満員大入りの舞台。演目の開始時間まであとわずか。ベルが鳴り、会場が暗くなる。スクリーンが光り、世界が広がる。
BGM、「エンジェル隊登場」
蘭花、ミント、フォルテ、ヴァニラ、ちとせ登場。拍手、拍手、拍手。
「うわぁ、満員じゃない」
「応援、感謝いたしますわ」
「EDENのスカイパレスで歓迎されたとき並みだねえ」
「・・ありがとうございます」
「き、緊張します」
こんなときでも自由におしゃべりを始める彼女たちだが、なぜか「らしさ」はあっても失礼という印象を与えない。
「あ〜、そうだ。これから始まる『壮大な物語』とやらの前フリしなきゃいけないってんだっけ?」
「フォルテさん、前フリでなく『宣伝・予告』ですわ」
「どっちだって一緒だろそんなん」
「フォルテさん、このお話の品位というものがですね」
「別に品位なんてどうでもいいわよ。どーせ主役はアタシたちじゃないらしいし」
「ランファ先輩、あまりそのような露骨なことは仰られないほうが・・・」
「みなさん、本編の紹介はいいのですか?」
ヴァニラの一言で一瞬その場が静まり返る。
「エヘン!まあ、なんだ。これからあたしたちが活躍する壮大なスペースオペラが始まるってこった」
「だ〜からフォルテさん、主役がアタシたちじゃないんですよ」
「そうですよ、もちろん主役はタクトさんとミルフィー先輩。お二人の銀河をも救う大いなる愛の強さを皆さんにお送りいたします」
「・・違います」
「そう、ヴァニラ先輩のおっしゃるとおり、違うんです。・・ええっ!違うんですか!?でもタクトさんとミルフィー先輩は確かに銀河最強の恋人で・・」
「そうではありません、主役はタクトさんとミルフィーさんではないということです」
「それどころかタクトさんとミルフィーさんはまるで登場しませんわよ。せいぜい回想シーンくらいのものですから」
「ええ!?どうしてお二人が出ないんですか?もしかして、エオニア戦役後のようにお二人で退役なさってしまったとか・・・?」
「あれ?ちとせ、本当に知らないの?」
「はい・・」
「じゃあ私の大活躍も知らないんですかぁ?」
いきなりの闖入者。エルシオールのブリッジオペレーター通信担当、アルモだ。
「いや、そりゃあたしも聞いてないよ」
「フォルテさんも知らなかったんですか?今回の主役クールダラス副司令なんですよ」
「なんだとぉ!?そりゃ本当かランファ!」
「クールダラス副司令が主役なんですか?」
「はい!レスターさんと私とのラブストーリーを甘く、時に激しく紡いでいこうって話をですね」
「アルモさん、前からクールダラス副司令をファーストネームで呼んでましたっけ?」
「・・そこも本編の見所」
「ん?オレの名前呼んだか?」
レスター登場。
「よお、主役の登場ってか」
「副司令の時代、到来」
「あらあら、副司令にも春ですか?」
「なんのことだ?主役?オレがか?」
「なんで本人が知らないのよ・・・」
「いくらタクト達がいないからってオレに鉢を回すな。GAは恋愛が肝なんだろう?めんどくさい」
「がーーーん!」
「ん?どうした?アルモ」
「・・・なんでもないです(泣)」
「ふむ?まぁいいか。オレはタクトたちを助けるために忙しいんだ。もう行くから、予告は任せたぞ」
「あいよ、副司令殿」
「了解です、クールダラス副司令」
「まあそれ以外でももう少し周りを見てみてもいいかもしれませんわよ」
フォルテとヴァニラ、そして毒づくミントに見送られ、顔に疑問符を浮かべながらレスター退出。
「あっ、待ってくださいよレスターさん!私も行きます〜!」
アルモも一緒に退出。再び5人となる。
「先輩方。先ほど副司令が『タクトたちを助けるために』とおっしゃっていたのはどういうことなのですか?もしや何かの事件で・・・」
「それは私が説明しよう」
シヴァ、入ってくる。
「し、っししっししししシヴァ女皇陛下!?は、はうぅぅ・・」
「うーわ!ちとせが倒れた!」
「ちょっと!ちとせ!」
