第一話「入隊」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヴァル・ファスク』からの戦いから約半年がたったころ・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間・・・・・。

そこには四人の姿があった・・・・。

 

「では、頼んじゃぞ。」

「しっかりやりなさいよ。」

 

ルフトとノアは目の前に立っている男に言った。男の身長は182cm、年齢は18歳ぐらいで、左目には眼帯をつけている。

 

「アレック・・・・お気をつけて。」

「はい・・・・、ありがとうございます。ルフト将軍、シャトヤーン様、そしてノア。」

 

そういうとアレックと言う男は謁見の間から出て行った。荷物をまとめるためだ。

アレックが出て行ったあとシャトヤーンは不安そうな顔で言った。

 

「大丈夫でしょうか・・・・・。」

「心配・・・・なのですか?シャトヤーン様。」

「別に心配することはないんじゃないの?」

 

相変わらずノアの態度はそっけないものだ。

 

「あんた達も見たでしょ。あいつの能力を。」

「・・・・・・。」

「あれから四ヶ月経つけど、あいつの戦闘能力と機体の操縦技術はとてつもなく高いわ。きっと彼女達の力になるわ。」

「わかっています・・・・。ですが・・・・」

「何か問題でもあるの?」

「はい・・・・・。」

 

ノアはシャトヤーンに質問するとシャトヤーンは少しうなずいた。その顔は人を哀れむような表情だ。

 

「で、なにが問題なのよ?」

「あの子は・・・・・・あの人は他人との交流を持とうとしないのです・・・。まるで、孤独でいるかのように・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・。」

 

俺は謁見の間を出たあと、『白き月』に用意されていた自分の部屋で荷物をまとめていた。ルフト将軍に呼ばれたときには少し緊張したが・・・・。

 

「まさか、エンジェル隊に配属が決定されるとは・・・・。」

 

エンジェル隊・・・・・・半年前、『ヴァル・ファスク』と戦い勝利を手にした最強の部隊。直接見たことはなかったが活躍は聞いていた。

なんせ当時の俺はいろいろな星を転々として最終的に四ヶ月前にこの『白き月』に『拾われた』・・・そう、拾われたのだ。

俺の乗っていた紋章機と共に・・・・。

 

「アレックさん、用意はできましたか?」

 

部屋を片付けているときに整備員らしき人物が入ってきた。俺は気にせずダンボールの中に自分に必要なものを入れている。

 

「もうすぐ終わる・・・・・・。機体の調整はどうだ?」

「はい、すでに機体の整備は完璧です。後はあなたの荷物を送るだけです。」

「わかった。終わり次第に持っていく。」

「わかりました、出発は今から3時間後です。では、失礼します。」

 

整備員は敬礼をしながら部屋を出た。別に俺などに敬礼をする必要はないというのに・・・・。

 

 

荷物をまとめ終わり荷物を送った後、何も残っていない部屋で休んでいた。他になにもすることはないし、シャトヤーン様達への別れも済んだ。

後は時間が過ぎるのを待つだけだ。

俺はベッドに横たわり左目につけている眼帯をはずした。それは眼帯の中が蒸れるのと横になるときに邪魔だからだ。

 

 

 

 

(母さん・・・・・・・。)

 

 

 

 

 

母の名前をひとこと言った後、眠りに付く・・・・・・これがクセになってしまい今では毎日のように言っている・・・・。そして、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレックさん、起きてください。出発の20分前ですよ。」

 

俺の胸に付けているクロノ・クリスタルから声がしてきた。寝ぼけていたせいか少し意識が混乱していた。

 

「もうそんな時間か・・・・・わかった。」

「では、格納庫でお待ちしています。」

 

通信が終わり俺は顔を洗い、服の上にコートを着た。そして最後にいままで世話になった部屋に別れを告げた。

 

 

 

「ありがとう・・・・・・・。」

そうつぶやいたあと、はずしていた眼帯を左目につけ格納庫へ向かった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

格納庫・・・・・・・

 

「すまない、待たせたな。」

「いいえ、ちょうどよい時間でしたから問題ありませんよ。」

 

整備班の人たちに感謝の言葉を言ったあと、自分の紋章機に乗り精神を機体に集中させた。知ってのとおりH・E・L・Oシステムはパイロットの

コンディションがモロに出る。だからエルシオールに合流するのにテンションが高くしておかなくては他のみんなに申し訳ないからな。

 

 

意識を紋章機に集中させているときに通信がかかっていた。一体誰だろうか?

