「タクト、こういう場合俺はどうすればいいんだ。その場でOKしてしまったのだが・・・。」

「決まっているじゃないか、そりゃあ行かなきゃ損だ。」

「タクトさんの言うとおりせっかく誘われたんですから行かないと損しますよ。」

「・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 第七話「休暇での出来事」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて・・・・・

なぜこんな状況になっているかというとそれは時間をさかのぼること二時間前になる。

 

 

 

 

 

二時間前の俺・・・・・・

 

「ふぅ・・・今日はこれぐらいにしておくか。これ以上やると筋肉痛になってしまう。」

 

俺はそのとき筋力トレーニングをしていた。やりすぎると筋肉痛でせっかくの休暇が台無しになってしまうのでここで切り上げることにした。

 

「シャワーでも浴びるか・・・・・。」

 

俺は隣にあるロッカールームを通りすぎ自分の部屋に戻って浴びることにした。知っての通りエルシオールの大半は女性なので当然ロッカールームも女性専用となっている(はず)。特にランファがよくトレーニングのあと使うのでうっかり入ってしまうと大変なことになってしまう。

 

「トレーニング後の風呂はまた格別だな。」

 

今回はシャワーではなく風呂に入ることにした。理由は気が変わったのと体全体を温めたかったからである。中で頭を洗い風呂の水を抜いたあと体に洗ったときの泡がついていたのでシャワーを浴びてから上がった。

 

 

(シャワーのあとはやはり牛乳だな・・・・・)

 

 

そう思った俺は冷蔵庫のなかから牛乳を取り出し一気飲み。ラベルのかかれている文字などには目を通しながらも無視。

こんなことにしているうちに一時間が経ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間前の俺・・・・

 

「・・・・・・・。」

 

風呂から上がった俺は軍服ではなく私服でベッドに転がり込み小説の続きを読んでいるのである。いよいよ小説の物語も大詰めになってきている。内容は自分を実験の材料とした者たちへの攻撃、そしてさらわれた自分の妻を取り戻すといういわば復讐のストーリーである。

 

「もうこれぐらいにしておくか。早く読み終わっても面白くない・・・・。」

 

読んでいるところに紙を挟み、机に置くと同時に部屋のチャイムが鳴った。

誰なのだろうかと思い部屋のロックをはずし部屋の外へ出てみるとそこにはヴァニラの姿があった。

 

「アレックさん、こんにちは。」

「ヴァニラじゃないか、どうしたんだ?」

「・・・・・・・。」

 

ヴァニラは急に黙りこんでしまった。

どうしたのだろうか?

 

「ヴァニラ・・・・?」

「・・・・アレックさん、明日の一日は空いていますか。」

「ああ、明日は特に何もないが・・・・。」

「・・・・それでしたら明日一緒に動物園に行きませんか?」

「え・・・・?」

 

耳を疑うような言葉だった・・・・。

ヴァニラが言うには復興の際、EDENの人たちの心を和らげるために新しく動物園がオープンしたというので行こうというものだ。

 

「どう・・・・でしょうか。」

「・・・・いいよ。実はヴァニラにお礼がしたくてね。」

「お礼・・・ですか。」

 

お礼というのは昨夜ヴァニラとダンスをしたことである。

 

「そう、ダンスを踊ってくれたお礼にどっか行こうかな・・・って思っていたからちょうどよかった。」

「お礼なんて・・・・私は・・・。」

「踊ってくれたのは俺にとってうれしいことだったからな。ところで明日の何時に行くんだ?」

「明日の十時です。格納庫にあるシャトルを使って行こうと思います。」

「明日の十時か。わかった、集合は格納庫でいいんだな?」

「はい。では失礼します。」

 

ヴァニラは自分の部屋に戻り俺もまた部屋に戻った。

ドアが閉まった後、俺は頭を抱えた。

 

「なんていうことだ・・・・。」

 

俺は一人つぶやいた。

まさか、ヴァニラが俺を誘うなんて思いもよらなかったのである。不安に思っていたことが段々現実になってきている。

 

「ヴァニラは俺に好意を持ち始めてきている。」

 

これでは回避しようにも回避できなくなってしまう。『来たるべき時』のためにヴァニラに好意を持たせてはならないのだ(他にも理由があるのだが)。どうすればいいのだ・・・・。

