『第4話     邂逅』

 

 

 

 

 

 

 

《グギャアアアアァァァァァァァ!》

 

 

怪物は、苦しみ悶えながら、尚も破壊を続けようと歩き出していた。

否、歩くというよりも無理やり足を引き摺って進んでいた。

体中から溢れ出る体液と血液を気にせず、体の痛みをものともせず、着実に前へ進む。

進む先には、真っ白な建造物がある。

研究所とも、医療施設とも違う、特殊な概観。

古くも無く新しいわけでもないのに、どこか神秘的なものを感じる。

 

そんなもの、怪物にはどうでもよい物であった。

ただの邪魔な人工的建造物、という認識である。

人間が作り出した科学技術の塊、インプットされているデータはそれだけ。

自分は兵器、破壊こそが任務であり使命であり、絶対的命令であるのだから。

だから、強いやつが来れば、またそれも面白い。

先ほどの人間2人がそうだった。

自分を満足させてくれる相手に出会えて、喜びを感じる。

 

 

《グォォォォォォォォォォオォォォォォオオォォォ!》

 

「ったく、しぶとい怪物だなお前さんは」

「その根性と体の頑丈さには驚くけどね」

振り向くと、カミュとギネスが立っていた。

その姿を見た瞬間、怪物は自身の感情が高揚するのが分かった。

牙の生えそろった口を大きく開け、鉤爪を開き、翼を広げ、前傾姿勢になる。

血のような瞳はさらに赤黒さを増し、全身の血管が浮き上がり、心臓の鼓動はドクドクと波打つ。

「ふむ、どうやら本気になったみたいだね」

「それでこそ戦いがいがあるってもんだぜぇぇ! ここなら思いっきり暴れられるしなぁぁぁ!」

カミュは傍に落ちていた鋭利な鉄片を持ち、構えた。

都合よくその鉄片は、まるで剣のような形だった。

ギネスは、その鍛え抜かれた筋肉を惜しげもなく露出させ、我流の構えを見せる。

怪物は始まりを告げるかのごとく、天に向かって咆哮した。

 

《グアァァァァアァァァァァァァァァァァァ!》

 

まずは一閃、爪を真横へ振る。

コンクリートであろうが鉄であろうが、この爪の前では紙切れ同然。

スイカのように柔らかい人間ならば、一瞬で切り裂いていたであろう。

しかし、それは当たればの話。

跳躍で爪を交わしたカミュには傷ひとつなかった。

「ふぅ、危なかっ……」

上を向いた怪物の口が大きく開き、その中に紅い光が灯る。

「っ!?」

怪物がそれを一気に吐き出そうと、喉に力を入れた。

「おりゃあぁあぁぁぁぁ!」

ギネスが怪物の後頭部を思いっきり殴りつけ、口の中の光は瞬時に収まった。

怪物は怒りに任せて爪を振り回すが、ギネスはそれを上手く避ける。

彼は何度も怪物の死角へ回り込み、そこへ自らの拳を何度もぶつける。

「ふんっ!」

カミュは着地すると、鉄片を構え直し、怪物に肉薄する。

気付いた怪物が爪を振り下ろすが、カミュは地面を蹴って横に飛んだ。

そして、伸びきった腕に狙いを定め、鉄片を上へ流れるように振り切った。

 

《グギャァアァァァァァァ!》

 

赤黒い血が、傷口から噴水のように噴出した。

怪物は腕の激痛に悶えるが、痛みは瞬時に怒りとなり、さらに怪物を興奮させていく。

尻尾を荒く振り回し、ギネスとカミュをなぎ払おうとする。

2人はそれをバックステップでかわすと、少しばかり怪物から離れた。

怪物はすばやく顔をカミュの方へ向けた。

大きく開けた口内には、先ほどよりも大きな紅い光が灯っていた。

しかも、その光の収束はさっきよりも数倍速い。

一気に膨張した光は、まるで火山のマグマのようだ。

「カミュ! 危ねぇ!」

気付いたギネスが叫んだのと同時に、それは吐き出された。

真っ赤に燃える地獄の業火。

鉄をも溶かしかねない熱を帯びた炎が、まるで龍のようにうねり、カミュに襲い掛かる。

だがカミュは――――――口を微笑ませていた。

 

