第三十六章「天使の終焉」

 

 

 

 

 

 

「くそっ、前に出すぎたか!?」

両手に持った「ハウリングバスターキャノン」と「オメガブラスター」を連射しながら、タクトは思わず呻いた。

あまりにも大激戦なため、裕樹たちとはぐれ、ミルフィーユとやって来るヴァラグスや戦艦を迎撃するので手一杯だった。

今、現状がどうなっているのかさえ、タクトにはわからなかった。

「!タクトさん、エルシオールです!!」

咄嗟に聞こえたミルフィーユの声に反応してレーダーを見ると、確かにエルシオールだった。追いついてきた、といえば聞こえがいいが、やむなしにここまで来た、という意味合いのほうが強いだろう。

だが周囲の敵機が多すぎてこのままでは援護にも行けない。

そう思った刹那、

「タクトさんはエルシオールの援護に行ってください!ここは私が・・・!!」

ミルフィーユが、とんでもないことを言い出した。

 

 

「ミルフィー!?待って、一人じゃ・・・」

その言葉を聞き取るより早く、意識をH.A.L.Oに向ける。

精神部分にまでH.A.L.Oが侵食し、頭が危険信号と言わんばかりに頭痛を巻き起こす。

それを何とか耐え、ミルフィーユは機体を回転させながら、全ての砲口から主砲を放った。

「フルインパクト・ハイパーキャノンッッッ!!!!!!!!!!

周囲の敵を一掃しても、ミルフィーユは攻撃の手を休めることなく、遠方の敵と対峙する。

「タクトさんっっっ!!!!!」

それ以上の言葉は必要なかった。

タクトは彼女を信じて、機体をエルシオールに向ける。

「わかった!ミルフィー、必ず後でっ!!」

互いの無事を信じて、二人はそれぞれの敵に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこだっっ!!」

ヴァイスの駆るラルヴァから放たれたプラズマカノン砲をメテオトリガーはすんでのところで回避する。が、すでに放たれていた「エーテル・シリンダー」を回避することは出来ず、バランサーを撃ち抜かれる。

「ぐっっ!!」

メテオトリガーはそれこそ非常に強力な装甲を持っており、低い出力のビームならそのまま弾くことだって出来る。だが、全ての武装が高出力のラルヴァ相手ではそれも特性を発揮できない。第一、機動性の高いラルヴァと一対一で勝負することに利があるわけではないのだ。

「これで終わりだなっ!!デカイの!!」

そのラルヴァが、真後ろからのリニアレールキャノンを受け、大きく吹き飛ばされる。

そんな芸当が出来るのは、この場において、彼女以外ありえなかった。

「ちとせかい!?」

「フォルテ先輩!!一度エルシオールへ戻ってください!!このままではメテオトリガーが危険です!!」

「・・・了解だ。すぐに戻ってくるから、無理するんじゃないよ!!」

「はい!」

言って、踵を返すメテオトリガーを見送りながら、ちとせはこちらに向き直るラルヴァと対峙する。

(フェイタルアローを受けて、なんともないの・・・?)

改めて、ちとせはラルヴァの装甲の硬さを思い知る。

ラルヴァが一瞬のうちにビームを放つと同時に、ちとせはカロリックレーザーを放ち、大きく旋回した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?あのIG・・・!?」

正樹はヴァニラと共に周囲の敵機を迎撃していたが、レーダーに写る友軍機が一瞬でレーダーから消えたことに驚愕していた。

変わりにやって来たのが、黒ずんだ、まるで破滅をそのまま形にしたような印象を持つIG、ソウルドレイクだった。

その禍々しいほど黒ずんだセフィラムは、正樹でも誰が乗っているのかすぐに理解できた。

正樹はデヴァインソードを構え、迫り来るIGに突撃していく。

「てめぇがジェノスか!!」

「このセフィラム・・・神崎正樹か」

一瞬で側面に移動したソウルドレイクは信じられないほどの速度で手にしたライフル、「オルガキャノン」を高速連射してくる。正樹はなんとかその全てを回避しきるが、信じられない速度で目の前に肉薄したソウルドレイクが連装リニアレールキャノンを放ち、装甲に衝撃を与えながら吹き飛ばしてくる。

