちは紋章機の翼を展開させ、敵のフィールド消滅させたあとクロノ・ブレイク・キャノンを撃ち敵巨大艦の破壊に成功しました。
『白き月』謁見の間・・・・・
「皆の者、今回の戦いまことに見事だった。先のエオニアとの戦いに続きそなた達の行いは皇国の歴史に長く刻まれるだろう。特に、ヴァニラ・Hとタクト・マイヤーズ。両方とも大儀であった。」
「ありがとうございます、シヴァ陛下。」
「・・・・といってもまだ終わったわけではないからね。」
ノアさんのその言葉を聞き私達は驚きました。それに続きシャトヤーン様の口を開きました。
「あの後、気になって『白き月』のデータベースで調べてみました。その結果、EDENと戦っていた当時の『ヴァル・ファスク』の軍勢はもっと大規模だったと言われています。また・・・新たな戦いがあるかもしれません。非常に残念なことですが・・・・。」
「奴らが攻めてくるのは十年後か千年後か明日なのか・・・・・それは誰にもわからないわ。だから、それまでに『白き月』と『黒き月』のコアから情報を引き出しておかなくちゃね。今回は急だったから仕方がないけど今度は『白き月』と『黒き月』のテクノロジーの融合は完成度の高いものにするわ。」
「さて・・・・わしからも話がある。」
ルフト将軍がそう言ったとき私たちは一斉にいやな顔をしました。ルフト将軍は私たちが想像していたものとは全く正反対のことを言いました。
「タクト・マイヤーズ、エンジェル隊、およびエルシオール全乗組員は今回の功績により今日から一ヶ月間の有給休暇を与える。」
「それと、特別手当もだ。私からもささやかなお礼だ。」
ミルフィーさんたちはとても喜んでいました。もちろん私もですが・・・・・。
そのとき待ちかねたレスターさんから通信が入ってきました。
「おい、タクトいつまで待たせる気だ。せっかくの料理が冷めちまうぞ。」
「わかった、すぐ行くよ。ルフト将軍もどうですか?」
「いいのか?」
「パーティーは多いほうがいいですから。」
「おもしろそうだな。私も参加させてもらおうか。シャトヤーン様も・・・どうですか?」
「私も・・・・・ですか?」
シャトヤーン様は少し戸惑っていました。
「いいじゃないですか。たまにはハメをはずすことも大事なことですよ。」
「ふふ・・・そうですね。では、参りましょうか。ノア。」
「しょうがないわね。少しだけ付き合ってあげるわ。」
こうして、楽しい祝勝会が始まり、終わったのはそれから6時間後のことでした。
休暇の間、私とタクトさんと二人でデートをしました。それはとても楽しいもので私はずっとタクトさんの腕につかまっていました。
それが例えつかの間の平和であったとしても・・・・・。
第五話「決戦兵器」終
第三部EL編(オリジナルあり)に続く・・・・・。