第二十七章「争乱の始まり」
あの日、自分は走っていた。
長い仕事から帰ってくる両親に逸早く会いたいとコツコツと貯金した金を使い自宅から空港まで一人で向かった。
電車やバスを使い空港まで行けた。
そして母親と父親が出てくる出入り口に向かって走りあと少しのところで、
ゴシャァァァァァァァァァン!!!!
今思えば目の前で起きた爆発は両親が危険から守ってくれたのかもしれない。
出入り口のあと少しのところで空港にオレンジ色の光が宿ったかと思うと光は一気に膨らんでいき破裂した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
耳をつんざく爆音と容赦なしに駆け抜けてきた爆風に自分は宙へと舞って冷たいアスファルトの上に落ちた。
全身が軋むように痛い。
助けて・・・・・誰か・・・・・
心の中で誰かに助けを呼ぼうとしても誰も助けてくれない。
誰もいないのだろうか?いるはずだ。
そして、霞む視界がハッキリするにつれて目の前で何が繰り広げられているのか理解できた。
『惨劇』
バラバラに吹き飛んだ人間の四肢。妙な具合に折れ曲がった足。
大半の人間が生き絶え、大半の人間が生き地獄と呼ぶに相応しい苦痛を味わっていた。
ある者は恋人の亡骸に泣き伏せながら命を落としある者は激痛に耐えながら苦しみぬいて死んだ。地獄だった。
「あ・・・・・うあ」
悲鳴を出そうにも上手く声が出せない。
その時の自分はまだ幼く九つか十にいくか否かの年齢だったのだから無理もない。
そして、ようやく悲鳴を出す事が出来た。自分の鼓膜が破れるほどの。
「ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「や・・・・矢・・・・翔矢!!!」
自分の身体が激しく横に揺らされる感覚で青年は目を覚ました。
「ち・・・・千早?」
「大丈夫なの!?翔矢・・・・・凄くうなされていたけど・・・・」
ベッドに横たわっていた状態から上半身を重々しく起こし、ベッドのすぐ側にある椅子に座る女性に視線を移しながら名前を呼ぶ。
見知った部屋。見知った女性。
ここは現実。今までのは夢だ。
そう割り切った途端、安堵の溜息を吐いた。
「大丈夫なの?」
「あぁ・・・・千早こそどうしたんだよ?俺の部屋に勝手に入ってきてさ」
黒に茶色が混じった髪をグシャグシャと掻きながら青年―――散華翔矢は大きく欠伸をして眠気眼の目をダルそうに擦って訊ねた。悪い夢を見ていたとはいえその様子はまるで熟睡していた者が良く見せる寝起きの姿と大して変わらなかった。現に翔矢の額や身体の各所に浮き出た冷や汗はとっくに消えている。見た目より寝起きは悪く無さそうだ。
「アンタねぇ・・・・敵よ?」
茶色の髪を涼しげに切った女性が溜息混じりに告げた。
「マジでか!?」
半以外にもリラックスした様子で敵襲を告げる女性――――神居千早はゆっくりと頷いた。
「アタシは先に行ってるからアンタは早くしなさいよ?」
千早が部屋を出て行った後、翔矢は急いで制服を引っつかんで部屋を出て行った。目指すは出撃の時を今か今かと待ちつづけている愛機が待機する格納庫だ。漆黒の制服の上に羽織った正反対の色彩を放つ白いジャケットは翔矢が走る度に揺れていた。
確かにあの時はまだ何も出来ず何も理解できない子供だった。いや、何も理解できないという点では何も変わっていないかもしれない。
ただ、何も出来ないという点では大きく変わっている。
格納庫の扉が音を立てて開き翔矢は滑るように中に入り込み愛機の元へと駆けた。足を進める速さはそのままに視線を少しだけ動かし、その先には千早が愛機のコックピットにてハッチを閉じようとしていた。
目と目が合い千早が軽くウインクし、その直後ハッチが閉じた。翔矢も愛機の元へと辿り着き下から見渡す。
深緑の葉を髣髴させるディープグリーンのカラーリングの装甲。
流線型のフォルム。
愛機“ドミネイター”を満足そうに見上げる翔矢に整備班長のゴルド・オーシャンがツカツカと近寄ってきて、
「どうよ!相変わらずいい腕だろ?俺様は」
「あんがとよ、おっさん」
子供のような笑顔を浮かべて返す翔矢にモジャモジャとした髭面がぐしゃりと歪む。どうやらゴルドも喜んでいるようだ。自分の仕事を誉められることは職人にとって何よりの喜びであり励みにもなるからだ。
「俺の整備で死ぬなんて許さねぇ。必ず生きて帰って来いよ」
気さくな笑みが突如消え失せ険しい顔を浮かべるゴルドに振り向かずに手を挙げて返し昇降ロープを使ってコックピットへ。操縦座席に座り込み、ハッチ閉鎖。システム起動。各部異常無し。
“ドミネイター”肩部のハードポイントをロックアームが固定しカタパルトへと運ぶ。
目の前で重武装に身を包んだ淡い紅色の機体が右手の親指を突き出し、ロックアームが外れた途端、射出される弾丸のような勢いでカタパルトを横に突っ切り漆黒の闇が広がる宇宙空間に飛び立っていった。進路クリアを確認した管制が“ドミネイター”を掴むロックアームを解除する。
アクセルを踏み込み、
「散華翔矢、“ドミネイター”発進するぞ!!!」
ディープグリーンの巨人もまた闇夜を切り裂く光の弾丸と化し飛び立っていった。
全ては平和の為に。
『これを読んでいるヴァニラに。
せめて、これが無事、お前の手に届くことを祈っている。
おそらく・・・・これを読んでいる時、俺はもうどこにもいないと思う。
どういう形であれ、どういう経緯であれ、『いなくなっている』のは確かだと思う。
まずは、唐突にあんなことして悪かったな。今回は俺の独自の判断で動かして貰った。
人にはちゃんとした居場所がある。俺の居場所はここじゃない。それだけの話だ。
もう十分、生きた。兵器である前に生命として、人間として俺に居場所をくれた奴等にせめて恩返しがしたかった。
ヴァニラ。
ゴメンな。やっぱり俺の居場所はここじゃないみたいだ。せっかく仲良くなったのに、告白して貰ったの返事を返すことが出来なくて・・・ゴメンな。
でも俺。こういうことしか出来ないから、人を助けたり守ったりするお前達と違って俺は戦うことしか出来ないから・・・・やっぱりこれが良かったのかな?
