エンジェル学園 後編
「ちょっと待ったーーーーーーーー!!!!!」
「誰だ!!?」
「体育と聞いちゃ黙ってられん!射撃なんぞ生温い!!体育といえば己の肉体をひたすら鍛える陸上こそがふさわしいのだぁーーーーーーーー!!!!」
体育教師 ギネス・スタウト
特技:重量上げ 好物:プロテイン 備考:筋肉バカ
「ああ!?聞き捨てならないね!!射撃のどこが生ぬるいって!!?」
「道具に頼るなど己の強さを放棄すに等しい!!己の肉体を鍛え上げろ!肉弾戦こそ全てだぁーーーーーーーー!!!」
「はっ、筋肉で弾が受け止められるのかい?どんな奴も撃たれりゃそれで終いなんだよ!!」
「ふっ、やはり口では決着がつかんか・・・ならばこの“ベリー・インドカレー”で勝負だぁーーーーー!!!」
「うっ・・・・お、面白い!受けて立つよ!!(何でよりにカレーなんだい・・・・酒なら辛いのも平気だってのに・・・・カレーなんて中辛すら完食した事ないっての!!)」
そうしてカレー対決のために用意されたお互い5皿、合計10皿の“ベリー・インドカレー”。
別の意味で有名なカレーが今、目の前にある。
においだけでも相当なものなのだが一人だけうらやまそうな顔で見ていたりする(言わずもかな)。
「これをどちらが早く完食できるかで決着をつける!!異論はないな!!?」
「も・・・もちろんだよ・・・!!」
「それではお互い用意はいいですね?」 ←クロミエ、いつの間にか審判
「試合・・・・・・始め!」
「うおーーーーー!!燃えるぜーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ふ・・・ふんっ、えらくハイペースだねぇ・・・・(うわっ!においだけでもこりゃダメだぁ・・・・)」
「う・・・うおーーー!!も・・・燃えるぜーーーーーーーー・・・・!!!」
「うん?」
「・・・・・燃える・・・・・・ぜ・・・・・・」
「何だ?」
「燃え・・・・・つき・・・・・・た・・・・・・・ぜ・・・・・」
ガクッ
「あ〜ぁ、カレー持ったまま失神してるわこりゃ・・・」
「ギネス先生、試合続行不可能によりフォルテ先生の不戦勝」
「言ってる場合かい!ヴァニラ、あんた保険委員だろ!?保健室まで連れてってやりな!!」
「・・・・はい・・・」
「あぁ・・・・もういいや、次の先生が来るまで適当に自習してな」
どうやら先程の騒ぎですっかり授業をする気が失せたらしい。
「あのフォルテ先生!この残ったカレー食べてもいいですか!?」
「好きにしな」
「ラッキー♪」
「でも蘭花、そんなに食べるとまた太っちゃうよ?」
「うっ・・・・・」
――――――――――職員室・昼休み―――――――――――――――
「おいタクト!聞いてるのかタクト!?」
教師 レスター・クールダラス
特技:仕事全般、説教 好物:好き嫌いなし 備考:学園の逆マドンナ
「そんなに大声ださなくても聞こえてるよ。っていうかなんで俺だけ名前なんだよ?いつも『公事と私事を混同するな』って言ってるのはお前じゃないか」
教師 タクト・マイヤーズ
特技:チェス、さぼり 好物:おいしい物 備考:学園一自習の多い教師
「定期テスト直前のこの大事な時期に漫画雑誌片手にコーヒー飲んでるお前にだけは言われたくない!!公私混同どころかお前の場合は私事一直線じゃないか!!!!」
普通、定期テストの直前になると職員室はたいていの教師がテスト作成にやっきになって生徒などもなかなか入れないものである。
そんな中片手に漫画雑誌、もう片方の手にはコーヒーがあり、おまけに机の上にはプリントの類は一切なく枕まで用意されているのだから誰の目からもやる気がないように見える。
「お前この前もテスト前日になって慌て出した挙句、急ごしらえで教科書丸写しのテスト作っただろ!!おかげでお前のテストだけ異様に平均点高かったぞ!!」
