ルシャーティは居心地の悪さに辟易としていた。

念願叶って「外」へ出はしたものの。

弟が急に自分を連れ出したことには思い当たる節があった。

 

 

「昨日のこと……。気にしているの?」

鉄面皮のヤマアラシに遠慮がちにおどおど尋ねる。

ヴァインは意味を理解しかねる、といった表情を作って。

「なんのこと?」

姉とは対照的な平面な答え。

こうまで白々しいとムッとした気持ちも冷めてしまう……。

でもいい気分ではない。

極めて簡潔に即座に切り返されたルシャーティは一時(ひととき)間を置くことを強いられる。

感情を表に出さない分自己主張が際立つ、弟の微妙な言葉のニュアンスの変化と申し訳程度に移ろう表情。

 

「……素直じゃないわね」

言い終わってから眉をしかめていたことに気づいた。

「それはお互い様でしょう」

「どういう意味?」

聞き流せない弟の発言に素早く説明を求める。

紅(べに)を乗せておらず飾り気のない唇があどけなさを存分に演出している傍ら、僅かに細められた瞳は全く正反対の効果を発揮している。

 

「文字通り」

怒った顔も…………。

ヴァインの頭を一時突発的に発生した感想が支配した。

が、いつまでもそんなものの支配を許す彼ではなかった。

軽く首を横に数回振って彼にあるまじき考えを頭から追い払う。

ルシャーティもその素振りは見ていたが幸か不幸かさっきのヴァインの発言に不愉快な思いを膨らませていた彼女は気づかない。

単純。

『姉』にヴァインは改めて正確な評価を下した。

「話が逸れているわ」

ルシャーティはあからさまに口を尖らせる。

責任はどちらにあるのだろうか、とヴァインは思ったがそれを口に出すのはさすがに憚られた。

年下相手にむきになるのは大人気ない。

年長者の責任を果たしながらお望みどおり話を元のレールに乗せる。

「なんの話、だったっけ?」

サービスのつもりだったがルシャーティは気を悪くした。

 

「そうやって……すぐ惚ける」

「惚けてなんかないよ。正直に答えただけさ」

口ではまったく勝ち目はない。

この良くできた弟に対抗しようとしたのがはじめから間違いだった。

回転の鈍い自分の頭が恨めしい。

勝利を勝ち取るのはとてつもなく難しい情勢。

ならば、せめて。

なんとかして引き分けに持ちこみたい。

「意地っ張り」

さじを投げそっぽを向く。

 

水色の風がむくれた女の髪や衣服を揺らして去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

墓逢瀬(後編)

 

 

 

 

 

 

 

 

抗戦をルシャーティはまだ続けていた。

時々弟がなにか言いたげに視線を交わそうとするがことごとく拒否し続けている。

努力がいつまでたっても報われず、これ以上継続しても無意味と判断したヴァインは気まずさを乗り越えて切り出す。

 

「気分を悪くさせてしまったみたいだね」

申し訳なさそうな声を嗅ぐと落胆の香りがした。

ルシャーティは耳を疑った。

がっかりしている……ヴァインが。

一体なにに。

 

「それに……」

困惑している姉をよそにヴァインは話を続ける。

 

 

 

 

 

「せっかく外へ出たのに、ちっとも楽しそうじゃない…………」

 

 

 

「……帰ろうか?」

一際残念そうに言うとライブラリへの道を歩き出す。

大きくない背中がいつもにまして小さく見える。

 

 

 

 

 

「待って!」

 

 

ヴァインは歩みを止めた。

足の動きが停止した時の姿勢を崩さず立ち止まっている。

微動だにしないので服のしわも変わらない。

 

引き止めたもののルシャーティは口篭り、牛みたいに言葉を咀嚼している。

言いたいことが喉につっかえてすぐに出てこない。

躊躇している女に風も苛立ってしきりに髪を揺らしてみせる。

 

 

 

「言って……ない…………」

懸命に言葉を搾り出すルシャーティ。

ヴァインには姉がなにを言いたいのか分かっていた。

けれどここでそれを言い当ててしまったら必死に頑張っている姉に失礼だし。

なにより。

彼自身、推測を確信に変えたかった。

その化学変化を導く言葉がルシャーティから発せられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰も『帰る』なんて……言ってない…………」

 

 

 

 

 

ヴァインは振り返り。

そして本人も気づかない優しい声で尋ねる。

「なにが……見たい?」

 

ルシャーティは思わず笑みがこぼれ素直に答えかけてしまったが間一髪踏みとどまる。

彼女には珍しくパッとひらめくものがあった。

この与えられた材料を生かすべく脳の全回路を使って懸命にまとめる。

素晴らしい考えとは予告なしに浮かぶもの。

せっかく浮かんだいい返答の素材をむざむざ無駄にするのはもったいない。

それに弟と違い彼女にとってはめったに遭遇する事態ではないのだから。

「どうしたの?」

訝しげに問う弟に促され、どうにか考えをまとめる。

「なんでも良いの?」

確認のため尋ねると“スカイパレスの中”と条件を示された。

なら問題ない。

じゃあね、と短い前置きを挟み、極上の悪戯を思いついた童女のようなあどけない顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全部」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ」