 

「アレック・・・・・少しいいですか?」

 

 

スクリーンに顔が出された。それはシャトヤーン様だった。

 

 

「シャトヤーン様・・・・・なにか御用ですか?」

「ひとつ聞いてもよろしいですか?なぜ・・・・・・他人との交流を望まないのですか?」

「・・・・・・・。」

「あなたはまるで人との交流を拒んでいるかのように見えます。」

 

 

 

(なぜそんなことを聞くのだろうか・・・・。)

 

 

 

シャトヤーン様からそう質問されたときに俺は迷った・・・・。どう答えたらいいのかわからなかった。しかし、言えることがひとつあった。

 

「その質問にはお答えできません。もし答えがあっても言うつもりはありません。」

「そうですか・・・・・・。」

「すみません。あなたの機嫌を損ねてしまって。」

「よいのです。私から質問しましたから・・・・・・。では、お元気で。」

「はい・・・・・シャトヤーン様もお元気で・・・・。」

 

 

通信が終わったあと、次は整備班からかかってきた。

 

「アレックさん、そろそろ・・・・。」

「よし、では発進する。・・・・元気でな。」

「はい、あなたも。」

 

こうして、俺は『白き月』を出た・・・・。後ろから見た『白き月』はその時とても美しく見えた。

『白き月』を出て少し進んだあと俺の足元にカバンが置いてあった。いつかあったのか全く気づかなかった。中を見てみるとそれは俺に関する

データと転属届け、それに命令書だった。多分、ルフト将軍が入れてくれたのだろう。確かにこれを持っていかないことには始まらないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここまでは『予定』通りだな。そう、ここまでな・・・・・。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三方面軍ローム星系付近・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがに紋章機だけだとエネルギーが心もとないので、第三方面軍で補給を受けてから目的地までクロノ・ドライブを繰り返していた。そして、

目的地まで差し掛かったときだ。

 

 

ピピピッッッ!!!

 

突然、紋章機の中から警戒音が鳴った。

 

「なんだ・・・・?」

 

レーダーで確認してみると所属不明の艦隊のようで俺からの距離からかなり近い距離だ。距離からすると約8000・・・・・数は約15隻ほどだ。

モニターに映し出されたときは驚いた。その艦隊のシルエットは皇国軍と同じものだがカラーリングは黒いものだった。

 

「まさか・・・・・・。」

 

そう・・・・その艦隊は一年前にクーデターを起こしたエオニアの無人艦隊だった。

 

 

 

 

(はやいな。俺のほかにも『転移』したものがいるのか?偵察・・・・・・それとも俺の転移が失敗したときの保険か?)

 

 

 

 

そんなことを考えているうちに艦隊は近づきつつあった。どうやら俺を『敵』と認識したらしく攻撃を仕掛けてきた。

 

「チッッ!!」

 

紋章機を半回転させ回避に成功した後、俺は反撃に出た。しかし、この艦隊を一機だけで切り抜けるのは難しいな・・・・。

 

(ちょうどエルシオールとの合流ポイントに近いから救難信号を出しておくか。)

 

敵の攻撃をかわしながら信号を出したあと、すぐに攻撃を開始した。

 

 

「さて、少しでも数を減らしておかなければな・・・・・・。」

 

 

紋章機に装備されている多弾頭レーザー・ファランクスを駆逐艦クラスの戦艦に向けて発射した。直撃を受けたらしく艦は一瞬にして

閃光と共に消えた。

 

