遅れてエルシオールの格納庫に着艦した俺はそのまま要員に連れられてブリッチに入った。
そこにはエンジェル隊と司令と副司令の姿があった・・・・。
第二話「きっかけ」
「うわぁー結構かっこいいわね。」
「ランファ〜、いきなりそういうのは失礼だよ。」
金髪の女性の発言に対してピンク色の髪の女性はなんとも軽い口調で言った。何か言おうとしたが名前がわからないため、発言できなかった。
「ようこそ、エルシオールへ。通信の中でもあいさつはしたけど、俺はここの司令官をやっているタクト・マイヤーズだ。よろしく、デメシス大尉。」
こういうとマイヤーズ司令は手を伸ばして握手の体勢をしたので俺も手も出し握手をした。手を握ったとき、
マイヤーズ司令の手はやや大きく感じた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。マイヤーズ司令。」
「「それから・・・・・」」
ん・・?
今、一瞬言葉がハモッた気がしたが気のせいか・・・・・?
「今、一瞬同じことを言った気がしますが・・・・・・。」
「そうだな・・・・・君から言ってくれないか?」
「そっちから言ってください、マイヤーズ司令。上官のほうから先に言うのが筋というものですから。」
「わかった。名前の呼び方なんだけど、俺のことはタクトでいいし敬語も必要ないから。なんか司令って呼ばれるのはあんまり好きじゃないんだ。
それにせっかく男が入ってきたんだ、仲良くしよう。」
俺は少し戸惑った・・・・。上官を名前で呼ぶことはいいのだろうか?それにマイヤーズ司令は俺よりも3つ年上だから敬語をつけるのは
当然ではないのか?
「本当によいのですか?名前も敬語も・・・・・。」
「タクトがそういっているから別にかまわないんじゃないのかい?」
「それに、名前を呼び合うことはいいことだと思います・・・・・・。」
俺の質問に対し短いムチを持っている赤髪の女性と緑の髪の少女がそう答えた。俺も実際の敬語を使うところに窮屈な思いを感じていた。
「わかった、ではそうさせてもらうよ。タクト。」
「ああ、よろしく。それから副司令も紹介しておかなくてはな。レスター。」
「レスター・クールダラスだ。このエルシオールの副官をやっている。呼び方は好きなように呼んでくれ。」
白髪で同じ目に眼帯をつけている男がそう言った。
「レスター、もう少しマシなあいさつをしたらどうだ?」
「これくらいで十分だ。それに・・・・早く自己紹介したい奴らがいるからな。」
レスターが指をそちらの方向に向けた。指の先には今にも言葉を発したい奴らが六名いた。仕方がないような顔をしながらタクトはそっちの
方向に話を進めていった。
「うーん、しょうがないか。じゃあ各自、自己紹介をしてくれ。それじゃ最初はミルフィーからだ。」
「は〜い!!」
かなり元気な声だな・・・・。
「ミルフィーユ・桜葉です!!一番機、ラッキー・スターのパイロットです!!よろしくお願いします。私のことはミルフィーって呼んでください!」
「ああ、よろしく。ミルフィーさん。」
「ん?なんで『さん』をつけるんだ?」
タクトがそう言ってきた。まぁ俺の場合どんな女性に対しては『さん』をつけるのだ。
「女性に対してはみんな『さん』をつけるんだ。まぁ、慣れてきたらはずすけどな」
「そうなのか・・・・。次はランファ。」
「はいは〜い!!」
このランファもかなり元気がいいな。しかも声がかぎりなくでかい。言い忘れていたが言葉では『さん』をつけているが心のなかではつけないでいる。
「ランファ・フランボワーズ。二番機のパイロットよ。よろしくね、アレック。」
「ああ、よろしく。」
「次はミント。」
「わかりましたわ。」
そういうとミントは礼儀正しい口調であいさつをした。
「ミント・ブラマンシュ。三番機のパイロットですわ。今後ともよろしくお願いします。」
「ああ、こちらこそ。」
俺はみんなと交互に握手をしていった。残りは三人。
「フォルテ・シュトーレン。四番機のパイロットでエンジェル隊のリーダーをやっている。よろしく。」
「ああ、これからいろいろと世話になるがよろしく頼む。」
残り二人・・・・。
「ヴァニラ・H(アッシュ)・・・・・。五番機のパイロットです。よろしくお願いします。アレックさん・・。」
ヴァニラは手を伸ばしてきたが反応ができなかった。
(・・・・・・・・。)
「どうしたんですか?アレックさん。」
ミルフィーの言葉を我に返った。まったく俺は何を考えているんだ・・・・?