「まぁまぁ、そう怒らなくても・・・・生徒の点数が高いのは良い事じゃないか」
「ああ、そうとも良い事だ!!ただし!それは常識的な条件の中での話だ!!!!!」
こんなやり取りがずっと続いているせいで周りからはすっかり“タクトのお守り役”という肩書きが貼られてしまったレスターはタクトが何をしても、つきそいで何かと面倒事に巻き込まれるようになっている。
そのため今回も下手にタクトが問題を起こすと自分にまで被害が及ぶ可能性があるのだ。
「はぁ・・・わざわざお前と縁を切るために教職を選んだのに、何でお前まで教師になってるんだ・・・?」
「はっはっは、そんなのかわいい女の子達との出会うために決まってるじゃないかねレスター君!」
そこを計りそこねた、確かにタクトが教職に向いていないことなど火を見るより明らかだ。
しかし、この男は「女の子に会いたい」というあまりにも個人的な理由で職を選ぶという意味のないところで妙に行動力を発揮するのだ。
普通はちょっと勉強したぐらいではそんなことは不可能だがタクトの場合それを可能にするだけの頭脳がある、まさにバカと天才は紙一重のお手本のような人物だったりする。
「頼む・・・これ以上俺の頭痛を悪化させないでくれ・・・・最近市販の頭痛薬じゃ効かなくなってきたんだ・・・・」
だが、そんなタクトの才能などレスターにとってはただの頭痛の要因でしかない。
「お前も大変なんだなぁ・・・」
「誰のせいだ!?誰の!!!!」
と、二人がいつも通りの会話をしていると
「あの〜〜・・・・お弁当余っちゃったんですけど・・・・よかったらいっしょに食べませんか・・・?」
教師 アルモ
特技:空回りの恋 好物:洋食 備考:唯一の恋愛キャラ
「えっ、俺に?」
「違います。マイヤーズ先生はカップ麺でも食べててください」
「・・・・しくしく・・・・・」
「いや、遠慮しておく。俺も弁当持っているんでな」
そんなアルモの誘いをレスターはテストの制作を続けながら特に気にしていない様子で断った。
「えっ!!?だだだ・・・・誰からもらったんですか!!!!?」
「自分で作った。一人暮らしだと下手にインスタントで済ますより少しの節約でずっと値が浮くからな」
「そ・・・そうですか・・・・あ〜〜ぁ・・・・」
「それはもったいない!ぜひ俺が・・・・」
「仕方ない、今日はこれを晩ご飯するか・・・・・」
「・・・・こ、この差はいったい・・・・・」
いっそ率直に「嫌です」と言ってくれればどんなに楽か・・・という思いと共にタクトは愕然とヒザをついた。
そんなタクトの元へ・・・・
「マイヤーズ先生、お困りでしたら私のお弁当で良かったらどうぞ」
丸い眼鏡掛け、明るい茶髪を三つ網にした少女はそう言って弁当の半分をタクトに差し出す。
「こ・・・ココ先生!良かった!あなたは救いの女神だ!!!」
「いえ、いいんです。先生が忘れないでいてくれれば」
「え?忘れないって・・・・何を?」
そんなココの不可解な言葉にタクトは聞き返す。
「これといって深い意味はないんですが、ただお弁当のおこぼれすらもらえなくて情けなくヒザをつく程に愛情に飢えた先生に私が救いの手を延べたという・・・・ただこの恩を一生片時も死ぬまで忘れないでいてもらえさえすれば・・・・うふふふふふ・・・・・」
「(恐っ!!!!!)」
さすがに口にしてしまうのは失礼なので心の中で突っ込むだけにしておいたが、そんなココを恐る恐る見てみると
「あれ?いない・・・・」
いつの間にかココの姿は消えていた。
ガラッ
周りを見渡していると誰かが職員室に入ってきた。
「どうしたんですかマイヤーズ先生?そんなにキョロキョロして」
「え!こ・・・ココ先生!?いつの間に外に・・・それにさっき持ってたお弁当は・・・・?」
「いつの間にと言われましても、昼休みが始まってすぐに出てついさっき学食から帰ってきたんですけど・・・・・あの、お弁当って何の話ですか?」