さらに追撃にもう一度レールキャノンをグランディウス向けて放ったが、それをイネイブル・ハーベスターの「ゼーバーキャノン」が撃ち防いだ。

「あの紋章機・・・形は違うが、ハーベスターか」

ソウルドレイクが注意をハーベスターに引かれた隙に、正樹は機体を駆って隣接し、対艦刀を全力で振りぬく。

それを逆手に持ったエネルギーサーベル「ダインスレフ」で防がれつつ、ソウルドレイクは距離を取る。

「正樹さん・・・!!」

即座に隣接してナノマシンによる装甲の応急処置をしてくれる。

「ヴァニラ・・・アイツ、ハンパねぇ強さだ。・・・行けるか?」

「問題、ありません」

「よし、なら二対一の条件を生かして、前後から挟み撃ちにするぞ!!」

「・・・はい!!」

即座に左右に分かれた二機。グランディウスは牽制に「エーテル・シリンダー」を展開、ソウルドレイクに対してオールレンジから無数のビームを浴びせた。――――――そのつもりだった。

だが予想に反して、ソウルドレイクは全てのビームを驚異的な反射神経でかわしきった。

「なっ!?」

その隙に背後に回ったイネイブル・ハーベスターがゼーバーキャノン、エイミングレーザーを一斉に放つが、ソウルドレイクはいとも簡単にその全てを避ける。

「教えてやろう。シリンダー兵器とは・・・こう使うのだ!!」

ソウルドレイクの背部から一斉に「ドレイク・シリンダー」が解放される。

正樹もヴァニラも即座に機体を旋回しつつ、回避行動に移ったが、信じられないことが目の前で起きる。

ドレイク・シリンダーから放たれたビームは、なんと屈折しながらこちらの機体を狙ってきたのだ。

そう、「ドレイク・シリンダー」は、そこから放たれるビーム全てが追尾機能を兼ね揃えているのだ。

正樹とヴァニラが驚愕に包まれると同時に、「ドレイク・シリンダー」がグランディウスとイネイブル・ハーベスターを無数に撃ち貫いた。

「うわあぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!!??????????

「きゃあぁぁっっっ!!!!!!!

まさに力ある者が力なき者を叩き潰すかのような行為。それほどまでに、機体性能、パイロットの腕に差があった。

大きく揺さぶられ、全身を強く打った正樹は、気を失いかけたが、ソウルドレイクの次の行動に本能的に意識が元に戻った。

 

ソウルドレイクが、イネイブル・ハーベスターの方を向いている。

 

それだけで、正樹はジェノスが次に何をするのかが瞬間的に理解した。

 

 

 

「さて、ハーベスター。機体の瞬時修理されるのは私にとっても邪魔なのでね・・・」

すでに戦闘続行が不可能なイネイブル・ハーベスターに向けて、ジェノスはソウルドレイクの最大火力を持つ「バニシングブラスター」を容赦なく発射した。

「・・・あ・・・・・・」

目の前に迫る、避けようのない、圧縮されたエネルギーの奔流。

ヴァニラは、本気で死を覚悟した。

 

直後、自分は跡形もなく消滅するはずだった。

けれど。

見慣れた緑色の機体が。

自分の目の前に立ち塞がっているではないか。

 

それが、正樹のグランディウスだと理解するのに、若干時間がかかった。

グランディウスは、あの超高出力のエネルギーの奔流に対して、エーテル・フィールドを展開して防御していた。

自分を、かばって。

「・・・!!正樹さん・・・っっっ!!」

「・・・・・・ッッ・・・・っ・・・!!」

よく聞こえない。

目の前に迫る死の塊を前に、彼の声が、聞こえない。

「・・・ごめ・・・ヴァニラ・・・・・・俺じゃ、・・・ヴァニ・・、しか・・・・助け・・・・れなかっ・・・・・」

最後に聞こえた、正樹の声が。

まるで、一生の別れのように聞こえて。

思わず、ヴァニラは聞き直そうと。

けれど、それよりも先に。

光が自分を飲み込んだ。

 

 

 

バニシングブラスターを防ぎきれず、グランディウスはそのビームの奔流に押しつぶされ、その身を爆散させた。

ただ一つ、幸運だったのは。

正樹は見事にヴァニラを守りきったということだった。

その命を犠牲にして。

 

吹き飛ばされ、小惑星に激突したイネイブル・ハーベスター。

その衝撃で、ヴァニラは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・ザン・ルゥーウェ」

イネイブル・ハーベスターが撃墜されたと勘違いしたジェノスは、ザン・ルゥーウェに通信をつないだ。

「メギョンギルド発射準備に入れ。標準は、敵の旗艦、エルシオールだ」

淡々と、その作業を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っっ!!??この、エネルギー反応は!?」

エルシオールの援護に戻っている途中のタクトは、レーダーが反応した超高エネルギー反応に驚愕する。

要塞に、信じられないほどのエネルギーが集中している。

その照準は、自分たちの艦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵要塞表面に、超高エネルギー反応!!」

「こちらをロックオンしています!!」

ココとアルモの報告に、彩は即座に反応し、指示を飛ばした。

「回避っっ!!急いでっっ!!」

「駄目です!!間に合いませんっっっ!!!!」

ザン・ルゥーウェから、一掃用砲撃兵器「メギョンギルド」が、エルシオール向けて放たれた。

(やられる・・・!!)