ルシャーティは声を上げて笑っていた。

「あの時の、あなたの一瞬呆気に取られた顔。今思い出しても……」

思い出し笑いが止まらない。

弛(たゆ)んだ口周りを見せるのもいとわず頬が持ち上がり二本の筋ができる。

 

あなたは私にわがままなんて全然言わなかったのに、私はあなたに甘えてばかり。

小さい時も、あなたの身長を追い越してからも。

私があなたを見下ろすようになっても姉らしいことなんてただの一度もできなかった。

ちょっと……心残りかもしれないわね。

 

年をとった人間から「昔は良かった」と繰り返し繰り返し聞かされても若者は、はいそれと額面どおりには受け取れないだろう。

しかし当時は辛かった出来事が時を経て笑い話になるのは往々にしてあり、それはひとえに時の魔力のなせる業(わざ)なのだが人間が想い出のアルバムから辛い記憶の写真を抜き取ってしまうからでもある。

嫌なこともたくさんあったはずなのに思い出すのは楽しかったことばかり。

それは思い出せないからではなく無意識のうちに思い出そうとしないから。

だから想い出を辿ると人はいつの間にか微笑んでいる。

 

そして今になにかしら満たされていなければ過去が吸い寄せる磁力は強くなる。

 

 

無雑な懐旧の念が彼女の心を満たしていた。

 

コツン。

風に転がされてきた小石がバケツに当たって跳ね返り、中の水の上面に波紋が広がる。

 

 

 

だが不意にそれまで楽しげに過去に浸っていたルシャーティの笑いが途絶えた。

表情に陰が指し、視線も悲しみと切なさを行き交う。

 

 

それは不意にやってくる。

楽しかったこと、嬉しかったことを考えている時にも。

それはふっとお構いなしに思考を横切る。

一度頭をよぎったらもう終わり。離れない。

できることならば考えたくないと望んでいるのに……。

 

 

 

「ヴァイン……」

 

 

 

「あれから、もう……随分経つのね…………」

二度目に手をつなだ日から。

相手の温もりを感じた日から。

『道具』としての辛く苦しい日々から解放された日から。

 

 

『姉弟ごっこ』が二度と……できなくなった日から。

 

 

 

 

 

「ヴァイン……」

 

 

 

「あなたは……なにを考えていたの?」

あの日、あの時。

ルシャーティは絶対に誰も教えられない問いの答えを求めた。

当たり前だが……解は出ない。

憂いを湛えた顔でもう何度目だろう、また同じことを言う。

 

 

 

 

 

「ヴァイン……」

 

 

 

照りつける紫外線を含んだ強い陽光に。

揺れる陽炎。

地面から細く短い糸が伸びる。

女の首から汗がポタリ、ポタリ…………。

……ポタリ。

着衣もところどころ浮かび上がっている。

 

この日……気象台はこの夏一番の暑さを観測したという。

実際暑さは相当のものであった。

夏の主役の一人であるはずの蝉達もこのうだる暑さに出かける気をなくしてしまったのか、もう陽は高く上り影もだいぶ長くなったのに演奏会はあまり盛んに行われてはいない。

そうした中ルシャーティはここに来た。

かれこれ一時間いるだろうか。

水も替えた。花も替えた。お参りはもう済んだはずだ。

なのに…………。

墓の前から動こうとせず、黙ってただ立ち尽くしている。

彼女はなぜ動かないのだろう。

彼女はなぜ動けないのだろう。

彼女は……

 

 

 

なぜそれ程までに……“終わったこと”に拘るのだろう…………。

 

 

 

本来ならうるさいくらいに大声で歌っている歌手達の姿が今日はあまり見えなくて。

墓地はいつも以上に、静かである。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日、なにがあったのか。

その全てを彼女は知らない。

 

これは彼女の記憶にないこと。

あの日。

二人が『姉弟ごっこ』を二度とできなくなった日とそこに至るまでの出来事の。

 

ほんの、小さな断片。

 

 

 

 

 

 

 

 

靴が廊下を叩く音響が余韻の尾をだらりと垂らしている。

つかつかと早足で歩く男は頭で地図を描きながら行路を考えていた。

ここまで誰とも廊下ですれ違っていない。

 

順調だ、これまでは。

そのように細心の注意をはらって道のりを設定してきた。

願わくはこのまま誰一人とすれ違わなければいいが、そう都合よくもいくまい。

だが現にここまで誰とも遇わずに来られた。

 

いけるかも……しれないな。

男の胸に希望的観測が広まる。

 

 

