第十一章「破滅を告げる者」

 

 

 

 

 

 

EDEN本星、スカイパレスのちょうど反対に位置するポイントにエルシオーネは侵攻し、即座に二機のレイレックス・ノヴァが出撃した。

AGであるレイレックスを強化したもので、サイズは変わらないが、火力面はもちろん機動性も大きく向上しており、予想以上に滑らかな動きで動いてくれる。

ほどなく前方に接近する機影を確認し、みさきと心斗は武装を構えた。

こちらの侵攻を知って出てきた、EDENの地上戦艦とIG部隊だ。どちらかというと軍事力についてはトランスバールから流用しているのかレガータ、ゼン、バルキサスなど、見知ったIGが多い。

と、EDEN軍の遠距離砲撃が発射されたが、二機のレイレックス・ノヴァは落ち着いてリフレクターを展開して防ぐ。続いてIGからの攻撃も放たれたが、予想を上回る機動性で悠々と回避し、反撃に転じる。

IGが密集しているところに全身から放たれるビームを発射、それだけで直線状のIGと戦艦を一撃で吹き飛ばした。

二機のレイレックス・ノヴァは数発、武装を放っただけで、あらかたの防衛軍を壊滅させていた。

建物を焼き尽くし、周囲には機体の残骸や瓦礫しか残らなかった。

みさきは、自分がこの世に地獄を解き放っていることに気づき、戦慄を覚えた。

それと同時に、祈った。

誰か、止めて欲しい。自分ではどうすることもできない、自分を。

誰か・・・・・・

けれど、みさきは確信していた。

きっと、あの人は来てくれる。

誰より、何より大切な人、タクト・マイヤーズ。

あの人に殺されるなら、本望だった。

みさきはそう信じて疑わなかった。

それが、みさきのたった一つの意識だとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一、第二防衛軍、壊滅です!!まるで歯が立ちません!!」

「敵軍侵攻予測時間、およそ4時間!!」

EDEN、スカイパレス通信本部ではまさにパニックだった。

元々、EDENの人々は長く戦いから離れていたために、軍備力が弱く、咄嗟の対処が出来ない。

「トランスバール・・・・・・エルシオールに連絡は!?」

「すでに白き月に応援要請はしています!!エルシオールとエンジェル隊はおよそ一時間後に到着とのことです!!」

「一時間・・・!?それじゃ、それまでどうすることも・・・・・・」

聞き乱れる報告に、ルシャーティは絶望に捕らわれそうになる。

確かにスカイパレス到着までは時間があるものの、それまでの侵攻された都市は全て壊滅してしまう。

関係のないEDENの民がいわれの無い虐殺を受けるなど、あってはならないことなのに。

「・・・・・・!?なんだ・・・ハッキング!?」

「どうしました!?」

突然、一つの通信機関とモニターにノイズが走り、無理やり通信接続を実行される。

直後、ルシャーティにとって見覚えのある顔がモニターに表示された。

『ルシャーティ!!』

「あなたは・・・裕樹さん・・・!?どうして・・・」

トランスバールと敵対しているのに、と付け加える前に裕樹が遮った。

『話は後だ!!これよりヴェインスレイはEDEN防衛軍を支援する!!』

「・・・・・・!!―――ありがとうございます・・・!!」

『・・・と、エルシオールが来たら伝えてくれ』

「なんと・・・?」

『・・・今回だけは、共同戦線を張ってくれ。・・・って』

一方的に通信は終わり、EDENの人々は戸惑いを見せた。

だが、ルシャーティだけは迷わなかった。

「・・・彼の言うとおりにします!!彼らの戦艦認識をアンノウンから友軍に切り替えてください!!」

「ルシャーティ殿・・・。―――・・・わかりました!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェインスレイは大気圏突入をしつつ、即座に出撃できるように主だったパイロットは格納庫に集まっていた。

