今日も今日とてエンジェル学園は謎の未確認生物が原因不明の大量発生をしたり、誰もいないはずの理科室からうめき声が聞こえたり、教師と生徒の全面戦争が起こったりと比較的平和な日常が送られていた。
そんなエンジェル学園に新たなる仲間(被害者?)が加えられようとしていた。
人は俗にそれを物好きという・・・・・・・・
エンジェル学園
番外編
「おい、お前ら静かにしろ!もうとっくに休み時間は終わっている!!」
本日はレスターの授業、レスターの場合教科に苦手も得意もないので病欠で休んだ先生などの代理に駆り出されることがあるだが、基本的には数学担当である。
「今日は中途半端な時期だが、転校生が来ている。だからといってはしゃぐなよ?特に『芸をしろ!』とか中年の忘年会みたいな事をいう奴は今すぐ帰れ!」
レスターのこの先読みしているかの様な発言に生徒の何人かは「ちっ!」とか思ったとか思わなかったとか。
「クールダラス先生、転校生って男の子ですか?それとも女の子ですか?」
ある意味お決まりといっていいほどベタな質問をするのは、最近ラフロイグ先生にエンジェル学園恒例の“先生の主張”で「マイハニー〜〜!愛してるよ〜〜〜〜!!」と叫ばれた挙句、学生寮の自分の部屋に不法侵入され、親友に防犯対策の強化を勧められたミルフィーユ・桜葉だった。
普通の人間ならとっくにノイローゼになっているであろう・・・・
「ん?両方だ」
「え?両方って・・・・・・・・・・・カタツムリ(雌雄同体生物)さんですか!!?」
どこが普通じゃないかといえば、おそらくこういう所だろう。
「あのね、ミルフィー!なんでカタツムリが人間の学校に転校して来るのよ!?どう考えたっておカマかおナベに決まってるじゃない!!」
そんなミルフィーのボケにいまひとつツッコミきれていないのが最近“ベリー・インドカレー”でバイトを始めたらしい蘭花・フランボワーズである。
「はぁ・・・・五十歩百歩ですわね。男性と女性が両方ということは転校生は二人と考えるのが一番自然ですわ」
「そういうことだ、二人とも入って来い!」
レスターの呼びかけと同時に教室に入ってきたのは若い二人の男女だった。
「はじめまして、ルシャーティ・エデンです」
出席番号09番 ルシャーティ・エデン
特技:手品 好物:ケーキ 備考:全知無能の情報通
「・・・・・ヴァイン・エデンです」
出席番号10番 ヴァイン・エデン
特技:機械いじり 好物:野菜系 備考:天下無敵のシスコン
入ってきた二人はどちらも金髪で整った顔立ちをしており、相違点といえばあまりにも対照的な笑顔と無表情という表情の違いにあった。
「エデン?ではあなた方はエデン学園の校長の・・・・」
「はい、孫に当たります」
「話はそれぐらいにして、さっそ「さっそくですが、あいさつ代わりとして私のとっておきの芸をお見せしたいと思います♪」
生徒たちの転入生に対する歓声が上がる中、手早く進行して授業に入ろうとするレスターをよそにレスターの先程の発言を聞いていたかのようなタイミングでルシャーティはそそくさと芸の準備を整えていた。
「・・・・わざとか・・・・?わざとなのか・・・・・・?」
この作為的とも思える状況にレスターは天然で自分の胃と頭に致命傷になるんじゃないかと思えるほどの痛みを与える腐れ縁のバカの顔が頭をよぎった事にほとほと自分は最悪の星回りなのだと実感していた。
「ここにあります何の仕掛けもないただのシルクハット♪」
そう言って生徒たちにどこから出したのかは不明のシルクハットを縦、横、斜め、様々な角度で見せている。どうやらすでにルシャーティの中ではレスターはいない事になっているらしい。
「そこにこのクマのぬいぐるみを縫い付けて・・・・・・・・痛っ!あれ〜?もう一度・・・・・・・痛っ!ここがこうなって・・・・・・痛っ!もうちょっと間隔を・・・・・・痛っ!」
