第十五章「白き翼の消える時」
ブリッジに着いたタクトはレスターが指示を飛ばしている中、司令席へ向かう。
「ココ、敵のデータは?」
「今適合中です!もう少し待ってください!」
「急がせろ!」
「アルモ、格納庫の様子は?」
「全紋章機、及びウイングバスター、いつでも発進可能です!」
タクトは頷き、レスターに目を向ける。レスターはその意図を理解し、ココに催促した。
「ココ、まだか?」
「待ってください、今・・・・・・出ました!照合一致、これは・・・ディアグスです!」
「リ・ガウスか・・・」
考える中、レスターが側までやって来る。
「・・・どう考える、タクト」
「・・・墜としにきたんだろ、エルシオールを」
レスターは納得したように頷いた。
「あの装備を見ればな・・・」
30機近いディアグスの全てが大型バズーカやミサイルポッドなどの大武装を装備している。
「アルモ、裕樹に繋いでくれ」
「了解」
「・・・裕樹?」
『タクト・・・リ・ガウスだな?』
「ああ、で、コイツを見てくれ」
映像に映っているディアグスを見せてみる。
『拠点攻撃用のB型装備に対艦用のD型装備じゃないか。ヤツラ・・・エルシオールを墜とす気だな』
「やはりな・・・」
「ゆ、裕樹さん・・・」
不安げな顔をするココに裕樹は笑いかける。
『大丈夫さ。そんなこと、させはしない』
「裕樹さん・・・」
『ココ、IGの中に・・・メガロデュークはいるか?』
「・・・はい、確認しています」
一瞬、裕樹の表情が変わる。
今では痛いほどにその理由がわかる。______きっと、誰にでも。
『タクト、出るな』
「ああ、頼むね」
「SW−101ウイングバスター、発進、どうぞ!」
『朝倉裕樹、ウイングバスター、行くぞ!!』
新たに増設されたカタパルトデッキより、ウイングバスターが発進する。
「よし、エンジェル隊、発進!」
タクトの指示により、格納庫デッキが展開される。
そして、6機の紋章機が出撃していく。
『トリックマスター、ハーベスターはエルシオールの護衛に!ラッキースター、カンフーファイター、ハッピートリガーは敵機を撃破!シャープシューターは全体の支援に!』
「「「「「「了解!」」」」」」
『みんな・・・厳しいと思うけど、切り抜けるぞ!!』
タクトの言葉に裕樹を含め、全員が頷く。
各紋章機が展開していった。
(裕樹・・・)
メガロデュークに乗る正樹は、板挟みだった。
任務と思いの二つの考えに。
______考えてみれば、いつだって裕樹は正しかった。
思うこと、考えること、実行すること、全てだ。
だから、容易に想像できた。
それだけ、よほど思いつめてEDENに、トランスバールに渡ったのだと。
それに気づけず、助けてやれなかった自分にも責任がある。
けど、どうして・・・
どうして、戦うことになってしまったのだろう・・・
「神崎少尉!」
仲間の声ではっ、と我に返る。
「・・・工藤軍曹、俺の合図で撃て。それまで気づかれるなよ」
「了解!」
(いや・・・今は、任務だ・・・)
それに、エルシオールを墜とせば、裕樹は帰ってきてくれるかもしれない。
そんな、甘い考えを、正樹は持っていた。
目前に、白き翼が迫る。
「・・・正樹!」
手首のビームショットを発射しつつ、接近する。
それを大きく回り込みつつ避けるメガロデュークは、スパークブレードで斬りかかってくる。それをプラズマカッターで斬り流し、至近距離でファングランチャーを放ち、吹き飛ばす。
「ぐっ・・・」
「・・・?」
妙に感じない手ごたえに違和感を感じつつ、その隙に他のディアグスへと向かう。
手近なディアグスを切断し、持ったままのファングランチャーで更に落としていく。
(・・・?紋章機がいない?)