「今回は大気圏内戦闘だ。だからヴァニラはもちろんだけど、今回はちとせも出撃を控えてくれ」

「私も、ですか?」

少し不服そうに答えるちとせ。だが今回は我慢してもらわないと困る。

「大気圏内だとシャープシューターはあまりに大きすぎる。それに相手はAGだ。的にされるとマズイだろ?」

至極まともな理由に、ちとせは素直に頷いた。

と、その後ろから以外な人物が名乗り出た。

「・・・裕樹さん、私も・・・行きますわ」

「ミント・・・?」

「え・・・なんで!?」

裕樹以上に京介は過敏に反応する。

それはともかくとして、ミントは解っているのだろうか。

今ここで出撃するということが、どういうことを意味するのか。

「確かに、私はヴェインスレイには所属してませんし、正規のクルーでもありませんけど・・・ほうっておけませんわ」

「気持ちは嬉しいけど・・・だけど、エルシオールも必ず来るぞ。そしたらどうする?」

そう、ミントは今、エルシオールから見れば捕虜だと思われている状況だ。そう思われているのに、ミントがヴェインスレイと協力して戦っているのを目撃されると、間違いなくヴェインスレイに寝返ったと思われてしまう。

それはつまり、ミントがエンジェル隊としての帰る場所を無くしてしまうことを意味する。裕樹たちにしたら、それだけは避けたいことなのだ。

けど、当のミントは実にケロっとした顔で答えた。

「問題ありませんわ。今の強化されたトリックマスターのレーダーなら、エルシオールの索敵範囲外からエルシオールを探知できますもの」

「つまり、エルシオールが来るまでは手伝ってくれるのか?」

「そういうことですわ」

なんていうか、ミントはやっぱりミントだった。

ちゃっかりしてるというか、なんというか・・・まぁ、それが彼女の魅力なのだが。

「よし!じゃあみんな行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

『発信シークエンス、開始します。カタパルト、射出デッキ接続。エンゲージ確認。システム、オールグリーン。ラストクルセイダー、ヴァナディース、発進どうぞ!』

「行くぞ、美奈」

「うん」

「朝倉裕樹、ラストクルセイダー、行くぞ!!」

「水樹美奈、ヴァナディース、行きます!!」

二機が発進後、即座に京介とミントの機体も運ばれていく。

「ミント、無理はしないで」

「京介さんこそ。気をつけてくださいませ」

二人は一瞬笑いかけ、即座に発進する。

「氷川京介、ゼロバスター・カスタム、行きます!!」

「ミント・ブラマンシュ、テフラ・トリックマスター(知将の策略師)、行きますわ!!」

淡い水色と、赤い装甲色を持つ、ミントの新しき力が発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

命令されるがままに、みさきは更に都市を焼き尽くしていた。防衛の軍など本当に虫程度の邪魔にしかならない。

(これで・・・一体、何人の人が死んだのかな・・・)

ボーッとしながら思った。

何故か、段々と感情と考えが麻痺していった。命令、これは命令なのだと自分に言い聞かせないと、もう自分が罪悪感で押し潰されてしまいそうだった。

(・・・誰・・・・・・誰、か・・・)

