『哀しかった・・・・虚しかった。どうして俺の周りで・・・・・人が死ぬんだ?俺にとって大切な人が・・・』

 

 

 

第十三章「Chaos Maker

 

 

 

 

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現在、エルシオールはガーリアンの所轄宙域を航行している。

後続している銀色に輝く箱のような物体は―――――――トランスバール皇国軍艦隊。

先行しているのは、純白の艦隊達。

強襲空母やステルス爆撃艦、打撃艦などといった完全武装の大艦隊。

ここ、ガーリアンの『王』とも言うべき存在―――――『皇帝』直轄の最強部隊。

通称―――――『聖光騎士団』の第七団が所有する艦隊。

 

聖光騎士団は第一団から七団まで存在し主な任務内容は皇帝が住む居城、及び帝都の警護。

しかし、皇帝独自に命令を下すこともあり、その命令は絶対である。

例え、軍の最高責任者であろうとも皇帝の判断は神の判断と等しく絶対的なのだ。

 

「しかし良いのか?ガーリアンの軍事作戦に協力するなんて」

ブリッジにてレスターが横目で指揮官席に座る男に問い掛ける。

「エルシオールはシャトヤーン様を乗せる“動く宮殿”のようなものだ。そして、エンジェル隊はシャトヤーン様を警護するのが任務だ」

「なるほど」

シャトヤーンがエルシオールに乗っている今、エルシオールを狙う物は全て敵として撃破される。

無理に軍事協力をするのではなく、本来の任務を全うするだけになるのだ。

「それに・・・・・・」

「それに・・・・何だ?」

 

 

「俺の息子が何で俺を狙うのか・・・・知りたいからね」

その声は彼の口で転がされただけでレスターにましてやブリッジのメンバーに届くわけが無かった。

 

 

 

 

 

 

 

エルシオールの自室にて青年はいそいそ、と荷物をダンボール箱にしまっている。

漆黒の瞳に同色の瞳。

意志が強く戦士としての光を宿す、その青年。

見た目では20までは一つか二つといった年頃である。

「これで全部だな」

最後の荷物をダンボール箱にしまい込み青年――――天都伊織はガムテープでダンボールの口に封をする。

 

現時刻は深夜。

 

起きているものといえば夜勤のクルーかこの艦の副官のレスター・クールダラスと、通信担当オペレーターのアルモ位だろう。

エンジェル隊のメンバーはとっくに夢の世界にいる。

 

物音、ましてや足音一つ残さずに伊織はダンボールを抱えて、格納庫に運び出す。

第七団艦隊旗艦“タイタロス“のクルーが責任を持ってシャトルに入れて旗艦へと戻っていった。

「さてと・・・・これから、どうするかな」

「じゃあ、私と一緒にクジラビーチに行きましょうよ」

新たな声が聞こえ振り向くと艶やかで柔らかいパールブルーの長い髪をポニーテールにした少女が微笑みかけながら近づいてきた。

年齢は彼よりも一つか二つ低いようだ。

「この艦は面白いですよねぇ・・・・」

少女、クラリス・シャルロットが好奇心旺盛な目で彼の顔を覗き込む。

一件、年相応で普通の少女と思われるが彼女は何十の団員を率いる伊織の補佐官を務めている歴戦の戦士なのである。

強いて言うならば副官的な存在だ。

そして、伊織にとってはかけがえの無い戦友。

 

「ね?行きましょうよぉ!!」

伊織に有無を言わさずクラリスは彼の腕を引っ張りクジラルームに向かい、格納庫を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁーーー!!凄い凄い!!団長!海ですよぉ!!」

子供みたいに砂浜をはしゃぎ回るクラリス。

邪気の無い笑顔を見る伊織の心はとても浄化されていく感じがした。

長年、殺伐とした人生を送ってきた彼にとってこのような体験は大きな新鮮を与え潤してくれるのだ。

両手を広げてクルクルと踊るその姿はまるで、妖精のようだった。

迸る水渋きが月光に反射し光の粒にも見えるその真ん中に妖精は邪気の無い笑顔を浮かべ、踊っている。

いつしか、伊織は自分の顔が緩んでいることに気がつき、驚いていた。

「泳いじゃいましょ!」

そういうと、クラリスはテキパキと制服を脱ぎ始めたのだ!

