第十二話「素顔と左目の秘密」
真っ暗だ・・・・。
俺は・・・死んだのだろうか?
あれから戦闘はどうなったのか・・・・知りたくても誰も教えてはくれない。
――――――『大丈夫だ、全員生きている。心配することはない。』
暗闇の中に誰かが立っていた。
目をこすってみるとそれは幾度となく俺に話しかけてきたもう一人の俺だった。その顔は笑顔に満ちていた。
「・・・・・・。」
――――――『おいおい、そんな恐い顔で見るな。まぁそう俺を見るのは同然か・・・。』
「なんの用だ?説教でもしに来たのか?」
――――――『だからそんな顔で見るなよ。それに俺はお前に話しかけていた俺じゃない。今までお前と話をしていたのは『悪』に満ちた傭兵時代のお前で今お前と話しているのは『善』が表に出ている・・・・つまりは俺ってことだ。』
「・・・・・。」
――――――『後悔しているのか?皆を助けたこと・・・・・自分の行動を。』
「いや・・・後悔していない。俺はあと少しで同じ過ちを繰り返すところだった。」
――――――『あのとき『悪』に満ちた俺の言葉に耳を傾けていたら一生後悔していたぞ。よく決断したな。』
「そうだな。お前に一つだけ聞きたい。回りが真っ暗だが俺は・・・・死んでいるのか?」
――――――『お前はまだ死んでいない。今は昏睡状態が続いている。だから早くヴァニラを安心させてあげることだ。それに・・・・・・』
「それに何だ・・・・・?」
――――――『カークスも心配している。』
「カークスが来ているのか!?」
――――――『そうだ、エオニアの罠を察知してお前を助けにこの世界に来たが着いたときにはもう戦闘が終わっていた。』
「そうだったのか・・・・・カークスがこの世界に・・・・。」
――――――『さて、そろそろお別れの時間だ。もう語りかける必要もないようだし・・・・。じゃあな。』
「待ってくれ!!」
――――――『何だよ?いろいろ忙しい奴だな。今まで俺に語りかけなかったくせに。』
「ありがとう・・・・。」
――――――『・・・・ありがとう・・・か。その言葉はそのまま返すぞ。お前は自分の意思で過去と決別できたんだからな。・・・ヴァニラに起きたらちゃんと言えよ。』
「・・・・・・。」
もう一人の俺は消え、その先に光が見えた。
そうか・・・・これが『答え』なんだな。
迷うことなく俺はその光へと走っていった・・・・・。
「・・・・・うっ・・・・。」
「アレ・・・ックさん?」
目が覚めると寝ていたベッドの横にヴァニラがイスに座っていた。ヴァニラは俺の手を取るとニッコリと笑った。
「よかった・・・・・気が付いたのですね。」
「ここは・・・・。」
「エルシオールの医務室だ。そしてそこに座っているヴァニラに感謝することだ。お前が目覚めるまでずっと看病し続けていたのだからな。」
ドアの前にカークスが立っていた。
あのときはモニターでしか見れなかったがこうして直接見るととても大きく感じる。七年も会っていなかったのだから当然か・・・。
「カークス・・・・・。」
「アレック、久しぶりだな。」
「お二人は・・・・・知り合いだったのですか?」
ヴァニラは俺たちに尋ねてきた。
あのとき(第十一話)にヴァニラだけティーラウンジに来ていなかったので知らなかったようである。
「ああ、小さい頃からの親友だ。」
「・・・・アレック、マイヤーズ司令からの伝言だ。『目が覚めたらブリッチに来てほしい』とな。今通信を入れておいた。つらいかもしれないがお前から皆に真実を話したほうがいいと思っていままで黙っておいた。」
「わかっている。エオニアのこともそして自分自身のこともすべて話す・・・・。」
まさかこの世界で俺の正体を明かすことになるとは正直言ってないだろうと思っていた。いや・・・エオニアが来た時点でそれは決まっていたかもしれないな。
「立てるか?」
「ああ・・・・なんとかな。うっ・・・。」
ベッドから立ち上がりタクトたちのいるブリッチまで行こうとした。しかし無理をして立ったのが災いして床に倒れそうになった。そのときカークスとヴァニラが俺を支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
「無理をするな。本当なら寝ていなければいけない身体なんだぞ。」
「大丈夫だ。肩貸しなどいらない。」
カークスは肩を貸すのをやめたがヴァニラはやめなかった。
どうしてだ・・?