 

「こういう場合はタクトに相談するべきだな。」

こんなことがあり現在の状況になっている。

 

「じゃあ聞くけどなんで断ろうとするんだ?」

 

タクトの質問に俺は戸惑った。

『来たるべき時』のために・・・・・・そうは答えらない。それを言ってしまえば俺は疑われてしまう。

 

「確かに断る理由は考えなれんな・・・・。」

「だったら、行ったらいいじゃないか。」

「そうですよ〜。」

 

その場はわかったと言って司令官室を後にし、考えるために俺はティーラウンジに行って茶を飲むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ティーラウンジ

 

「はぁ・・・どうすればいいのだろうか。」

 

俺は紅茶とチーズケーキのセットで心を落ち着かせようとしたが全然効果がなかった。そのとき後ろから衝撃が走った。

 

「な〜に落ち込んでいるのよ、この色男!!」

 

その言葉使いですぐわかった。

後ろから背中を叩いたのはランファだった。

 

「ヴァニラから動物園に誘われたんでしょ?」

「お、おい!?いったい誰からそのことを聞いたんだ!」

「だって、そのときの会話を廊下で聞いたから当然じゃない。」

 

ぐっ・・まさかランファに会話を聞かれていたとは予想外だった。ランファは興味津々で俺の前に座った。

 

「ヴァニラも本当にとんでもない奴に恋したものね。」

「何・・・・?」

「あれ、知らなかったの?要は一目惚れよ、ひ・と・め・ぼ・れ。」

「・・・・・・。」

 

一目惚れと聞き思い出したのは俺がここに来てまだ日が浅いときランファとスパーリングをしたときのことだ。スパーリングが終わったあとヴァニラが治療してくれた際『困る』と言ったときランファがうなずいていた。

 

(まさか、あの時からか?)

 

「ヴァニラがよく相談しにいてね、結構悩んでいたみたいよ。ヴァニラだってタクトやミルフィーのことよく見ているからわかるのよ、自分が恋心持っていることぐらい。だから、質問してみたのよ。」

「何を・・・・・。」

「『あんな無愛想な奴のどこが好きなのよ?』ってね。そしたらヴァニラなんて答えたと思う?」

 

無愛想・・・か。

他人から見ていたら無愛想に見えたかもしれないな。

 

「『アレックさんは無愛想ではありません、アレックさんはとても優しい人です。それに私の前ではとても楽しそうにしています』とか言ってあんたのことを褒めちぎっていたわよ。で、あんたはどう思っているのよ?」

「・・・・・・。」

 

知らなかった。

まさか、ヴァニラがそんな前に俺に好意を持っていたなどと。

 

「俺も・・・・・ヴァニラのことは好きだ。」

「へぇ〜、案外素直じゃないの。で、明日アタックするの?」

「そのつもりはない・・・・この気持ちは俺の心の中に留めておくつもりだ。ランファ、ヴァニラにはこのことは言わないでほしい。俺はヴァニラのそばにいるだけで十分だ、余計なことは口にしないでくれ。」

「・・・・・・わかったわ、だったらあんたの好きにするといいわ。」

 

ランファの態度はさっきよりもそっけない態度となり黙ってその場から離れてしまった。

 

「明日何もなければいいのだが・・・・。」

 

ランファが出て行ったあと俺は紅茶をすすりながらそう思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリッッッ!!!

 

目覚まし時計が元気よく部屋中に響いた。

目が開かないにもかかわらず俺は手探りで時計を見てみると8時になっていた。いつもより早く鳴るので考えた。

まだ、起きた直後なので意識が混乱している。

 

「そうか・・・・・、今日はヴァニラと動物園に行く予定だったな。」

 

約束を忘れるとは俺もバカなものだ。体をベッドから起こすと眠気を覚ますためシャワーを浴びることにした。

 

「そうだ・・・・告白しなければいい。そうすれば付き合うこともない、『今』を楽しめばそれでいいかもしれん。」

 

シャワーを浴びながらそんなことを思った。

浴び終わったあと、私服に着替えその足で格納庫に行った。時刻は午前9時55分・・・ちょうどよい時間帯であった。

 

 

 

 

 

 

 

格納庫

 

格納庫に着くとそこにはヴァニラの姿があった。ヴァニラの服装はいつもの軍服ではなく私服であった。

 

