第四十章「End of the World

 

 

 

 

 

 

爆発的な速度で加速する中、裕樹は瞬時に聖刻を発動。再び世界と同化を始める。

存在の確定を行わなければならない。

聖刻を通じて世界は自分に、自分が世界へと侵食される。

ああ、何か直感的なこの世界の防衛反応を感知した。

この世界の自分自身が、こちらにやって来るような・・・

一気に世界との障壁を打ち破り、世界に叩き込む。

この世界では、俺たちが優先される。

と、この世界の法則に刻み込む。

途端、直感的に通じ合っていた何かが消え去る。

どうやら、この世界の自分たちを閉鎖空間に送ることに成功したようだ。

「・・・裕樹さん、大丈夫、ですか・・・?」

「・・・っっ!!・・・ああ、なんとか」

ふらつく意識を気力で支え込む。

「・・・それより、行こうヴァニラ。急がないと・・・!!」

「はい・・・行きます・・・!!」

二機は、更に臨界点にまで「エスペランス」、「エスペランサ」のブースターを噴射。強烈な速度で、激戦の中へ突撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔だっっ!!どけぇぇぇぇっっっ!!!」

裕樹の瞳の奥で6つの結晶が収束し、無数の光の粒子と共に弾け、解放(リバレート)した。

左右の大型ハイパーロング・プラズマブレードを展開、そのまま回転し、周囲の敵機を一気に斬り飛ばす。

エスペランサを装備したヴァニラも、対艦ミサイルのポッドを全て解放。無数のミサイルが相手敵機を一気に爆煙に包み込んだ。

それでも怯む敵機には見向きもせず、二機はただ先を急いだ。

(間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合えっっっっ!!!!!!)

(間に合って、間に合って、間に合って、間に合って、間に合ってっっ!!!)

目の前の艦隊を、裕樹は(ハイパー)(ロング)プラズマブレードで次々に斬撃で吹き飛ばし、残る艦を、ヴァニラがすれ違いざまに斬り飛ばしていく。

「・・・!!裕樹さん・・・!!」

ヴァニラの声に反応して前方に目をやると、50機を越える数のヴァラグス、艦隊が表示されている。

「ここで止まれるかっっ!!ぶち破るぞ!ヴァニラッッ!!」

「問題・・・ありません・・・っっっ!!!」

二機は上下に並んで、前方の“空間そのもの”をロックオンする。

そこから、全ての武装を解放、「全弾発射(フルフラット)」を放った。

タクトが扱うような正確にロックオンして放つフルフラットではなく、向いている方向に問答無用で怪物的な武装と火力を誇る、「エスペランス」と「エスペランサ」の全ての武装を解き放つ、力技。

一瞬にして瓦礫の山と化した敵部隊を、二機はもう見向きもせずにすり抜けていった。

 

 

 

 

 

「いた・・・!!カンフーマスターッッ!!」

カンフーマスターをかなり先の前方で発見する。と、カンフーマスターは「スパイラルドライブ」を発動した、その先には、京介のエンド・オブ・アークがいた。

(やばいっっっ!!!)

このままでは、まずい。

この先のカンフーマスターの結末は・・・。

目の奥が熱くなる。

それだけは、

それだけはさせないっっ!!

「裕樹さん!!私はエルシオールの周囲を・・・!!」

「まかせた!ヴァニラ!!」

二機は、一時的に別れた。

 

 

 

 

 

 

エンド・オブ・アークは放たれた「アンカークロー」をその場で回転するように刃を振るい、弾いた。

「えっ!?」

思わずランファが驚愕の声をあげる。

次の瞬間には、エンド・オブ・アークがカンフーマスターに隣接し、

 

 

 

 

 

――――――大出力の超大型プラズマブレードが、「アンカークロー」のワイヤーごとエンド・オブ・アークの両腕を斬り飛ばした。

 

 

 

 

 

「「なっ!?」」

思わず戸惑った二機。

その一瞬のうちに、ラストクルセイダーは「エスペランス」の全ての武装を展開したまま、斬撃と射撃のコンビネーション技で、エンド・オブ・アークを一瞬にしてねじ伏せた。

「うわあああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!!!!!!!??????????