今更、言っても遅いと思うけど・・・・言うな?
好きっていう気持ちがどういうものか、よく分からない。
でも、ヴァニラといると凄く落ち着いて、ずっと傍にいたいって思う。
だから・・・・俺も・・・ヴァニラのこと・・・・好きだ。
ヴァニラと水族館に行った時、嬉しかった。
楽しかった。
俺はこのこと・・・忘れないから
じゃあ、またどこかで会えるといいな。生まれ変わったら会えるといいな。
ヴァニラに会えて・・・・本当に良かったよ。
エイシス・マイヤーズ』
パタン
茶色いノートを閉じる音が響いた。
どちらかといえば質素な自分の部屋のベッドに座り込みヴァニラはもう何回とも知れず目の前で自分が手に持つノートの内容を読み返していた。
それは『遺書』のようなものだった。
瞼を閉じると彼が、彼との思い出が鮮明に浮かんでくる。そして、その度にそれはもう過去の記憶に過ぎないという考えが脳裏を過ぎってしまうのだ。
思い出せば嬉しい気持ちになりその度に残酷な運命に打ちのめされる。
皇国の守護天使の一人であっても十四歳の少女にとって大切な存在を失うという精神的ショックはかなり大きいのだ。尚且つこれが『二度目』ならばなおさらだ。
かつて自分を助けてくれた恩師が死に直面した時、自分は何も出来ず彼女を死んでしまった。いや『死なせてしまった』の方が正しいのかもしれない。
幼いその時の自分は現実を受け止めきれなかったが今になってようやく分かった気がする。
人間という生き物がどれだけ無力だということを。
涙は出なかった。自分から感情という要素が消えてしまっのだろうか?
「エイシスさん・・・・・私もあなたに会えて良かったです・・・・・・」
ポツリと呟くヴァニラの声が沈黙を漂わせる彼女の部屋で響いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ」
彼女の自室にて立ち止まり小さく溜息を吐いて漆黒の青年は足音一つ立てずその場を立ち去った。目の前から長い金色の髪の少女が瞳で問い掛けてくるも青年は無言で目を伏せて首を横に振る。
「・・・・・・・・・・そう」
「今は一人にしておいてあげよう」
「でも・・・・・アタシにはあんなヴァニラを一人になんてさせること出来ないわよ・・・」
納得のいかない様子で答えるランファに、
「今のヴァニラちゃんの気持ちは凄く複雑だと思う。でも、他人を思いやる彼女はそれを隠しちゃうんだ。だから・・・・今は静かに気持ちを落ち着かせる時間が必要なんだよ」
ランファと出会い時を重ねていく内に流水は彼女がどのような人間かよく思い知らされた。
勝気で負けず嫌い、だが本来はとても女の子らしく可愛い一面を見せ、そして他人を気遣える優しい人間であることを流水はよく理解している。
彼女だからこそ仲間以上の大切な存在であるヴァニラの傷心が気にせずに入られないのも知っている。
だが、大切な人間を失う辛さは当の本人しかわからない。
下手に他者が関われば歪が大きくなるだけだ。
HALOによって性能が大きく左右される紋章機パイロットにとってテンションが低いというのは致命的だ。そんな状況で戦場に出れば本来の力を引き出す事が出来ず結果、死へと繋がる。それは紋章機に関わらず戦場に出ることを生業とする者にとってごく普通の事だ。
故に心を落ち着かせる時間が必要なのだ、と彼の黒瞳は物語っていた。
「わかったわよ」
「ありがと」
やんわりとした笑顔を浮かべる流水にランファはまたしても胸の動悸が早まっていくのを感じた。彼の暖かく柔らかい笑顔を見せ付けられると心が落ち着き安心するのだ。
「どうしたの?ランファ顔が赤いよ?」
「ひぇ!」
ニコニコとした笑顔でランファに近づき自分の額を彼女の額に当てて、
「熱はないようだ。良かったね」
再びキラースマイルを浮かべる。
流水の一方的な攻め(?)にランファは意を決心し、
「ねぇ流水。明日の補給って暇?」
「明日は・・・・・・特に予定はないね」
現在、エルシオールはEDENに向かって航行を続けている。EDENスカイパレス及び衛星軌道上に位置する皇国軍艦隊からの通信が途絶えた事により調査の命を受けたからだ。
復旧したガイエン星系にて補給を受けクロノドライヴを行いEDENへと向かう。そして明日にガイエン星系駐留ステーションにて補給を受けるのだ。
補給の間はエンジェル隊、伊織と愛璃と自分はタクトの指示により鋭気を養う為に自由行動が与えられる。
「明日の補給の間に二人で出かけない?」
「・・・・・え!?・・・・・えぇっと・・・・うん。いいよ」
「ありがと!明日は何を着ていこうかしらぁ」
顔を紅くして頷く流水の首に腕を巻いて身体を密着させながら浮かれた様子ではしゃぐ。
「ら・・・ランファぁ」
困り果てる流水の意見はとりあえず却下だ。明日は楽しくなる。そう思えば自然と硬く引き締まりすぎた心が静かに和らげられていくような気がした。これも彼の雰囲気から成せることなのだろうか?気付かれないようほんのわずか横目で彼を見た後、フフッと笑うランファ。
「どうかしたの?」
自然と笑顔を浮かべる流水に、
「ううん!何でもない」
飛び切りの笑顔で返した。
「・・・なんでお前がまだ居るんだ?」
『いや・・・そいつぁ俺が一番知りたい』