先ほどまで手際の良かったシルクハットやぬいぐるみを出す作業に比べて明らかに手際が悪く、縫い付け終わるまでに約30分近く――――――――――――――・・・・・・・・
「できました〜〜♪」
縫い物を終わらせ無邪気に微笑む少女、本来ならさぞ微笑ましい光景になるのだろうがこの場にいるほとんどの者は最初、黒とピンクだったはずのシルクハットとのクマのぬいぐるみが真っ赤に染まっているのを何とも言えない目で見るしかなかった。
色を変える手品という可能性もなくはないが、ルシャーティの手の状態を見る限りそれは期待薄のようだ。
「そしてこのシルクハットとぬいぐるみに布をかぶせて・・・・・・・・・・・・・1、2、3!」
ルシャーティの掛け声と共にはずされた布の中身は一瞬にして消えていた。
「うわぁ、すご〜いルシャーティさん♪どうやったんですか?」
「・・・・・・どうでもいいが、誰か怪我のほうを治してやれ・・・・・・・」
「まだまだ、これだけでは終わりませんよ」
そう言って今度は教卓の上に布をかぶせ、また「3、2、1!」という掛け声と共に布をはずすとシルクハットに縫い付けていたはずの真っ赤なクマのぬいぐるみが出現する。
「以上、ありがとうございました♪」
パチパチパチパチ
「まっ、そこそこ楽しめる芸ではあったけどおおよそのトリックの内容は見当がつくわ」
思いの他見事だった手品に歓声と拍手がわく中、意義ありと言わんばかりに席を立ったのはノアだった。
そしてまるで名探偵気取りのような歩調でヴァインとルシャーティのいる教卓まで歩いて行く。
「この手品の要素はわざわざぬいぐるみを縫い付けたところにあったのよ。それによって私たちは『シルクハットからぬいぐるみが離れる訳がない』という固定観念に縛られてしまう」
ノアがタネ暴きを得意げに語っている中で一部を除くほとんどの人間はドン引きだった、大抵こういうのは本人がやって初めて面白いのであって他人がこういう事をすると場が盛り下がることがある。
「ちょっと待てノア!!」
もはやこの作品ではおなじみになって、みなさんもお解かりだろうがタネ暴きを止めたのはノアとほとんど同い年のシヴァだった。
「またなの?シヴァ・・・・・・」
「何が『またなの?』だ!!さっきの手品の謎解き、私が貸してやった『これであなたも天才マジシャン』下巻の内容そのままじゃないか!!!」
何故にまたシヴァはそんな本を買っていたのだろうか・・・・・・・?
「あら、それを言ったらこの転校生だってその内容をそっくりそのままやっただけって事じゃない」
「手品をするのとただその内容の謎解きをするのとでは雲泥の差だろう!!」
「あの・・・クールダラス先生、こういう場合はどう対処すれば・・・・?」
姉の手品を対象に激しく議論する二人に戸惑いながらヴァインは居心地が悪そうにレスターに助けを求める。
「放っておけ、今下手に口出しても怒鳴られるだけだ」
何だかんだ言ってもレスターもすっかりエンジェル学園に慣れてしまっているようだ。
「大丈夫ですよ、私の手品には『これであなたも天才マジシャン』下巻の内容にアレンジを加えたものですから♪」
「面白いじゃない、だったらそのアレンジとやらを見せてもらいましょうか?」
まるで自分が自信満々で解こうとした謎解きが間違っていたと言われているような気がして少々腹を立てているらしい。
「では、ノアさんはどうやってシルクハットからぬいぐるみをはずしたと思われます?」
「そんなの縫い付ける糸の材質をちぎれ易いのにすれば良いだけの話じゃない。そうする事で『離れないはずのぬいぐるみが離れて、あら不思議』って訳よ」
「これ、ただのミシン糸ですよ?」
「ふっ、私をあざむける機会なんて・・・・・・・・・・・・・今回だけという事を肝に銘じて置く事ねーーーーーーーーーーーーー!!!」
あまりにショックなのかカバンも置き忘れたまま教室を飛び去っていった。
「ノア・ブラックムーン、早退っ・・・・・と」