直後、“自分たちの世界では、この後に京介と戦うミント”も傍へやってきた。

「あ、ありがと裕樹・・・けど、それ・・・?」

ランファは驚きながらもモニターに写る裕樹を直視する。

「裕樹さん・・・?どうかされたのですか?」

――――――とにかく、この二人は助けることができた。

――――――時間の復元力が来るまでに、終わらせる!!

「ゴメン二人共!!後で説明するから、エルシオールの援護に回ってくれ!!頼むっっ!!」

その有無を言わさぬ迫力に、二人は思わず頷く。

それを見届けた瞬間、裕樹は再び機体を一気に加速させた。

(次は・・・エルシオールに「メギョンギルド」の第一射が放たれる・・・!!)

ならば、その要塞そのものを破壊してしまえばいい。

そんなこと、たとえ「エスペランス」を装備していても不可能だ。

が、こちらには最後の切り札がある。

そう、「全てを斬り裂く者」が。

 

 

 

 

 

 

 

機体を加速させるヴァニラのレーダーに、メテオトリガーが感知される。

(・・・!!いけない・・・!!)

即座にスラスターを全開にする。

メテオトリガーの先には、無数の艦隊の姿があったから。

 

 

 

 

 

「・・・最後のパーティーだ!!派手にいこうか!!メテオトリガーッッ!!!」

フォルテは死ぬ覚悟で、全ての武装を解放した。

――――――その直後。

メテオトリガーの武装を遥かに超える大火力の砲火が、目の前の艦隊の半数をなぎ倒した。

「なっ!?」

驚愕した直後、目の前を見慣れぬ武装を装備したイネイブル・ハーベスターが通りぬけた。

「ヴァニラ!?一体・・・」

「・・・フォルテさん、エルシオールへ、戻ってください・・・!!」

返事を待たずに、ヴァニラはH・Lプラズマブレードを一気に振り下ろし、並み居る艦隊を次々に斬り飛ばしていく。

その圧倒的な戦闘力に、フォルテはしばらく目を奪われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザン・ルゥーウェの迎撃砲台を、連装収束火線砲「ツインバーストキャノン」で黙らせてから、ラストクルセイダーはエスペランスと分離する。

直後、「クォドラティック・クリスタル」の出力が上昇する。

これが、エスペランスのみに搭載されている「キークリスタル・システム」の恩恵である。

今なら、通常では不可能な高出力な“あの武装”を展開できる。

ラストクルセイダーは「セイクリッドティア」を2本の「ヴァレスティセイバー」と掛け合わせ、「エターナル・ブレード」を正面に構える。

「ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

直後、ラストクルセイダーに「セラフィックフェザー」が出現し、構えたダブルセイバーに更なる光が集中する。

エターナル・ブレードがそのあまりにも常識外れの出力から、コロニーをも容易く切断する、ラストクルセイダー最強の武装、『ファイナルブレイバー(全てを斬り裂く者)』が発動する。

裕樹はみるからにセフィラムが奪われていく感覚に襲われるが、歯を食いしばり必死に耐え、スロットを全開に踏み込んだ。

目前に迫る機動要塞を前に、ラストクルセイダーは「ファイナルブレイバー」を高々と振り上げた。展開していた刃も、それに合わせるかのように、一気に軽く200mを越える長さにまで伸びていく。

「これで・・・」

決意と共に、裕樹は「ファイナルブレイバー」を、

「終わりだぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

全力で振り下ろした。

 

 

 

鍛え挙げられたサーベルが、バターを斬るが如く、

機動要塞「ザン・ルゥーウェ」は、一瞬で真っ二つに切断された。

間違いなく、この戦場にいる全員が驚愕したのは、間違いなかった。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・。・・・っっ・・・次だ・・・!!」

裕樹は休む間もなく、ラストクルセイダーを再びエスペランスと合体、機体を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イグザクト・ペネトレイト(全てを貫く者)ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!