レーダーを見てみると、トリックマスター、ハーベスター、シャープシューターはエルシオールの防衛で手一杯で、ラッキースター、カンフーファイター、ハッピートリガーはあきらかに足止めをくらっている。
「あれは、A型装備のディアグス?・・・クソッ!」
A型装備、高速戦闘用の装備である。
「は、早いよ〜」
「えーい!うっとうしいわね!」
相手の速度に翻弄されているラッキースターとカンフーファイターは、上手い具合に足止めさせられている。
「チッ!当たりゃしない!」
ハッピートリガーのビームキャノンを避けたディアグスだが、その真後ろから縦に切断される。
「!裕樹!?」
「ミルフィー、ランファ、フォルテ!こいつ等は相手にするな!B型、D型だけを狙え!!エルシオールが、本当に墜とされるぞっ!!」
更に迫るディアグスにファングランチャーを撃ち、避けた先を斬りつける。
三人はハッとなってエルシオールを見ると、とてつもない大火力にトリックマスター、ハーベスター、シャープシューターでは防衛がまるで追いついていない。
「エルシオールが!?」
あわてて戻ろうとする3機をウイングバスターが止める。
「戻るな!それこそ相手の思うツボだぞ!それより数を減らすんだ!!」
ディアグスのマシンガンを避けながら、ファングランチャーで撃ち返す。
「ミルフィー!ランファ!裕樹の言う通りだ!アタシ等はアタシ等の仕事をするんだよ!」
「「了解です!!」」
攻撃を回避しつつ、3機はバラバラに別れる。
「うわっ!?」
「ぐぅっ・・・!!」
大型ミサイルの直撃を受け、エルシオールのブリッジが大きく揺れる。
「くっ・・・被害状況は!?」
「Dブロック、第一ブロックから第五ブロックまで閉鎖!!」
「シールド、37%まで低下!艦稼働率、60%!!」
「タクト!このままでは本当に墜とされるぞ!!」
「分かってる!・・・クソッ!!」
「・・・これ以上、もう・・・!!」
ラッキースターに眩いほどの光が集まっていく。
「!あれは!?」
メガロデュークと戦っていた裕樹は、光の集まるラッキースターに目が移る。
そして、光の翼が出現した。
「いっっっけえぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!!!!」
先端から放たれた裂光が、戦場を切り裂く。
ムチ状と化した極太のハイパーキャノンで、大多数のディアグスを一気に壊滅に追い込んだ。
「な、何だと・・・!?」
からくもハイパーキャノンの照準から外れた、ディアグスの残りは、もう数えるほどだった。
「・・・くそ!!」
「正樹!お前の負けだ!!」
「・・・なら撃てよ」
「ッ!?」
正樹の言葉に驚愕した。
――――イマ、ナニヲ・・・?
「俺がお前なら・・・俺は撃つ」
「なっ・・・正樹!お前・・・っ!!!」
感情のままにメガロデュークに近づいた。――――刹那、正樹が叫んだ。
「軍曹!!今だ!!」
「!?正樹!?」
思わず辺りを見渡す。が、何も見つからない。
――――と、いうことは
全ての可能性を廻らせ、必死に答えを導きだす。
閃きと同時に、叫んだ。
「エルシオール!タクト!!逃げろぉぉぉぉっっっ!!!!」
直後、予想通り超遠距離からの極太のレーザーが、
――――光の矢の如く、エルシオールに突き刺さった。
直撃こそ避けられたが、スラスター部分に直撃した。
裕樹の目の前で、エルシオールは爆発と共に、墜ちていった。
「エルシオールッ!!」
「ぐうぅぅっっ!!!」
かつてないほどの衝撃がエルシオールを襲った。
「マイヤーズ司令!エンジンに破損、艦の稼動、維持できません!!」
「・・・ッ!タクト、このままだと・・・!」
「・・・・・・」
「マイヤーズ司令!近くのクラスBの惑星の引力に引き込まれています!!」
「何!?」
「なんとかして離れろ!大気圏に入るぞ!」
「無理です!メインスラスターは全て、サブスラスターも半分しか動いていません!!」
「くそ・・・!!タクト、どうする・・・!!」
あまりにも苦しい決断。だが、それが司令官としての、やるべきことなのだ。
タクトは、何度もそう自分に言い聞かせた。
「・・・あの星に降りる!!」
「タクト!?」
「アルモ!全紋章機及びウイングバスターに帰還命令!!ココ!全エネルギーを突入時のエネルギーに変換しろ!!レスター!!一分で大気圏突入時の角度を割り出せ!!」
「「「りょ、了解!!」」」
これはカケだった。今まで、エルシオールが大気圏に突入したことなど、かつて無かったからだ。
だが、考えうる選択肢はこれしかないのだ。
「あの星に・・・降りる!?」
連絡を受けた裕樹は思わずエルシオールを見る。
着々と、紋章機がエルシオールへと戻っていく。
だが、裕樹は戻らなかった。
(紋章機はともかく・・・IGならギリギリまで戦える!!)
