「あ~ぁ…ヒマだなーぁ…」

タクトの間のびした声が白き月の会議室に響き渡った。

 

―――しばしの沈黙。

 

「・・・・・・・・」

タクトから見て左側にいる親友、レスター・クールダラスが何も言わずに…

 

カチャ

 

「タクト、質問だ。いいか?」

タクトのこめかみに光線銃を突きつけながらレスターが言う。

「な…なんでしょうか?」

タクトがビクビクしながら答える。

「今、会議の席で『ヒマだなぁ』等と言ったのはどういう了見だ?もちろん、会議の内容はわかっているんだろうな?」

 

「いや…」

タクトはあからさまに目線をそらして…

 

・・・「悪かった…」

あきらめたようにつぶやいた。

「まったく… お前はいつもいつも…」

レスターはかなり本気で悪態をついた。

 

「いいか、もう一度話すからよく聞けよ。ったく…」

レスターはまだぶつくさ言っている。

 

「最近、強盗船団がシェルフマ星系に現れている。」

レスターはものすごく疲れた声で言った。

 

「えっ?たかが強盗船団?」

タクトは半ば驚いていた。

「おいおい。別にこんな白き月で取り上げることでもないだろ。」

「もっともだ。 …と言いたいところだが、かなり厄介なやつだ。全く前例が無いだけにな。 だから白き月で取り上げるんだ。」

「前例が無い? 」

タクトの疑問を増やすような意味深な事をレスターは言った。

「あぁ。こんなことは前代見聞だ。 なにせ…」

 

 

『銃撃の祈り子』

 

 

 

 

 

 

(なるほどね… そりゃ前代未聞だ。)

タクトは司令官室で一人ぼやく。

 

 

 

~#~

 

 

レスターはこう切り出した。

「強盗船団に襲われた艦自体のダメージは確かに少ない。…だがな…」

「?なんだよレスター、艦じゃないなら、いったい何が前代未聞なんだ? まさか、艦のダメージがこんなに少ないのが前代未聞だー、っていうんじゃないんだろうな?」

タクトはまだ笑っている。 さては完全に信じていないな、コイツ。

 

「そんなわけ無いだろう。ヘラヘラ笑うな。」

レスターは、急に深刻な顔になり、

「重大なのは、他でもない。」

 

 

 

 

 

 

「乗組員の記憶が全て吹き飛んでいる。」

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ…?」

不意を突かれたタクトに、レスターがたたみかける。

 

 

 

 

 

 

「いや、記憶なんてレベルじゃない。 あれは恐らく人格から変わっている。」

 

 

 

 

 

 

「えっ……」

 

タクトはまだ状況が飲み込めていないようだ。

 

「まぁ、信じられないのも無理は無い。俺も、被害者に会って始めて信じられたんだ。

前の記憶、ましてや、思い出などは全て消え去っている。 正直、考えたくは無いがな。」

レスターは続ける。

「酷いものだった・・・ 前はあれだけ部下思いで評判だったアフジェンガ中佐が…いまでは部下をコケにして3人病院送りにしている。 だが人格が変わっているため処分に上も困っているらしいんだ。」

レスターはため息をつき、

「それをやったのは強盗船団だが、方法、理由、共に不明だ。 ただ、強盗船団が出現する前後に、不自然な空間の歪みが確認されている。 敵はおそらく…」

 

タクトも続いてふう、とため息をついた。

「クロノ・ドライヴ、またはそれに近い方法で…」

 

「ああ、そういうことだろうな。」

 

「でも、なんでそんなに高度な技術があるのに、わざわざ強盗なんかやるんだ?」

 

レスターは両手を挙げた。

「わからん。」

 

「……」

 

タクトは黙り込んでしまった。

 

「まぁ、そんなところだ。 まだこの辺りにまでは来ていないが、いつ来るかはわからん。気をつけろ。」

 

 

 

~#

 

 

「気をつけろっていわれてもなぁ…」

タクトは苦笑する。

 

 

タクトは、おもむろにイスから立ち上がり…

 

 

「じゃ、会議も終わったことだし、気分転換に、ティーラウンジでも行ってこようかな~…」

 

いつもどおりの行動に出るのだった。

 

 

 

~#

 

 

「強盗船団?たったそれだけのことが白き月の議題になったのかい?」

赤い髪の姉御肌、火薬銃の使い手、フォルテ・シュトーレンが意外そうな顔で聞いた。

 

「あぁ、オレもまだよく理解できてないんだけどね。」

タクトは半分笑いながら答える。

「ってったって、たかだか強盗船団でしょ?心配いらないわよ。」

自信満々に言い放ったのは黄色髪の怪力格闘娘、蘭花・フランボワーズ。

 

「ランファさんの場合、空回りしそうで怖いのですが…」

笑顔のままつぶやいたのは青い髪にテレパス能力を持つ小柄のミント・ブラマンシュ。

 

「まぁまぁ、そんなことはいいじゃないですか。ミント先輩。」

今のは黒髪の大和撫子、弓道が達者な烏丸ちとせ。

 

「そうですよ、何が来ようと、みんなばーんってやっちゃいます~!」

ピンクの髪で天真爛漫、そして強運&凶運、ミルフィーユ・桜葉。

 

「ばーんと…です。」

緑色の髪で物静かなヴァニラ・Hが続く。

 

「まだ俺らが担当するって決まったわけじゃないんだからさ。」

タクトは頼んでおいた苺のショートケーキにパクついた。

 

 

~*~

 

 

 

ふう~・・・

タクトはケーキ3つでふくれたお腹をさすりながらブリッヂに向かった。

 

「やぁ、諸君!がんばってるかい!」

「お前よりかはがんばっているつもりなんだがな。」

でた。レスターのジャブ。早々からもらってしまった。

「でもやけに慌ただしいな。なんかあったのか?」

「あぁ、ついさっき、例の強盗船団の担当にエルシオールとエンジェル隊が正式に決定した。 明日から俺たちは強盗船団の出没しているシェルフマ星系に移動する。」

タクトは困った顔で、

「そうか…あまりその強盗船団には首突っ込みたくはないんだけどな。」

 

「仕方ないだろ。 それに、いつも俺らは損な役割だというのが常だろう。」

レスターは半ばあきらめた顔で言った。

 

 

 

 

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もやしです。

初投稿なのでよろしくお願いします。

 

 

まだ未熟なところもあるかとおもいますが、どうにか連載していきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。m(_ _)m