「ヴァニラ、待ったか?」

「いえ・・・・今来たところです。」

「そうか、では行こうか。」

「はい。」

 

俺たちは使われていなかった小型のシャトルに乗り込みそのまま直接動物園に行くルートを通ることにした。

 

『到着まで15分です、しばらくお待ちください。』

 

アナウスがそう告げる。

とは言っても乗っているのは俺達二人だけだが・・・・。シャトルに乗ってから1分もしないうちに眠たくなってきた。ここだけの話だが昨日の晩、今日のことを考えていてろくに睡眠をとっていなかった。

 

「眠るか・・・・。」

 

そうつぶやいたあと、俺は少しの間だけ眠ることにした。

 

 

 

 

 

 

夢の中

 

いきなり声が聞こえてきた。

 

―――――『ナゼ、断ラナカッタ?』

 

なぜかわからないが言葉が自然と出た。

 

「俺は『今』を楽しむことにした。だから、断らなかった。」

 

―――――『断ラナイコトニヨッテ、ヴァニラハサラニオマエニ恋心ヲ抱クトイウノニナゼ気ガツカナイ?』

 

「断ればよかったというのか。断ればその場の空気が重くなってしまう。」

 

―――――『・・・・・・・。』

 

「そもそもお前はいったい誰だ?」

 

―――――『ワカッテイルノニナゼソンナコトヲ聞ク?』

 

「何・・・?」

 

―――――『俺ハオマエダ。俺ハオマエノ夢ノナカニイルダケノ存在・・・・。』

 

「・・・・・・。」

 

―――――『マサカ忘レテハイマイナ。『コノセカイ』ニ来タ理由ハヤツラカラ与エラレタ任務デアルト同時ニ別ノモノダロ?』

 

「その通りだ、忘れてはいない。だが俺は・・・・。」

 

―――――『今サラヤメルト言ウノカ?甘イヤツダ、ソレデハセッカクノ六年間ハ水ノ泡ダナ。

名前ヲイクツモ変エ、望ンダコトダト言ウノニ・・・・ナァ・・・ジョセ――――』

 

「その名前を言うんじゃない!とうの昔に捨てた名前だ!!お前には関係ない!!」

 

―――――『別ニオマエヲ責メルツモリハナイ。タダ忘レテイナイカ確カメタカッタダケダ。』

 

「・・・・・・。」

 

――――――『ソロソロ時間ノヨウダ・・・・・。セイゼイ『今』ヲ楽シムコトダナ・・・・。クククク・・・・。』

 

 

 

 

 

 

「アレックさん、着きましたよ。」

「う・・・・ん。」

 

 

ヴァニラに起こされ目を覚ましてみると動物園の入り口までシャトルは着いていた。

 

(さっきの夢はなんだったんだ?)

 

俺はシャトルを降りて動物園の入り口を抜けるまでずっと考えていた。俺に話しかけてきた『もう一人』の俺・・・・そしてあいつは夢の中だけの存在だと言った。

 

(まぁ、いい。今は忘れてヴァニラと動物園を楽しむか。)

 

「アレックさん、どうしましたか?」

「いや、なんでもない。それより早くまわらないと人が混雑してしまう。」

「では・・・行きましょう。」

 

俺たちはまず一般的なエリアから見ることにした。宇宙サルや宇宙キリンなどまだ新しくオープンしたばかりだと言うのに結構動物の数が多いものだ。

 

「あ、アレックさん。首があんなに大きく・・・。」

 

宇宙キリンを見てヴァニラは驚いていた。

動物園は初めてなのだろうか・・・・・・・?

 

「もしかしてヴァニラは動物園に来たのは初めてだったのか?」

「はい・・・・。これが初めてです。・・・おかしかったですか?」

「いや、全然。だけどヴァニラが驚く顔が見られただけでもよかったよ。」

「か、からかわないでください。」

「冗談さ、冗談。さぁどんどんまわらないと日が暮れてしまう。」

 

 

 

 

 

 

 

時間も昼となり段々と人の数が増えてきた。

俺達は知らないうちに手を握っていた。人ごみのせいもあったかもしれない・・・・。

動物園を回っている途中、ヴァニラが足を止めた。

 

「どうしたんだ、ヴァニラ。」

「アレックさん・・・・・ここに入ってもよろしいでしょうか?」

 