ならば、自分は残ったディアグスとメガロデュークを止めなければならない。
元から大気圏内用に作られたウイングバスターとは違い、今だに使用されている量産機であるディアグスやメガロデュークはおそらくバリュートを装備しているはずだ。ということは、相手は単機で大気圏突入が可能なわけなのだ。
恐らく、裕樹にしか出来ないこと。
ウイングバスターはスティンガーキャノンを構え、残ったディアグスへと迫る。
「裕樹!!」
突撃してくるメガロデュークを再びプラズマカッターで向かえうつ。
「正樹、お前・・・光圧陽電子砲まで使って・・・そこまでして墜としたいか!エルシオールを!!」
「・・・それが、俺の受けた命令だ!!」
「この・・・ヤロゥッッ!!!」
SCSでメガロデュークを流しのけ、その後ろにいるディアグスをスティンガーで撃ち落とす。
途端、ウイングバスターが大きくきしむ。
「うわっ!?・・・くそ!もう限界か!」
もう完全に大気圏に突入しようとしている。
いくらウイングバスターでもこのままでは突入時の熱と衝撃で燃え尽きてしまうだろう。
『裕樹!何してる!?早く戻るんだ!!』
「わかってる、今・・・ッ!?」
その隙を突かれ、後ろからディアグスに組み付かれる。
「な、何をする!お前!」
「・・・アンタさえ倒せば、全てが終わるんだ!」
「お前まで死ぬぞ!」
「それでアンタを倒せるなら、それでいい!!」
「くっ・・・コノヤロ・・・!」
「ウイングバスターはまだ着艦しないのか!?もう時間がないぞ!!」
レスターの叫びを受けつつ、タクトはココに促した。
「どうなんだ、ココ」
「これは・・・ディアグスがウイングバスターに取り付いています!」
「何だって!?」
「くそ・・・火器管制、援護を・・・」
「待てレスター!あの位置じゃウイングバスターにも当たる!」
事実上、どうしようもない状態だった。
この状態で援護するにはよほどの精密射撃が出来る者でなければ。
タクトがそう考えた直後だった。
『・・・シャープシューター、出ます!!』
「な!?」
「待てちとせ!このタイミングだとシャープシューターがもたない!!戻れぇ!!!」
だが、その声がちとせに届くわけがなかった。
「突入臨界点まで、あと30秒です!!」
「く、くそっ!この・・・!」
必死にウイングバスターはもがくが、ディアグスは決して離そうとしなかった。
段々と頭の中であきらめがでてきた時、聞こえたのはちとせの声だった。
「裕樹さん!!」
「ち、ちとせ!?」
耳を疑う。まさか、このタイミングで出てくるとは思いもしなかったからだ。
「何やってるちとせ!正気か!?」
「裕樹さん!!」
ちとせの声に押し黙る。
「5秒間・・・そのままで!!」
「な、何・・・!?」
が、どうしようもなく、その姿勢を維持した。
そのきっかり5秒後、シャープシューターのリニアレールキャノンがディアグスの頭部を撃ち抜いた。
「う、うわっ!?」
緩んだ一瞬の隙に、ウイングバスターはダブルプラズマカッターでディアグスを斬り刻んだ。
「よし、助かった!!」
『ちとせ!裕樹!あと10秒もない!!艦に貼り付け!!』
タクトの指示を聞き、2機はエルシオールにへばりついた。
「すまないちとせ、助かった」
「よかったです、無事で・・・」
そして、エルシオールは大気圏に突入した。
信じられないほどの熱と衝撃の大気圏を抜けると、エルシオールは即座に星の重力に引き込まれた。
「墜落させるな!!!生きてるスラスターを全て稼動させろ!!!」
「ココ!ウイングバスターとシャープシューターはへばりついているか!?」
「・・・はい!2機とも無事です!!」
「よし!総員、衝撃に備えろ!!」
バーニアを一気に噴射させる。
強烈な衝撃がエルシオールを揺さぶる中、エルシオールは海面に着地、そのご小さな小島へと激突し、結果としてようやく止まってくれた。
衝撃が収まってくると、艦内はほっとした雰囲気に包まれていた。
「痛ぅ・・・みんな、無事か?」
「・・・何とかな」
「頭を打ったのか、レスターは頭を抑えながら立ち上がった。
「私たち・・・助かったの?」
「うん、そうみたいね」
アルモとココも安堵の息をつく。
除々に落ち着いてくる空気を感じ、タクトは思い出したように格納庫へ通信を繋げた。
「みんな、大丈夫か?」
『タクト!アタシは大丈夫よ!!』
『なんとか生きてますわ』
『問題・・・ありません』
『やれやれ、アタシ等もしぶといねぇ』
