地球より、遠く離れた星国、デ・ジ・キャラット星。

その星の王女ショコラと、養女にして第2王女のカプチーノはプリンセス修行のため、

剣と魔法と騎士と戦乱の星【地球】へと向かうことになった。

ショコラは、プリンセス修行の一環として、

デ・ジ・キャラット星で、指揮官としての修行でもある戦略、兵法の手ほどきをゲマから、

敵が現れた時に自分自身で身を守れるように、武術の手ほどきを

デ・ジ・キャラット騎士団第6部隊隊長であるヴィエラ・キャラット将軍から教わっている。

しかし、それを持ってしても、地球での進軍は苛烈を極めるものとなるだろう。

そして、ショコラ軍あらためデ・ジ・キャラット軍は、

密偵であるエルバート・キャラットの手助けにより、

UFOで地球へと旅立つ。

だが、その報を聞き、彼女らの進軍を妨害する者たちが動き出したのだった……。

 

 

 

Legend of Di Gi Charat

でじこ編 第3章「いざ、地球へと」

 

 

 

 

(まさか……、私がデ・ジ・キャラット星人の姿で、地球に戻ることになるなんて……)

デ・ジ・キャラット騎士団第6部隊の隊長であるヴィエラ・キャラットは地球人で、本名をヴィエラ・サーフィスといった。

9年前、地球の高校に通う女子高生だったヴィエラと、同級生であり幼馴染でもあるクレイヴンは、二人で修学旅行の自主見学をしている最中に、空間の歪みに巻き込まれ、デ・ジ・キャラット星にワープしてしまったのである。

それから、ねこみみをつけ、9年間デ・ジ・キャラット星人に身をやつして、デ・ジ・キャラット星で生活していた。

ちなみに二人が通っていた地球の高等学校とは、軍人を志望する高校生たちが入学する、いわゆる職業軍人育成高等学校である。

そして二人は、地球ではなくデ・ジ・キャラット星という異邦の領域で、職業軍人という夢を叶えたのである。

そのため、彼女が地球に帰還する理由もまた、軍人としての仕事なのだ。

また、彼女は地球に、マールバラという弟を残してきている。

彼女の心残りは、11年前、軍人高校に入学する際、家に残してきた当時13歳の弟である彼だった。

今は24歳で、すでに成人している弟。

君主たるショコラ、そして、その母である女王の命令とはいえ、もしかすると11年ぶりの姉弟の再会となるかもしれないのだ。

だが、今の彼女はデ・ジ・キャラット騎士団の部隊長で、デ・ジ・キャラット星人なのである。

UFOの窓から、どんどん近づいてくる地球を見つめながら物思いにふけていたヴィエラは、気分を一新させるかのように、自分の頬をピチッと叩き、一人の軍人として、ゲマたちとの進撃準備会議へと向かった。

 

「……と、俺の伝令は以上だ」

今回、エルバートは伝令としての役目も兼ねて、ショコラ軍と合流した。

それで、彼が伝えた内容は三つ。

ひとつは、地球では今、戦乱が勃発していること。

ふたつは、プリンセス修行として、ショコラに戦を体験してもらうこと(もちろん、戦闘と指揮の両面から)。

そして三つは、ショコラの名をデ・ジ・キャラット、カプチーノの名をプチ・キャラットと改めてほしいということだった。

「にょ〜。じゃあ、あたしは『デ・ジ・キャラット』で『でじこ』かにょ?」

「カプチーノは『プチ・キャラット』で『ぷちこ』かにゅ?」

「あ〜! いいね〜、そのニックネーム! じゃあ、これからアタシはショコラ様を『でじこ』って呼んでいいかな?」

ふたりのニックネームにインスピレーションを感じたユーナはそのニックネームを誉め、それで呼ぼうとした。

しかし、でじこはそれを断った。

「だ・め・だ・にょ! ユーナはあたしのことを『でじこ』だなんて呼んじゃダメだにょ! 許容範囲は『でじこ様』までですにょ!」

(なんで『でじこ様』なのよ……)

「でじこ……。ぷちこ……。いいニックネームだみゅ〜」

「でじこに、ぷちこかみゃ……。それで呼んでもいいかみゃ?」

「良いですにょ! だって、みけとりんなは、あたしの乳姉妹ですからにょ」

乳姉妹だったことを口実に、『でじこ』『ぷちこ』のニックネームで呼ぶことを認められたりんなとみけ。

しかしそのことに、そのニックネームで呼ぶことを断られた赤緑ソシアルナイトの緑は納得するはずがなかった。

「ちょっと! なんでりんなとみけだけニックネームで呼ぶことを認めるわけ!? だいたい、そのニックネームを誉めたのはアタシよ! それに、りんなとみけだって、かつては乳姉妹だったかもしれないけど、今は立派なデ・ジ・キャラット騎士団の一員――――――――――アンタの家臣でしょ!」