俺は自分の復讐のために皆を裏切ろうとした。ヴァニラも例外ではない。
なのに・・・・。
「大丈夫だと言っているだろ?」
「・・・関係ありません。怪我をしている人を手伝うのは当然です。」
「・・・微笑ましいな、アレック。」
カークスは皮肉のように言った。
人の気も知らないでそういうことは言わないでほしいものだ。
結局・・・俺はヴァニラの肩を借りながらブリッチに行くこととなった。
ブリッチ
「わざわざすまないね、アレック。」
「・・・・・。」
「さ〜て、全部しゃべってもらうわよ。あんたのこともエオニアのことも。」
ブリッチに着くとタクトを含め全員が集まっていた。
皆の顔は険しい・・・・。
それは当然か。皆を危険な目に合わせているのだからな。
「じゃあ最初に聞きたいのは君の正体からだ。」
「・・・・トランスバール帝国軍第十五艦隊総司令ならびに特務情報部隊『デッド・サイクス』隊長アレック・デメシス大佐。歳は二十歳。」
「大佐?あんたは大尉じゃないのかい?」
フォルテが俺に質問してきた。
『大尉』なのになぜ『大佐』なのか・・・・?
その答えは簡単だ。
「大佐クラスの人物がエルシオールに来るのは不自然だろ?だからここに来るとき大尉と偽っていた。エオニアには階級など関係なかったが・・・・。それに階級も名前もすべて偽りだ。」
「それはつまり・・・・偽名ってことかい?」
「そうだ。アレック・デメシスは俺が作った偽名だ。俺の本当の名前はジョセフ・マクロード・H(アッシュ)。そこにいるヴァニラ・Hの息子だ。」
「「「「「「「へ・・・・・?」」」」」」」
「あんた・・・・・ふざけてるの?」
「ふざけてなどいない。真実を話せと言われているから言っているだけだ。」
「すっごいーーー!!ヴァニラに子供がいたんだ!!」
・・・・・・。
心の底から信じ込んでいる奴が一人いる。
「ありえません・・・・。私に子供などいませんし第一に歳が違いすぎます。」
「確かにな。だが俺の母親は間違いなくヴァニラだ。」
「証拠はあるのかい?」
「証拠は・・・・後で見せる。次にお前たちが知りたがっていることだ。俺たちはこの世界の人間ではない。俺とカークスはお前たちとは違う別の世界から来た。パラレルワールド(平行世界)とでも言っておこう。」
「ぱられるわーるど・・・?へいこーせかい・・・?」
皆は理解しているがミルフィーだけ何がなんだかわからないようだ。
ミルフィーの天然にはほとほと呆れる。仕方がないのでミルフィーにわかりやすいように説明することにした。
「・・・・一人だけ理解していない人がいるから簡単に説明しよう。」
俺はエルシオールの大型モニターを使って説明を始めた。まず一直線の線をモニターに出した。
「まずこの線が君たちのいる世界の時間の流れだとしよう。それでここがトランスバール暦412年、エオニア戦役が起きた年だとしてここがネフューリアの襲来、そしてここが最近起きた『ヴァル・ファスク』との戦いだ。じゃあここで質問だが『もし』エオニア戦役のときにエオニアがタクトたちより先にローム星系に着いていたらどうなっていたと思う?」
「私たちは負けて別の線、つまり違う世界が出来上がるということですか?」
「悪くない答えだ。俺たちはこの線に続いているトランスバール暦437年からこの世界に来た。俺の任務はこの世界の偵察ならびにこの世界の状態をつぶさに報告することだ。」
ここまで話すとミルフィーもやっと理解してくれた。
みんなの顔は驚きを隠せなかった。
そんな夢世界など信じられるか・・・・・・そんな表情だ。
しかし、現に俺はこの世界にやってきているので信じるしかない。
「アレック、一つ聞いていいか?君たちのいる世界は・・・・どうなっているんだ?」
「・・・・俺の知っている限り話そう。エオニア戦役の際エオニアは君たちより先にローム星系に到着しファーゴを制圧していた。そこへ遅れてエルシオールは到着し、交戦状態となった。戦力は圧倒的でエルシオールは結局ローム星系を後にした。」
「その後はどうなったの!?私たちは死んだの!?」
「・・・・逃走を続けたエルシオールは惑星ブラマンシュに到着しミントの父ダルノー・ブラマンシュからある提案が出された。それはシヴァ皇子およびエンジェル隊をコールドスリープで冬眠させることだ。つまり戸籍上死んでしたことにすることになるな。」
これは自分で探した情報だから定かではないがコールドスリープでの記録は俺が直に聞いたからこれは事実だ。