そんな状況下、レスターは冷静に出席簿の早退の欄に書き込み、シヴァはルシャーティに「お前は見込みがある!」と誉めていたそうな・・・・
「さて、二人とも席につけ!今日で最後の授業だ。しっかり頭に叩き込んでおけ!!」
「最後?明日から何かあるのですかクールダラス先生?」
ヴァインは時期的に考えて夏休みも卒業もまだまだ先だというのにも関わらずレスターの最後という言葉が気にかかり、レスターに尋ねる。
「あぁ、転校早々で悪いが明日から学園祭の準備だ」
「学園祭ですか、楽しみですね」
ルシャーティは未だに血の止まらない手を重ね無邪気に喜んでいる。
「・・・・・・・・・お前はまず保健室に行って来い・・・・・・・・・・・・」
――――――――そんなこんなで学園祭当日―――――――――――
エンジェル学園はさすがに学園祭というだけあって、いろんな学校からいろんな人々が訪れていた。
「やっほ〜、ルシャーティ、ヴァイン、あんたたち屋台も何もしないから暇でしょ?今日はあたしがあんた達を案内してあげるから。そういえば名前覚えてる?蘭花・フランボワーズよ」
「ええ、覚えてます。今日はよろしくお願いします・・・・・・・・・・姉さん・・・ちゃんと後で買ってあげるからよだれは拭いてくれ・・・・・・・・」
「ひははんほほひはほっへほほほおふはふへふへ〜♪(みなさん料理がとってもお上手なんですね〜♪)」
「・・・・・姉さん、チョコバナナ食べながら焼きそば食べておいしい・・・・・・・?」
「へへ、ほっへほ!(ええ、とっても!)」
「「・・・・・そうなんだ・・・・・・・」」
このとき蘭花は初めてミント以外の人間の味覚を疑ったという。
「あっ、射的だってさ。行ってみない?」
「ええ、面白そうですね」
――――――――射的場A面――――――――
「よっ、三人揃ってどうしたんだい?」
「やっぱりフォルテさんだったんですね、っていうか先生も屋台出すんだ」
それは別としてフォルテが射的というのはあまりにも似合いすぎではないだろうか、そして屋台を出す本人も学園祭に趣味を出しすぎている。
「まぁ、ここは生徒の数も少ないからね。そういやさっきラフロイグ先生も“愛しのミルフィー展示室”とかいうの出してたっけ」
「あの人はいったい何回警察に行けば気が済むんでしょうね・・・・・?」
「まぁ立ち話もなんだし、射的しに来たんだろ?」
「あの!まず私がやってみてもいいでしょうか!!?」
ようやく全て食べ終わり突然会話に参加してきたルシャーティが「やりたいなぁ」というような目でフォルテたちを見ている。
「「「ど・・・どうぞ・・・・・・」」」
「絶対とって見せますよ、あの可愛いマヨネーズさんのぬいぐるみ!」
選ぶほうも選ぶほうだが、そんなぬいぐるみを置くほうも置くほうだ。
「えいっ!」
パァンッ!!
「「「・・・・・・・あれ?」」」
蘭花、ルシャーティ、ヴァインの三人が疑問の声を上げたのは弾がはずれたからではない。むしろルシャーティにしては珍しく一発目で命中した・・・・・・・にも関わらず弾はそのまま的を通過していったのだ。
そして良く見てみると的であるマヨネーズさんのぬいぐるみには穴が、ルシャーティの放った銃からは煙の様なものが出ていた。
「フォ・・・・・フォルテさん?」
「いや〜〜、やっぱり偽物の弾でちまちま撃つより実弾でどか〜んって撃つほうが良いと思ってねぇ。大丈夫!的じゃなくて的の足元狙えば景品も無傷で・・・・・・・・・・」
スタスタスタスタ・・・・・・・
「お・・・・おいっ!どこ行くんだよ!?・・・・・・・・・・・・せめて弾一発分の金くらい置いてけ―――――!!!」
――――――――射的場B面――――――――
「あぁ、やっぱり学園祭っていいよな〜〜♪可愛い女の子はたくさんだし、食べ物はおいしいし、コーヒーなんてサービスでタダの所もあるもんなぁ〜〜」
タクト・マイヤーズ。クレープの屋台のアシスタント係だが、さぼり中のため現在ヒマ。
ピューンッ!!!