 

 

「……消えろ」

 

 

 

それは、一瞬のことだった。

灼熱の炎は、渦巻いていた中心から四散、まるで空気を入れすぎて破裂した風船の様に、完全に消し飛んだ。

「確かに、君の火球は強力だ。速さも威力も熱も申し分ない」

淡々と語りながら、カミュは一歩一歩足を進める。

「けど、それじゃあ僕は殺せないよ」

怪物は腰をかがめ、前傾姿勢になった。

翼を大きく開き、尻尾を何度も地面に叩きつけ、カミュを威嚇する。

爪を何度も閉じ開き、その鋭さを見せ付けていた。

まるで、カミュを挑発かのようだ。

「愚かな……ギネス、離れていてくれないか?」

後ろにいるギネスに、カミュは振り向かず言った。

「おう、わかったぜ!」

ギネスは後ろへと振り向き、カミュの言われたとおり離れた場所へ移動する。

足音が遠ざかったのを確認すると、カミュは鉄片を構え、目つきを鋭くさせた。

翼を大きく羽ばたかせたのを合図に、怪物は前傾姿勢のままカミュへ突っ込んだ。

血濡れの爪を突き出し、口を大きく開け、この一撃でカミュを殺そうとしていた。

だが、カミュは回避行動をとることなく、静かに言った。

「君の死体は、ちゃんと霊安室に置いてあげるよ」

目の前に怪物の牙と爪が迫る。

カミュは左足を前に出し、腰をかがめて姿勢を低くした。

 

地面を蹴って跳躍し、怪物と自身が交差する瞬間、渾身の力を込めて刃を振りぬいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ガッ……アァ……ッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

仰け反った怪物の首が宙に舞い、体はそのまま仰向けに地面へと崩れた。

生首はカミュの傍に落下し、口からは唾液と血液の混じった液体が流れ出る。

「あぁ、すまない。これでは霊安室には置けないな」

呟いたカミュの体には、返り血ひとつ、付いていなかった。

その表情は、まさに傭兵そのもの。

幾多の戦場を駆け抜け、自らの手を血に染めてきた、歴戦の顔であった。

 

「おおおい! カミューーーー!」

 