『タクトさんこそ、大丈夫ですか?』
元気な声が返ってきて、タクトは安心した。
「ああ、こっちもみんな大丈夫だ」
みんなが無事ならそれでいい。何より、それが一番大切だ。
「ちとせ、裕樹、無事か?」
『はい、大丈夫です。クールダラス副司令』
『こっちもだ。・・・二度と経験したくない、体験だけどな』
冗談を言える余裕があるのを感じ、タクトとレスターはあらためてホッとした。
「・・・なんとかなったな、レスター」
「ああ、だがタクト、問題はこれからだ」
「そうだね。とりあえず動けるようにしないと・・・」
修理の指示をしようとした、――――刹那、
エルシオールの警報が鳴り響いた。
「な、何だ!?」
サイレン音を聞きつつ、周囲を見渡すと、再びベクター・キャノンを持ったディアグスが、エルシオールを狙っている。
ウイングバスターはプラズマカッターを抜きつつ、後翼を全て展開し、最大速度で迫った。
その間にもエネルギーの充填は更に進む。
『これで、あの艦を落とす!!』
一方、メガロデュークも無事に着陸していた。
「っし!何とか大丈夫だな」
各部チェックをしていると、レーダーに工藤軍曹のディアグスと、それに近づくウイングバスターが映っていた。
「工藤・・・裕樹・・・・・・マズイ!!」
あわてて、2機に近づく。
嫌な予感が、正樹の頭をなんどもよぎった。
「もう、やめろぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!!!!!!!!!」
「裕樹さん!」
接近するウイングバスターごと、発射しようとした工藤だが、シャープシューターの、発射口にビームを撃ちこむ離れ技に防がれる。
「う、うわっ!?」
暴発し、爆発するベクターキャノン。その爆風を突きぬけ、ウイングバスターが突撃した。
「ああああぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!」
隙を逃さず、プラズマカッターがコックピットを貫いた。
「ぐわああぁぁぁぁっっっ!!!!????」
「く、工藤ーッ!!!!!」
最後に、途切れかけた通信がメガロデュークに入った。
「か・・・神崎・・・小・・・・・・すみま、せ・・・」
そして、ディアグスは爆発した。
それに会わせるかのように、雨雲から雷をまとった雨が降り出した。
雷鳴が轟く中、裕樹は迫ってくるメガロデュークを見た。
「・・・裕樹―――ッ!!!!!!!!!」
相手の剣ごとの突撃を受け、更に島の方へと吹き飛ばされる。
「ぐっ・・・」
「裕樹!お前が、俺の仲間を殺すから・・・」
怒りの気迫そのものを感じた。
「俺は引けねぇんだ!!!」
「く、くそっ!」
押され気味のウイングバスターを助けたのは、横からの支援射撃、シャープシューターだった。
「裕樹さん!」
「駄目だちとせ!来るな!!」
「・・・あの戦闘機、いつもいつも・・・!!!」
シャープシューターの放ったビームファランクス、ミサイルを無視し、シャープシューターに接近する。
「え・・・・・」
「邪魔すんじゃねぇぇぇっっっ!!!!!!!!!!!!」
直後、ちとせの目に映ったのは、巨大な剣だった。
「あ・・・・」
そして、シャープシューターは裕樹の目の前で、深々と斬り裂かれた。
全員が唖然とする中、シャープシューターは爆発し、墜落した。
「ちとせぇぇぇぇぇっっっッ!!!!!!!!!!!!!!!」
愕然とする中、メガロデュークは更に接近してくる。
目が滲む。目が熱い。瞳の奥が、とてつもなく、熱かった。
頭の中で、撃鉄が落とされた。
何かが、爆発しそうだ。
自らの制御が、
――――今、解き放たれた。
「っっっっぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああぁぁぁぁぁっっっっぅ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
裕樹の瞳の奥で6つの結晶が収束し、光の粒子と共に解放した。
「マサキィィィィィィィッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
斬りかかってきたブレードをSCSで受け流し、そのままメガロデュークの左腕を斬り裂き、切断した。
「ッ!!!・・・・裕樹、俺が・・・!!!!!!」
――――お前ぇを倒す!!!!!!!!