「がっ!!!?」
ここにきて先ほどのA面でルシャーティの放った弾が的を貫き、屋台を貫き、タクトの頭へ到達した。
バタッ
「(あ、あれ?俺撃たれた?っていうかなんで?テロ?テロなのか?・・・・・・いやいやいや!ここ学園だし、しかも学園祭中だし!・・・・・・・・・・あぁ、やばい・・・・どんどん血が抜けていく・・・・・・・そもそもなんで撃たれたんだろう・・・・?こんな事ならアルモ先生たちの屋台ちゃんと手伝っとくんだったなぁ・・・・・そういえば俺を撃ったのどんな人だろう?せめて可愛い女の子だったらまだ本望なんだけど・・・・・・・っていうか俺今血出しながらぶっ倒れてるのになんで誰も駆け寄ってこないんだろう・・・・・・?これって人徳の問題なんだろうか・・・・・・・い、意識が・・・・・・・・・・)」
あわやマイヤーズ先生死亡か!?と思われたその時、一筋の人影がマイヤーズ先生の視界にちらついた。
ガバァッ!!
「うおーーーーー!!!どこのどなたか存じませんが、せめてこの世の最後の時間あなたの胸の中で!!!」
カチャリ
どこの誰かも分からない相手に有無を言わせず抱きつくマイヤーズ先生の額には冷たい銃口が突きつけられた。
「・・・・これは何のマネだタクト・・・・!?」
マイヤーズ先生がこの世への別れに最後の力を振り絞って抱きついた相手は自分の良く知る腐れ縁の親友だった。
「・・・・クックック・・・・・はっはっはっは・・・・あ――っはっはっはっは!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふざけんな――――――!!!なんでこんな場面でお前なんだよ!?どうせ死ぬなら女の子の胸の中でっていう俺の気持ちを察して誰か可愛い娘を連れてくるとかできないのかお前は!!?」
死が近いせいなのか、普段とビミョーに口調が違ってきている。
「そんな病んだ気持ちを俺に・・・・というか通常の人間に理解しろというのはナメクジに塩の中にあるパンを探して来いと命じるようなもんだぞ」
「何〜〜!?じゃあお前はこれから死ぬかも知れないって時にせめて女の子の胸の中て死にたいとか思わないってか!!?そいつはもう男じゃねえ!!俺は・・・・俺はそんなの認め・・・・・・・・」
パァッン!!
「さらばだタクトよ、まさかこんな形でお前と別れることになるなんてな・・・・・」
親友のあまりのウザさについ我を忘れて発砲したレスターは涙(目薬)を流しながら一人その場を去っていったという・・・・・・・
タクト・マイヤーズ先生、早退・・・・・・・というか病院行き。
その数日後、己を見捨てた(トドメを刺した)親友への復讐者として地獄の底から這い上がってくるのだが、それはまた別の話である。
――――――――再びルシャーティ、ヴァイン、蘭花サイド――――――――
「え〜〜と、次どこ行きたい?」
「そうですね・・・・・・・・あ、あの“国内産超高級大豆使用の超高級豆腐”っておいしそうです!!」
「ずいぶんと渋いチョイスね・・・・・・・っていうかまだ食べるの!?」
「それにしてもこの学園祭って無駄なところで金が動いてますよね・・・・・・・」
ヴァインが至極当然なツッコミをしたその時
バァン!!!