 

咄嗟に“不味い!“と思い目を伏せる。

数分後、再び水のパチャ、パチャと音が聞こえ目を開けると水着姿のクラリスがいた。

大胆にも白いビキニの水着だった。

彼女の体格が一瞬で目に付くような、大胆な・・・・・・

「あれ?団長!泳がないんですかぁ?」

「頼むから、近づかないでくれ。目のやり場に困る」

恥ずかしがり顔を真っ赤にする伊織に悪戯を思いついた子供のような表情を浮かべてクラリスは伊織に抱きついた。

「団長、つっかまえ〜た〜!!」

甘い何かが含まれたその言葉。

漢なら一度は聞きたいその声に伊織の脳は真っ白にペイントされた。

いや、その声ではなく、腹部に押し付けられるように当たる、その『柔らかい何か』に伊織は放心状態に落とされたのだ。

“むにゅう“と押し付ける彼女の胸の谷間を見て伊織は何故かドキドキする自分に遅れて気がつき驚いた。

 

そんな彼の様子を見たクラリスは更に押し付けて面白がり、離れ、

「団長もウブなんですねぇ〜」

「な!」

可笑しそうな表情でクスクス笑うクラリス。

彼女のその邪気の無い笑顔を見た伊織は瞬時に怒ることを捨てた。

 

―――――――――何を言っても無駄だな

 

そう思い諦めることにしたのだ。

 

それから、制服に着替えなおしたクラリスと一緒にブリッジに行きレスターに軽い伝言を伝え、伊織は元あるべき場所へと帰って行った。

 

 

 

「えぇ!!伊織が帰ったぁ?」

ティーラウンジに集まるエンジェル隊とタクト。

珍しくやって来たレスターに告げられたのは伊織の帰還だった。

既に彼は自室を引き払い、荷物をまとめて第七団艦隊旗艦“タイタロス”へと戻ったのことだ。

わかっていたとはいえ、この事実はエンジェル隊に衝撃をもたらした。

「大丈夫か、ちとせ」

一際、落ち込む黒髪の少女にレスターはぶっきらぼうに問い掛けた。

長い漆黒の髪に相反するような色白の肌。

烏丸ちとせは伊織の突然の帰還に弩級艦の爆撃に匹敵するほどのショックを受け、意気消沈している。

いつか、この時が来るのは分かっていた。

しかし何故、彼は一言も自分に声をかけてくれなかったのだろう。

そう、自問してみた。

酷く悲しい念が彼女の心に漂よっていた。

何か手酷く裏切られた感覚があった。

 

きーっ!!、と烈火の如く怒り狂うランファ。

「まぁまぁ。彼には彼なりの事情があったんだよ」

宥めるように述べるタクトにランファは渋々、頷いた。

「そうですわよ。伊織さんだって、タクトさんと同じく司令官に位置するお人なのですから」

ミントが優雅な微笑を浮かべる。

すっかり、ランファの怒りは消火されていた。

 

「それとタクト!」

「えっ?何!」

ミルフィーユにケーキを口に差し出され大きく口を開けるタクトにレスターは半ば怒りを抑えた状態で、

「次期に惑星「フェイロン」に降り立つ、ブリッジに来い」

「あぁ」

彼の表情がいつになく真剣な眼差しを向けている。

返事を返すとレスターはキビキビとティーラウンジを出て行った。

レスターが出て行ったのを確認しタクトはミルフィーユにケーキを「あ〜ん」して貰い満面の笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?御早い帰還だね」