――――――・・・止めて・・・

みさきの最後の祈りも闇へと飲み込まれていった。

その刹那。

光を纏った弾丸がレイレックス・ノヴァのリフレクターに直撃する。

「な、なに!?」

空を覆った黒い煙を突き破って、一条の光が射し入る。

直後、みさきの瞳が青き翼と赤き翼を広げて舞い降りてくる機体をとらえる。

『気をつけろみさき!!』

心斗のレイレックス・ノヴァが牽制の射撃を放つ。

上空には接近しつつある鋭角的な見慣れぬ白い戦艦の姿も見えた。

『やつら・・・ラストクルセイダーとヴァナディースだ!!』

その一瞬の隙に心斗のレイレックス・ノヴァはヴァナディースの“ディバインフェザー”で地面に叩きつけられた。

「心斗!?」

間髪入れず目前に迫ったラストクルセイダーが大型ティアル・ライフル、ビームレイを放ってきたが全てリフレクターで防ぐ。

これには裕樹も驚き、慌てて距離をとる。続けざまにヴァナディースもツイン・オメガライフルを放つが結果は同じだった。

「このAG・・・レイレックスとは、違う!!」

「それに、リフレクターの出力がハンパじゃないよ!?」

直後にレイレックス・ノヴァの胸部から3砲のビームが放たれ、あわてて回避したが、その延長上にある建物が一瞬で吹き飛んだ。

「これ以上放っていたら、町が・・・!!」

ラストクルセイダーがレイレックスの両腕にあたる部分から放たれる無数のビームを避けつつ、腰からダブルセイバーである“セイクリッドティア”を抜き放ち一気に肉薄して斬りかかった。が、同じように高出力のリフレクターに弾かれる。