突然学園の屋上付近が爆発を起こした。
「なっ・・・・・・何!!?」
「ふはっはっはっはっはっはっは!!!」
すると同時にどこからともなく老人の笑い声が聞こえてきた。
その声の元は広場の中心の台(俗にいう朝礼台)の上でがっちりした横幅の広い体格の老人がひたすら高笑いをしていた。
「今のは単なる宣戦布告にすぎん、我が名はゲルン・ヴァルファスク!!さぁ集まれ我が一族よ!!!」
ヴァルファスク学園・学園長 ゲルン・ヴァルファスク
特技:独り占め 好物:せんべい 備考:エンジェル学園のライバル校
「我、了解したれり」
教師 ロウィル・ヴァルファスク
特技:カタコト 好物:なし(嫌いな物はある) 備考:ヴァルファスク一家の長男
「ここまでくればもう勝ったも同然よ、よくやったわヴァイン!!」
教師 ネヒューリア・ヴァルファスク
特技:無謀な野望 好物:ワイン 備考:負け犬人生爆走中
「ネヒュ姉、僕にとってこの程度の事などよくやったの内になど入らないよ」
出席番号10番 ヴァイン・ヴァルファスク(旧姓)
特技:機械いじり 好物:野菜系 備考:やっぱりシスコン
その騒ぎに生徒も教師も続々とその場へ集まり始めた。
「これは・・・・・一体どういう事ですの!?なぜヴァインさんがあの様などっかイっちゃてる人たちといっしょに!!?」
「ふんっ、貴様たちごときに僕たちヴァルファスク一族の素晴らしさなど理解に苦しむだろうね(うわぁ、素直な感想だなぁ・・・・・)」
「僕たち?どういう事だい!?あんたはルシャーティの弟なんじゃないのかい!!?」
「あぁ、そうだ。間違いなく僕はその女の弟だよ・・・・・ただしそれはエデン学園に引き取られてからの話だけど」
「え〜〜と・・・・・つまりどういう事なんですかルシャーティさん?」
状況が上手く飲み込めないミルフィーはルシャーティに説明を求める。
「ふぇ?ふぁふふぇふは??(え?何ですか??)」
謎の集団が現れ、弟がその集団と何やら意味深な事を話している最中にその姉は一人豆腐をがっついていた。
「あら?ヴァイン、お友達ができたの?良かったわね〜〜」
「そ・・・そうではなく、あなたの弟のヴァインさんがなぜか我がライバル校のヴァルファスク学園の人たちと一緒にいて・・・・・・その・・・・エデン学園に引き取られたとか・・・・・・」
いい加減話が進展しないを案じてちとせが改めてルシャーティに説明を促す。
「ええ、そうですよ。孤児だったヴァインは私が6歳の頃にエデン家に引き取られたんです」
「ふんっ、孤児というのはあくまで表向きの話さ。本来はエデン学園から潰しておく予定だったけど思いの他セキュリティがきつくてね・・・・・それに引き換え、このエンジェル学園は楽で助かったよ。覚えておけ女!僕は今まで一度たりとも貴様を姉などと思った事はない!!」
「ガ――――ン!!」
「いやいや・・・・・・それって普通効果音だから・・・・・・口に出さないから・・・・・」
この非常時にこんなコントをしてるあたり結構余裕はあるらしい。
「我が求むのはただ一つ!!この学園の学園長ルフト・ヴァイツェンをここに連れて来い!!!」
「ワシがルフト・ヴァイツェンじゃ!!お前たちの要求はいったい何じゃ!?」
「知れたこと!このエンジェル学園を吸収し、我がヴァルファスク学園の領土拡大以外に何がある?」
見かけは体力の衰えきった老人にも関わらず、その眼光が放つ威圧感はまさに支配者のものだった。
「このままじゃまずいわよ・・・・・・・そうだ!ルシャーティ、こういう時こそあんたの出番よ!いくら義理とはいえ姉弟なんだから説得できるかもしれないわ!!」
「そうですね・・・・・・・・・ヴァイン!戻ってきてくれたら・・・・・・えと・・・え〜〜と・・・・・・え〜〜〜と・・・・・・・・・・・1週間炊事も洗濯も私がやるから〜〜〜〜〜〜!!!」