“タイタロス”のブリッジのドアが開きクラリスと伊織が入ってきた。

伊織の姿を見たブリッジのクルーが一斉に立ち上がり彼に向けて敬礼した。

「俺が居ない間、ご苦労だった」

伊織は指揮官席に座り込み、

「現在の状況は?」

「惑星『フェイロン』に入った後、第209駐留基地にて補給を行います」

「ご苦労、“オルフェウス”は」

「現在、戦力を整えつつ目標を駐留基地に向かって動いています」

伊織は小さく舌打ちし、

「駐留基地の司令に警戒態勢を上げろと言っておけ」

了解、という声と共に通信担当のオペレーターが暗号を送る操作をした。

 

「通信をエルシオールへ」

「了解」

通信ウインドゥにタクトの姿が映される。

「タクト、駐留基地にて俺達と一緒に補給になる」

「わかった」

「それと、“オルフェウス”の部隊が接近してきている。戦闘になるぞ」

「了解。エンジェル隊にも言っておくよ」

通信を切った後、流水にアイコンタクトで指示を出す。

 

 

「大気圏突破後と共に全艦隊、警戒態勢をレベル2へ移行!!」

 

 

 

戦いに備え騎士達が一斉に息吹を上げ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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オペレーターの観測通り“オルフェウス”のAF部隊が攻撃を開始してきた。

「天都伊織、<マーク・ヌル>出すぞ!!」

伊織は叫び“タイタロス”から飛び出していった。

後からクラリスの<ヴァルキュリア>も出撃した。

次々に戦艦の出撃口から純白の巨人が厳つい武器を握り締めて出撃していく。

ある者はブースターやフライトユニットを吹かし空中へと舞い、

ある者は陸上で砂埃を吹かしながら驀進していった。

 

「すごい」

メインモニターに映し出される、その光景を見たタクトはポツリと感想を漏らした。

まるで人と人とが殺しあうような、そう。

中世のヨーロッパにおいて馬に乗る兵士たちが隊列を組み敵陣に突進していく。

そんな感じだった。

空中ではまた違った戦闘が繰り広げられている。

機動力を生かしたAF同士のドッグファイト。

腕に握り締める携帯火器らしき武装の銃口からはマズルフラッシュが、

弾丸が蒼白い炎を帯びて敵に撃ち込まれていく。

それは、人型兵器同士の戦いだった。

乗っているのはお互い人間。人類でもあるのだ。

「――――何でですか?どうして・・人間同士が」

一番機からミルフィーユの信じられないといった声が聞こえる。

皇国では確かに辺境でのゲリラ戦や反乱はある。

だが、ここまで大規模な人類同士の戦争などは無かった。

まるで暗黒時代にタイムスリップしたような錯覚にタクトは陥った気がした。

今までは戦闘用スレイブといった無人機が相手だった。

しかし、これが本来の戦争かもしれない。

もう一人の自分がそう告げた。

戦闘用スレイブとの戦闘自体がありえなかったのかもしれない。

 

少なくとも伊織やクラリスは同じ人間同士と戦い合い、打ち勝ってきたのである。

 

上空に佇むエルシオールから守護天使が羽撃き巨人達の戦闘に介入した。

皇国では『守護天使』と呼ばれる彼女らも敵からしてみれば『凶天使』に過ぎないかもしれない。

納得のいかない『何か』と戦わなければという『使命』がドロドロに溶け合い自身に染みこんで行くのをタクトは確かに感じた気がした。

 

モニターにはそんな彼らの疑問などお構い無しに伊織の<マーク・ヌル>がクラリスの<ヴァルキュリア>と連携を組んでいた。

 

 

 

腕部に格納されているマイクロ・ミサイルを敵飛行部隊に放つ<マーク・ヌル>。

次々と爆散する仲間の機体を見た残りのAF達が引き返そうと踵を返す。

ソイツらを見逃さず伊織はホルスターから“ツインバレルハンドガン”を引き抜き銃口を向けて発砲する。

空気抵抗を受けないよう最適な形状に作られた弾丸が空を切り裂くような音を立てて逃げる灰色の巨人達に向かって撃ちこまれた。

炎に身を包まれ四散する敵AF。

<マーク・ヌル>と背中合わせで両腕に構えたライフルの引き金を容赦なく引き敵AF

をバラバラに引き千切る<ヴァルキュリア>。

「ほらほらァ!!」

フルオートからセミに戻し、敵を撃ち落していくその光景は頼もしく思えた。

 