「みんなは反対した。だがエンジェル隊とシヴァ皇子は皇国の最後の希望だから失うわけにはいかなかった。だからシヴァ皇子も賛同し皆はそれを承諾した。しかし、ここで断った人物が二人いた。それが俺の母ヴァニラ・Hとフォルテ・シュトーレンだ。」
「どうして二人だけだったのですか?」
「タクトがうまく四人を説得したが二人には効かなかった。母はこう言ったらしい。『今この混乱した世界では多くの人が傷ついています。だから私はその人たちの助けたい』と。それはフォルテも同意見だった。そして、二人は惑星ブラマンシュを離れ各々に散っていった。その間に生まれたのが俺だ。」
「なるほど・・・・だからヴァニラの子供って言うことなのか。」
これならばみんな俺がヴァニラの子供と理解してくれているはずだ。
さらに話は続く。
「そ、その後どうなったの!?」
「その当時まだエオニアに反発する勢力がいた。母は紋章機のパイロットである実績を買われ反乱軍に加わる一方その戦いで負傷した兵を看病していた。そして・・・・俺が八歳のときに母は死んだ。」
「え・・・・・?」
「あのときエオニアの艦隊が攻めてきて反乱軍と交戦状態となった。結果は惨敗・・・・母は他の人々を逃がすため囮となって艦隊と戦った。そして艦が沈みそうになったとき母は俺を紋章機に乗せ俺を逃がしてくれた。」
「じゃあアレックが乗っているあの機体は?」
「お前たちが思っている通りあれはハーベスターを改造したものだ。だから形式番号も八番機ではなく本当は五番機の形式番号だ。」
話をしているとあのときの記憶がよみがえってくる。
今にも沈みそうな艦で俺を逃がしてくれた母の姿を・・・・
思いだしただけで胸が苦しくなってくる。
「紋章機は自動的に惑星エルダートにセットされていた。そして母の知人がいると聞いてそこに身を寄せた。そのとき俺を引き取ったのがシスター・バレルだ。」
「・・・・嘘です。シスターは私の目の前で息を引き取りました。生きていることなんてありえません。」
「この世界ではな。だが俺たちのいる世界では生きている。シスターは俺がヴァニラの子供と知り息子同然に育ててくれた。だが大きくなるにつれて復讐の念が強くなっていった。そして俺はこの手でエオニアを倒すために傭兵となりエルダートを後にした。」
「でも合点が行かないな。君はエオニアの部下となっていた・・・・・どうしてそんな回りくどい行動したんだ?」
普通はそう考えるな。
どうして傭兵になったにもかかわらずエオニアの下についているのか。
「俺の力で一体何ができるというのだ?エオニアの支配は年を追うごとに強くなっていき一人の力ではどうにもできなかった。」
だからあえてエオニアの下につき信頼されるによって近づこうした。そして一年が経ちエオニアは俺にこの世界の偵察を命令してきた。そのとき俺は思った。
この世界のエンジェル隊を利用しればエオニアを倒し復讐が完成すると。最初はそう思っていたが段々タクトたちと関わることによってその考えに疑問がわいてきた。だからあのときあのような行動を取った。
「これで全てだ。他に質問はあるか?」
「じゃあ、質問してもいいかな?どうしてエオニアやヘル・ハウンズの連中は歳をとっていないんだ?」
「奴らは自分の身体を改造し10年に3歳しか歳を取らない身体しているからだ。」
「だからか。アレックの話を聞いているかぎりでは25年ぐらい月日が立っているのにあのエオニアはそんなに歳を取っていなかったわけだ。」
「未来の私たちはどうなっているのですか?」
ミントが聞いてきたのに対し俺は答えることができなかった。
俺はずっとエオニアの下で謀報を続けていたが皆の所在はわかっていなかった。
「その件は俺が話そう。アレックよりも詳しいからな。」
行き詰ったところにカークスが入ってきた。
カークスはレジスタンスのリーダーでよく反乱軍の内部についてもよく知っているはずだ。
「俺が知っているのはそこにいるミルフィーユ・桜葉と烏丸ちとせ、そしてランファ・フランボワーズの三人だけだ。ミント・ブラマンシュとフォルテ・シュトーレンの行方はわからない。」
「ミルフィーたちは一体何の役割をしているんだい?」
「まずミルフィーユ・桜葉は現在32歳で階級は少佐。反乱軍の中核をなしている。あなたの運のおかげで俺たちは幾度となく助けられている。」
「その・・・・反乱軍っていうのは何だ?」
そうか・・・・まだ肝心なところを話すのを忘れていた。
ここは俺も知っているので俺が話すことにした。