彩は刹那にそう思った。

瞬きさえ出来ない一瞬。

視界を白く覆い、エルシオールを焼き尽くすはずだった光は、目の前に割り込んだ赤きIGによって遮られた。

エルシオールの前に立ち塞がり、正面から砲撃兵器を受けたのは、レスターのIG、インペリアル・メガロデユークだった。

 

 

 

 

 

 

その光景を直視していたタクト。同じくブリッジに座るアルモは、声にならない叫びがせりあがっていた。

インペリアル・メガロデュークは、クロノ・プロテクト・フィールドを出力全開で展開し、ただひたすらに「メギョンギルド」の放射を受け続けていた。

すでに半壊しているその機体。

いつ爆発してもおかしくないのに。

この機体に乗る男は。

その全てを理解した上で、エルシオールを守っていた。

「・・・・・・タクト」

様々な機器が警告音を出し続けて、サイレンが鳴り響くコックピットの中で、レスターはポツリと言葉をもらした。

「・・・すまんな。お前との約束・・・守れそうにない」

――――――ずっと、お前の下について支えてやる。

幼い頃に交わした、今まで決して破ったことのない、親友との約束。

その約束も、終わりを告げようとしていた。

「・・・正直、お前と親友で・・・・・・楽し、かっ・・・――――――」

その直後、「メギョンギルド」の砲撃エネルギーがなくなると同時に、赤き機体は、その身を爆発させた。

 

 

 

「う・・・そ・・・・・嘘・・・」

アルモは、目の前で起きた光景を、信じたくなかった。

今、自分の目の前で。

自分の最愛の人が。

その命を、散らした。

「い、や・・・いや・・・嫌・・・・・・嫌ぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!

アルモの泣き叫ぶ声が、エルシオールのブリッジに響いた。

 

 

 

 

 

「あ・・ああ・・・・あああ・・・・・っっっ」

タクトもまた、目の前の光景を、信じたくなかった。

大切な、自分の親友が、今、自分の目の前で。

信じたくなかった。

必死にモニターでその姿を探した。

なのに。

モニターが見つけたのは。

小さな、本当に小さな。

彼の、眼帯だった。

「ッッッッレスタァァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

その存在が、もう戻ってこないと。

その叫びで、認めてしまった。

悲しみにくれるタクトの目は、ザン・ルゥーウェに向けられる。

そこに写る、黒く禍々しいIG。

本能的に、理解する。

ヤツが、撃つように差し向けた、と。

次の瞬間には、タクトは機体をそのIGに向けていた。

「ジェノスゥゥゥゥゥゥッッッッッ!!!!!!!!!!!!!

何故か、その名を呼んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウイングバスター・パラディンがこちらに迫る数秒前、ジェノスは再度ザン・ルゥーウェと通信を繋げていた。

「次の発射を急げ。次はターゲット変更、要塞側面にいるレジスタンスのIG部隊をなぎ払え」

この部隊こそ、要塞を破壊する特殊装備を持ったIG部隊だった。

『ですが、次を発射すると、第三射までかなりの時間を必要としますが!?』

「構わん、撃て。そのころには・・・・・・ケリをつけておこう!!」

目の前に迫ってきたウイングバスター・パラディンに、ジェノスは対峙した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・エルシオールは、無事なのかい・・・?」

エルシオールへ帰艦途中のフォルテは、機体をよろめかせながらも、なんとか後少しというところまで来ていた。

少しだけ、気が抜けた。

すると、少しは他のことが考えられるようになってきた。

このような大激戦、今まで経験したことがない。

果たして、他のみんなは無事だろうか?