作業機械の音と整備班員の喧騒が飛び交うエルシオールの最下層区画―――Dブロックにある格納庫。紋章機、“ピースキーパー”、“フォルテス”が立て一列に並び最後尾にて格納庫のカタパルトから胸部から上から姿を出す、昏い銀色の装甲体の胸部、すなわちコックピットの中で伊織は機体調整の為、キーボードを叩きながら誰かに声をかけるように呟いた。すかさず、火器管制、関節駆動などHALO、HCDなど機体を構成する全システムを司る戦闘支援ユニット『EISYS』の真面目な声が返ってくる。
「お前はあの時、消えるはずだった。なのにどうしてお前がまだこうしているんだ?」
『知らんよ。俺が一番知りたい。それに、お前だってかろうじて生きていたじゃないか?』
「それも・・・・そうだな」
明るく語りかけるAI。元々は人の姿で自分はその人の姿をしたエイシスという兵器―――今、機体制御などを担当するAIを封じ込める為に作られた擬似人格だ。
本体がその存在を取り戻した後、擬似人格である自分は消えるはずだ。
はずだったのだ。だが、その本体が自分に存在を譲り自分もその存在を勝ち取った今、仮初の自分は存在として確立されたのだ。
そして先日、エルシオールに復帰した伊織は機体システム設定の際、必ず『EISYS』のギャグを聞かされていた。
『金メダル!金メダル!!イバナウアーの金メダル!!』
「古過ぎはしないか?」
『大丈夫だ!観客が笑えさえすればな!!!』
そうか、と返す伊織。再びキーボードの上にかぶせる指を動かす。
AIとはいえまるで正反対の性格の持ち主である二人。
このAIのギャグ(のようなもの)を聞くとつくづく芸人なんじゃないのか?と思うほどだ。一つだけ言えるのは自分には到底出来ない芸当だということだ。
(絶対にコイツはお笑い芸人か何かだ)
と様々な推測を立てている時、
「伊織・・・・伊織!!!」
「ん?」
目の前に透き通った水のように綺麗な緋色の髪を長く伸ばした女性がハッチの横から覗き込んでおり、視線を前に戻し、女性に目をやる。
女性の名前は緋水愛璃。“灰の月”の管理者を務めており、銀色の装甲体―――“マークヌル・ノイエ”の駆動システムについてアドバイスをしてくれた人間だ。
「もう!何度も呼んだのよ?・・・・それで?“マークヌル・ノイエ”の調子はどうかしら?」
「特に問題は無いさ。お前のアドバイスのおかげで作業はスムーズに進んでいる」
「そっ・・・・そう。それは良かった」
何故かドキッとしながらおどおど、と言葉を繋げ、
「ちょっと!そこのシステムは内部構造にリンクしなきゃ駄目って言ったじゃない!!」
「!?あ・・・・あぁ。すまない・・・考え事をしていた」
いきなり血相を変えてコックピットに入り込む愛璃。
「ちょっと失礼」
そう言うや否や遠慮無しに熟した果実を伊織の膝の上に乗せて柔らかく拉げるのもお構いなしに目の前をふさいでほっそりとした指でキーボードを叩き始めた。
流水の話によれば祖国“ガーリアン”で展開されている大規模戦争“カオスウォー”から逃れてきたと聞いている。
その時、伊織は彼との会話が脳裏に蘇った。
『彼女は長い間、管理者として生きてきたんだ。でも戦いの道具にするわけには行かない』
「なるほど。道具として扱われる前に保護しろ、とガイン郷に命令された訳か」
ぶっきらぼうに、無関心な態度で答える伊織。
『うん。それでも“カオスウォー”が終結するまでは関係の無いEDENに連れて行った方が良いと思ってさ』
「それでEDENが巻き添えを喰らったらどうする気だったんだ?」
それは、と言って口をゴモゴモとさせて言葉を濁らせる。
どうやら何も考えていなかったらしい。
それともガイン郷にはガイン郷なりの考えがあったのだろうか?
どちらにしろこの状況では確認を取ろうにも取れない事は確かだ。
「ガイン卿も妙なところでいい加減な癖があるからな・・・・・」
はぁ、と溜息を吐いて尊敬する恩師に呆れた思いを抱いた。
「・・・だからぁ・・・ここは・・・して」
(それ以前に・・・・ずっと“灰の月”にいたんだよな)
目の前で自分の膝に座る女性はずっと緋水愛璃としてでは無く、ただ“灰の月”の管理者として見られ、孤独の人生を歩んできたのだ。
コンソールを叩きながら形の良い薄紅色の唇から零れる説明を呆然と聞き逃し哀れむような光を浮かべ彼女を見つめる。
「ちょっと・・・・聞いてるの?」
「ん?あぁ・・・・すまない」
もう、と溜息をついて簡単に説明し直した後、
「じゃあ私はもう部屋に戻るけど・・・ちゃんと調整しておきなさいよ?」
よっこらしょ、と窮屈そうにコックピットを出る時、愛璃の緋色の髪が伊織の顔に触れた。
その感触が疼くような痒みを与え、同時にその感触が自分の髪を優しく撫でるようにも感じ取れた。
格納庫に降りた後、コックピットを覗き込んで注意を促す愛璃。
「わかった。ありがとな」
どういたしまして、と満面の笑顔で答え愛璃は肩を回し疲れた顔で帰っていった。
格納庫を後にしドアが閉まった直後、耳障りだった喧騒が嘘のように消えた。
(何か疲れるわねぇ)
肩を回しても一向に疲れが取れない。
ここのところ、ずっと機体調整などで休んでいなかった。
部屋に戻ったら真っ先に寝よう。
「そういえば・・・・」
思い出したように足を止め右にあるドアにふと目線を配る。