「りんなとみけはぷちこたちの乳姉妹にゅ。でじこは乳姉妹だからニックネームで呼ぶことを認めてるにゅ。ぷちこはいいけど、でじこは『でじこ様』と呼ぶにゅ」

ぷちこが、そのようにでじこをフォローし、ユーナの意見を聞き流してしまった。

(ちぇ……。たしかに、だいたい乳兄弟は臣下になるというのがステレオタイプになりつつあるけど……)

一方、その会話が少し耳に入っていたフラーマとアルヴィスは……。

「ねえアルヴィス……、僕達も、ショコラ様のことを、これから「でじこ『様』」って、『様』づけで呼んだほうが良いのかな………」

「う〜〜〜〜ん、まあ、りんなとみけはもと乳姉妹だから、ショコラ様にとって特別なんだよ。でも、ユーナさんに対する態度からみて、僕達は『でじこ様』って呼んだ方が良いんじゃない?」

「そうだね。ありがとうアルヴィス。……ついでにカプチーノ様のことも『ぷちこ様』って呼ぶね」

(フラーマ……、カプチーノ様はそんなこと気にしてないと思うよ………)

「あ! それじゃあ、ショコラ様が『デ・ジ・キャラット』になったんなら、軍の名前も『ショコラ軍』じゃあまずいんじゃないか?」

ラスティは、見捨てられそうで重要なことに気がついた。

「おお! 確かに、『デ・ジ・キャラット』なのに『ショコラ軍』では変ゲマ!」

「そうかにょ! 地球では『デ・ジ・キャラット』になるんだにょ〜! じ、じゃあ、『ショコラ軍』改め、『デ・ジ・キャラット』だから『デ・ジ・キャラット軍』に改名するにょ!」

こうして、王女デ・ジ・キャラットが『ショコラ軍』が『デ・ジ・キャラット軍』に名を改めたその時だった。

突如、パンダ型のUFOが、デ・ジ・キャラット軍の猫型UFOに横付けしてきた。

「て…、敵襲っ! パンダ型のUFOが横付けしてきて、乗りこみやがったぜ!」

「何だゲマ!?」

「敵襲……だと!?」

「いったい、どうなっているんだにょ……」

デ・ジ・キャラット軍が注意を怠っているうちに、艦内にブラックゲマゲマ団員が乗りこんでしまった。

アナローグ星の荒くれ出身かと思われる斧を構えた者、アナローグ星の兵士出身かと思われる鎧をまとい槍を持つ者、アナローグ星の剣士かと思われる剣を構えた者、アナローグ星の狩人かと思われる弓を構えた者、アナローグ星の魔道士かと思われる魔道書を抱えた者。

そのブラックゲマゲマ団員は、アナローグ星人だけではなかった。

黒い髪に金色の瞳、そして青白い肌を持つ者が、数名かいたのだ。

彼らは、他のブラックゲマゲマ団員とは違う雰囲気が漂っていた。

彼らはまるで、あたかも人形のようだった。しかし、息をしており、脈もある。

その拍子に、武器を構えている。

ブラックゲマゲマ団は、でじこの命………………ではなく、身柄を狙っているようである。

「みんな! あいつらはあたしを狙っているにょ! 全力であたしを守るにょ!」

でじこは、全員に戦闘配置につくように命令した。

と、そのとき。一人の少女がでじこのもとに駆け寄ってきた。

「まってーーーーーー! あいつらはあたしの命を狙ってるのーーーー!」

そう言って、でじこのもとに駆け寄ってきた少女は、一部のブラックゲマゲマ団員と同じように、漆黒の長髪、青白い肌、そして金色の双眸を持っていた。

だが、彼女の身を守っている軽鎧は果てしなくピンク色をしており、その下の服もピンク色。足のプロテクターやブーツ、腰に巻いているリボンのベルトやスカートもピンク色だった。