その矢先、幸か不幸か、メテオトリガーのレーダーが十隻近い敵艦隊を発見する。

「チッ!!なんてタイミングだい!!迎撃部隊は・・・」

そこで気がついた。

そこは、今のエルシオールにとってまさに死角だったのだ。

丁度、迎撃部隊が展開していない所。

このままこの艦隊の集中砲撃を受けては、エルシオールは間違いなく、沈む。

次の瞬間には、フォルテは機体をその艦隊に向けていた。

 

自分でも馬鹿げたことだというのは分かる。

もしかしたら、連絡すれば迎撃部隊は間に合うのかのしれない。

けれど、今のフォルテの直感は、そう言っていなかった。

――――――自分が止めなければ、エルシオールは沈む。

ただ、それだけだった。

その直感を信じて、フォルテは機体を特攻させようとしていた。

 

途端、何故か目元が熱くなった。

何故かは、わかる。

自分は、このエンジェル隊と共に過ごせて、本当に幸せだった。

幼い頃の記憶、傷を癒してくれた。

だから、感謝したい。

自分が、あの艦を守れるという立場に。

「・・・最後のパーティーだ。派手に行こうか!メテオトリガーッッ!!」

フォルテは、全ての武装を解き放った。

 

 

 

「艦長!!大型戦闘機が一機、こちらに接近しています!!」

「大型戦闘機、すでに艦3隻を撃墜!!なおも止まりません!!」

勢いを止めようとしないメテオトリガーに、艦隊旗艦のブリッジに座るオペレーターたちは、恐怖に包まれた。

「ええいっ!!怯むな!!全砲門解放!!あの戦闘機に集中させろっっ!!」

 

 

 

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

全ての武装を撒き散らしながら、メテオトリガーただひたすらに突撃する。

その間、無数のビームやミサイルが機体に突き刺さり、警告音を鳴らして機体が悲鳴をあげる。

それすら振り切って、フォルテは一番奥にいる旗艦目指して、ただ突き進んでいく。

「あと、少しだ・・・。もう少し、持ちこたえておくれ・・・!!」

フルオートで全ての武装を放ち続ける「オーバーストライクバースト」を放ち続ける。

もうここまで来たら、機体が撃ち落とされるか、限界が来て爆発するかのどちらかである。

「7・・・8・・・っっ!!くっ・・・!!9・・・!!」

僅か一隻。

なのに。

ここで、メテオトリガーは全ての弾薬を撃ちつくした。

けれど、その特攻は止めない。

必ず、全てを落とすと決めたから。

 

 

最後に、フォルテはビームに貫かれながら。

メテオトリガーを、敵艦のブリッジへと、特攻させた。

 

 

 

 

 

その敵艦と共に。

メテオトリガーは、爆炎につつまれ、その身が砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!しまったっ!?」

今だなおラルヴァと激戦を続けていたちとせは、ほんの一瞬の隙を突かれ、ラルヴァに背後を取られる。

「コイツ・・・!!いい加減に・・・!!」

放ったプラズマカノン砲は、なんともタイミングよく飛んできた極太ビームに完全に相殺された。

「くそっ!!今度はなんだ!?」

やって来たのはギャラクシーエンジェルのエースと言われるあの機体。アルカナム・ラッキースターだった。

「ちとせ!!」

「ミルフィー先輩!!」

一声会話した直後に、二機の紋章機は周囲を飛び交うようにレーザーファランクスを放ち、ラルヴァを翻弄する。

回避が追いつかず仕方なしにラルヴァがエーテル・フィールドを展開した瞬間、ミルフィーユはチャージを済ませておいた「ハイパーキャノン・カスタム」をバリア越しに放つ。

さすがのラルヴァもこの高出力のビームの奔流を前に、全てを防ぎきれず、ビームを受けながら弾き飛ばされる。その刹那の隙も逃さずに、ちとせはコックピット狙って「フェイタル・アロー」を発射、見事に直撃する。

「ぐっ・・・!!コノヤロォォォッッッ!!!!」

ヴァイスはあり得ない速度で急速に体制を立て直したが、ミルフィーユは更にその先を行き、凌駕した。

「・・・・・・っっっ!!!!」

アルカナム・ラッキースターの全ての砲口が、ラルヴァに対して放たれた。

「フルインパクト・ハイパーキャノンッッッ!!!!!!!!!

即座に再びエーテル・フィールドを展開するが、艦隊すらも消し飛ばす火力の前に、ラルヴァはエーテル・フィールドを撃ち破られ、そのまま左足も吹き飛ばした。

「・・・っっくそっ!!!こいつ等、いい加減にっっっ!!!」

近くにいるシャープシューター・レイに向かって、最短距離で迫る。

が、ちとせがそれを予測出来ないわけがなった。

強烈な光が砲身に集中する。

わずか一瞬のうちに、ちとせは完全にイメージを完成させた。

 

――――――貫けっっっ!!!――――――

 

イグザクト・ペネトレイト(全てを貫く者)ッッッッッ!!!!!!!!!!!!