大声を上げて、離れていたギネスが戻ってきた。

カミュの傍に駆け寄った彼は、怪物の生首に少し驚いたものの、怪物を倒した彼を誉めた。

「うおおおぉぉ! さすがはカミュだぜぇぇぇぇ! やったぜぇぇぇ!」

腕を天高く上げ、ガッツポーズをするギネス。

まるで自分が倒したかのような喜び様だ。

倒したのは自分なんだけどな、とカミュは内心ため息を付いた。

まぁ、彼らしいといえば彼らしい行動なのだが……。

「……っ」

右手首に、電撃にように痛みが走った。

カミュは鉄片を投げ捨てると、片方の手でその部分を触る。

少し赤くなって、腫れていた。

「やはり体が慣れていないか……これからはリハビリが必要だね」

「そうかぁ? 俺はそうでもないけどなぁ!」

「ふっ、たまに君が羨ましいよ」

カミュは、足元に転がる怪物の生首を眺める。

鮮やかな血を流す姿は動物さながらであるが、切断面は金属片のように光沢を放っている。

「生物と機械の融合体……というところかな。まったく、酷なことをするものだ」

金属片と生態部品、そして元々あった生物の細胞とが交じり合った、なんとも気色の悪い皮膚。

元の生物が判別できないほどに、無理やりな進化をさせられたと創造できる。

旧世界の神話に登場するドラゴンのような姿をしているが、目の前に転がる亡骸はそんなに神々しいものではなかった。

目は血のように赤く、牙は鋭く、舌は粘液のようなものがまとわり付いている。

むしろ、悪魔と呼んだほうが正しい。

「カミュ、終わったんなら戻ろうぜ」

「ん、ああ……そうだな」

怪物の亡骸を見つめていたカミュも、ギネスに呼ばれて、施設へと足を向けた

歩を進めようと足を上げた瞬間、カチッという金属音が聞こえた。

2人は停止し、ゆっくりと顔を視線を後ろへと向ける。

「動くな!」

視線の先にいたのは、銃を構える何十人もの兵士達だった。

怪物を倒したカミュに恐怖しているのか、顔が強張っていた。

銃を握る手は汗だくで、中には手の振るえが止まらない者もいる。

カミュはそんな兵士達を見回して、嘲笑すると同時に言った。

「そんなに僕が怖いのかな?」

明らかな侮辱の言葉に、周囲の兵士はピクリと反応を示す。

その内の一人は激怒し、前に飛び出した。

隊長らしき男がそれを制しようとしたが、兵士は聞かなかった。

「ま、待て!」

その指は既に引き金にかけられており、いつでも発砲できる状態であった。

兵士は狙いをカミュに定め、指に力を込めた。

「やめんか莫迦者!」

後ろからの怒鳴り声に、引き金から指を離した。

振り向くと同時に、拳骨を脳天に受け、兵士は悶絶する。

地面を数秒転げまわった後、上を見上げた。

「初歩的な挑発に乗りおって、下がっていろ!」

「は、はいっ! 申し訳ありませんでしたっ!」

青ざめた顔で、兵士は隊列の後ろへと引き下がる。

兵士を一括した人物――――ルフトは溜め息をつくと、鋭い表情でカミュとギネスを睨みつける。

二人は屁でもないようだが、周りの兵士達は放たれる殺気を感じ取り、冷や汗が滝のように噴出していた。

「部下の無礼は詫びる。だが、まずは貴様達の所属と、名前を聞かせてもらう」

カミュとギネスは一瞬困惑の表情を浮かべたが、お互い目をあわせ、首を頷かせた。

「傭兵部隊『ヘルハウンズ』隊長、カミュ・O・ラフロイグ」

「同じくヘルハウンズ隊、ギネス・スタウトだ」

ルフトの顔が曇る。

「へ、ヘルハウンズ隊だって!?」

「あのエオニア戦役のか!」

兵士達はどよめき、その言葉が信じられないという表情をしていた。

「貴様ら、エオニア軍だったのか!」

誰かが言ったその言葉に、兵士達が一気に殺気立つ。

その目は憎悪に満ちており、明らかにカミュとギネスを殺す気でいる。

「エオニア軍め、この『白き月』で何をするとつもりだ!」

一人の兵士が血走った目でカミュにライフルの銃口を向ける。

それに感化された他の兵士達もライフルを構える。

先ほどルフトに拳骨を食らった兵士は、自分はどうすればいいのか判らず、あたふたとしていた。

「答えろ! エオニア軍!」

「やめ……」

 

 

「煩い――――少し黙れ」

 

 