さらに彼女の漆黒の髪は、頭にあほ毛が一本たっている。しかも表情もあどけない。そして年齢は、一見して10代前半である。

軽鎧を身にまとっているところから、弓使いのような感じだった。

「あいつらは、あたしを裏切り者として……、命を狙ってるの!」

「おまえも、ブラックゲマゲマ団の団員なのかにょ?」

「うん……ううん! あたしはブラックゲマゲマ………いや、略してブゲ団の裏切り者っていわれたの! だから……、命を狙われて……」

「そうかにょ……。それで、あんたと同じ黒髪、青白肌、金の瞳をもつあいつらはなんなんだにょ?」

でじこが問いかけると、金の瞳を持つ少女は答えた。

「あいつらは………、モルフ……。ブラックゲマゲマ団の……、最終兵器……なの!」

「もるふ?」

「うん……。モルフというのは、智慧により生み出された人形兵士で……、みんな共通して言えることは、漆黒の髪と、青白い肌と、金色の瞳を持ってるの」

「と、言うことは……、おまえも【モルフ】なのかにょ!?」

「うん。たしかにあたしは【モルフ】なんだけど、裏切り者だって言われて……。それで、命を狙われて……。どうしよう……、あたし、まだ白い砂になって消えたくない!」

「モルフって、白い砂になって消えるのかにょ?」

「そうなの! だから、あたし……、まだ消えたくないの! おねがい! あたしを助けて!」

でじこは、【モルフ】の少女の真摯なまなざしに、感心した。

まさか【モルフ】とはいえ、この少女が、嘘をつくことはあるまい。

「わかったにょ。あんたを信じるにょ! ところで、あんたの名前は?」

「あたし、ネムっていうの! ニンゲンとモルフ……、種族が違ってるけど、あたしはそんな事気にしないから、あんたたちとは何とかやっていけそう! じゃあ、よろしくね!」

「いたぞー! 裏切り者のネムゲバ!」

「討ち取るゲバー!」

「っと! あれはデ・ジ・キャラット星王女ショコラゲバ!」

「ちょうど良い! あいつの身柄も拘束するゲバ!」

ブラックゲマゲマ団員は、でじこの身柄とネムの命(といっても創られた命なのだが)を狙い、襲い掛かってきた。

そう。今、UFOの中で、激しい攻防戦が繰り広げられているのだ。

13−4歳の少年兵たちは、とにかく苦戦を強いられた。

フラーマの強固な鎧をもってしても、まだ少年であるフラーマは耐えきれなさそうだ。

しかも、ブラックゲマゲマ団のなかには、魔法を使う者もいる。

それはそれで、魔法の使い手であるりんなが頑張っていた。

しかし、彼女の性質上、今にも眠りそうな状態で魔法を連発している。

「大丈夫にょ! ここはあたし達に任せて、お前は下がるにょ!」

『死にたくない』というネムの思いを真に受けているでじこは、彼女に下がるよう指示を出した。が。

「大丈夫…! あたしだって戦える!」

「にょ!? 何言ってるにょ!? 死にたくないんじゃなかったのかにょ!?」

たしかに、ネムは『死にたくない』と、あれほど強く言っていた。

「でも……、後方に下がってるばっかりじゃ、強くなれないよ……! だから、あたしも戦う!」

「戦うって……。おまえ、なんか武器が使えるのかにょ?」

「うん! あたしだって、弓使いの【モルフ】として、弓を叩きこまれたもん! 弓、使えるよ!」

「お前……。わかったにょ! 一緒に戦うにょ!」

「はい! ショコラさん!」

「デ・ジ・キャラット…だにょ!」

こうして、ネムも戦うことを決めた。

彼女の参加で、戦況は有利に転じた。

間接攻撃できない敵たちを、彼女は次々しとめていった。

残すは、敵将・ジンのみ。

ジンは、ネムと同じ【モルフ】である。

しかし、ネムと違い、ジンは、単純に行動していた。

「ブラックゲマゲマ団首領からの伝言を伝えます。デ・ジ・キャラット星の王女ショコラ! 絶対に捕まえて見せるぴょ! 覚悟だぴょ!」

ジンは、剣士として創られたようだ。(剣士の敵将って、今までファイアーエムブレムに居なかったような……)

しかし、間接攻撃できないのが仇となってか、ネム、アルヴィスの弓攻撃とりんなの魔法でやられた。

「ブ……ゲマ…団……を……ショコラ! ……ぴょ! ……」

こうして、UFO内での攻防は終わった。

 

「つ、疲れた〜〜〜!」

一番に疲れたのはネムだった(すぐに眠るりんな除く)。

宇宙船内での戦闘である。プレッシャーがかかるだろう。

しかし、『感情を持つ』人形の少女が、一番疲れるなんて……。

やはり、彼女は普通の人形兵ではないようだ。

「あ……、君は……」

「デ・ジ・キャラット星人……」

アルヴィスとネム。

ふと、目が合ってしまった。

(か……、かわいい……。この子、なんで人形なのかな……)