その全てを貫く、超神速の弾丸が放たれる刹那。

ヴァイスは、その身に宿る聖刻を発動させた。

 

――――――命泉。

 

直後、確実に中心を貫くはずだった弾丸は、何故か(・・・)ラルヴァの片足を撃ち貫いた。

「「えっっ!!??」」

ミルフィーユ、ちとせとて、まさか外れるとは思っても見なかった。

直後、何故か(・・・)シャープシューター・レイの真上に存在していたラルヴァが、問答無用でシャープシューター・レイのコックピットをレーザーサーベルで深々と貫いた。

 

 

その不自然すぎる動き。

レーザーサーベルが迫るその瞬間まで、ちとせはそれがなんだったのか、理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ちとせぇぇぇぇぇっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!

思わず、ミルフィーユの叫びがこだまする。

その直後。

彼女に泣かせてあげる暇さえ与えずに、ラルヴァはアルカナム・ラッキースターにすでに肉薄し、スラスター、バランサーを破壊しながら吹き飛ばす。

「きゃっ!?」

直後、回避不能の「エーテル・シリンダー」のビームが、アルカナム・ラッキースターを貫いた。――――――かに見えた。

届くはずだった「エーテル・シリンダー」のビームは、後方からの「ホーリィ・シリンダー」によって全てを相殺された。

即座にミルフィーユの前に躍り出る機体、ヴァナディース。

「ミルフィー!!大丈夫!?」

「あ・・・美奈、さん」

とっさに、「姉さん」と付け加えるのを忘れてしまった。今はどうでもよかったが。

「ここは私にまかせて、ミルフィーはすぐに下がって!!そのままじゃ危険だからっっ!!」

モニターに、ミルフィーユは力なく頷き、機体を後退させた。

 

 

 

「さて・・・」

美奈は改めてラルヴァと対峙する。

「・・・覚悟はいいわね」

その言葉は、美奈がほとんど感情として出さない、怒りの表れだった。

「来いよ、美奈。今度こそ、決着をつけてやる!!」

美奈の瞳の中で6つの結晶が収束し、無数の光の粒子と共に弾け、解放(リバレート)した。

 

「行くわよ、ヴァイス」

静かに言い放ち、美奈はヴァナディースを加速させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、タクトはジェノス相手に苦戦を強いられていた。

一斉に放たれる「ドレイク・シリンダー」は自分のEDENの適応性を超えるほどの複雑さで、放たれるたびに回避するので精一杯だった。

こちらが反撃に移る暇を与えず、6連装の対艦ミサイルが一斉に放たれ、タクトはそれを「フルフラット」で全て迎撃する。が、その次の瞬間にはライフルも含めたソウルドレイクのシリンダー攻撃により、一方的に攻められ続けている。

けど、このままにさせ続けるわけがない。

相手のシリンダーに適応できないのなら。

回避と攻撃を同時に行うことに、適応させる!!

 

 

 

放たれた「ドレイク・シリンダー」の合間に撃ってくるライフルに対して、それを回避しながら盾で防ぎ、そのまま投げつける。

一瞬、ソウルドレイクがトリッキーな攻撃に戸惑った隙に、その盾を狙って「ハウリングバスターキャノン」を放つ。放たれたビームはアンチビームコーティングされた盾を反射、ソウルドレイクを襲う。

これを危ういところで避けた先に、ウイングバスター・パラディンはリニアレールキャノンを放った。

あまりにも急激に攻撃転換した動きは、ソウルドレイクの「ドレイク・シリンダー」を二つ撃ち落とした。

だが、それまでだ。

タクトの刹那の時間に完成させた戦略でも、ソウルドレイクに攻撃を当てることさえ出来なかった。

直後、迫るソウルドレイクの前に、光輝く無数のビームが行く先を遮った。

「っ!!」

「えっ・・・?」

現れた、その姿。

ラストクルセイダーは、ソウルドレイクに正面から対峙した。

「裕、樹・・・?」

「ここは俺が引き受ける。タクトは・・・・・・ミルフィーの元へ行ってやってくれ」

それだけ言って、裕樹は機体を加速させた。

視界の端で、ウイングバスター・パラディンが機体を返すのが見えた。

裕樹の瞳の奥で6つの結晶が収束し、無数の光の粒子と共に弾け、解放(リバレート)した。

 

互いにヴァレスティセイバー、ダインスレフをスラスター全開でぶつけ合う。

「ようやくか、裕樹!!」

「ジェノス・・・。いい加減、ケリをつけてやる・・・っっっ!!!」

その身に宿る、力を解放して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕樹とジェノス。美奈とヴァイスの、最後の死闘が開始された。