「なんだ、説明しようと思ったのに。烏丸がこれではな」
「まあとにかくあたしたちも出るから」
「あら、ノアさん。こういうところはお嫌いだったのでは?」
「まあたまにはありかなってね。ちょっと顔出すくらいなら」
「ノアさん、目に隈ができています。お疲れのご様子ですが」
「あ〜、時期が時期だけにね。ほらシヴァ、もう行くわよ。あんただって戦後処理で大変なんだから」
「なに、もうか?仕方ない。ではみなのもの、また本編でな」
シヴァ、ノア退場。
「・・・話が進みません」
「あ〜、やっぱ5人全員で進行役ってのはまずかったかねえ」
「船頭多くして船山に登る」
「ううぅん・・はっ!シ、シヴァ女皇陛下は!?」
「帰ったわよ」
「うう(泣)私はまた女皇陛下に不敬を・・・」
「と、とにかくそろそろ締めようじゃないか」
「はい。物語は『ヴァル・ファスク』との決戦直後から始まります」
「まあ今更とは思いますが強烈にネタばれ・原作台詞引用等しておりますのでご注意くださいな」
「んでアナザースペースに囚われたタクトとミルフィーを救い出すまでの約1年間を描いた壮大なスペースオペラよ」
「という割には宇宙はあまり表現に出ていません」
「しーっ!いいから、ヴァニラ」
「はい、すいません」
「その間の私たちの更なる成長と深い絆、そして副司令とアルモさんのほのかな恋愛を是非ご覧くださいませ」
「へぇ〜。なんかシリアスそうだねえ。あたしゃコメディが始まるって聞いてたよ」
「フォルテさんがやったらそりゃなんだってコメディじゃないですか」
「ランファ、あんたが射殺されて始まるってシリアスな展開でもいいんだよ?」
「ふぉ、フォルテ先輩。落ち着いてください!」
ひらひらとメモが舞う。それを拾う蘭花。
「あ、製作者サイドからカンペだ。ん〜、なになに?『本当はちとせが好きなんだがストーリーの展開上どうして不都合があるときがちらほらとあって
どうしてもタクトのパートナーをミルフィーユにしてしまった。いつかきっとちとせメインをやりたい』ですって!?」
「こんなところで暴露する話じゃございませんわね」
「そんなに想われているとは、感激です」
「んじゃー何!?アタシには活躍の場が少ないってこと!?ふざけんじゃないわよ!」
「あたしも『コメディをやる』なんて嘘つかれたしねえ」
「お二人とも、製作者をシメる前にこの場を締めないといけませんわよ」
「おー、そうだった。・・意外に上手いこと言うなぁ、ミント」
「おほほほほ」
「では、『Stellar Finders〜星探祭〜』大好評かどうかはさておき、絶好調かもさておき連載中!ですわ」
「副司令が任務に、友情に、そしてついには恋に大忙しよ!」
「もちろんあたしらも活躍するよ!」
「『ドキッ、魅惑のサブキャラクター陣も続々登場!』・・だそうです」
「タクトさんとミルフィー先輩が帰ってくるその日まで、私たちは負けません」
「よろしくおねがいしま〜す!(×5)」
暗転。拍手、拍手、拍手。
「こんなもんでいいわよね、んじゃ行くわよ」
「よっしゃー!ふふふ、作者め。明日の朝日が拝めると思うなよ!」
「あら、一応お話が書ける程度で止めなければなりませんわよ」
「・・ナノマシンで(腕だけ)治療しますから、少々のやりすぎも問題ないです」
「あの、先輩方・・・」
「いやぁ〜、いっそこの子が活躍できないよう怪我させるってのもありかねえ?」
「そうですわね、私たちの出番の為に」
「やっぱ新人ってことでみんなして可愛がったのが敗因よねぇ。いや、今からでも遅くないかな?」
「今日は・・新月。夜は暗闇」
「先輩方・・・目が冗談じゃないくらい怖いです・・・・」
暗闇の中で5人声だけ響くが、ばたばたと足音高く退場していく・・・
>というわけで、よろしくお願いします。予告編も行間を空けてすこしだけ見やすくリニューアル。と同時にわずかに変えています。
些細な事ですが。改めてゆっくり執筆をしていきますので温かい目で見ていただけると幸いです。 雛鸞