正樹の瞳の奥で6つの結晶が収束し、光の粒子と共に解放した。
直後、ブレードを投げつけ、ウイングバスターの左腕を切断した。
それをまったく気にせずに、ウイングバスターはメガロデュークの頭部を貫き、貫かれたまま、メガロデュークはウイングバスターの左足を斬り裂き、ウイングバスターはそのまま回転し、コックピット部分を右下からえぐり斬る。
メガロデュークのコックピットが丸出しになり、透き通るように輝く青と緑の瞳が怒りと殺意の全てを込めて睨み合う。
「マサキィィィィィィィィッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ユウキィィィィィィィィッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
互いの、魂からの叫び。全ては、敵を滅ぼすとの感情のままに。
ウイングバスターに対し、メガロデュークは両肩からクレイモアを放つ。これを一気に上昇して避け、そのまま見えなくなる高さまで上昇する。
――――その数秒後、落雷と同時に超上空から大量のビームが降り注いだ。
「そこかぁっ!!!!」
それすら無視し、再びクレイモアを撃ちだす。ウイングバスターは一気に急降下し、地面スレスレで加速し、一気に接近する。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」
残った右手にプラズマカッターを構え、後翼を展開している。
「・・・っっ!!!」
正樹は反応の遅れた「シャイン・ブラスター」を放とうとする。
胸部に光が集まるのを見つつ、ウイングバスターは更に、加速していく。
「救助班を出せ!ちとせを回収するんだ!!」
エルシオールではシャープシューターのシグナルが消えてないことに気づき、急いで救助班を向かわせるところだった。
「ヴァニラ!すまないが救助班の中に入ってくれ!!」
『・・・了解です・・・!!』
「おい、タクト!」
「レスター、どうした!?」
「ウ、ウイングバスターが・・・」
「え?」
直後、大光量と大音量がエルシオールを襲った。
その僅か数秒前。
「うおぉぉぉぉっっっっ!!!!!!!!!!!!」
「チィッ!!!!!」
シャイン・ブラスターの発射スイッチと、咄嗟に押した脱出用スイッチを押したのはほぼ同時だった。
そして、コックピットから飛び出ようとするのと、ウイングバスターが回転しながら左下から斬り上げるのも、ほぼ同時だった。
「ぐ・・・うわあああぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!?????」
斬撃の衝撃と共に弾きだされ、正樹は大きく吹き飛ばされた。
「アアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
更に回転し、ウイングバスターはメガロデュークのコックピットを深々と貫いた。
が、爆発するよりも早く、胸部からの「シャイン・ブラスター」が発射された。
「なっ・・・!!!!!!!」
直後、裕樹は目の前に広がる「シャイン・ブラスター」を、避けようもなく、直撃した。
全てが消えてしまうほどの大光量、大音量と共に、ウイングバスターとメガロデュークは、爆発した。
エルシオールの指揮システムから、ウイングバスターのシグナルアウトを意味する単子音が、悲しく響いていた。
それだけで、どうなってしまったのかが、わかるほどに。
「・・・ゆ、裕・・・樹・・・?」
思わず、タクトは言った。
撃たれた、仲間の名を。
――――――――裕樹が最後に見たのは、記憶の中の雪だった。
白い、白い、果てしない、雪だった・・・・・・・・・