 

 

 

エンジェル隊も負けてはいなかった。

 

確かに人を殺めるのはいけないことだと自覚している。

しかし、眼の前に展開される巨人に乗る人間は『敵』なのだ。

自分達が躊躇していても向こうはお構い無しに銃口を向けてくる。

聖母シャトヤーンやシヴァを守る為、天使達は戦いを決意したのだ。

 

 

 

「えぇい!!」

ラッキースターから放たれたレーザーが敵AFを串刺しにした。

次々と狙いを定め、引き金を引くミルフィーユ。

大切な人を守る為に戦う自分が握る引き金がいつもより重く感じる。

「私はただ、タクトさんやみなさんを守りたいんです!!」

半分は自分に、半分は相手に向かって叫ぶミルフィーユ。

エネルギーゲージが満タンになり、照準を敵重装艦に向かって合わせて、

「ハイパーキャノン!!」

カチッ!という音が引き金を引いたと同時に発せられる。

ラッキースターの中距離レーザー砲に機体色と同様の閃光が宿り一気に放出された。

射線上にいた敵AF部隊がその桃色の凶光に飲まれ次々と消滅していく。

「ごめんなさい・・・・・ごめんなさいっ!!」

目を潤ませながら落ちていく残骸に向かって呟くように謝罪の言葉を告げながらミルフィーユは愛機の機首を巡らせて、次の標的に向かって飛翔した。

 

 

「ハァァ!!」

ランファの気合と共にカンフーファイターから機関砲の弾丸がばら撒かれた。

敵AFが一瞬怯んだその隙を見逃さずに中型ミサイルを叩き込んで離脱する。

機動性能に恵まれたカンフーファイターの性能を充分に理解し把握した戦術だ。

ドカドカと放たれる機関砲の弾丸。

薬莢がガーリアンの大地に吸い込まれるように落ちていく。

レーダーが警告音を出しカンフーファイターは瞬時に進路を変更しブーストを吹かし、飛来したミサイルを回避し、ミサイル群に向かって機関砲を発射した。

追尾性能に優れたホーミングミサイルだからだ。

 

 

 

ピピピピピピピ!!!

 

 

 

「ちぃ!!」

新たに二つのホーミングミサイルが接近していることに気がついたランファはカンフーファイターを横にバレルロールさせる。

クルクルと回るカンフーファイターに二つのホーミングミサイルも螺旋状に回転しながら追尾してきた。

そして、ぶつかり合って爆発した。

「ふぅ・・・・アレを見ていて良かったわ」

ランファは更に操縦テクニックを片っ端から戦闘機の戦闘シーンを映した映画を見たのだ。

そして、あるSF映画において先ほどのホーミングミサイルへの対処法を実行したというわけだ。

不敵に笑いながらランファは更に猛攻をかけた。

 

 

 

「ミサイル一番ハッチ開門!!てっーーーーー!!」

流水の冷たさを含んだ指示と共にミサイルが“タイタロス”から放たれ接近を試みようとした敵AF部隊を火に包ませる。

「“バーンズヴェッグ”、“ファーブニル”、“トライデント”は火力を敵浮遊空母に火力を集中させろ!!」

流水の指示の直後に後続の三隻の艦隊の火力が一点に集中される。

豪雨の如く降り注ぐミサイル。

容赦なく放たれるリニアレールガンにビーム砲の弾丸の集中砲火を浴びて浮遊空母は火球に呑まれた。

 

 

「団長!」

敵に囲まれる<マーク・ヌル>に駆け寄ろうとした矢先、背後に感じる殺気に気がついた瞬間、攻撃が次々と<ヴァキュリア>に叩き込まれる。

コックピットに座るクラリスの華奢な身体にも容赦なく衝撃が叩きつけられる。

「キャァ!!」

そして、ライフルで右腕を吹き飛ばされる。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

苦痛で思わず叫んでしまった。

背後からの一撃により攻撃に耐え切れなくなった<ヴァルキュリア>は大地へと墜落した。

(駄目!団長・・・・を助けない・・・・・と)