ヴァニラが俺の手を引きその施設の前まで歩いていくと何やら看板らしいものが立っている。さらに近づいてみてみると

 

『動物の触れ合い場』

 

という文字が書かれていた。

なるほど、ヴァニラは動物が好きだからこういうところに入りたいのか。

 

「どうでしょうか?」

「ああ、ヴァニラの好きにするといい。」

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

施設内

 

この施設にはいろいろな動物が放たれていた(大型の動物を除いて)。ヴァニラは猫を俺は犬をそれぞれ触りいろいろな動物に触れ合っていた。

 

「痛っっっ・・・。」

 

突然ヴァニラが声を出して言った。どうしたのかと思い見てみると手の平から血が出ていた。何かの動物に触ってケガをしてしまったのだろう。

 

「ヴァニラ、大丈夫か?」

「平気です・・・・。少し血が出ていますが・・・。」

「ヴァニラ。」

「なんでしょうか?」

「君の肩に乗っているナノマシン・ペットを・・・・貸してくれないか?」

 

俺はヴァニラに言った。

ヴァニラは「アレックさん・・・いったい何を・・」とそう言った。知ってのとおりナノマシンによる治療はナノマシンをある程度習得しない限り使えない。

 

「貸してくれないか?」

「・・・・わかりました。」

 

ヴァニラの肩の乗っているナノマシンの集合体は俺の手のところまで来た。本当は『秘密』にしておくべきだが・・・。

 

「じゃあ、始めるぞ。」

 

俺は意識を集中させ、ナノマシンを使ってヴァニラの手の傷を治した。ナノマシンを使うのは約十年ぶりだったので少し疲れた。

 

「アレックさんもナノマシンが使えるのですか?」

「ああ、多少は使える。ある人に教えてもらったものだが使うことはなかったから黙っていたが今使用したのは数えて十年ぶりだな。」

「そうだったのですか・・・。」

「・・・・そろそろ出ないか?まだ回っていないところがあるから。」

「はい。」

 

俺たちは『動物の触れ合い場』を出て動物園見学を再開した。そのときもずっと俺たちは手をつないでいた。

回り終わったときには4時になっていた。

 

 

終わったあとさすがに疲れたので俺たちは小さな喫茶店に入った。

 

「ヴァニラは何を飲むんだ。」

「私は・・・・オレンジジュースを・・・。」

「俺も同じにするか・・・・。すみません、オレンジジュースを二つください。」

 

注文を済ませて、ジュースが来るまで沈黙が続いた。

ジュースが来たと同時にヴァニラは口を開いた。

 

「アレックさん・・・・今日は楽しかったですか?」

「・・・ああ、とても楽しかったよ。」

「よかった・・・・・。」

 

ヴァニラは微笑みながらそう答えた。そして・・・・

 

「アレックさん。」

「ん、どうした。」

「あ・・・あの・・・・。」

 

よくヴァニラの顔を見てみると耳まで真っ赤になっていた。

そのとき俺は直感した。

 

(まさか・・・・)

 

俺が回避しなければならない状況になってきている。

どうする・・・?

 

悩んでいたところから声が聞こえてきた。ほんのわずかな声だが・・・・。

 

『ヴァニラからアタックするの!?』

『ランファ〜、ダメだよヴァニラだって必死なんだから。』

『だけど、やっぱ納得いかないわ!!』

『ちょ、ちょっとランファ先輩!そんなに体を出したら気づかれてしまいます!』

『ラ、ランファ、落ち着きなよ!!』

 

 

間違いない、ランファたちの声だ。あいつらいつからここにいたんだ?