「まだ話していないことがあったな。10年の眠りから覚めたタクトたちは身を隠しながらも反乱軍を編成していた。しかし、なかなか戦力が集まらなかったときに14年後意外なことが起きた。それは反乱軍が『ヴァル・ファスク』と手を結んだからだ。俺たちの世界ではEDENが滅びクロノ・クェイクも『ヴァル・ファスク』が起こしたものではなく未知の災害だった。そして反乱軍は『ヴァル・ファスク』の力を借り帝国軍を圧倒した。」
「・・・さっきの話に戻そう。ランファ・フランボワーズは33歳で同じく少佐。あなたは突撃機動部隊の隊長に就任している。あなたの戦闘はすばらしいものでした。」
「わ、私ってそんなにすごかったの?」
「ああ。そして烏丸ちとせは32歳で階級は少佐。この世界ではエオニア戦役のあとに配属となっているが俺たちの世界では初めからいたことになっている。あなたは反乱軍の参謀長を務めている。あなたの作戦はとても効率がいいものばかりだった。」
すごい出世だな。
まぁ反乱軍に死んだはずのエンジェル隊が所属し前線で戦っていないのが不思議なくらいだ。
「さて、最後に俺がヴァニラの息子であることを証明しなければならないな。まず質問だがこれは何だと思う?」
俺はある物をポケットの中から出した。これを使うことは二度とないものだとばかり思っていたが・・・・。
「なんですの、それは?」
「これは一種の特殊なスプレーでね。そうだな・・・・タクト。何か色がついたものはないか?」
「色のついた物?う〜ん、だったらこれはどうかな。」
そういうとタクトは司令官のイスに置いてある色のついた紙を俺に渡した。色がついてきれば問題はない。これにスプレーをかける。
「あ・・・・真っ白になった。」
「見たらわかると思うがこのスプレーは色のついたものを元々の色に戻すことができる。」
「それとこれと何が関係あるんだい?」
「まぁ見ていろ。」
俺はそのスプレーを自分の髪に噴きかけた。
そして段々俺の元の髪の色に戻っていく。その髪を見て皆は驚いた。
俺の髪の色は黒ではなく・・・・・
「ヴァニラと・・・・・同じ髪の色!?」
「そうだ、シスターは俺の正体を隠すため二つ俺に施した。一つは髪の色、そしてこの左目だ。」
「それじゃ・・・・その左目は。」
「本当は見えている。」
この左目を見せることになるとは・・・・・
このことを知っているのはカークスとシスター・バレルの二人だけだ。
「早く教えなさいよ!!」
「・・・・・・・・。」
「じれったいわね。私が取ってあげる!!」
業を煮やしたランファが俺に詰め寄り眼帯をはずそうとした。
するとカークスがランファと俺の間に立ち取り外すのをやめさせた。
「ちょっと!?どうゆうつもりなのよ!!」
「やめておけ。無理にはずそうとすればただではすまされん。下手をすればお前の手は吹き飛ぶぞ。」
「え・・・・!?」
「アレックの眼帯はシスターからもらったものだが爆発する機能はアレック自身がつけたものだ。」
この眼帯には少し細工がされており、無理にはがそうとすれば眼帯が爆発する仕組みとなっている。もちろん俺は死ぬことになる。
「これを無理ははがそうとすれば眼帯が爆発する仕組みになっている。解除する方法は俺の指紋もしくはカークスの指紋を眼帯に当てれば解除できる。」
「どうして・・・・いままで見せなかったのですか?」
「俺のこの目を見ればタクトは必ず俺のことを調べるはずだ。それだけこの目は俺にとって大切な目なんだ。だが・・・もうこの眼帯も必要ない。」
俺はついに眼帯を取ることになった。
あれから10年・・・・・・他人に見せることがなかった目を今ここで見せることにした。そして俺は眼帯をはずしゆっくりと目を開けた。
「こ・・・これは!?」
「ヴァニラと・・・・・同じ目!?」
「シスターにはよくヴァニラに似ている・・・・いや生き写しのようだと言われた。」
皆は一瞬にして黙ってしまった。
自分ではわからないがもし自分が他人だったのならば正にヴァニラそっくりだ。
「で、でもそれだけじゃわからないじゃないか。」
「・・・仕方がない。このときのために取っておいた物を皆に見せるか。これはシスター・バレルから直接聞いたものだ。これならば信用できるだろう。」
カークスは一枚の記録ディスクをアルモに渡しディスクが再生された。その映像はトランスバール暦437年に取られたものであった。するとこの映像は俺がこの世界に転移してから間もない頃だろうか?