ルフトの静止の言葉を遮るようにカミュはらしくない汚い言葉を呟き、殺気を含んだ鋭い視線で兵士達を睨んだ。

「なっ……貴様ぁ!」

「止めろと言っておる!」

ルフトが懐から拳銃を取り出し天に向け、ガウンガウンッ、と二発発砲した。

銃声が理性を失っていた兵士達の心を一気に覚まさせ、その瞬間彼らの顔は蒼白となる。

自分達の行動を恥るとともに、ルフトからの説教、もしくは処罰を想像すると恐ろしくなった。

あたふたしていた兵士は、その中でほっと安堵のため息を付いていた。

「お前達は下がっていろ、まったく……。君も、部下達を刺激するのはもうやめてくれ」

「これは失礼。少しばかり癪に障ったもので、ね」

カミュの後ろでは未だにギネスが額に青筋を浮かべている。

ルフトが止めてくれなければ、彼は兵士達をその強靭な肉体でなぎ倒していただろう。

「しかし、ヘルハウンズ隊がなぜこの『白き月』にいるのだ?」

「おや? ルフト将軍はご存じではなかったのですか?」

「私は知らないぞ」

ふむ、と考え込む。

自分達が「白き月」にいることは、助けてくれた少女―――リリスの服を見てすぐに理解した。

その服装は「月の巫女」のものだと知っていたし、同じ服を着た天使達と戦ったことがあるからである。

だが、ルフトが知らなかったとすると、自分達のことはかなりの極秘事項だったのだろう。

自分達のことを知っていて、なおかつそこまでして周囲に隠していたのは―――――おそらく。

「シャトヤーン様と、シヴァ“皇子”か……」

「なによ物騒ねぇ。銃声聞こえたけど、何があったのよ?」

後方、しかもかなりの近距離から聞こえてきた声に、カミュとギネスは脊髄反射的速さで振り向いた。

一瞬、金塊のように輝く髪に目を奪われたが、すぐにその人物の顔を見やった。

カミュは眉を顰め、ギネスは怒りに震え吼えた。

「てんめぇ! ノアァァァァ!」

「うるさいわねぇ、誰よアンタ? 気安く名前を呼ばないで」

「っ!? この……!」

ノアに殴りかかろうとするギネスだったが、それをカミュが腕で制す。

その行動に、ギネスは不満の声を上げた。

「カミュ! 何で止めんだよ!」

「落ち着けギネス! 彼女は違う」

「違うって何が! こいつはどこからどう見てもノアじゃねぇか!」

今回ばかりは、ギネスもカミュの制止を聞かなかった。

それほどまで、彼は怒りで我を忘れていた。

彼の脳裏に、次々と過去の記憶が甦っていく。

 

身体に突き刺さる電子コード類。

闇に包まれていくコックピット。

全身を奔る電撃のような痛み。

意識が途切れる前に見た、妖しく微笑む少女の姿。

 

ギネスは、叫ぶようにカミュに聞く。

「お前は何で平気なツラしてんだよ! こいつが、こいつが俺達に何をしたか忘れたわけじゃないだろう!?」

顔知らぬ人物に指差され、さらには怒鳴られ、ノアは少し不機嫌な表情を見せた。

「ギネス、だから彼女は違うんだ。彼女は、僕達が知っている“ノア”じゃないと思う。そうだろう?」

視線だけをノアに向け、カミュはノアに問う。

一瞬、振られたことに反応できなかったノアも、すぐに答えた。

「アンタ達が何を言っているのかサッパリだけど、私はあんた達の顔なんて見たことも無いわ」

カミュは、やっぱり、と小声で言った。

ギネスは未だにノアへ殺気を放っている。

当のノア本人はそれを感じ取っていたものの無視していた。

その様子に呆れたカミュは、ギネスを睨みひとつで抑える。

彼は不服そうな表情をして、ふんっ、とノアから顔を背けた。

「失礼した。で、君は確かにノアなんだね」

「だからそう言っているでしょう。それに、アンタ達いったい何者なの? 何で私のことを知っているの?」

「それはもちろん。“君”と会ったことがあるからさ」

「さっきから訳の解らないことばかりね。何度も言うけど、私はアンタ達なんか知らないし、見た記憶も無いわよ」

声質が荒かった。

ノアは、先ほどから意味不明な発言ばかりするカミュにいい加減苛付いていたのだ。

カミュも、それを感じ取っていたが、言葉を止めることは無かった。

そして、強気に、そして彼女の耳にはっきりと届く声で、言い放った。

 

 

「僕達は君を知っているよ。ノア――――いや、『黒き月』……とでも呼んだほうがいいのかな?」

 

 

