一ヶ月の長期休暇を終えた俺たちはさっそくルフト将軍から命令をもらった。それは俺たちの休暇中にガイエン星系で調査をしていた艦隊が消息を絶っていたというもので原因を解明するためにエルシオールが派遣されたというものだ。
第三部EL編第一話「再来」
「ふわぁぁぁ〜〜〜」
「大きい・・・あくびです。」
「うぐ!ごほっ!!げほっ!!」
現在俺はヴァニラの部屋にいる。今はレスターがブリッチの番で俺は休憩時間を使ってヴァニラの部屋にいるということだ。
「あ・・・・タクトさん。大丈夫ですか。」
「ごめん、ごめん。みっともない姿を見せちゃったね。」
「そんなこと・・・・・。先日、動物園で見た宇宙ヒポポタマスと同じぐらい立派なお口でした。」
カバか・・・・・。
そう思っているとヴァニラが紅茶を持ってきてくれた。
「タクトさん、ハーブティーです。」
「ありがとう。でも、いつもはコーヒーなのになんで紅茶なの?」
「本当はコーヒーを用意したのですがタクトさんがお疲れのようだったので疲れに効果がある紅茶を用意しました。」
「いつも気が利くね、ヴァニラは。」
本当に気が利くヴァニラにいつも助けられてばかりいる。もっとしっかりしないとな。
「大分・・・・お疲れのようですね。」
「まぁ、一ヶ月分の有給休暇のおかげで読まなきゃいけない資料がたくさんあってね。レスターの奴に『これ全部に目を通すまで寝ることも机から離れることも許さん。』なんていわれたから目は重いは肩が痛いは腰は痛いはでさんざんだよ。」
「クールダラス副司令がそんなことを・・・・・・。わかりました、すぐに対応します。」
「え・・・・?」
「タクトさんから睡眠時間を取るなんてゆるせません。ただちに抗議文章を作成しクールダラス副司令に提出しなくては・・・・。」
ヴァニラは俺のために言ってくれているのだが実際は少しずつ資料に目を通さなかった俺が悪いのだ。
「いや、いいよ。俺が目を通していなかったのがいけなかったんだからあんまりレスターを責めないでやってくれ。」
「タクトさんがそうおっしゃるのなら・・・・・。ところでタクトさん、資料というのはやはり今回の調査のことですか?」
「ああ、見てごらんヴァニラ。ガイエン星系はこんなに遠い辺境にあるんだ。俺達って本当に辺境に縁があるみたいだな。」
俺はポケットの中から小さな地図を取り出しヴァニラに見せた。それは今回のガイエン星系までの距離を示したものだ。
「そうですね・・・・。この前の辺境調査からあまり月日が経っていないというのに。もうすぐ到着ですが、いったい何があったのでしょうか?」
「それはまだわからない。唯一の手がかりといったら第三方面軍に送られてきたこの映像だけだ。」
「映像がぼやけていてよく見えません。」
「きっとこの映像を送るのが精一杯だったんだろうな・・・・。」
「では、調査隊の人たちは・・・・・・」
「多分・・・いやまちがいなく全員・・・・・・」
俺はこれ以上言わなかった。今『予感』していることが本当になってしまいそうで怖かった。
「「・・・・・・・。」」
沈黙が続く・・・・。俺は話題を変えることにした。
「・・・・ねぇ、ヴァニラ。」
「なんでしょうか。」
「この任務が終わったらまた動物園行かないか?こ〜〜〜〜んな大きな口を開く宇宙ヒポポタマスがいる動物園。そして俺の口と比べてヴァニラに判定してもらおう。言っておくけど俺の本気はこんなものじゃないぞ、ヴァニラがすっぽり入るぐらい開くから。」
「・・・・それは無理があると思います。でも・・・また動物園に連れてってください。そのときにはマフラーや手袋も編みます。」
「うん、それは暖かそうだ。」
「それに・・・・・腹巻も・・・。」
「そ、それは・・・・・・お腹が冷えなくていいね・・・・。」
しばらくの沈黙・・・・・
「ふふ・・・・。」
「あはは。・・・あいたたたた。」
そのとき笑った拍子に首のところの筋肉痛が痛みだした。昨日ずっと机に向かっていたせいか肩も痛かった。
「どうしましたか、タクトさん。」
「いやー昨日の徹夜のせいで肩が少しね・・・・。」
「・・・・わかりました。私、タクトさんの肩を叩きます。」
「いいのかい?」
「私でしたら構いません。」
「じ、じゃあお言葉に甘えて・・・・。」
俺はヴァニラのベッドに座り体をリラックスさせ、ヴァニラは俺の後ろに座り肩を叩き始めた。
「どうですか・・?」
「うーんもう少し強くかな。」