ルシャーティとしては真剣なつもりだがその発言を逆にとえば今まで炊事洗濯を全て弟にやらせていたという事になる。しかも1週間だけ・・・・・
だが、その発言により一人の男がルシャーティの元へと近づき・・・・・・・・
「さあ、観念しろ!干物、口下手、生き遅れ!!今ならこのまま見逃してやる!!!」
ヴァインは高らかにヴァルファスク一家に向かって宣言した。
「変わり身早っ!!!!」←皆の心の声
「ふっふっふ・・・・干物を侮辱するとはつくづく愚か者よの・・・・・」
「貴様はまことにヴァルファスクだ!あっはっはっは!!!」
「だぁ〜〜れが生き遅れだ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
一人やたらと声がでかいのが一人いるが、少なくともこの三人の中で一番まともな発言をしているのも彼女だろう・・・・・・というかもうロウィルに至っては何が言いたいのか訳が分からない。
「だいたいヴァイン!ヴァルファスク家としての誇りを忘れたか!!?」
「いや、忘れちゃいないさ。今だってその誇りは僕の胸の中にある・・・・・だが・・・・・・・・・・」
大声を出すためなのかヴァインはスッと目を閉じ大きく息を吸う。
「そんな陳腐な誇りなど久々に姉さんの手料理が食べられる事に比べたら塵に等しいわ!!!!」
「末期ね」
「末期だね」
「重症だわ」
「手遅れだ」
「末期ですわ」
「・・・・末期です・・・・・」
「そ、そんな・・・・ご兄弟が仲がよろしいのは・・・・・・・末期なのでしょうか・・・・・・・」
「・・・・おい・・・・・言いたい事があるなら言えよ・・・・・・・」
心なしか微妙にヴァインの手が震え、こめかみあたりがピクピクしている。
「「「「「「「いいの?」」」」」」」
「いや・・・・・やっぱり止めてくれ・・・・・・」
「ふっふ・・・・まさに愚か・・・・愚の骨頂と呼ぶにふさわしいわ!!貴様が今さら裏切ろうとも貴様が仕掛けた爆弾のリモコンはこちらにある。全てを爆発させれば貴様らは死ぬ!!例え逃げきれてもこの学園祭の客はどうなる・・・?」
さすがにヴァルファスク学園を一代で築き上げ発展させた人物なだけあって頭は切れるらしい。
「それを聞いて安心しましたわ。時限式の爆弾になると少々手間が掛かりますもの」
だがそのゲルンの威圧にもミントは全く臆することなくむしろ安心した様子だった。
「ミント、見せてやりな!あたしたちの力を!!」
「ええ、電波妨害装置〜〜〜(ドラ○もん風に)」
「我、理解不能、何故、貴様ら、我ら「あ〜!イライラする!!ロウィル兄は少し黙ってなさい!!!」
ロウィルの通常よりも2倍は時間のかかりそうなしゃべり方に業を煮やしたネヒューリアが中断する。
「『なんでお前らは我々の行動を予測していたかの様なそんな都合の良い機械を持っているんだ!?』って言いたいそうよ!!」
「別に予想していた訳ではありませんわ。ただ以前エオニア先生が学園長の座を狙って今回と似たような方法で革命を起こそうとしたことがあったので、単にその対策が残ってるだけですわ」
「・・・・・・・・・引き上げじゃ――――――――――!!!!」
こうしてエンジェル学園からヴァルファスク家の脅威は去っていった。
ちなみに・・・・・・・・・
「じゃあ今日はゴマちゃんの山菜煮でも作ってみようかしら?」
「姉さんが作るものなら何でも食べるよ!!」
もはやヴァルファスク家の誇りどころか自分のキャラまで失ったヴァインの姿は「環境は時に人の正気を奪う事もあるんだなぁ」という新たな教訓をエンジェル学園に与えたそうな・・・・・・・・・・
あとがき
という訳でEternal loversからヴァインとルシャーティを登場させてはみましたが・・・・・・・・・二人とも見事に壊れたキャラになってしまいました。
前回でなかったネヒューリアやルフトもこれを機会に出してみました。
企画小説発表前に出してみたこんな作品いかがでしたでしょうか?
それでは!