血に染まるコックピット。

追い討ちをかけようと迫るAFをぼんやりと見上げながらクラリスは朦朧とした意識で伊織の援護に行こうと身体を動かすも無理だった。

(だんちょぉ)

瞳から大粒の涙が零れてきた。

迫るAFはダガーを抜き彼女のいるコックピットを貫こうとした。

その時、純白の機体が眼の前に踊り出て手に持つロングソードで一気に敵の腹部を切り裂き敵機を両断したのだ。

「あぁ・・・だん・・・・・・ちょぉ?」

クラリスの意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

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真っ白いシートをかぶせられたクラリス。

シートは恐ろしいほど綺麗な緋色の液体でグッショリと濡れていた。

それが彼女の血だというのに伊織は遅れて気が付いた。

「だんちょぉ・・・無事でよかったぁ」

自分が死にそうな状況にもかかわらず、クラリスは力無い笑みを伊織に向ける。

「クラリス・・・・しっかりしろ!頼む!!」

「団長?・・・泣いているんですか・・?」

いつの間にか大粒の涙を零す伊織。

彼の頬を伝い生暖かい雫はクラリスの顔にぽたぽたと流れ落ちる。

外傷が酷過ぎる。

後、数時間も経たない内にクラリスは息を引き取る事になった。

彼女自身、わかっていたのかもしれない。

自分が助からないことを。

“最期まで団長と話したい”という切実なる願いの元、クラリスは伊織と二人きりで“タイタロス”の格納庫にいた。

 

「当たり前だ・・・!!」

「嬉しいなぁ・・・・・・・・私の為に・・・泣いてくれるなんて」

クラリスは十分すぎるくらいの幸せを感じながら淡々と述べる。

「団長・・・・・いえ・・・伊織さん。好きです・・・・貴方のこと」

「クラリス!!」

伊織は無言でクラリスの唇に自分の唇をぶつける。

強引ながらも彼のキスに少し目を見開いた後、クラリスは嬉し涙を流した。

伊織は冷たくなっていく彼女を暖めようと抱きしめた。

血が制服に付着することなどお構い無しに、強く。

「伊織さんの体・・・・あったかい」

「ばかやろう・・・ッ!!」

更に強く抱きしめる伊織。

 

 

 

 

 

 

「伊織さん・・・・・愛してます」

 

 

 

 

 

 

そう告げるとクラリス・シャルロットは静かに意図が切れた操り人形のように息を引き取った。

「おい!クラリス!!なぁおい!!」

いくら叫んで呼ぼうとクラリスは目を開けることは無い。

彼女はもう死んだのだ。

もう一人の兵士としてのドライな自分が静かにそう告げる。

しかし、もう一人の純粋な自分がその事実を頑なに拒み受け入れないでいた。

「クラリス!クラリス!クラリス!!・・・っ・・うっ・・・・ちくしょう!!」

 

 

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 

 

クラリスの亡骸を強く抱きしめ伊織は獣の遠吠えにも似たような絶叫を上げて激しく泣き叫んだ。

彼の哀しみは倍になり、憎しみは巨大な業火へと姿を変えて彼を支配した。

 

 

復讐に満ちた死の回廊を歩む青年の泣き叫ぶ声だけが格納庫に響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

第十三章      完    続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

はい、どうも、イレギュラーです。

読まれた方はどうお思いでしょうか?

「やりすぎだ!」と怒り狂う方もいるでしょう。

私だって辛いです。

いつも伊織を慕い続けたクラリスが死んでしまったのですから。

あんなに元気で彼を一途に思い続けた彼女は死んでしまった。

私が殺したようなものなので・・・・グス(つwT)

今は御葬式ムードで後書きを書いています。

 

クラリスが死んだ今。新たな憎しみを宿した伊織。

彼は今後、どのような戦闘を繰り広げ、どのような道を進むのか。

今後ともよろしくお願いします。

 

ではでは。