エルシオールに来てから案内はされてはいたが、自分で歩き回ろうということはしなかった。機体調整やデータ処理など様々な仕事も多かった為、散歩の余裕すらなかったのだから無理は無いな、と納得する。
(入っちゃおうかな?うん!そうしよっ)
生まれ持っての好奇心が胸をくすぐり愛璃は目の前のドアを開けた。
乾いた音を立てて開かれたドアの向こうには彼女の想像を覆す光景が広がっていた。
白い砂浜にそれに沿って広がる海岸線。蒼穹と同じく澄み渡った綺麗な海が、目の前に広がったのだ。
「嘘でしょ?・・・・どうして?海が・・・・」
信じられないながらも自然と足が一歩前に出る。
ゆっくりとした足取りで砂浜に流れ込み波音を立てる海水に手を差し伸べその冴え渡った温度を感じ取れ、自然と笑顔が浮かんだ。
「すごぉい・・・・・本当に海だ」
心地よい潮風が吹き緋色の髪が靡く。
「あはははははっ」
抑えきれぬ流れ出る衝動に身を任せるようにして靴を脱ぎ捨て波打ち際ではしゃぎ始める愛璃。
そこにいる女性には強い意志を秘め、重い使命を背負った影はどこかへ消え失せ、無邪気で誰もが見せる暖かみのある笑顔を浮かべて円舞曲<ワルツ>のステップを踏んで踊るようにしてはしゃぎ回っていた。
「誰ですか?・・・・・あっ・・・!!!」
木々に囲まれた管理人室から茶髪に緑色の帽子を被るといった服装が特徴的な少年、クロミエが不思議そうに目を丸くして出てきた。
肩には黒く丸い生物――――子宇宙クジラも一緒だ。
「こんにちは!クロ君っ」
大人の女性が見せる微笑とはまた違った可愛らしい笑顔を浮かべて靴を手に取りクロミエの元に歩み寄る愛璃。
一方、そんな彼女の接近にあたふたとし顔を紅く染めるクロミエ。
地味で動きやすさそうな軍服を身に纏う緋色の髪の女性。
上着からは彼女の熟した果実がその膨らみを誇示している。愛璃の胸部を見た瞬間、クロミエは反射的に視線を宙に泳がせた。
「クロ君も休憩?この場所って最高だよねぇ?」
「えっ・・・・あっ・・・そそうですねぇ!?」
彼の隣に座り込み靴を傍に置いて思いっきり背を伸ばす。
新緑の芝生が柔らかいクッションになり伸びた木々が陽光を程よく遮る絶好の場所だ。
「どうしたの?熱でのあるの?」
しゃがみながら下から覗き込むようにして近寄る愛璃の顔が子猫のように可愛く見えてしまい、クロミエの頬に宿る蒸気を更に倍増させてしまった。
「にゃ・・・・・にゃんでもありません!!」
「え?」
照れる余り思わず、しまった、と一瞬だけ顔をしかめ、
「なんでもありません・・・・・」
彼女と少し離れた位置に座り込み照れとはまた違った意味で頬を紅く染めるクロミエ。
ならいいけど、と心配そうに返す愛璃。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
無言の時間が過ぎ聞こえるのは波の音と時折、吹く涼しい風の音だけだ。
「私ね・・・・管理者なの」
「はい?」
沈黙を破ったのは愛璃だった。
何のことか分からずクロミエは水平線を見つめていた視線を彼女に移す。
愛璃は視線はそのままに語り始めた。
「私がEDENの人間じゃないってことは・・・・タクトさんから聞いてるでしょ?」
大体は、と返すクロミエに、
「私がいた世界にね?“灰の月”っていう旧世代文明技術の結晶のようなものがあるの。
何の因果か私は・・・・その“灰の月”の管理者なの」
「そう・・・・何ですか?」
うん、と愛璃。
クロミエはこれまで様々な“管理者”を見てきた。
慈愛の象徴ともいえ人々を優しく見守る白衣の聖母。
紫色の衣服に身を包み小柄で華奢な身体、長い金髪にバイオレットの瞳が特徴的なまだ幼い外見を持つ少女。
水色を基調とした服を身に纏い長い金髪、優しさと暖かさを兼ね揃えた少女。
三人の“管理者”と同じということだろうか。
(いや、違う)
目の前で水平線を眺める緋色の相貌の持ち主は自分が見てきた者達と似て非なる存在。
言葉では説明できない何かに苛立ちと不安を覚え、その理由を探し始めるも分からない。
「“管理者”としてね・・・・“ガーリアン”に住んでいる人達を幸せに出来るなら、私も嬉しいかった」
だが、理想とは現実とかけ離れている物だ。
“管理者”として精一杯生きてきたがAFなどの開発により彼女の祖国、帝政国家“ガーリアン”は戦乱の時代へと突入した。
「結局・・・・私って何がしたかったんだろ?私のやってきたことはみんなを幸せにするんじゃなくて・・・みんなを苦しめてきただけなのかな?」
ポツリ、ポツリ、と呟き俯く。
そんな彼女の様子を見てクロミエは焦燥に駆られるように手を弄んだ。
何故だと理由を聞かれればこの胸騒ぎのような念を正確に答えることは出来ない。
(どうしよう・・・・・凄く哀しそうだ。何とかしたい・・・・もう一度笑って欲しい)
彼女の笑顔を見て安心してきた自分に気付き何かないか、と打開策を考える。
そして、
「そうだ!!愛璃さんっ・・・・今度の補給の時・・・その、一緒に出かけませんか!?」
やった・・・・言えた――と心の中で安堵の溜息を吐く。
だが、彼女の返事で自分が何の誘いをしたのかようやく気付くクロミエはやはりまだ子供だった。
「それって・・・・デートのお誘い?」
(はぁう!!!???)