「ヴァイン師団長」

師団長と呼ばれた男は後ろを振り返った。

振り返ると副師団長。

元老院直属特機師団に属する自分の部下がいた。

やはり甘い見通しなど少しでも立てるんじゃなかった。

くだらない推量が増殖して池の水面を覆ってしまう前にぶち壊されただけ良かったかもしれない。

 

「ん、その女は?」

上官の隣にいた女を見て副師団長はにこやかな表情を一瞬崩してしまったが、すぐ再び同じ顔に取り繕う。

「女? ……ああ。この『道具』のことか」

女と言うのでなにを言っているのだか分からなかったよ、と師団長、ヴァイン。

「ご一緒に散歩ですか?」

女とヴァインの顔を見比べながら副師団長が訊く。

小太りでねちっこい声。

加えて含み笑いもセットなので控えめに見てもスマートな男性、とはお世辞にも言えない。

「散……歩…………。うん。適度に運動させておかないと使い物にならなくなるからね」

努めて冷徹な物言いになるようヴァインは心がけながら言った。

 

「大変、ですね」

副師団長はしみじみとした口調で上官を労う。

どうもこの部下の考えていることはヴァインにも今一つ分からなかった。

詳しい年齢は知らないが見た目どおり中年らしい。

意外とこれでも若い頃は切れ者で通っていたと、軍の同期は口をそろえる。

それが今ではどう見ても三枚目。

仲間から足を引っ張られない為学習を重ねに重ねた成果なのか。

それともこれが地なのか。

 

どちらにしろ能力の低い者は『ヴァル・ファスク』では絶対に昇進しない。

上がつっかえていてやっとポストが空いても倍率は恐ろしい数字。

なまじ寿命が長いから世代交代が進みづらい。

百年間も同じ役職、なんてのもざらだ。

トランスバール皇国に侵攻してきた男や女がいたが彼らのように比較的若くして重要な職につけるのはエリートや余程の人物だけ。

そして当然、そうした類いの者はうんざりするくらい妬みを買う。

それくらい跳ね除けられなければ上は目指せない。

 

副師団長はお面さながらの笑みをよこす。

にこやかで飄々とした態度。

だがごくごくたまに『ヴァル・ファスク』らしい一面も見せる。

非常に曲者であった。

 

……いやそれは違う。

元老院直属特機師団副師団長の男はごく平凡な『ヴァル・ファスク』であった。

 

「この女には壊れるまで働いてもらわないと。『弟』である僕の為に働くんだ……。本望だろう」

言い終わってからヴァインは余計なことをした、と思った。

どんな言い訳じみたことを言う必要があったのだろう。

ここは先を急ぐべきだ。

 

「失礼。急いでいるんだ」

無意味なことをしてしまった自分自身に胸のうちで腹をたて、かつ苦笑いしつつヴァインはその場から辞去する。

 

気づいたらルシャーティの手を引っ張っていた。

 

 

「ヴァイン師団長」

嫌な予感がした。

止まりたくはないがそうもいかない。

歩みを止め背中からやって来る部下の次なる言葉を待つ。

 

副師団長の声はいつもと違い低くてよくとおる。

普段より多少聞き取りやすい。

 

 

 

 

 

「確か……ライブラリの管理者には処分命令が出た、と…………」

予感は的中してしまった。

是非もない。いい予感は外れることが多いが悪い予感の的中率は概ね高い。

「……やれやれ…………」

溜息を吐きわざとらしく手で頭を押さえながら振り向きざまに率直な今の心情を。

 

 

 

 

 

「参ったね」

 

 

 

どういうつもりなのか振り返ったヴァインは笑みを浮かべていた。

視線の先、部下の手に光線銃を見つけ、しかもその引き金に指がかけられようとしていても。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ……なのか…………」

疲労感の滲みを隠せていない声。

普段の彼ならそんな素振りは微塵も見せないであろうが現在の状況ではそれを隠さなければならない理由などなく、なによりも今のヴァインにはかなり困難であった。

「計算ではそろ…………そろ……………」

弱々しく、くぐもった呟き。

目指す星を拝めてもいいころあい。

レーダーも同意見だが霞んだ眼(まなこ)にはまだ飛び込んでこない。

前の座席には彼の『道…』ではない。

女が座っていた。

だが腕はだらんと垂れ下がりぴくりとも動かない。

けれど規則正しく膨らむ胸と僅かな吐息の漏れる音がそれが単なる物体ではないことの証拠となっている。

 

「僕らし……く……ない…………な」

 

 

「こんな無謀……で成功率が低い行動をする……なん……て…………」

冷静に考えるまでもなくこの企てが成功しないのは火を見るよりも明らかだった。

万が一成功したとしても無事ではすまない。

そんなこと、最初から分かっていた。

「それもこれも………………」

前の席に腰かけている『姉』の方へ眼をやる。

腰かけている、よりはもたれかかっているというのがより適切な表現であった。

 