『では、それは本当なのですか?』
『はい。私は医者ですから事実を言っているだけです。』
その映像にはカークスとシスター・バレルが対談をしている映像だった。シスターもあれから八年が経ちとても老いている。
『ヴァニラの血液型がXZ00AB型、そしてジョセフも同じ。あとヴァニラの目は非常に珍しいものであの目を持って生まれてくる確率は1億に一人か・・・・それ以上の数は間違いないでしょう。』
「シスター・・・・・。」
皆が集中しているなかヴァニラがそうつぶやいた。
幼い頃シスターを亡くしたヴァニラにとってこの映像に映し出されているシスターはとても懐かしいようだ。
『他に生まれる確率はあるんですか?』
『ない・・・・とは限らないわね。受け継ぐことができるのは違法であるクローンを使って生み出されるか純粋に子供を生むかそのどちらか一方ね。』
『じゃあジョセフは母親のクローンだと言うのですか!?』
俺がクローン・・・・・。
そんな可能性まで出ていたのか。
俺の出生のことは母からはもちろんのことシスターからも教えられてしなかった。
『それはないわね。もしクローンを作ったのであれば両目は赤になるし性別も女性になっているはず。だけど、ジョセフは片目だけしか赤くなっていないでしょ?』
『・・・・・・・・。』
『だから大丈夫よ。ジョセフは正しくヴァニラの子供よ。』
一瞬血の気が引いていく思いがしたがほっとした。
『そうでしたか・・・・・貴重な情報ありがとうございます。』
『いいえ。でも何でこのことを聞くの?』
『実は・・・・。』
このあと話は俺がこの世界に行っていると言うものだった。
これはまるでインタビューだな。
『そうだったの・・・・・。きっと平和なのでしょうね。』
『はい・・・・・。それでもしジョセフが疑われるようなことがあればあちらの世界にいらなれないでしょう。だからあなたに聞いたのです。』
『そう・・・。カークス、ジョセフをよろしくお願いします。』
『わかっています。ではシスター・バレル、俺はこれで失礼します。』
映像が終わりタクトたちはこちらを見ていた。
話すことだけのことはすべて話した・・・・・・。
「さて・・・・・話すことはすべて話した。あとは俺を好きにしてくれ。銃殺なり追放なりなんなりとするといい。」
「・・・・・・・。」
「だが、カークスだけはここにいさせてやってくれ。カークスは反乱軍つまりタクトたちの味方だ。それにこいつは優秀だ。きっと役にたつ。」
俺への処分は何でも受けるつもりだ。
だがカークスは無関係だ。それだけはタクトたちに理解してもらいたかった。
「・・・・アレック・デメシス大尉。君の処分をここで発表しよう。」
「・・・・・。」
「二日間、独房に入ってもらう。そしてその後は俺たちと一緒にエオニアを倒してもらいたい。」
・・・・・なぜだ?
なぜそんなに刑は軽いんだ?
俺はタクトたちを裏切ろうとした・・・・重い刑で当然のはずだ。
「なぜだ・・・・?」
「事情もわかったことだしアレックは大切な『仲間』だ。理由はどうであれ一緒に生活して苦楽を共にしてきた。それじゃ不服かな。」
「・・・・・・。」
「じゃあ独房に入ってもらうか。手錠は・・・・必要ないか。」
数分後船員が数人ブリッチに来て俺を独房まで連れていくことになった。
そして・・・・俺が出て行くときのヴァニラの目はとても悲しい目をしていた。
第十二話「素顔と左目の秘密」 終
第十三話に続く・・・・・・。
さて、とうとうアレックの正体がわかったところなのでもう一度詳細にプロフィールを書きたいと思います。
アレック・デメシス 20歳
階級 大佐
所属 トランスバール帝国軍第十五艦隊総司令+特務情報部隊「デット・サイクス」隊長
(あちら側の世界で)エオニアの右腕にまでなっていた帝国軍の大佐。実は偽名で本当の名前はジョセフ・マクロード・Hでありヴァニラの子供である。母の仇をとるために傭兵となるがエオニアの力が強くなりそれを断念、エオニアの配下となり復讐に機会を待っていた。