自分は彼女をデートに誘っていたことに今更ながら気付き呆然と愛璃を見つめる。
緋色の髪と瞳のように頬を少し朱に染め上げ時折、こちらに視線を送る。
「良いよ・・・・・丁度私も息抜きしようかなって思っていたところだし・・・ありがと!クロ君♪」
満面の微笑みを浮かべる愛璃。
――――後戻りはもう〜出来ない〜――――
某寒村で繰り広げられる惨劇の主題歌が脳裏に流れ、こりゃもう後戻りはできねぇな、と思いクロミエは覚悟を決めるしか出来なかった。
「それじゃ!私はこれで失礼するね?楽しみにしているから!!」
そう言うや否や靴をはいてスキップするかのようにしてクジラルームを後にしていく愛璃を呆然と見送る事しか出来ないクロミエであった。
「いい湯だな」
「そうだね・・・・・初めて登場したの・・・・いつだっけ?」
「さぁ」
湯煙が漂い視界を曇らせる空間の中、伊織と流水は少し熱めの湯が満たされた広い浴槽の中で両手、両足を伸ばす。
『エルシオー湯』。
エルシオール最下層区画、Dブロックに新設された大浴場は登場回数が余りにも少なかった為、作者すらその存在を忘れていた
「それにしても作者はもう少しマシな名前を考えられなかったのか?」
「仕方ないよ。この問題に関しては余り突っ込まない方が良いよ」
伊織の素朴な疑問に流水が持ち前のマイペースさでのほほん、と返す。
すっかり全身を包み込む湯に骨抜きにされたようで、頬が綻んでいる。
その無防備な表情が魅力なのかもしれないな、と伊織は思った。
(俺には良く分からないがな)
自分には全く関係の無い話だが、彼は士官養成局時代にその最大の武器である子供のような愛くるしさで幾度となく最低で一つ上、最長で六歳もの年上の女性に拉致されたらしい。
「どうしたのさ?」
「いや・・・・何でもない」
苦笑いを浮かべて鼻の下まで身体を沈める。
「僕達・・・いつかはここを離れるんだよね?」
流水の哀しげな一言が浴場に響き渡った。
離れたくない、という痛切なニュアンスを込めた呟きを放ち軽く溜息を吐く。
「そうだな・・・・“カオスウォー”が終結すれば俺達はEDENには居られなくなる」
「ランファともお別れか・・・・」
二人とも同時に溜息を吐いた。
祖国で繰り広げている大規模戦争“カオスウォー”。
軍人である二人は祖国で火種を撒き散らす『混沌の戦争』を終わらせる為に戦う事も出来ない。ここEDENにいる以上。
仮に終わったとしたら祖国の軍に属している自分達におそらく・・・いや、必ず帰還命令が下される。“白き月”ではエンジェル隊の一員となっているが、皇国軍側から見れば自分達は『外部協力者』となっているのだ。
どこの馬の骨とも知れない人間に皇国を救った天使達を共に行動させるということ自体、不本意に感じているはずだ。
「そういえば僕は明日の補給の間、ランファと出かけるけど―――」
「デートか」
途中で遮る伊織に流水はまたしても湯とは別の理由で赤面した。
「伊織はちとせとどこかへ行かないのかい?」
流水の問いかけにしばし黙考した後、
「考えたことはなかった・・・・・な」
「それじゃ駄目だよ?ちとせだって伊織とどこかに出かけたいと思っているはずだからさ」
むぅ、と唸り再び黙り込む。
一体何処へ出かければいいのだろうか?まったく思いつかない。
「ん?」
その時、浴場のドアが開き一人の少年が腰にタオルを巻いて入ってきた。
クジラルームの管理人――――クロミエ・クワルクだ。
何故か表情は後悔という言葉が一番似合っているほど、曇っている。
「えぇっと・・・・・クロミエ君だったけ?」
「どうも」
軽く会釈した後、ゆっくりと浴槽に入り、
「ふぅ」
溜息を吐いた。
エルシオー湯の男湯の効能には溜息を吐かせる働きがあるのだろうか。
時間は若い男三人は無言のままで残し過ぎていく。
(誰か喋ろ・・・・・・場の雰囲気が悪くなるだろ)
(誰か!この雰囲気を何とかしてくれ!!!いやマジで!!!)
(愛璃さんとデート・・・・・デートデートデートデート・・・・デートォ!?)
それぞれの思惑を胸に秘め沈黙を守り続ける。
気まずいムードがこのまま続くのか、と思いきや隣の女湯から華やかな声が聞こえてきた。
ある意味でその声が硬く重っ苦しい雰囲気を砕いた。
「やっぱり誰もいないね!!」
「そうねぇ・・・・みんなも働いているからね」
「ご苦労様です」
最初にミルフィーユの声が聞こえ、次に愛璃が相槌を打ち最後はちとせが感心するように零す。
―――――女湯
ちゃぽん、という音を立てて三人が浴槽に身を沈める。
ミルフィーユと愛璃が満足そうに四肢を伸ばし、ちとせもふぅと溜息を吐く。
湯の所為で火照った白いうなじに黒髪が纏わり、その光景が悩ましさを漂わせる。
「ところで・・・愛璃の胸って大きいね!!!」
―――――男湯
「「「ッ!!!???」」」
激しく動揺するも物音を立てまいと必死に全神経を操り身体を押さえつける三人。
特にクロミエにいたっては顔をこれでもか、とまでに真紅に染め上げていた。
十五歳の少年にとって身近な女性(先程まで話していた女性)の肉体は余りにも刺激が強すぎるのだ。
(いきなり何てこと言うんだあの女は!!!)
(緊張感が無いのかな?でも無防備すぎはしない?)
(あわわわわわわわわわ)
―――――女湯
「ちょっ!いきなり何てこと言うのよ!!男湯に人が居たらどうするの!?」
ミルフィーユの爆弾発言に愛璃は髪と瞳動揺に両頬に朱を昇らせ怒鳴り返す。
そんな愛璃にやんわりとした笑顔を浮かべ、
「大丈夫だよぉ。男湯には誰もいないって!だってさっきから音とか話し声がしないじゃない?」
「それは・・・・そうだけど」
気まずいムードに呑まれ、沈黙し始めたことにより女性陣は男湯に伊織、流水、クロミエがいることをまるで知らない様子で更に会話を続けた。
「だって胸が・・・・・ほら!お湯の上に浮いてるよ?」
「本当です・・・・・綺麗。やっぱり・・・・浮くんですね」
「やだっ・・・あんまり見ないでっ。・・・・恥ずかしいよ・・・」
胸の上に薄いタオルが一枚被せるようにして水面に浮かび漂っている。
しかし、ほっそりとした身体とは対照的なメロンのように実った彼女の柔球は祭りの出店にある水風船のように湯船に浮かび微小の波にも反応し感度良く揺れていた。
ある種の芸術品とも呼ぶに相応しい躍動感溢れる彼女の胸にすっかり見とれてしまっているちとせとミルフィーユの視線から隠すようにしてタオルを胸に巻きつける。タオルの上からでも十分すぎるほど突き出た彼女の柔房が巻きつけられた際にふるふると動き、
「すごぉい・・・生き物みたい」
「本当ですねぇ」
「だから見ないでってぇっ」
悲痛な叫びが木霊した。
そして、ムッとした目でちとせに視線を飛ばす愛璃。
「そういう・・・・ちとせだって・・・・綺麗な物を持っているじゃない!!」
「ふぇ!?・・そんなことは・・・ありません!!」
「そうかなぁ?ちとせのってさ形も大きさも丁度良くてうらやましいなぁ」
ミルフィーユも呑気そうに構える。
「ひっ」
顔を真っ赤に染めて自分の胸を眺めるちとせ。
本当にこれでいいのだろうか?これなら彼も喜んでくれるだろうか?