「こう・・・・・ですか。」
ヴァニラはさっきよりも力を込めて肩を叩いた。
「そうそう、うまいよ。今度から毎日やってもらおうかな。」
「わかりました。では明日もやります。」
「いや・・・・冗談なんだけど。」
するとヴァニラは肩叩きをしながら俺に言ってきた。
「タクトさんの背中は・・・・とても大きいですね。見ていて・・・安心します。」
「て、照れるな。」
「ふふ・・。」
肩叩きをしてもらっているうちに睡魔が襲ってきた。ここで寝てはヴァニラに悪いと思ったが昨日は徹夜だったのでどんどん・・・・・。
「・・・むにゃ・・・むにゃ・・。」
「タクトさん、眠ってしまったのですか?」
「・・・・・・・・。」
「よほど、疲れていたのですね。せめて私といるときだけゆっくり休んでください・・・・。それが私の役割ですから・・・・。」
「・・・・・おい、タクト。いつまで寝ているんだ。」
「う〜ん・・・・もう食べられない・・・・。」
「タクトーーーーーーー!!!!」
大きな声に俺は起こされた。目を覚ましてみるとそこにはレスターの姿があった。
「あ、あれ?レスター、なんでお前がここにいるんだ?」
「あのな・・・・副司令がブリッチにいてはいけないのか。」
レスターの言葉に俺は疑問に思ったので見渡してみるとそこはブリッチで俺は普段どおりに司令官の椅子に座っていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんで俺がブリッチにいるんだ?俺は確か・・・」
そう俺はついさっきまでヴァニラの部屋にいて肩叩きをしてもらっていたはずなのに・・・・。
「いい加減に目を覚ませ。・・・全く、敵襲だっていうのにノンキなものだ。」
「て、敵襲!?大変じゃないか!?」
「だから大変だと言っているだろうが!!」
レスターは今にも怒りそうな状態だ。そんなことを言ってもなんだか実感がわかないでいる。
「マイヤーズ司令ってどうしてクールダラス副司令を刺激するんだろう・・・。」
「でも、それがマイヤーズ司令だからいいんじゃないの。」
「それもそうね。」
「アルモ、ココ。今は敵襲だ、私語は慎め。」
「「は〜い」」
そんな会話が続いたが敵のほうはどうなっているのだろうか。
「敵のほうはどうなっている。」
「はい、メインモニターに出します。」
モニターを見てみると見たことがある艦が数隻いた。
「敵艦隊こちらに接近してきます!」
「おっと、こうしてはいられないな。レスター。」
「わかっている、総員第一戦闘配備だ。」
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「エンジェル隊、出撃準備整いました。」
「なんか釈然としないけど、とりあえず敵は撃退しないとな。みんながんばってくれ。」
「はい、まかせてください。」
「ま、慎重かつ大胆に行こうじゃないか。」
「タクトさん、ご命令を。」
「よし、エンジェル隊出撃!」
こうして納得が行かないまま戦闘が始まった。戦いはあまり時間がかからずあっさりと終わってしまった。
「案外すんなりと勝てたな・・・・。」
「よし、エンジェル隊全機帰還・・・・・。」
「ああ!!」
突然ココがレーダーを見て驚いていた。
「どうした!?ココ。」
「そ、そんな・・・・・」
「落ち着け、状況を報告しろ。」
「て、敵艦隊が次々とドライブ・アウトしてきます!!その数100、200・・・とにかく数えきれません!!」
モニターに映し出されたのは正面を埋め尽くすぐらいの大艦隊であった。そして、敵の一斉射撃が来た。エルシオールに直撃し損傷は70%を超えいまにも爆発しそうな勢いだ。紋章機もさきほどの攻撃で完全に停止してしまっている。
「マイヤーズ司令!」
「どうした!?ココ!」
「前方のほうから高エネルギー反応が出ています。モニターに出します。」
映ったものはなにやら爆弾のように見える。なにかいやな予感がする。そして・・・・
「エネルギー波、来ます!」
エネルギーの球体がどんどんこちらに迫ってくる。そして、エルシオールと紋章機を包みこんだ。
「うわぁぁぁぁーーー!!!!」
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「うわっっ!!」
「タクトさん、大丈夫ですか?」
気がつくとそこはヴァニラの部屋だった。さっきのは夢だったのか・・・・?