「ぐっ、くそ!」

至近距離でビームを放たれ、慌てて急上昇して回避する。

「裕樹、下がって!」

「美奈!?」

「これで・・・!!」

ヴァナディースはレイレックス・ノヴァを正面に捉え、胸部から“ライジングノヴァ”を発射した。

直後、強烈な衝撃がその場を襲った。

しかし、その衝撃とは裏腹にレイレックス・ノヴァに傷一つ無かった。さすがに平然とはいかないが、無傷のレイレックス・ノヴァを見て、美奈も驚愕する。

「そんな!?」

“ライジング・ノヴァ”は現時点でヴァナディースの最大火力を持つ武装だったのだ。これで正攻法ではヴァナディースに打つ手無しになってしまった。

「ゆ、裕樹、どうしよ・・・?」

「どうするったって・・・」

その隙に倒れていた心斗のレイレックス・ノヴァが側面からビームを一斉射し、これを急上昇して回避するが同時にみさきのレイレックス・ノヴァも追撃してくる。

「・・・っっ!!」

二機は追撃のビームをスラスターを生かし、急旋回してなんとか回避する。

『ラストクルセイダー!!ヴァナディース!!何度も何度もお前等は・・・!!』

「やめろ!正気かお前たちは!?」

心斗のレイレックス・ノヴァとラストクルセイダーが互いに刃をぶつけ合いながら叫ぶ。

「どうしてこんなことを平然と出来る!?」

『敵に指図する気か!?これは戦争だぞ!!』

ラストクルセイダーは機体のサイズも関係なく出力の差で弾き落とす。

『ぐっ・・・!!』

「戦争だからってこんなことが許されるか!!ふざけるな!!」

『何を・・・!!』

「第一、これがお前等プレリュードの信念なのか!?」

『・・・!?』

「親を戦犯で殺された気持ちはわかる!!だが、だからってその正義で関係ない人たちを殺すのが許されるっていうのか!?」

全集波で叫ばれる裕樹の声は、レイレックス・ノヴァを駆る心斗とみさきに確かに同様を与えるものだった。

そのまま追撃をかけるべく接近するが、もう一方のレイレックス・ノヴァが隙間がないほどの大量のビームを放ち、ラストクルセイダーは危ういところで急制御をかけた。

「くそ、アイツ・・・!!」

直後、みさきのレイレックス・ノヴァに上空からリニアレールキャノンが打ち込まれ、体勢を崩す。

「裕樹!!」

「京介!ミント!」

即座に4機は集まり、それぞれ二機のレイレックス・ノヴァに対して身構える。

「裕樹さん、今確認いたしましたが、プレリュード軍のIG部隊がこちらにやってきますわ」

「どうする裕樹?このままじゃキリがないし・・・」

起き上がった二機のAGを見ながら即座に考えを廻らせる。

先程の言葉にも、この二機は攻撃してきた。なら、説得は難しいだろう。

それに何より、EDENをこれ以上攻撃させるわけにはいかない。

裕樹はみさきの乗るレイレックス・ノヴァに向き合った。

「・・・コイツは俺一人で抑えとく。その隙は美奈と京介とミントはもう一体を頼む!!」

「裕樹!?それだと裕樹が・・・」

「大丈夫だ、美奈。防戦に徹するだけなら俺一人でできる。それに、テフラ・トリックマスターならあのAGだって・・・!!」

言われて、美奈と京介はテフラ・トリックマスターの武装を思い出す。

確かにあれなら強固なリフレクターを持つこのAG相手にも充分に戦えるだろう。

「・・・わかったわ、裕樹。気をつけて・・・!!」

「美奈もな」

それだけを交わして、ラストクルセイダーを置いてヴァナディース、ゼロバスター・カスタム、テフラ・トリックマスターは心斗のレイレックス・ノヴァに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くよ、京介!!私たちでミントをサポートするわよ!!」

「了解!!――――――ミント、無理はしないでね」

「はい、わかっておりますわ」

直後、レイレックス・ノヴァから放たれた大量のビームを散開して回避。直後ヴァナディースはホーリィ・シリンダーを一点に集中して射撃。ゼロバスター・カスタムも連装バスターキャノン、レールキャノンを立て続けに連射する。

『くそっ・・・!!そんな程度の出力で、このリフレクターを破れるかよっっ!!』

心斗が叫び、全身からビームを乱射。そのままヴァナディースにビームソードで斬りかかった。

「っっ!!」

ヴァナディースはその斬撃を回避しつつ、ビームの間を拭うように移動しながらツイン・オメガライフルを連射する。だが先程からの全ての攻撃を含めて光の膜に防がれる。

「美奈!!」

再びヴァナディースを捉えようとしたレイレックス・ノヴァに対し、ゼロバスター・カスタムは相手の至近距離からレールキャノンを撃ち込み、直後のビームを急上昇して回避する。

「なんて出力のリフレクターなんだ!?傷一つつかないなんて・・・!!」

「京介、離れて!!」

ゼロバスターに注意がひきつけられている隙にヴァナディースはメノスソードで斬りかかるが、側面であるにも関わらず、光の膜がその斬撃を防いだ。

(このリフレクター・・・完全にオートで発動しているの・・・!?)

美奈は機体を即座に後退させ、上空で距離を取る。

レイレックス・ノヴァの注意が完全に二機に集中した直後、テフラ・トリックマスターが強化された“ハイフライヤー”を一斉に展開させる。

「行きますわよ・・・!!京介さん、美奈さん、離れてくださいまし・・・!!」

それに気づいたのかレイレックス・ノヴァは振り返ったがもう遅い。すでに12個の“ハイフライヤー”は展開している。

だが相手は焦らず悠々とリフレクターを展開させた。

 

――――――それが、盲点だった。

 

「ご覧あそばせ、光の舞を!!フライヤーダンスッッ!!!」

一斉に“ハイフライヤー”から放たれたプラズマビームはレイレックス・ノヴァのリフレクターに触れた後、貫通した。

『なにっっ!?』

時すでに遅し。“ハイフライヤー”から放たれた無数のプラズマビームがレイレックス・ノヴァを無数に貫いた。

 

 

これには強化されたフライヤーである“ハイフライヤー”に理由がある。

春菜はイセリアル・トリックマスターの修理と共に大幅な強化改造を施したのだ。武装の追加や性能の向上はもちろん、何よりフライヤー一つ一つに“フィールド・キャンセラー”を取り付けたのが大きな要因だった。このフィールド・キャンセラーはゼファーに搭載されているものと同等で、このおかげで“ハイフライヤー”から放たれるビームそのものに相手のバリアを強制的に中和、解除する効果が付属される。これが、レイレックス・ノヴァのリフレクターを撃ち破った理由だった。

 

 

“ハイフライヤー”のビームがレイレックス・ノヴァの両肩にあるリフレクター展開装置を破壊し、レイレックス・ノヴァのリフレクターが完全に消え去る。

『リフレクターが・・・!?』

その隙を逃さず、ミントはアデッシムボム、スプレーミサイルを正面から叩き込みバランスを崩させる。

『ぐっっ!?』

「っっ!!逃しませんわっっ!!」

爆煙に包まれるレイレックス・ノヴァを捉え、ミントはテフラ・トリックマスターに新たに追加された主砲“ハイパービームキャノン”で機体の中心を撃ち貫いた。

 