「い、いやなんでもない。よろしく、ヴァニラさん・・・・。」
残るは一人。
「烏丸ちとせです。六番機のパイロットをやっています。今後ともよろしくお願いします、アレックさん。」
「よろしく。」
これで一応全員との挨拶は終わった。次はルフト将軍からもらった命令書と転属届け、そして俺に関するデータだ。
「挨拶が終わったところでルフト将軍から命令書をもらってきている。」
「ええ〜!?またかよ。先生も厳しいな・・・・。」
聞いていたとおり、ルフト将軍とタクトは仕官学校時代の教官と生徒だった。ここまで関係が続いていると変な気分になるな。
「命令の内容はEDENへ行き復興の援助、さらに一段落終わったあとはガイエン星系の捜索。目的はロスト・テクノロジーの探索だ。」
「それはまた大変だね・・・・・。」
「まぁ、これで退屈しないで済むし別にいいじゃないのかい?」
タクトの不満そうな態度とは裏腹にフォルテは気にしていないようだ。『退屈』と言っていたがそんなに退屈だったのか・・・・?
まぁ、それはさておき・・・・そろそろ送っておいた荷物を部屋に持っておかなければな。
「さて・・・・じゃあアレックさんの部屋を用意しなくてはいけませんね。どこにしますか?」
「確か、ちとせの部屋のそばに新しく作ってあった部屋があったからそこにするといい。ヴァニラ、ちとせはアレックの荷物運びを手伝ってくれないか?」
勝手に決まってしまったが・・・・・今はこれで良しとするか。
「いいのか?」
「私はかまいません・・・・・。」
「わたしもそうです。それに行くついでにアレックさんのことも知りたいですから。」
「わかった。ではこれで失礼する。」
そして、俺とヴァニラとちとせは格納庫へ行く事になった・・・・。
「それにしても・・・・・・。」
「どうしたんです?」
「この艦は大きいな・・・。」
歩いている途中に俺は心からそう思った。格納庫まで行くのに時間がかかっている。ブリッチからはかなり遠い・・・。
「初めて来た人には迷路のように思えますが・・・・・?アレックはどうですか・・?」
ヴァニラはそう質問してきた。まさにこの艦は迷路そのものだ。
「多分、迷うことが多いかもな・・・・。」
そんな雑談をしながら格納庫に着いた。
「あ、アレックさん待っていましたよ。ダンボールはあそこにまとめてありますから。」
艦員にそう言われダンボールへと目をやる。それはきれいに積み重なっていた。
「アレックさん、どのダンボールを持ちますか?」
「ちとせさんたちは比較的に軽いものを運んでくれないか?」
「わかりました。」
俺は一番重いものを2箱持ち、ちとせは軽いものを持った。
「ヴァニラさんは、あの小さいのを持っていってくれないか?」
「わかりました・・・・・。」
ヴァニラは積み重なっていたダンボールの横に置いてあった小さな箱を手に持った。
すると・・・・・
「あの・・・アレックさん。ひとつだけ質問してもいいですか?」
「どうした?」
「なぜ・・・・・この箱はこんなのに軽いんですか・・・?」
ヴァニラはその箱のあまりの軽さに驚いていたようだった。ヴァニラに持ってもらったのは俺にとってとても大事なものだった。
「それは、俺にとって大切なものが入っているんだ。」
「大切な・・・・もの・・・?」
そう・・・・・その箱の中身は母からもらったレーザー銃が入っているのだ・・・・。
居住ブロック・・・・・
「ふー、ありがとう。おかげで助かったよ。」
「いえ・・・・・。」
部屋の前まで運び終わりヴァニラとちとせに礼を言った。すると、部屋の装飾係らしき人が声をかけてきた。
「アレックさん。部屋の装飾はどうしますか?」
「そうだな・・・・・・。」
おいおい、装飾のことは聞いてないぞ。
タクト・・・・そのことは早く言ってほしかった・・・・。
「銀河を・・・・・イメージした装飾にしてくれないか。」
それが俺の頭のなかにとっさと浮かんだ最初のイメージだった。
「銀河・・・・・ですか・・?」
「そうだ、考えが思いつかなかったからそれにした。」
「わかりました。では用意できるまで少し時間がかかりますので、それまでくつろいでいてください。」
そういうと装飾係数十名が中に入っていった。これで後はできるまで時間をつぶすだけか。
「さて、どこで時間をつぶすか・・・・・?」
「それでしたら、ティーラウンジがいいと思います・・・・・。」
今のつぶやきを聞いたのか、ヴァニラはそう言った。
ティーラウンジまであるのか、この艦は・・・・・・。
「私もそれがいいと思います。今だったらちょうど先輩方もお茶をしていると思いますからそこで時間が来るまで待っていたらどうですか?」
「わかった・・・・。では行こうか。」
ほかを考えようとしたがなにしろこの艦内のなかがまったくわからないのでその方法をとるしかなかった・・・・・。
ティーラウンジ・・・・・・
「で、タクトはどう思うの?」
「うーん、そうだな・・・・。」
ティーラウンジの入り口の近くまで来たところで、ランファとタクトの声が聞こえてきた。中に入ってみると他のみんなとなにやら話をしていた。
「みなさん、こんにちは・・・・・。」
「ヴァニラにちとせ、それにアレックじゃないか。荷物運びはもう終わったのかい?」