全てを貫く、超神速の弾丸は、何故かラルヴァの片足を撃ち抜いた。

「「えっっ!!??」」

ミルフィーユ、ちとせが驚愕の声を上げた刹那のうちに、ラルヴァはシャープシューター・レイの真上に移動した。

 

――――――直後、ラルヴァに長射程ビームが直撃した。

 

「なっ!?」

「「えっっ!!??」」

ヴァイス、ミルフィーユ、ちとせは、今の一瞬に何が起きたのか理解できなかった。

その直後に、見慣れぬ巨大武装を装備した、イネイブル・ハーベスターの姿が映った。

「ヴァニラ!?」

「ヴァニラ先輩!?その武装は・・・!?」

「あれは・・・!?」

怯んでいるその隙に、ヴァニラは収束火線砲、長射程ビーム砲、イネイブル・ハーベスター自身の武装、ゼーバーキャノンを一斉にラルヴァに放つ。

ラルヴァが大きく旋回した先に、12連装ファングスティンガー対艦ミサイルのポッドを全解放。無数のミサイルを浴びせる。それすらプラズマカノンで迎撃した先に、H・Lプラズマブレードを左で横一文字に振りぬき、立て続けに右で振り下ろし、ラルヴァの頭部から右腕を一気に斬り飛ばした。

「がぁっっ!?何が・・・っっ!?」

その一瞬の隙すら逃さず、後方から急速に接近するラストクルセイダー。

左右のH・Lプラズマブレードを正面に構え、バレルロールしながら突撃、そのまま激突する。

「っっっっ!!!!!ラ、ラストクルセイダー!?」

「闇へ還れ。ここは、貴様が居ていい世界ではないっっ!!!」

零距離で螺旋の突撃を与えた状態で、H・Lプラズマブレードを容赦なく展開。

ラルヴァはなす術もなく、完全に粉砕した。

 

 

 

「後は・・・ヤツだけだ!!ヴァニラ!後は頼む!!」

返事を待たずに、裕樹は更に機体を返した。

その先にいる、漆黒の機体目指して。

 

残された三人は、しばらく呆然としていた。

が、ミルフィーユがその沈黙を破った。

「ヴァニラ、ありがとねっ!・・・けど、何?それ?」

「・・・・・・」

「ヴァニラ先輩?」

「後で・・・説明します。必ず。――――――お二人はエルシオールへ行ってください・・・!!」

ヴァニラの今まで見ることのなかったハッキリとした決意の言葉に、二人は驚き、頷くしかなかった。

ヴァニラは即座に機体を返した。裕樹を援護するのではなく、時間の復元力から、助けた彼等を守らなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウルドレイクから展開された「ドレイク・シリンダー」が、正樹の駆るグランディウスを容赦なく撃ち抜いた。

「うわぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!!!!!!!?????????

吹き飛ばされたグランディウスに、ソウルドレイクが迫る。

(くそっっ!!間に合わない!?)

直後、二機の間に虹色のビームが放たれ、両者を引き離した。

(!?)

見間違いようもない。

あれは、ヴァナディースの「ライジングノヴァ」だ。

「正樹!!大丈夫!?」

「美奈・・・?裕樹は!?」

「わからない・・・気がついたら、姿が見えなくって・・・」

直後、ヴァナディースはソウルドレイクに向き直った。

 

 

(・・・っっ!?まだ美奈とジェノスが戦うには、早すぎるはず・・・!?)

直後、裕樹のもっとも恐れていた事実が頭を掠める。

(世界意志の・・・時間の復元力!?もうなのか!?)

歴史を、出来事を、別の形で再現されてしまう。

それだけは、させられない。

 

 

 

ヴァナディースとソウルドレイクが、それぞれシリンダーを展開し、周囲を飛び交っているその間に、エスペランスから放たれた無数の砲火が、先程のように両機を引き離した。

「えっ!?」

「なっ!?」

ほぼ同時に美奈とジェノスはビームの飛んできた方向を向く。

そこには、見慣れぬ武装を装備したラストクルセイダーの姿があった。

二人が驚愕の声を上げた次の瞬間には、裕樹は2本のH・Lプラズマブレードをソウルドレイクに振り下ろし、その先に収束火線砲を放つ。

立て続けの攻撃を、ソウルドレイクは危ういところでかわし、「ドレイク・シリンダー」をこちらにむけるが、完全に先読みし、腰部の「ハイパーベロシティ」で3つのシリンダーを破壊する。

「なに・・・っ!?」

(次・・・バニシングブラスターか!!)