そんな考えを思い浮かばせて頬を染めている時。
―――――男湯
(おい、クロミエが大量の血液を鼻から出して浮かんでいるぞ?助けなくて良いのか?)
(とはいったものの・・・今、下手に動けば僕たちの存在も知られちゃうし)
小さな身体のどこにこれだけの量の血液を収めていたのか、と問いたくなるほど湯船を赤く染めて力無く漂うクロミエ。
「無理だな。クロミエの前に俺たちがのぼせる」
「そうだね。出ようか?」
湯船で漂うクロミエの両肩をそれぞれ持って湯船を出る二人。
―――――女湯
「ねぇ?今何か聞こえなかった?」
「そうかな?誰かいませんかーーー?」
相変わらず緊張感を持たないミルフィーユ。
―――――男湯
(とりあえず、あとでちとせに会って話をつけておくか)
無言で頷き合った後、血を流すクロミエを引きずるようにして二人は浴場から出て行った。
彼らが通った後はクロミエの鼻血の跡がまだ鮮明に残されていた。
―――――女湯
「私たちも出ましょうか?」
「そうですね」
「のぼせちゃうしね」
胸にタオルを巻いて出る愛璃。
そんな時でもやはり感じる胸への視線に大きく溜息を吐いた後、愛璃はこれ以上追求するのを止めた。
自分だって好きでこんな胸になったのではない。気が付けば大きくなっていただけなのだ。
重いし、肩は凝るし走ると凄く揺れるし良いことなんて何にも無いのだ!!
心の中で毒づきながら愛璃は自分の豊球に恨めしい目で睨みつけた後、浴場を出て脱衣所で着替え始めるのだった。
「危なかったな。あのままじゃ出血多量でくたばっていたんじゃないのか?」
「あの年頃の彼には刺激が強すぎたんだよ」
ハハハと苦笑した後、突然に流水はカッと目を見開いた。
思えば自分もあれに良く似た事件に巻き込まれていたではないか。
自分を部屋に拉致した後、媚びるように潤んだ瞳で服を脱がせようとする女性もいればシャワールームに連れて行こうとした女性もいた。
思い出したくないトラウマが脳裏にフラッシュバックし、う〜ぁ〜と、うめき声を上げ始めた。
「あぁ、気分が悪くなってきた。ちょっと部屋に帰る」
そう言うや否や気分が悪いんじゃないのか?と疑うほど凄まじい速さで自室へと引き返していく流水の後姿を見送り、伊織は今後の行動に迷った。
機体調整も終わったし、することは何も無い。
つまり暇なのだ。
立ち尽くし黙考し始めたその時、
「伊織さん」
「本当だ伊織じゃない・・・・どしたの?」
背後からの声に振り向くと長い黒髪、緋色の髪の女性が二人こちらに歩み寄ってきた。
烏丸ちとせ、緋水愛璃だ。先程、女湯で『胸論』を繰り広げていた二人だ。
風呂上りの所為か近づいてくるに連れて身体から立ち上る蒸気の暖かさがほんのりと伝わってくる。
「いや、クロミエが鼻血を出してさ・・・・医務室に連れて行ったところだ」
「クロ君が!?どうして?のぼせたの?」
驚いたように軽く目を見開く愛璃に、
「エルシオー湯でお前達の会話を全部聞いてたからだ」
ぽつりと呟くように返す。
二人ともピタッと動きを止め何のことかと思い出し始めた。
そして、先程まで話していた恥ずかしい会話がよりによって彼に聞かれていたという事実に気付き一気に頬を紅潮させた。
ちとせは白い肌を紅に染め、愛璃は髪と瞳の色同様、顔面に緋色を昇らせていく。
「ひっ・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「お嫁にいけませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
直後、回れ右をし全速力で駆け出す二人。
愛璃は自分の豊胸について丸々聞かれてしまい、ちとせは想い人の前で自分の胸について言われ、一昔前のセリフを吐いて走り去っていった。
「な・・・・なんだ?」
元凶である伊織本人は訳が分からず首を傾げるばかりである。
「女って奴は・・・・・」
元凶が自分であるにも関わらず女に対して大きく溜息を吐いた後、足音が近づいてくるのを感じ、
「伊織・・・・・」
足音の主の男性が自分を呼び止めた。
またか、と内心溜息を放つもその男の声が妙に真剣な口調なので雑念を捨てて振り向く。
そこには上級士官の軍服に身を包んだ英雄が自分を見つめて立っていた。
「お前に聞いても分からないかも知れない。でも、知りたいんだ」
「エイシスが自分を“マイヤーズ“だと名乗ったことか・・・・・」
思い出すようにして呟く伊織に無言で頷く。
「場所を変えるぞ・・・・・聞かれたら面倒だ」
深い闇色の瞳はひたと英雄――――タクト・マイヤーズを見据えていた。
新緑の芝生が広がり蒼い空も同様に頭上で果てしなく広がっている銀河展望公園。
芝生の上で両手をポケットに突っ込み、
「聞いたと思うが・・・・・俺はエイシス・マイヤーズを封じ込める擬似人格だ」
「どうしてお前が知っている?」
その事実を聞かされたのは今は居ないブラウンの髪の青年からだ。