しわの目立つ服。

乱れた髪。

疲れの浮き上がった顔。

寝返りさえしない体。

深く眠っているようにも、覚めない眠りについているようにも見える。

 

姉さ……とまで言いかけたが、そこでヴァインの口の動きは止まった。

 

 

「もう少し……だ…………」

己の意識を保つのにヴァインは苦労していた。

目も焦点がはっきりせず虚空を見ているよう。

こういう場合隣に誰かがいるとかなり違うそうだけれど……。

同乗者はいなくはないが話は実質できない。

静かなコックピットに雫のこぼれる音だけが定期的に木霊する。

 

 

「憎む……だろうか…………」

体を大きく仰(の)け反らせてヴァインは呟いた。

苦しそうな顔に寂しさが加わる。

「はっ。当たり前、だな……」

あまりにも愚問だったことに気づき思わず苦笑してしまう。

『道具』としてこれまで散々利用してきたのだ。

この期に及んで許してもらおうなどとは微塵も考えていない。

「当然の報いさ」

仮に謝罪したところで受け入れてくれないだろうし、今となってはそれさえも……叶わない。

 

 

 

 

 

なら……せめて…………。

 

 

 

機体のコントロールをヴァインは一時放棄した。

7番機は移動を止め、光の尾も消える。

そして肺の辺りを抑えながら立ち上がり……。

 

 

そろそろ前に伸びる右手。

懸命に女へと近づく。

震えの止まらない腕と定まらない呼吸。

服から染み出続ける紅い湧き水。

動かない方がいいだろうになにが彼をそこまで駆り立てるかというと。

ばかばかしい、話かもしれないが……。

 

 

 

触れたい……。

最後……になる…………だろうから。

 

 

対象を目指し伸び続けた右手の指先が。

女の着ている青い服の腰近辺を、掠った。

 

 

 

 

 

親指と人差し指で服を軽くつまむと。

男は、軽い虚勢じみた笑い声を漏らした。

 

 

「ふっ。なにを考えている」

目的地寸前にまで行き着いていた手が後退する。

口のきけない女の背中を見ながらヴァインが言った。

「僕には……資格が…………ない」

 

 

「僕は……『ヴァル・ファスク』…………だ」

ヴァインが自らの発言の誤りに気づいたのは早かった。

違う。

自分は……違う。

もはや…………では自分はない。

かと言って……でも…………またない。

そのことをヴァインはよく理解していた。

ヴァインは思った。

なんて……哀れな蝙蝠(こうもり)だろう。

 

「…………『ヴァル・ファスク』……だったんだ…………」

笑みとともに呟く。

哀しい笑い。

誰も自分の出自を自分の意思で決めることはできない。

どんなに科学が進んでもこればかりは人の自由にならない。

「それに……。今更なんの意味がある」

尋ねるまでもないじゃないか、と。

言い聞かせるように。

「今の僕にできること………。それはこの女が僕を『憎める』ようにすること」

己に課せられた、自分の意思でやると決めた使命。

どうして、こんなことをしようと思ったのかはさっぱり分からないけれど。

なにがなんでもやり遂げなければいけない。

それだけは、確かな気がした。

 

 

「それしか……できないし…………」

そう言った後、ヴァインは激しく咳き込む。

口を塞いでいた掌を見やれば血のように、ではない正しくそれそのものの赤がべっとり。

ヴァインは驚かない。

自分の行く末はとっくに知っていた。

そう、あの時。

ルシャーティと手をつないだその直後から。

 

口元から垂れるどぎつい赤い液体を手の甲で拭い、続きを言おうとする彼の顔は……。

 

 

 

 

 

「それで…………満足だ」

 

 

微笑んでいるようにしか、見えなかった。

 

 

 

 

 

「人間とは……儚い生き物だな…………」

たかだか数十年、最高でもたった百年と少ししか生きられない。

実に…………儚い。

遠大な歴史に一瞬存在するか弱い蜻蛉(かげろう)。

でも……だからこそ。

たった一年や二年であんなに劇的に変貌し。

あんなに……眩し過ぎる程輝いているのか…………。

 

 

確かに僕らとは大違いだ。

「無駄に」長生きしている僕らとは。

悲しいくらいに……大違いだ。

 

 

 

でも、これで……良かったのかもしれない。

もしも仮にあの仮初(かりそめ)の『姉弟』関係が続いていたとしてもいつかは破綻していた。

同時に死ぬなんてありえない。

寿命を全うすれば間違いなく彼女の方が先に逝き僕は長い長い、果てしない時間をその後生きなければならない。

しかし彼女がこの後生きる時間は僅か数十年。

あっという間だろう。

憎い僕の事なんかとっとと忘れて幸福な人生を歩むかもしれない。

 

その方が……良いだろう。

 

 

『姉弟ごっこ』……悪くはなかった。

だがいかんせん無理があった、二人の時間はあまりにも違い過ぎた。

所詮種族の違った者同士、明らかに無理があったのだ。

 