「ヴァニラ・・・・・。」
「ずいぶんとうなされていましたがどうしたんですか?」
「夢を・・・・見たんだ。」
「夢・・・・?」
「エルシオールやみんなが・・・・・・いや、なんでもない。」
これ以上は言わなかった・・・・。思い出すと恐ろしくなってくる。
「体が・・・・・震えています。・・・・何か私にできることはありますか?」
「じゃあ、ひとつお願いしてもいいかな。」
「なんでしょうか?」
「手を・・・・・少しの間だけ、手を握らせてくれないか?」
俺は差し出されたヴァニラの手を握った。こうすることによって心を落ち着かせようとしたのだ。
「・・・・・・。」
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。ありがとう。」
その途中に通信機が鳴った。
「おいタクト、いつまでそこにいるんだ。とっくに休憩時間は終わっているんだぞ。さっさとブリッチに来い。」
「わかった。・・・・ごめんね、ヴァニラ。せっかく時間作ってもらったのに居眠りなんかしてしまって。」
「私は構いません。タクトさんは疲れているのですから・・・。」
「ごめん、今度は絶対に居眠りはしないから。」
そう約束して俺はヴァニラの部屋を出てブリッチへと向かった。
ブリッチ
「お、早いじゃないか。これだけ早くきてくれれば俺も少しは苦労せずに済むのだがな。」
「レ・・・・・・レスター・・・・・・。」
「ん、いったいどうし・・・・・・」
俺はレスターにおもいっきり抱きついた。さっきの夢を見たせいでみんなの顔が見られて安心したからだ。
「うわっ!や、やめろ!!タクト!は、離せ!!」
「マイヤーズ司令が・・・クールダラス副司令に抱きついている・・・・。」
「前々から思っていてはいたけど、やっぱりお二人って・・・・・・。」
「お、おい!?やっぱりって何だ、やっぱりって!?」
そんな会話が聞こえたが俺はレスターから離れなかった。
「クールダラス副司令がそんな人だななんて・・・・・ひどい・・ひどすぎます。」
「アルモ、目をそらしちゃダメ。こんなの滅多に見られないんだから。」
「おい、お前ら。変な勘違いをするんじゃない!!」
さらに会話が続く・・・・・・
「ココ。私、もう・・・・絶えられない・・・・。」
「た、大変です!マイヤーズ司令、クールダラス副指令。アルモがすっかり人間不信に陥っています!」
「私は誰も信じられない・・・・・しくしく。」
「だから、俺がいったい何をした!?・・・・タクト、いい加減にしないんだったらこっちにも手がある。」
レスターが銃に手をかけたので仕方がなく俺はレスターから離れた。これはほんの冗談だったのだがレスターには冗談が効かなかったらしい。
「まったく冗談だったのに・・・・・・。」
「冗談だったらもう少しマシなのにしろ。いったいどうしたんだ。」
「ああ、実は・・・・・。」
俺はレスターたちに事の事情を説明した。そのあとこれ関係の雑談が続き、少し経ったあとレスターが改まって俺に聞いてきた。
「タクト、そろそろガイエン星系だ。副司令官としてお前の意見を聞きたい。この一件・・・どう見る?」
「・・・きっと、宇宙人の仕業だ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺はかまわず即答した。
「トランスバール星系外から宇宙人が侵略しに来たんだ。ほら、昔マンガでみたように恐ろしい形相をしていたり、目から光線を出したり・・・・って、レスターどうしたんだ?」
見てみるとレスターはホルスターから銃を出していた。
「気にするな・・・・。ただ突然、銃のエネルギー残量を調べたくなっただけだ。」
「全く、気休めなのに・・・・。」
「・・・・気休め・・?」
「知ってのとおりエルシオールとエンジェル隊は皇国内でも最大戦力だ。いくら最大戦力だからってルフト将軍がいきなり皇国最辺境に俺達を送るのは不自然じゃないか。」
「・・・・・・・。」