右のH・Lプラズマブレードだけを展開。直後に放たれた「バニシングブラスター」を軌道ずらしだけで回避と同時に、ブレードを振り下ろす。その予測できなかった攻撃に、ソウルドレイクは更に2つのシリンダー、ライフルを斬り潰される。

「何故だ!?何故こうも攻撃を先読みされる!?」

直後、エスペランスのミサイルポッドを全て解放し、ソウルドレイクにミサイルの雨を向かわせる。

当然、それをシリンダーとマシンキャノンで迎撃して、――――――目の前にラストクルセイダーが現れ、

爆煙を抜けた。――――――直後にはヴァレスティセイバーで両腕を切断。

驚いた時には、――――――容赦なく蹴り飛ばされた。

「なっ!?」

更に信じられない速度で迫るラストクルセイダーに、残る全てのシリンダーを向けた。――――――瞬間、「ヴァレスティ・シリンダー」で全てを撃ち落とされた。

ラストクルセイダーは体制を崩したソウルドレイクの中央に、両手のヴァレスティセイバーを突き刺し、そのまま左右に振り抜き、抉れた部分に、腰部のリニアレーリキャノンを向けた。

「っっっ!!!!」

「闇へ還れ。ここは、貴様が居ていい世界ではないっっっ!!!!」

零距離で放たれた弾丸は、ソウルドレイクを内部から破壊、その身を完全に粉砕させた。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・っっ!!」

荒い息を落ち着かせ、呼吸を整えつつ、ラストクルセイダーは再度、エスペランスと合体した。

「裕樹、助かったぜ」

「もうっ!どこにいってたの!?・・・というか、それ、エスペランスだよね?・・・なんで?」

美奈の疑問が、痛い。

けれど、それに構っている暇はない。

こうしている間にも、“時間の復元力”は迫ってきているのだ。

「・・・とにかく、エルシオールの所に行こう。そこで・・・」

返事を待たず、裕樹は機体をエルシオールへ向ける。

美奈と正樹も、それにならって裕樹の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

大激戦だったザン・ルゥーウェ戦は、

未来を知り、それを先読みした、

たった二人によって、

終結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「未来から・・・来た?」

この世界の裕樹とヴァニラ以外をエルシオールの周囲に集め、全員に説明した。

そして返ってきたタクトの言葉がこれだった。

「馬鹿も休み休み言え。そんなわけが・・・」

「・・・なら、美奈」

「・・・!!」

言われて、思わずビクッしたのがわかる。

「美奈は・・・わかってるよな?」

「・・・・・・」

思わず、押し黙る。

言ってしまえば、それを事実と認めてしまうようで、

言いたくなかった。

「美奈・・・頼む」

けれど、こんな声で言われたら、言うしかない。

全員が自分を見ているのを理解しつつ、美奈はハッキリと説明した。

「・・・今、裕樹とヴァニラが装備している、追加武装・・・。それ、どう考えてもこの戦いには間に合わなかったものなの・・・」

「「「「「「「「・・・・・・え・・・?」」」」」」」」

「だから、この時間に、この兵器が、存在するわけがないの・・・」

全員が、信じられないといった顔をする。

「・・・じゃあ、裕樹とヴァニラは、未来から何をしにきたんだ・・・?」

裕樹とヴァニラは思わず、モニター越しに目を合わせる。

お互い、悲しい顔をしているのを見てから、裕樹が説明した。

「・・・本当は、みんな・・・この戦いで死ぬはずだったんだ」

空気が、止まった気がした。

みんな、否定したかったが、裕樹がこの場面で嘘をつくなど、ありえなかった。

だから、それが嫌でも真実なのだと、理解してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

およそ、10分程、話した頃に、裕樹がかつてない、世界の気配を感じる。

(時間の復元力が・・・来た!?)