 

「ヴァニラ、すまないがトイレに行ってくる。」

「あ・・・・・。」

 

ヴァニラには悪かったがこうするしかなかった。俺は除々にランファたちのいる場所まで近づいていった。ランファたちはまだ気づいていない。

 

「お前ら、そこで何をしている?」

「あ、アレックさん!?」

「アレック、なんであんたがここにいるのよ!?」

 

まったく冗談が下手な奴らだ。

 

「それはこっちのセリフだ。なぜここにいる?」

「あ、あたしらもたまたま偶然ここの喫茶店に来ただけだよ。な、なぁミント?」

「そうですわ。私達は『たまたま』ここに来ていただけであって決してあなた方をつけていたわけではありませんわ。」

 

ミントの言葉でわかった。

こいつらはずっと俺達のことをつけていたのか・・・・。

長話しているとヴァニラを待たせてしまうので適当に話をすませヴァニラの座っているところまで戻った。

 

「ヴァニラ、すまない。思ったより時間がかかってしまってね。それで、なんだい?」

「・・・・・・。」

「ヴァニラ?」

「・・・・いえ、やっぱり・・・・何でもないです。」

 

ヴァニラは沈んだ声で俺に言った。

そのあと俺はすぐに話題を変えた。ヴァニラはすこし落ち込んでいたが話を続けている内に段々、笑顔になった。

 

(ふぅ・・・・ひとまず助かったか・・・。)

 

このあと、俺たちは喫茶店を出てエルシオールに戻った。そのときのEDENの空はとてもきれいだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

休暇が終わり、エルシオールはガイエン星系の捜索に出発することとなった。

 

「エルシオール、惑星ジュノーの成層圏を抜けました。」

「よし、エンジェル隊ご苦労様。後はガイエン星系までゆっくり休んでくれ。」

 

ただブリッチに呼ばれただけだったが、悪い気はしなかった。

その場で解散となり俺は自分の部屋に入りベッドに飛び込み深い寝むりについた。

 

 

 

―――――――『ヴァニラト一緒ニ行ッタ動物園ハドウダッタ?』

 

また例の奴だ。

 

「楽しかったさ。おかげで手をつなぐこともできた。」

 

―――――――『ソウカ・・・・・。』

 

「お前の目的はなんだ?俺を責めたり褒めたり。」

 

―――――――『ソレハオマエ自身ガ考エロ。』

 

「・・・・・・。」

 

――――――――『ヒトツダケ忠告シテオクガ、ヤツラガ『コノセカイ』ニ来ル日ハ近イゾ。』

 

「なんだと!それはいったいどういうことだ!?」

 

――――――――『オイオイ・・・・オマエガ『コノセカイ』ニ来タノハ今日デ8ヶ月ニナル・・。ソロソロヤツラモ『アノ装置』ガ完成シテイルハズ。』

 

「・・・・・・。」

 

――――――――『前ニモ言ッタガ・・・イツデモイイヨウニ準備シテオイタホガイイゾ。』

 

「わかっている・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

とある艦隊の艦内

(ここでは会話のみとなります。)

 

「奴からの連絡は・・・・?」

「いえ、何もありもありません。」

「いったい奴は何をしていると言うのだ・・・・。あれから8ヶ月経っていると言うのに。」

「転移したせいで通信機が壊れた・・・という可能性はないでしょうか?」

「うむ・・・・その可能性はあるな。だが誰を行かすか・・・。」

 

「その役目、私にまかせていただけませんか?」

 

「何者だ!?」

 

「私の名前はカークス。わけあって素性は明かせませんが私でしたらアレックに通信機を渡すことができましょう。」

 

「その根拠は・・・?」

 

「あなた方は『あちらの世界』にはまだいけない、なぜならまだアレックが取った詳細なデータを見るまではここを動けないはず。かといって『あの者たち』を送れば口を滑らせアレックの正体がわかってしまいます。もうひとつは完成したとはいえまだ転移装置が完全ではない・・・・・。もし、私が行くのに失敗してもあなたの部下の命は助かり死ぬのは私だけ・・・・。いかがでしょうか?」

 

「・・・・・よかろう。お前に予備の通信機を渡す。必ずデータを持って帰ってくるがよい。」

「ありがとうございます。ではあなた方の艦隊を少しばかり使わせてもらいます。それでは失礼します。」

 

 

 

 

 

「いいのですか?あのような者に行かせてしまって・・・・。」

「かまわん、奴の言っていたことは正しいからな。ところで艦隊の集結数は?」

「現在、300隻が集結中です。しかし、これだけの艦隊を送るとなると失敗する確率は多くなってしまいます。」

「かまわん、どちらにしても減ってしまう・・・・・。今我々がすることは一刻も早くこの世界から脱しあちらの世界に行くしかないのだ。」

 

 

 

 

                      

 

 

 

                                         第七話「休暇での出来事」終

                                                第八話に続く・・・・・・。