「俺だってバカじゃない。最大戦力でしか通用しない相手がそこに待っているかもしれない。それはみんなも思っているはずさ。」
俺は素直に自分の意見を言った。
「といってみたものの確証があるわけじゃないから本当のところは全っっっっ然わからない!!」
「おいおい・・・・。」
「だから、ほんの気休めさ。」
そのとき、ブリッチに警報が鳴った。
「レーダーに複数の艦影をとらえました!!」
「あ〜あ、レスターがこんな話題持ち出すから。」
「俺のせいかよ!?」
「敵艦、モニターに出します。」
敵の姿がモニターに出された。その艦影は皇国とは全く違う独特のフレーム、そしていやでも見たくはないものだった。そう・・・・ついに『ヴァル・ファスク』が侵攻してきたのだ。すぐに第一戦闘配備に移行し、エンジェル隊にも紋章機の搭乗を要請した。
「みんな、さっき紋章機にデータを送ったとおりだ。そう・・・・ついに『ヴァル・ファスク』が来たんだ。」
「『ヴァル・ファスク』・・・・・意外と早かったですわね。」
「今回は前回の戦いと違ってちょいと厳しくなるかもね。」
「それでも私たちは負けるわけにはいきません。トランスバールを守らなければ。」
「そのとおりだ、作戦内容を説明するぞ。」
俺はみんなにおおまかな作戦内容を説明した。目標は敵の全滅。
用意はばっちりだ。
出撃を命令しようとした。そのとき・・・・
「待ってください、マイヤーズ司令。これは・・・・救難信号です!」
「なんだって?エンジェル隊、その出撃ちょっと待ってくれ。」
「ちょ、ちょっと!?いきなりなんなのよ!」
「メインスクリーンに出します。」
スクリーンに出されたのはなにやら小型艇のようだが機体の形状、データどれも皇国のものとマッチしなかった。『ヴァル・ファスク』のものかと考えたが助けることにした。レスターは反対したが結局助けるという方針で作戦を変更し、敵を撃退することとなった。
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「敵艦隊、すべて沈黙。周囲に敵影ありません。」
「あの小型艇は?」
「いまのところ無事なようです。」
「じゃあ、格納庫までの誘導を頼む。紋章機の収納は後にしてくれ。」
その理由は万が一を想定してのことだった。
ブリッチはレスターに任せて俺は格納庫にむかった。格納庫に着いてみると皇国外から来た小型艇に関心があるという理由でギャラリーがたくさんいた。その中にはクロミエやケーラ先生の姿もあった。
待っていると小型艇の中から人が出てきた。一人は女性、もう一人は男性だ。
「私たちを助けていただき心から感謝しています。」
「感謝を・・・・・。」
女性が語り終わったあと男性のほうも言葉を発した。
「君達はいったい・・・?」
「さすがは皇国の英雄と呼ばれているだけありますね。タクト・・・・マイヤーズ様。」
俺は驚いた。初対面のはずなのに俺のことがわかったのである。
「ネフューリア率いる『ヴァル・ファスク』艦隊を倒したマイヤーズ様の勇名は私たちの星にも届いています。」
「私達の・・・・・・星?」
「はい。僕たちはあなた方の噂を聞きつけここまでやってきました。」
「どうか、お願いです。私達の星を助けてください。」
頭がこんがらがってきそうだ。
私達の星?
そもそもこの言葉の意味が理解できなかった。
「教えてください。あなた方はいったい何者なんですか?」
「私達は・・・・・・。」
その後の言葉を聞いたとき俺は自分の耳を疑った。
「私達は・・・・・EDENの民です・・・。」
第三部EL編第一話「再来」終
第二話に続く・・・・・・・。
なんってこった〜〜!!
なんか今回のお話はかなりカットさせてもらいました。夢のことをレスター達に話すシーン、ルシャーティとヴァインが登場して話をするところのシーンなどカットしまくったところがありすぎだ・・・・・。
多分、第三部はこんな形で進んでいくと思いますがみなさんどうか大目に見てください。