 

それは百も承知だが……。

あの時間は、決して……。

 

 

悪くは……なかった…………。

 

 

 

 

 

次に、もし生まれ変わる、なんてことがあったら人間も選択肢の一つに考えてもいいかもしれない。

 

 

 

「ぐっ」

整った顔が苦悶に満ちて歪(ゆが)む。

「見えてきたよ……ルシャーティ……」

音のない空間に浮かぶ青い宝石。

二人の最後のたびを完結すべく7番機は持てる力を振り絞りながら眼前の楽園を目指す。

 

ヴァインは操縦桿からずれ落ちそうな両手を叱咤激励ししっかりと固く握らせた。

 

 

 

 

 

あの日、何があったのか。

その全てを彼女は知らない。

知った方がいいのか、知らなくてはいけないのか。

はたまた……。

 

これは彼女の記憶にないこと。

あの日。

二人が二度と手を、心を触れ合わせることが叶わなくなった日とそこに至るまでの出来事の。

 

 

 

ほんの……小さな断片。

 

 

 

 

 

 

 

 

墓石の前にルシャーティはしゃがんでいた。

時計がないので正確な時間は分からないがさっきからずっとこの態勢のまま。

いつ頃からか墓地の木には蝉が集まりだしまとまった雨を降らせている。

 

「ヴァイン……」

口がすっかり慣れてしまった名を。

膝を覆う布を軽く、握り締めて呟く。

「EDENは…………平和よ……」

ここで瞼(まぶた)を閉じ一呼吸空けた。

次の一句に自分の感慨全てを込める為に。

 

「平和過ぎるくらいに、平和…………」

 

 

 

今、EDENは自由と平和を謳歌している。

政治体制も着々と整いついに正式な評議院発足にまでこぎつけた。

経済活動も大変活発になりつつあり、景気は右肩上がり。

人々の眼はとても生き生きとしているように見える。

 

対照的に先行き不透明なのが『ヴァル・ファスク』だ。

暫定政権内で未だにゴタゴタが続き正式な政権が樹立される見込みはまだない。

武装解除で軍需産業は大打撃をうけ経済も停滞、街には失業者が溢れそこに軍隊の解散によりあぶれた“元”軍人達も加わり失業者の数は増えるばかり。

『ヴァル・ファスク』のテクノロジーにも眼を見張るべきものはあるが、いかんせん「征服」と「搾取」によって支配地を拡大し隆盛を誇った国家と種族。

敗戦により彼らの社会の根幹であった征服事業はもう成り立たなくなり、しかも広大であった版図の大部分を失った結果かつての支配地から引き揚げた植民者(支配された側から見れば侵略者)が大挙してヴァル・ヴァロス星系に戻ってきている。

そしてもう一つの根幹であった軍が消滅。

社会や経済が混乱するのは至極当然。

そこに暫定政権の中で内輪もめが続くとあれば。

 

 

 

“内乱”が勃発する可能性を誰が否定できようか。

 

だが暫定政権の閣僚を無能呼ばわりすることはできない。

『ヴァル・ファスク』の中の『ヴァル・ファスク』であった者が倒れ、その者の支配に荷担していた者達もごく僅かな例外を除き暫定政権からは排除された。

なにしろこれまでは「一人の意思」があらゆることを決めていたのだ。

しかもその時期がとても長かった。

それに代わる新しい体制を簡単に打ちたてられるわけがない。

あまりに長く続いた王様による支配。

新たな政権のあり方を懸命に模索しているのだが………。

街中から聞こえて来ると言えば。

 

 

 

「これでは前の方がましだ…………」

 

 

過去の栄光を取り戻そうとする者。

栄光の座から引きずり落とされ歯軋りする者。

 

さまざまな人間達が抱くさまざまな感情――――

 

 

それでもこの銀河は平和で、落ちついているように見える。

少なくとも……。

 

 

 

今のところは。

 

 

 

 

 

「ヴァイン……」

女は静かに微笑する。

残暑と言ってしまうにはいささか早過ぎる陽が照りつける中、それは春の日光の穏やかさと秋分の時節の薄ら寂しさを含んでいた。

「私…………あなたを憎むことはできない」

彼のしたこと。

それは決して許されるものでもないし、死んだからといって彼のやった事実がなくなりはしない。

『罪を憎んで人を憎まず』と言えるのは仙人や聖者だけ。

銀河に住まう全ての人々がそんなに寛大であるならばこんな言葉など今も存在しない。

砂糖を浮かばせた珈琲よりも甘いことを平然と言ってのける人達は彼らが当事者、ないしは経験者でないから。

『罪を憎んで人を憎まず』。

この言はそうではない、本当に痛みを知っている人が口にしてこそ初めて重みのあるものとなる。

だが仙人や聖者はそうそういるものではないし。

それに例え許しを得たとしても事実がなかったことにはならない。

絶対に。

 