もう、時間はない。

裕樹は手元の時流環と世交環に意識を集中しだした。

「裕樹!?」

「・・・正樹、タクト、レスター、ミルフィー、ランファ、ミント、フォルテ、ちとせ。詳しいことは、向こうの彩に聞いてくれ。――――――もう時間がない。世界と時間を、越えるぞ」

タクトたちが止めるのも聞かず、裕樹はそのまま聖刻を発動、――――――危険

自身を、世界と同化させていく。――――――限界、危険

「裕樹っ!!」

美奈の顔が、モニターに映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、会えないと思っていた。

その存在が、大事で、大切で、愛しくて、

彼女が、自分の全てだった。

 

 

 

 

 

けれど、

 

 

 

 

 

もう、そんな昔に戻ることは出来ない。

自分が、世界の罪人だって、思い出したから。

その声に呼ばれることすら、許されないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――生きて。

 

 

 

前世の彼女は、こう言った。

死にゆくその体で、

二人でなければ、救われないと、彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

 

それでも、よかった。

自分の知らない所で、美奈はずっと泣いていた。

一人で、ずっと泣いていたんだ。

健治も、時雨も、それがわかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、美奈が泣かないのなら、

美奈が笑ってくれるのなら、

彼等の罪、その全てを引き受けてよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君がいなければ、何もなかった。

君がいてくれたから、笑うことができた。

言葉に出来ないほど、感謝してる。

 

 

 

だから、

 

 

 

それも、もう終わり。

これ以上、何かを望むのは、もう許されない。

だから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「裕樹・・・?」

「・・・今まで、ありがとう・・・」

思わず、泣いていた。

いくら望んでも、もう届く所にはいられないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――自分を護ると、言ってくれた少女。

      その未来を、消すわけにはいかないから。

      いつか、きっと、少女が、

      強く、笑ってくれるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「太陽みたいに・・・明るくて、暖かくて、優しかった・・・」

「裕樹、どうして・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして、泣いているの?

どうして、笑っているの?

どうして、離れていくの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・だから・・・」

泣くのを我慢するのは、無理だった。

離れたくない。

傍にいたい。

ずっと、傍にいてほしい。

許されるのなら、ただ、それだけを。

 

 

 

でも、出来ない。

傍にいると、この聖刻が、彼女の魂を奪おうとするから。

彼女を失うなんて、もう嫌だった。

 

 

 

「・・・だから、美奈・・・」

 

 

 

 

救いを求めるのは、無理だ。

せめて、君だけは、

生きていてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ありがとう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・さよう、なら・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、

美奈の聖刻が、裕樹の聖刻と共鳴、

彼が、罪人である意味が、全て流れ込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って裕樹!!」

 

 

 

そんな言葉、ひとつも望んでなかった。

すでに、裕樹は時流環と世交環を発動し、世界と同化していた。

 

 

 

「わかったの!!私、わかったから!!」

 

 

 

美奈たちの存在を、未来へ。

世界の境界を越えて。

 

 

 

「だからっっ!!裕樹!!諦めないでっっ!!」

 

 

 

美奈の泣き声の混ざる叫び。

また、彼女を泣かせてしまった。

 

 

 

「私が!!必ず、私が・・・!!」

 

 

 

その存在が、この可能性の世界から消えていく。

確立された、現実の世界へ。

 

 

 

「・・・っっ!!絶対に!!裕樹を・・・っっっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――助けるから・・・救ってみせるからっっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後にその言葉を聞き届け、彼らはこの世界から、消えた。

途端、可能性で作られたこの世界が崩壊していく。

時間を元に戻そうとする作用が通用しなくなるほどに、自分たちはこの世界の流れをムチャクチャにした。

文字通り、世界を潰した。

 

 

 

そして、裕樹とヴァニラは、

閉鎖空間へと、運ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・生きて、美奈。それ以上、何も望まない。・・・・・・せめて、君だけは・・・」

裕樹は泣きながら、

仲間と、

何より大切な美奈に、

 

 

 

 

 

 

最後の別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

読んだ方によっては感じる方もいると思いますが、・・・・・・戦闘シーン、あっけないと言えばあっけないですよね。まぁ、正直な話、長くしすぎるとみなさんが飽きると思ったのですよ。一度やった戦闘だし。

裕樹とヴァニラが異様に強いのは、次に何が起こるかが、ほぼわかっていたからです。一応、特訓の成果もありますし、エスペランスとエスペランサが強すぎる、というのも入ってます。

さて、次回でついに第一部最終章です。哀愁を漂わせるのは、終わってからということにします。

それでは、第一部、最後にもう少しだけお付き合いください。