「はい・・・・・。装飾まで少し時間があるようでしたのでここに来ました。」
紅茶をすすりながらタクトはそう言った。口の周りにはクリームがついていた。
俺も少しのどが渇いていたのでコーヒーを頼んだ。
「まぁ、話は座ってからにしようか。」
「そうだな・・・・・。ところで、いったい何を話していたんだ?」
「それは・・・・・、さっきの戦闘で戦った無人艦隊のことさ。」
俺がそう質問すると、タクトは真剣な表情でこっちを見てきた。
「そのことについては、私も思ったよ・・・・。なんで今頃、あの無人艦隊が出てきたんだ?アレックはどう思う?」
・・・・・なるほど、こいつらは知らないようだな。あの無人艦隊がどうして出てきたのか・・・。今は知る必要はない・・・・・。
知らなくてもいずれは知ることになるのだからな。
「多分、エオニアの残しておいた艦隊じゃないのか?」
「なんで、そう思うんだ?」
「この空域は以前エオニアと戦ったところだ。おそらく奴はお前たちを倒した後ここに戻ってくるつもりで一部の艦隊をこの空域に
残しておいた・・・・・。俺はそう思うがな。」
「へぇ・・・・なかなかいい意見を言うじゃないか。」
「とにかくこのことは先生にも報告しなくちゃいけないな。」
俺の意見を聞いた後、タクトは話を打ち切るようにそう言った。こんな可能性の話をしてもしょうがないと思ったのだろう。
「じゃあ話を変えましょう。アレックは『白き月』にどれくらいいたの?」
ランファが興味ありげに聞いていた。
「四ヶ月ぐらいだ。」
「そしたら、『ヴァル・ファスク』の戦いが終わって少し経ってからということ?」
「そういうことになるな。そしてその戦いが終わってから二ヶ月経ってから俺は『白き月』に拾われた。」
「拾われたってどういうことですか?」
普通は誰しもがそう思うだろう・・・・・。拾われたという表現はあんまり使われないからな。
「すまない・・・・・・。今は話せない・・・。」
「え〜、教えてくれてもいいじゃないですか。」
「そうですわよ。そう言われると余計気になりますわ。」
むぅ・・・・これはかなりピンチだな。これ以上自分のことは話したくない。
「まあまあ、いいじゃないか。本人が話せないっていうものを無理に聞いても悪いじゃないか。」
見ていたタクトは困っていた俺をフォローするかのように言葉を発した。これで質問から開放されたと言ってもよい。
「それじゃ、そろそろ部屋の整理も終わっているだろうし、俺はこの辺で失礼させてもらうよ。」
「わかった。また後でな。」
俺は席を立ちティーラウンジから出た。
居住ブロック・・・・・・
「あ、アレックさんちょうどよかった。今終わったところですよ。」
「ありがとう。」
「それでは失礼します。」
そう言うと装飾係の人たちは立ち去っていった。
さて・・・・どんな風になっているのか。
なかに入ってみるとそれはもう宇宙にいるように見事なものだった。
「すごいものだな・・・・・。」
そして、俺はすぐにベッドに横倒れた。
あれから、五時間・・・・・疲れがたまっていたせいかすぐに睡魔が襲っていた。
(あれ以上の交流する必要はない。あとは場にいるだけでいい・・・・・。)
そう思いながら、眠りについたのだった・・・・。
二時間ぐらい経ったのだろうか、俺は目を覚ました。
目を覚ました直後、部屋に設置されたインターフォンが鳴った。
(誰だろうか・・・・・・?)
「アレックさん、開けてくれませんか・・・・?」
ドアの向こうから声が聞こえてきた。その声はヴァニラのものだった。
「わかった。ちょっと待ってくれ。」
俺はドアの前に立ち、ドアのロックを解除した。そして・・・・・
「どうしたんだい?ヴァニラさん。」
「実はミルフィーさんの提案でアレックさんの入隊を記念してピクニックをしようと言うのですが・・・・・どうですか?」
(ピクニックか・・・・・・)
始めはそう思ったがこのピクニックがきっかけとなりヴァニラと交流を持つようになるとはこのときの俺は想像もしなかった・・・・・・・。
第二話「きっかけ」終
第三話に続く・・・・・。
あとがき・・・・・・
なんかどうもしっくり来ないような文章を書いているバージルです。一話に名前が出てきた八番機・・・・・この一つの説明をしたいと思います。
(本当は一話に書きたかったのですが忘れてしまっていまして・・・)
では、八番機のプロフィールです。
機体名 GA−008 ヘイムダル
全長 42,8m
全幅 47,5m
全高 20,7m
武装 多弾頭レーザーファランクス、レーザーバルカン
中型シールド、二連装ミサイル、小型レーザー ×20、 ????
アレックが最初から搭乗していた紋章機であり改造が加えられている。『白き月』で発見されたものではないので詳しくは不明。
攻撃力に関しては紋章機の中では中間に位置し機動性もよく、バランスの取れた機体となっている。ちなみに名前の由来は北欧神話に出てくる光の神から来ている。
必殺技はヘイムダルの全身に装備されている『隠し』小型レーザーを周囲に発射しダメージを与える『フィールド・カラミティ』である。ちなみに予めコンピュータに入力することによってこのレーザーは敵味方を区別するので例え味方が近くにいても被害はないので使い勝手がいいものとなっている。。