 

 

 

「機械人形ごときで俺を倒せると思っているのか・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

このような調子で戦い艦隊を五つ減らすことに成功したがエネルギーが50%を切っていた。さらに突撃艦などの攻撃で機体強度が60%

にまで落ちていた。

 

(まずいな・・・・・)

 

そのとき通信がかかってきた。

 

「こちら、エルシオール。八番機、応答してくれ。」

「こちらは八番機、敵の攻撃を受けている。援護を頼みたい。」

「わかった!今から援護に向かう。」

「感謝する・・・・。」

 

いいタイミングでエルシオールが空域に現れ、エルシオールの中から六機の紋章機が出てきた。紋章機が七機になり勢いをつけた俺たちは

敵を全滅させることができた。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘終了後・・・・・・。

 

「こちら、エルシオールのタクト・マイヤーズだ。大丈夫かい?」

「ああ・・・・・。」

「君がルフト将軍が言っていたアレック・デメシス大尉か?」

「そうです。このたびエンジェル隊に配属となったアレック・デメシスです。」

 

エルシオール司令官のタクト・マイヤーズは確認を取るとホッとした感じの顔をした。

(なるほど・・・・この人が・・・・・)

 

「今から、エルシオールへ誘導するから指示に従ってくれ。」

「了解・・・・・。」

 

六機の紋章機に囲まれながら、俺と八番機はエルシオールへと向かった・・・・・。

 

「ねぇ、タクト。これがあんたの言っていた新入隊員と紋章機?」

「ああ、そうだよ。俺も最初聞いたときにはびっくりしたよ。てっきりまた女の子かと思っていたからね。」

「また、司令官殿の悪いクセが始まったね・・・・。」

 

俺の機体の中でなんとも明るい声が聞こえてくる。ちなみに通信がエルシオールにダイレクトに繋がっているので他の紋章機のパイロットたちの声

も聞こえている。

俺はエルシオールだけ通信可能にしてほかの通信とモニターにはプロテクトかけておいた。

 

「どんな人なのでしょうね、タクトさん。」

「それはわからないさ。俺だって会うのは初めてなんだから。」

「みんな興味があるようだね。」

「だって、エンジェル隊に男が入ってくるなんて前代未聞のことですよ。フォルテさんもそう思いません?」

「まぁ・・・確かに興味はあるね。」

 

エルシオールへ誘導されるなかそんな会話を聞いた。

 

(なるほど・・・・・シャトヤーン様やノアが言っていたとおり個性が出ているな。)

 

そして、俺はエンジェル隊として働くことになった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある艦隊の旗艦の中・・・・・

(ここは会話だけとなります)

 

 

「そうか・・・・奴は『転移』に成功していたのか。」

「そのようですね。先ほどアレックの機体反応がありました。しかし、あのとき他の艦隊を転移させたのは間違いではありませんでしたか?」

 

「奴が失敗したときの保険だ・・・。」

「『保険』・・・・ですか?」

「そうだ、あの時空転移発生装置は不完全なところが多かったからな。だから、失敗したことに備えて2日前にあの艦隊を送った。だが・・・・・。」

 

「アレックは成功していた。そして、艦隊を全滅させた・・・・・のですね?」

「ああ、艦隊は全滅させられた。だがそのおかげであの六機の紋章機のデータも奴は取っているはずだ。心配はない・・・・。」

「そうですね・・・・・。」

「後はこちらも準備が整うまで時を待つだけだ・・・・・。」

 

 

 

 

                                                        

 

 

 

 

 

                                                      第一話「入隊」終

                                                         第二話に続く・・・・・。

 

 

 

 

 

 

あとがき・・・・・・・

 

今回、はじめて『完全』オリジナルストーリーを書いてみたのですがどうでしょうか?なんかネタが少しだけ(多分、大部分が)バレているような

気がしますがそこのところは大目にみてください。では・・・・・・。