 

 

敵紋章機から放たれたビームが視界に迫る直前、心斗の時間は止まったようだった。

自分は、何をしてきたんだろう。

普通に生まれ、普通に育ち、仲間とも出会えた。軍人である父に憧れ、いずれ自分も軍人になろうと決意していた。

けれど、パレスティル統一戦争終結後、父は戦犯として殺された。

だけど、父は嘆かず、嬉しそうに言った。

――――――いいんだよ、これがリ・ガウスのためだ。

――――――それにな、心斗。私は解放戦争の英雄“白き翼”や、紋章機とも戦えた。

――――――何度戦っても勝てなかったが、軍人として、彼らと戦えたことは誇りに思うよ。

それが、父の最期の言葉だった。

どうして悔しくないのか、どうして誇りに思えるのか。それは、その当時の心斗には到底理解できるものではなかった。

そして、自分はプレリュードに入った。

戦犯として弾圧を受けている人のためにも、もう一度、世界を作り直すために。

だけど、それももう終わり。

今の自分には、零秒後の死が確実に見えている。

けど、後悔は無かった。

今ならわかる。父は、結果ではなく歩んできた道を見ていたのだ。

それがどんなに間違った判断だったとしても、自分が信じた道なら後悔もなく、誇りに思えるだろう。

心斗は最後、自分でも信じられない晴れやかな笑顔で、目前の閃光を受け入れた。

 

 

 

テフラ・トリックマスターの“ハイパービームキャノン”がレイレックス・ノヴァを完全に貫き、レイレックス・ノヴァは爆煙と共に爆発した。

「・・・やりましたわ」

安堵もため息をついて、ミントは“ハイフライヤー”を回収する。

その後、ヴァナディースとゼロバスター・カスタムが近づいてきた。

「ミント!」

「ミント、大丈夫だった?」

「美奈さん、京介さん。・・・大丈夫ですわよ」

ミントだけでなく、美奈も京介も、炎と煙をあげているAGの残骸を見つめ、心の中で祈りを捧げた。

と、テフラ・トリックマスターの強化型索敵レーダーがはるか彼方の機影をキャッチする。

「これは・・・・・・エルシオール、ですわね」

「やっぱり、来たね・・・」

「うん。――――――ミント、これ以上はあなたの立場が不利になるわ。ヴェインスレイに帰艦して?」

そう、ミントにとってはもうタイムオーバーだ。

エルシオールに気づかれる前にヴェインスレイに戻らなければ。

「わかりましたわ。途中で申し訳ありませんが・・・」

「ううん、そんなことないよ。ありがとうミント。助かったよ」

京介の笑顔に、ミントは少し照れながら応えた。

「京介さん、気をつけてくださいまし」

「大丈夫。僕もちゃんと戻るからさ、戻ったらミントが淹れてくれた紅茶をご馳走してほしいな」

「フフッ・・・わかりましたわ、京介さん」

二人は笑顔を向けてから通信を切り、テフラ・トリックマスターはそのまま上空で待機しているヴェインスレイに帰艦していった。

「お待たせ美奈。じゃあ裕樹の援護に・・・」

「・・・その前に、プレリュード軍のIG部隊が来たわ」

「えっ!?」

確かにレーダーの索敵範囲を広げると、大軍ではないものの、ヴァラグスやディアグスの機影が確認できた。

「このタイミングで・・・」

「京介、私は裕樹の援護に行くわ。京介はIG部隊を・・・お願いできる?」

「うん、任せてよ」

「ごめん・・・ありがとね」

通信を切って、ゼロバスター・カスタムはIG部隊へ向けて機体を翻した。

それを見送りながら、美奈は今だ激戦を広げている裕樹の所へ機体を加速させた。