(デ・ジ・キャラット星人か……。宇宙人って、いたんだね……)

なぜ、この二人の目が合ってしまったのか、もしかして、同じ弓使いだからだろう……。

でも、今は、進撃の準備をする時だ。

だが、目が合ってしまう。おたがい、気があるようだ。

「あ……、君は……」

「はじめまして。あたし、ネム。あんたは?」

「ぼ……、僕、アルヴィス・キャラットって言うんだ」

「そう。なんか、かわいいね。あんた」

「そ、そうかなあ? で、でも、ぼく14だよ?」

「え!? あたし、12なんだけど……、若く見えるなあ?」

「う〜ん、ひょっとすると、僕って子供っぽい?」

「かな。」

「そうか……。でも、さ、僕達、お互い気が合うね」

「あ〜! あうあう!」

「じゃあ、また今度、同じようにお話しようよ!」

「うん! わかった! それじゃあ、ね!」

同じ弓使い。やはり、気が合うようだ。

(アルヴィス……、あの子に恋、したのかな)

同僚のフラーマも、アルヴィスの恋の予感を感じたのだった。

 

所変わって、ここはデ・ジ・キャラット軍の猫型UFOに横付けしてきた、パンダ型UFOの中……。

「ピョコラ様! 伝令ゲバ! ジンがやられたゲバ!」

「そうかぴょ。まあ、モルフだから別に良いけどぴょ」

団員にピョコラ様と呼ばれた少女は、あどけなく返答した。

「ピョコラ様。どうなされますゲバ?」

「……このままでじこおねえちゃんを地球まで追うぴょ。そして、何処かの国と契約して、兵力を倍増するぴょ」

「名案ですゲバ! ……でも、その作業はわずか13歳のピョコラ様一人では無理だと思われますゲバ…」

「ぴょぴょぴょ……。こんな事もあろうかと、特注の【モルフ】を二人ほど取り寄せておいたぴょ! エフィデル! リムステラ!」

パチン☆

少女が指を鳴らすと、彼女の横に、二人の人影が現れた。

ひとりは、イケメンと言えるような端整な顔立ちを持つ、黒いローブの男。

もうひとりは、無機質な感じがして、ネムや前者の男より感情に乏しい者。

そして二人とも、髪、瞳、肌からして、【モルフ】ととれる。

「ピョコラ様。どうなされましたか?」

「エフィデル。おまえに任務を与えるぴょ。地球についたら、ヴェルネット帝国と契約して欲しいぴょ」

「分かりました。ピョコラ様」

エフィデルと呼ばれた男は、少女の命令を引き受けた。

「それと、リムステラには後で別な任務を与えるぴょ」

「御意」

「ぴょぴょぴょぴょぴょ………。楽しくなってきちゃうぴょ……。でじこおねえちゃん、覚悟だぴょ!」

少女の笑い声が、パンダ型UFOの中に、響きわたった。

 

「もうすぐ……、ね……」

「にょ。とうとう地球にたどり着くのかにょ……」

「でじこ様。これから、地球での進軍は苛烈を極めることとなりますゲマ。でも、ゲマは信じているゲマ。でじこ様は、プリンセスの器。そして、その器にあわせて、立派なプリンセスになれると信じていますゲマ! そして、指揮官としても、戦闘能力も有能なプリンセスになれるゲマ!」

「わかった……にょ! 夢はでっかくプリンセスにょ! さあ! 進軍だにょ!」

デ・ジ・キャラットは、とうとう地球に進軍するのだった。

 

続く。

 

 

次回予告

 

暗殺集団『黒い牙』の一員である傭兵、うさだヒカル。

彼女は、信頼できる仲間と共に、今日も暗殺の依頼を遂行していく。

しかし、今度の暗殺依頼から、彼女の運命は動き始めるのだった……。

 

次回 うさだ編第3章「城下町の戦い」

 

 

 

あとがき

 

知らない間にロマミソやってて、すっかりはまって、知らない間に後はサルーインを倒すまでというところまで言ったうさだみすとです。(公開される頃にはクローディア編でサルーイン倒せそうにありませんから…)

えーと、こんかい、ネムが初登場しました。彼女は、今のところ『人形』なんですが、実は………なんです。(ネタバレなので反転もせず、先のお話をお楽しみに!)でじこは、じつは、設定的には、プリンセス修行で軍人系のことをやっちゃってます。

では! これにてにょ!