「……でも…………できない」

憎めたらどんなに楽だろう。

あの人は多くの人を悲しませた。

私を『道具』として利用した、しかも記憶を残したまま。

それでも……。

 

 

 

「憎むことなんて……できない…………」

彼女はどれ程努力しても『ヴァル・ファスク』の一人であった男を憎めなかった。

憎しみの感情が湧き出てくるよりも、愛しい、懐かしき思い出が胸を埋めてしまうから。

つないだ手の温もりを今でも克明に覚えているから。

たった二回しか触れたことはなかったけれど。

その手は確かに……温かかったから…………。

 

 

やや色あせた夏色の風が墓所を駆け抜ける。

 

 

 

断続的に続く蝉時雨。

遠くで鳴いているのでデシベルも彼女がいる場所では基準値を下回る値。

それでも静かなわけではないけれど……。

うるさく感じないのは心なしか歌に元気がないように思えるから。

初蝉の頃の迫力は失われ熱唱の途中で声が掠れる体たらく。

この頃は新入りも少なくなった。

一時期は毎日、早朝には地底生活に別れを告げる儀式が行われ、公園等の木の幹には残された蝉の抜け殻がいくつもあったものだ。

今や見かけるのは変わり果てた歌い手達の地べたに横たわる様。

公園の木の幹を捜しても見つかる抜け殻はぐっと少なくなった。

威勢がいいのは幕引き役を務めるツクツクボウシくらい。

宴の終わりが近いことを仲間や他人にまでご親切に知らせている。

 

そのツクツクボウシが歌う木の幹の下部に必死になってしがみついている者がいた。

空蝉だ。

だいぶ前に羽化したのだろうか、もうボロボロである。

それでも軽く中身のない体が出せる力全てを振り絞りしがみついている。

 

 

強い風が吹いた。

 

風が吹き終わった後もう一度木を見ると、もう空蝉はいなかった。

目線を下げていくと……いた。

茶色い土の上に。

今度強い風が吹けばどこまでも転がって行ってしまうだろう。

隣には。

餌に群がる小さな蟻の群集とその餌に成り果てたかつての音楽家の姿があった。

 

 

 

 

 

陽がゆっくりと西に傾いて行く。

時折風も吹くせいだろうか汗が滝のように流れる、ことはなくなった。

現在も強めの風が女の髪やリボンを揺らしている。

冷房器具との差異は天然の涼であること。

体が感じる涼しさもひとしお。

それでも日暮れ時を迎えるにはいま少し待たねばならない。

ルシャーティは風が一旦止んでから話を再開することにしていた。

 

「けれど……ね…………」

少しばかり尖った声音。

彼女にしては珍しい。

風も驚嘆しているのか、派手にざわめく。

 

「恨んでいるのよ、少し。……あなたのこと」

こうして逢いに来てもあなたはなにも喋ってくれない。

微笑みをこぼすこともない。

前から……あなたはあまり笑わなかったけれど。

 

蛍の一瞬きの間、彼女の顔がほころぶ。

それでも素早く表情を引き締めたが、はたから見るとなにか我慢しているようで、物悲しい。

 

「月日が経てば経つ程……胸の中で大きくなっていく…………」

一度だけ、あなた宛の手紙を書いたことがあるの。

でもスカイパレスから雲海に捨ててしまった。

返事のこない手紙を書いても仕方ないもの。

朝目が覚めた時、返信が届くのならいくらでも書くけれど……。

そんなこと……ないもの…………ね。

本当、なにやっているのかしら。

その上あなたを恨むなんて……。

 

いくら懐思の想いを持ち続け大切にしても、彼女の気持ちに応えてくれる人はこの銀河のどこにも存在しやしない。

 

「自分でも…………嫌になるわ」

沈んだ声で自嘲気味に呟く。

それでもこれは自分の偽らざる気持ち。

思いの一片を吐露して女の表情に安らぎが顔を出す。

 

 

しかし、それもほんの僅かな間だった。

 

 

「ヴァイン……あなたってひどい人ね」

胸に手を当てて墓石に彫られた名前に向かい非難の言葉を搾り出すように綴りだす。

けれど先程までの鋭さはない。

声が微弱に震えているのも怒りによるものとは異なるようで。

眼に焔(ほむら)の姿を認めることはできない。

もっとも。

ルシャーティが今日ここに来てから怒りを露わにしたことなど一度たりともなかったが。

そのことはずっと彼女を上から見ていた清廉な空が証人。

彼女がなに故(ゆえ)声を震わせているかはほの暗い表情を見れば直ちに理解できよう。

寂寥感(せきりょうかん)の水を貯水量限界にまで湛えたダムを見たならば。

 