「っ!?」

ノアの目は見開かれ、表情は一気に崩れた。

ルフトも、その言葉に息を呑む。

「そ、それをなぜ……」

「なぜ知っている、と言いたい顔ですねぇ」

ふふっ、とカミュは笑った。

この状況を楽しんでいるかのような表情をしている。

「あんた、なぜそれを……!」

「さぁ、なぜだろうねぇ?」

笑いながら答えるカミュは、不気味だった。

膝を曲げしゃがみこみ、ノアと同じ目線になるカミュの青い瞳。

すると、そのカミュの手が、ノアへと伸びる。

一瞬、ノアは身体を震えさせたが、カミュの手はノアの金髪を優しく撫でるだけであった。

「初めまして、ノア。あぁ、本当の君はとても綺麗だね。やはり、僕達が見ていた“ノア”とは天と地の差があるよ」

髪を撫でるカミュの手に、ノアの手がそっと触れる。

振り払うわけでなく、ただそっと、触れただけ。

「何を、するのよ」

ノアの顔は、仄かに赤くなっていた。

それを見て、カミュは笑みを浮かべてこう言った。

「ん〜、ますます気に入った」

ピクッ、とノアの眉が一瞬反応し、ノアはカミュの手を掴んで髪から離す。

「何なのよ、アンタ。このアタシを口説いてるつもり?」

「素直に喜んでいるのさ。本当の姿の“ノア”に会えたのだからね。それを、肌で実感していたんだよ」

「っ!? この変態っ!」

顔を真っ赤にして怒鳴るノア。

カミュは何も悪びれる様子も無く、彼女の姿に自然と笑みを溢していた。

 

 

「あ〜、色恋沙汰はそこまでにしておけ」

 

 

そのとき、兵士達の後ろで声がした。

ルフトは聞きなれたその声の主を呼ぶ。

「シヴァ陛下!」

「あら、シヴァ。来たの?」

兵士達の合間を縫って合われたのは、シヴァだった。

おそらく、先ほどまでのカミュとノアの会話を聞いて、たまらず出てきてしまったのだろう。

「ノア、いつまで惚気ているつもりだ」

「わっ、私は惚気てなんかいないわよ! こいつが……」

ノアは顔が赤いまま、シヴァに反論する。

「冗談だ。それよりも今は……」

シヴァの紺碧の瞳が、カミュとギネスを捉える。

鋭いオーラが二人を射抜いているが、彼らは動じていない。

「ヘルハウンズ隊、こうして姿を見るのは初めてだな」

応えたのはカミュだった。

「これはこれは、シヴァ皇子。いや、皇子と呼ぶのはお門違いのようですね」

カミュは、十四歳のシヴァの身体を見て、素直にそう思った。

背は伸び、腰はすらっとしたシャープな形で、胸も少々大きい。

唯一、カミュ達が知るシヴァの面影といえば、蒼穹の髪の毛と瞳ぐらいである。

「シヴァ……陛下とでもお呼びしたほうが宜しいかな」

「構わぬ。今はそんなことに拘っている時間も惜しいのでな……。いつ目覚めた?」

単刀直入に、シヴァは問う。

「ついさっきですよ。時間にして……約一時間前といった所ですかね」

「そうか。それで、他の仲間達の姿が見えぬが、どうしたのだ?」

カミュは、今思い出したような声で答えた。

「あぁ、そういえばいませんね。おそらく、まだ目覚めていないか、病室にいると思います」

すると、シヴァは兵士達に、帰れ、とだけ言った。

兵士達はそれに従い、隊列を組んで去っていった。

残ったのは、ルフトとシヴァ、カミュとギネス、そしてノアの五人だけとなった。

「邪魔は居なくなった。では、参ろうか」

「陛下、参るとは……どちらへ?」

シヴァはカミュとギネスに顔を向けて、強く言った。

「ヘルハウンズの残りのメンバーが心配だ。様子を見に行く。お前達も心配だろう?」

それを聞き、カミュはシヴァに笑みを返し、ギネスは顔を背け、ふんっ、と強く鼻息を鳴らした。