だが、知りもしない事実を目の前の黒髪の青年は知っている。
まるで、自分の預かりしらぬどこかで物事が進んでいるような錯覚に陥るタクト。
「俺が以前、<マーク・ヌル>を大破させて帝都に搬送された時だった」
それは大分前にさかのぼる。
仮にも自分の息子であるフォートの攻撃からちとせを守る為、伊織が重傷を負った時。
彼は帝都に搬送され治療を施されたのだが、当の本人である伊織は他人事のように語り始めた。
簡単なリハビリ作業を行ってる最中、恩師であり父親のような存在であるガイン郷が訪ねて唐突に自らの存在の真実を告げたのだ。
擬似人格である自分はいつかは消える運命にある、と。
「知っていたんだな?」
無言で頷く。
「だから・・・・本来の存在であるエイシスのスレイヴが現れたり、ナンバーズのフュンフが俺に攻撃をしかけたりした時点でこうなることは予測していたさ」
ふと、天を仰ぎながら続けた。
「ナンバーズを封じ込めるにはそれなりの力が必要だ。だから俺自身もそれなりの調整を受けたんだ」
エルシオールに来て艦を案内した時、行われたランファとのスパーリング。
あれもあらかじめ『調整』された身体能力がもたらした業なのだろう。
「じゃあ・・・・本題に入るか」
フォート・マイヤーズが生まれてすぐにBBHW、後のイレギュラーナンバーズが“灰の月”内部にあったシリンダー内で眠っている様子を発見した“ガーリアン”のタクト・マイヤーズは科学者として狂喜乱舞した。
元々、EDENのタクトとは違い“ガーリアン”でのタクトは科学者としての道を突き進み子供であるフォートも自分の後継者としてなってほしいという思いの為に結婚し生ませたようなもので愛情なんてものは微塵も感じなかった。
ただの利用物として捉えていただけで・・・・・
フォートは必死に父の愛情を得ようと努力し三大頭脳の一人になるもタクトは笑顔すら見せなかった。
結果、優れた能力を持つBBHWの研究に没頭し完成体まで作り上げる事に成功し自らの姓を与え、皮肉にも実の息子のフォートでは無く兵器として生まれたBBHWにその歪んだ愛情を注いだ結果がエイシス・マイヤーズなのだ。
「そ・・・・・んな。じゃあ俺は自分の息子を・・・・フォートを愛さなかったわけか?」
絶句し途切れてしまう言葉を繋ぐように掠れた声で問い掛けるタクト。
目は見開かれ冷や汗を額に浮かび困惑の光が浮かんでいる。
そんな彼に視線を移し、
「気にするな。例えお前であってもそれは“ガーリアン”のお前の話だ」
何とも無いといった様子で切り返す伊織。
(伊織・・・・・なのか?)
伊織がフォートに対して憎しみを抱いているのは確かだ。だが、今の伊織の黒瞳に宿るものは冷徹な光だった。
まるで、所詮は敵の話だ、とでも語っているかのように冷たく昏い光だった。
「だけど・・・・・」
「いつまでも悔やむな。お前自身のことじゃない」
尚も不服そうに零すタクトを遮り諭すような口調で淡々と述べ、
「お前はお前ができることをすれば良い・・・・その為にも」
そう言って言葉を区切った後、顎で彼の背後を示した。
振り向くと泥まみれになりながら満面の笑顔を浮かべるピンクの髪の女性が手を振ってこちらへ歩み寄ってくる。
「その為にも・・・・お前がしっかりしろ。お前達が生む子供をお前達が愛情を注いでやれ」
微かな微笑を浮かべた後、クルリと回れ右をしその場を立ち去っていった。
立ち去っていく伊織と入れ違いでやってきたピンクの髪の持ち主―――ミルフィーユ・桜葉がニコニコと笑顔を浮かべて、何を話していたんですか?――と聞くと、少し相談に乗っていて貰っただけだからと苦笑して返した。
「一応、謝っておこなければ」
先程は取り乱してしまった、と思い後悔しながら伊織の部屋の前で立ち止まりインターフォンを鳴らす。しかし、反応はない。もう一回押しても・・・・・やはりない。
「し失礼します」
少し顔を赤面させながらちとせは伊織の部屋の中へと入っていった。
若草の香りを漂わせる畳の匂い。造りはちとせの部屋と同じく和式だ。
「あ・・・・・」
縁側で柱にもたれかかりながら微かに身体を上下させる伊織がそこにいた。足音を立てずそろりそろりと近づいて彼の寝顔を除いた。
「あ・・・・・」
またしても同じ言葉が漏れた。安らかで冷たいオブジェのような寝顔。
「んっ!」
起こしてしまった、と思い顔をしかめるちとせ。
「何だよ雪華・・・・・今日は非番だろ?ったく」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
雪華。伊織が愛しまた伊織を愛した女性。今はこの世に居ない人物だ。
夢にまで見るほど、まだその女性に対し想いを募らせているのだろうか。急に自分の存在が小さく思えた気がし、寝言とはいえ何気なく放った彼女の名前が自分の胸を大きく抉った感覚をちとせは味わった。
(何してるんだろ?)