「覚えているわ。あの時……あなたが言った言葉…………」

ダムは渇水時に水を供給する目的の他に大雨が降っても下流域で洪水が起きぬようにする治水目的などがある。

だけれどもダムも際限なく水を溜め込むことはできない。

どんなことにも限界は大抵存在する。

ダムのケース、限界以上に水を溜め込む無理をすれば決壊してしまう。

それを防ぐ為にはどうすればいいか。

溜め込んだ水を吐き出せばいい。

 

 

「『僕は……そこにいることはできないけど』…………」

ルシャーティも……限界だった。

嗚咽することはないが声、肩まで震え始める。

大洪水を阻止すべく担当者がボタンを押して。

水の放出が始まった。

 

 

 

無理やり作られた笑みの頬を雫が滑り、一筋の痕跡を残す。

 

 

「……最初から、そのつもりだったのでしょう?」

あなたはあの状況でそれが最良と信じたのでしょうね。

結果、自身がどうなるかも承知していた。

そして記憶の残った私がどんな想いを抱くかも……。

分かっていたんじゃないの。

それとも違う反応を想像していたかしら。

……どちらにしろ。

私と手をつなぎ、最後に私の名前を呼んだあの時。

あなたは自分の末路を悟っていたのよね。

たぶん……いいえ。

間違いなく。

 

「そのつもりで……。分かっていて…………。知っていて………………」

あなたは私に質問したわ。

エルシオールでの日々は楽しかった、って。

私、戸惑っていたでしょう。

頼むよ、なんてあんな顔で言われたの初めてだったもの。

最初で……最後になってしまったわね。

その時。

私が最後に言ったことをヴァイン、あなた聞いていたでしょう。

短かったけれどエルシオールで過ごした時はとても楽しかった。

EDENが解放されれば毎日があんな風で、そんな楽しい日々がきっと来ると思っていた。

あの素敵な人達がいて、楽しいことがたくさんあって。

でも、言ったでしょう。

聞いていたでしょう。

 

 

 

 

 

あなたが傍に…………。

 

 

 

信じて疑わなかった。

そうでない日々なんて、考える以前に思いつきもしなかった。

だって日常だったから。

私は……傍に……………。

すぐ…………傍に………………。

 

 

いて欲しかった。

 

 

いつまでも。

 

あなたが私の隣にいて。

私があなたの隣にいて。

 

そんな日々が、ずっと……。

 

 

ずっと……。

 

 

ずっと…………。

 

 

たとえあなたと私が違う種族だったとしても。

それが私にとって楽しい日々の最低限の条件だった。

 

 

もしかして……。

 

 

 

聞いていなかったの、ヴァイン。

 

 

 

 

 

 

 

 

ダメじゃない……人の話はちゃんと聞かなくちゃ…………。

 

 

 

 

 

「ひどい人」

時がいくら経とうとも……。

経っても……経っても…………。

消えない。

 

想い出は思春期を迎えた少女。

必要以上にむやみやたらと化粧を塗りどんどん綺麗に化けていく。

顔の輪郭はぼやけてくるのに。

声だって……あやふやになってくるのに。

想い出はますます美しくなり、思い入れも強くなる。

時が経てば経つ程。

季節が変われば変わる程。

 

 

 

 

 

「本当……酷い人…………」

 

 

新たな雫が流れる代わりにルシャーティの顔が僅かに、歪む。

 

 

 

風に弄ばれるかのように舞い散る黄色い木の葉。

くるりくるりと宙を舞い、行き着いた先は華奢な肩。

少々疲れたのか、そこに暫らく立ち止まる。

照りつける太陽。

木にも、川にも、立ち尽くしているようにしか見えない女にも、平等だ。

地面から約1・5メートルの場所から滴が一粒地面に落ちすぐさま空気に帰る。

 

ルシャーティは肩で誰かが休憩していることに気づいた。

途端木の葉は止まり木から飛び立つ。

だが女の眼の前から直ちに消えはしない。

激しく羽を羽ばたかせ、せわしくなく上下動を繰り返す。

その姿はさながら美しい容姿からはとても想像できない“過去”を懸命に振り落とそうとしているようにも。

そんな事情があり、それを知ってしまったとしても優雅な舞を見ていればたちまち忘却の泉へ。

ましてそんなことなど想像もつかず、舞手に悪感情を持っていない人間は。

ただ魅了されるだけ。

ルシャーティの二つの眼を……舞の名手は捉えて離さない。

痛みの見受けられないまだ新調したばかりの着物。

見つめれば見つめる程現(うつつ)から離れていく、離されていく幽玄な舞。

 

 

 

 

 

揚羽蝶――――――――

 

 

 

穏やかな笑みと一緒に女は頬を拭い指先に僅かに水滴をつけた手を差し出すがいっこうに舞い降りる気配はなく。

上昇と下降をいたずらに繰り返し上界から女を見下ろしている。

ルシャーティは降りてくるよう言うが全く聞く耳を持たず。

それどころかいきなり急上昇、屋根より高い位置へ高々と舞い上がり何処(いずこ)へと飛び去る。

慌てて追いかけようと試みたが揚羽はさらに上へ上へ。

上へ上へと。

やがて青い空の点となり、ついには見えなくなる。

 