教師 ココ
特技:相談 好物:和食 備考:心霊現象とは切っても切れない縁(本人自覚なし)
「う・・・・・」
「う?」
「うぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「ま・・・マイヤーズ先生!!?」
マイヤーズ先生、エオニア先生に続き精神的重傷のため早退。
――――――――再び教室―――――――――――
「噂を聞いたかノア?」
「ああ、あれでしょ?マイヤーズが幽霊を見たとか何とか言って発狂して早退したってやつ・・・・・まったく、そういう非科学的な事を言う輩がいるからいつまで経っても心霊スポットがどうだの肝試しだの非科学的なイベントがなくならないのよ・・・・・」
↑
オカルト否定&教師は呼び捨てにするタイプ
「あのな、まず教師を呼び捨てにするな!それに何を言っているんだ?この世には科学では証明できないことが山ほどある!マイヤーズ先生が見たのが一概に幻とも言い切れんだろう!!?」
↑
オカルト肯定&教師は絶対に「先生」づけするタイプ
「あんたこそ何言ってんの?この世で科学で証明できないものは何かしらのトリック、もしくはでっち上げなのよ。まったく・・・仮にもホワイトムーン社の一人娘がそれじゃ将来も暗いわね」
「ふん、そうやって固定観念に縛られているようでは想定外の事態に遭遇した時、いざという時の適切な判断が鈍るんじゃないか?そういえばこの前のテストも簡単な引っ掛け問題に引っ掛かっていたしな」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・ねぇ」
「・・・何だ?」
「ひょっとして喧嘩売ってる?」
「まさか、売ってるのはお前だろう?」
「あんたよ」
「お前だ」
「「・・・・・ふんっ!!!」」
「ふっ天使たちよ、私のために争わないでくれ」
教師 カミュ・O・ラフロイグ
特技:ダンス(持久力なし) 好物:見栄えの良いもの 備考:ナルシストなストーカー
「「何が悲しくて(あんた)(お前)なんかのために争わ(きゃなんないのよ)(ねばならんのだ)!!!!!!!」」
「ふっ、二人そろって照れ屋なものだ」
「あほらし」
「勝手にしてくれ」
「さぁ、エンジェル諸君!さっそくだがこの私の華麗なる歴史の授業を始めようと思う!!」
セリフを一つ一つ言う度にまるでミュージカルの様に踊っているこの光景を見ながらこの場にいる半数以上の生徒は「歴史に華麗とかあるんだろうか?」という疑問を拭いきれなかったらしい。
「まず皇国暦×××年・・・・・・・」
やっとまともな授業が受けれる、誰しもがそう思った次の瞬間。
「マイハニー、ミルフィーユ・桜葉の誕生!!」
ザワッ!!!!
このとんでもない発言にクラス中がざわついた、当の本人であるミルフィーは少しだが顔が青ざめている。
「ちなみにこれが当時の映像で・・・・・」
「いーーやーーーー!!!止めてーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
普段滅多に叫ばないミルフィーもこのときばかりは必死にその映像を阻止しようとする。
結局その後、授業(??)は中止となりラフロイグ先生はセクハラの容疑で連行されていった。
こうしてまた一人、また一人と教師がいなくなってゆく・・・・(なぜかホラー風)。
この学園も長くはないだろう・・・・・・
と思われる方も多いだろうが、それでもちゃんと教師も戻ってきて学園は続いているらしい。
あとがき
実は今回の作品一話完結の短編小説にしようと思ったのですが、予想以上に容量が多くなってきたため急遽、前編・後編の中篇小説とさせて頂きました。
何故学園ものかと聞かれれば衝動としか言い様がありません。
勢いだけでこんなの作ってしまった今作(いつも考えなしのような・・・・)いかがでしたでしょうか?
それではまた!