降りてくるように言ったのに……。

どうして、言うことを聞いてくれないのかしら。

蝶も……人も…………みんなどこかへ行ってしまう…………。

 

置いてきぼりにされた寂しさ、喪失感。

何度同じ目にあおうと置いていかれるのは辛楚(しんそ)。

取り残されたルシャーティは空虚な瞳で空の彼方(かなた)を見つめている。

 

 

一人佇む彼女を弱い蝉時雨がうっすらと濡らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあね、ヴァイン」

去る前に今一度面を上げて向かい合う。

別れの挨拶にしてはどうも声が弾んでいるが。

次に逢う時の楽しみを想像するとそれも致しかたないかもしれない。

いつしか青く澄み渡っていた大空も西はうっすらと朱色に染まり烏が二羽並んで鳴きながら最後の輝きを放つ陽に向かって飛んで行く。

 

「また……来るから」

時間が経つのは早いものね。

右と左を交互に入れ代わり、睦まじく並走している茜の鳥を目送しながらルシャーティは思った。

一日の中でも、暦の上でも。

時計の針が戻せたらいいのに。

反時計回りに指で輪を描く。

エルシオールで過ごした時間やEDENを脱出する前の出来事は悠遠の彼方。

 

「ふふ、迷惑かしら?」

ちらりと頭の裏に困った表情をした彼が浮かぶ。

ルシャーティは手をかざした。

残光がいささか眩しい。

西から空はどんどん暗赤色に染められて、染まって。

きれいな工芸品が製造されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも…………来るから」

明日も来るわね。

だって……。

 

 

きっと明日も晴れるから。

 

 

 

 

 

だから……来るわね。

 

余映を放つ落陽と。

茜色に色づいた雲間から憂愁をのぞかせている女の横顔。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………また……ね…………」

別離の間際に微笑みを見せて。

ルシャーティは家路につく。

時刻は既に黄昏(たそがれ)。

控えめな黒が周囲を覆いだしている。

 

 

去り行く女に別れを惜しむかのように。

時雨は一時わっと強まり、また弱まって。

さらに時が進むと若干聴こえていた歌声もだんだん聴こえなくなる。

 

そして日が没して暫らく、最後まで歌っていた朝と夕暮れ時の歌手が今日のコンサートを終わりにしたことにより。

 

 

 

 

 

静寂がこの上なく似合う空間は、暗に包まれることと引き換えに完全な静けさを手に入れた。

 

 

 

 

 

あとがき

この度は私の拙い文章を読んで頂きまして誠にありがとうございます。

その上あとがきまで目を通してくださるとは。

もう感謝の言葉もありません。

 

半年振りのGA小説。

ヴァインとルシャーティ。二人の『姉弟』、『男女』の物語。

ある意味二人にとって最も幸福だったかもしれない楽園での日々。

その後、夢から醒めてしまってからの生活。

“守り通した者”と“残された者”の想い。

などを描こうと思い、書き始めたのがこの作品です。

一話完結を予定していた当初の構想とは大きくかけ離れてしまいました。

短編のつもりで書き始めましたのに筆が止まらず前後編の形になり、前編の終わりと後編の始まりがおかしな個所に(汗

内容は全体的にやや暗めの「痛い」話になってしまったかもしれません。

 

ヴァインの墓参りをするルシャーティ。

この作品を読まれた方は彼女の行動に対して二通りの感想を抱くと予想していました。

肯定的な見方と否定的な見方。

その両方の反応が出るかと思います。

「過去」を見ていてばかりでは前に進みませんし、しかし過去があったからこそ「今」があり「未来」があります。

今や未来はすべて過去の積み重ねです。

だからといって立ち止まり、後ろを見ていてばかりでは一歩も動けませんが。

想い出はちょっとした魔力を持っています。

作者としては人それぞれ、なにかを感じていただければ幸いです。

 

他の方の作品ではタイトルに拘る私ですが自分の作品に絶妙なタイトルをつけることは難しく、この作品のタイトルも人様のことはああだこうだ言う割には……といったところ。

『墓参り』の方が良いか、とも思いましたがそのまんま過ぎますし、他に良いタイトルが思い浮かばなかったのでこの題名になりました。

お話、タイトルともに表現を工夫しようと努力しましたがまだまだまだまだですね。

 

次回作、ですが。

全ては私の貧弱な脳が良いアイディアを浮かばせることができるかにかかっています。

現時点では具体的な構想は何一つ浮かんでいません。

しかしなにかを思いつけば一気に筆が進むでしょう。

……たぶん。

私の小説を期待して下さる方がそう多いとは思えませんが(笑

来年蝉が鳴き始めるまでには短編一本、を「努力目標」に頑張ります。

 

最後に。

拙著を最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。

2005年8月27日      三雲