ちっぽけな自分にか、それとも伊織にか。強い苛立ちを覚えちとせはそそくさと部屋を出ようとした時、
「・・・・・・・・・・・・ちとせ」
「へ?」
自分の名前を呼ばれ思わずドキッとし恐る恐る彼の顔を覗いて見た。伊織は寝ているままだ。なら、何故自分の名前が呼ばれたのだろうか?そんな疑問を脳裏に浮かべながら考えていると、ちとせはあることに気が付いた。
伊織の寝顔が少しだけ変わっているのだ。冷たい雰囲気はどこかへ消え失せ暖かい微かな微笑を口元に浮かべている伊織の姿がそこにいたのだ。
「伊織さん・・・・・・・・・」
そっと伊織の隣に腰掛けて彼の髪に手を伸ばしてみると見た目とは裏腹に絹糸のような触感だった。
「ん・・・・・ちとせ?」
「ひゃ・・・・・どうも」
重々しく目を開けてちとせの姿を捉えた伊織は大きく伸びと盛大に欠伸をして眠気眼を擦り、ちとせのことを見つめ始めた。当然、ちとせも徐々に顔を紅くしわざとらしく視線を逸らし始める。
「あの・・・・なんですか?」
「ちとせ・・・・・明日は暇か?」
少し目を見開いてしまったらしく大丈夫か、と聞かれてしまうほど彼の問いかけに自分は驚いたらしい。
「暇・・・・・ですけど」
「そうか。そのぉ・・・・あれだ・・・・少し出かけないか?」
ぎこちない様子で言葉を途切れ途切れになりながらも懸命につなげて行く伊織。彼にとって女性を自分から外出に誘うなど敵部隊を全滅させるよりも遥かに難しいのだろう。
「・・・・その・・・・嫌か?いや、嫌ならいいんだ!」
「ふぇ!?いえ!嫌じゃないですっ!全然嫌じゃないですっ!!むしろ・・・・嬉しいです。ありがとうございます、伊織さん」
そうか、と少し頬に朱を昇らせてこめかみを掻いて業とらしく視線を逸らす。
そんな彼の様子がとても幼く見え愛しく見えた。
「それじゃ明日の朝九時に格納庫で」
「はいっ。楽しみにしてますねっ」
可愛らしい笑顔を浮かべて部屋を飛び出していくちとせの後姿を見つめる伊織をよく知る人物がいたら己が目を疑うに違いない。彼の深い闇色の瞳に浮かんだ暖かい光が宿っていることを。
バシュッ
音を立てて開いたドア。入ってきたのは流水だった。
「伊織、悪いけど知らせが二つ入って来た」
「知らせ?何だ?」
息を整えて流水はキッパリと告げた。
「カオスウォーが終結し復興作業が始まり僕達に帰還命令が下された」
「なっ・・・・・」
次期に訪れることは分かっていたが、まさかここまで早く終結するとは。
「それで?もう一つは?」
「ガイン郷と“聖光騎士団”の各団艦隊がクーデターを起こしたそうだ」
第二十七章
完
続く
後書き
次から次へと展開を進めていって、次から次へとキャラを作ってしまいました。
前半に出てきた散華翔矢(さんげしょうや)と神居千早(かむいちはや)もまた新キャラです(汗
彼らの再びの登場は大分後ですがかなりのインパクトを与えて再登場をさせたいと思っていますのでお楽しみを。
愛璃と流水のNOA!Q&A教室。
「何?この企画まだやるの?作者も飽きないねぇ!あんまりページ数増やすと読む人が疲れるでしょ!!」
「先生!誰に言ってるのだ?」
カメラ目線で叫ぶ流水にナノナノが手を挙げて質問し、
「ナノちゃん〜余り気にしない方がいいですわよ〜」
カルーアが持ち前のマイペースさでナノナノを諭すように言う。
「それじゃみんな!今日は第二回目!何か質問はない?」
「あの!愛璃さん、特別ゲストって・・・・・・・」
カズヤの指摘に愛璃が思い出したようにあぁ、と呟く。今回の講習は“ガーリアン”の組織についてという話だが今回はスペシャルゲストも招いていると聞いている。だが、肝心のスペシャルゲストが来ておらずカズヤは首を傾げるばかりだ。果たしてスペシャルゲストとはどのような人物なのだろうか?
「彼なら既に呼んでいるわ。入ってきて」
「おう!」
廊下の向こうから威勢の良い声が跳ね返って来た。声質から見て男性だとカズヤは判断した。また、テキーラの魅力に誘惑されなきゃいいんだけどなぁ、と他人事のように思いながら教官である流水にチラリと視線を移す。前回、テキーラに接近され仔犬のように縮こまっていた彼だが今回はそうはさせまい、と距離を置きジェラルミンの盾まで持ってきている有様だ。
(よほどトラウマになったんだろうなぁ)
ガチャ!!ガッ!!ガッ!!
声の主がドアを開けようとも何故かドアは開かなかった。どうやら細工が施されているらしくビクともしない。
「ドアに何か異常でも?」
隣の席で相変わらず背筋を伸ばしているリリィが異常を察知しドアに目線を移した。
「てへへへっ・・・・イタズラなのだ!」
「ナノちゃ〜ん・・・・・!!!」
テヘヘと頭を撫でるナノナノにアプリコットが眼つきを険しくして睨みつける。とはいっても余り迫力はないな、と思いながらカズヤはそのやり取りを傍観していた。工具か何かでドアを修理し普通に人が入ってくるだろう。ごく普通の考えを胸中に秘め、カズヤは物事が進むのを待つことにした。
「わかったのだぁ」
ナノナノがションボリと、頭をうな垂れながらドアに手をやろうとした時、
「いかん!プディング少尉!!!」
動いたのはリリィだった。先程のとは比べ物にならない程、一層険しい表情を浮かべて鍛え抜かれた足腰が繰り出す瞬発力を活かし目にも止まらぬ速さでキョトン、と首を傾げて頭上に?マークを浮かべるナノナノの腹部に手を回して抱きかかえドアから距離を取った。
(何だ!?何だ!?)
リリィのいつになく真剣な表情にカズヤは思わずドキッとした。
次の瞬間、
ズザン!!ズザン!!!ズザン!!!!
銀色の閃光が迸り直後、ドアが盛大に音を立てて切断された。
表情を青くするルーン・エンジェル隊のメンバー。そして、もはやゴミと化したドアの向こうから一人の青年が現れた。
ウェーブがかかったブラウンの髪に同系色の双眸。漆黒の軍服に身を包み、右肩には身の丈を遥かに超える鎌のような武器を抱え青年は気だるそうに歩いて室内に入ってルーン・エンジェル隊のメンバーを見回す。目の下が時折、ピクピクッと痙攣している。
「だぁれだぁ〜?ドアに細工した悪い子は?」
鎌の刃が照明に反射し、鋭利で危険な輝きを放つ。
どおやら怒っているようだ。全身から迸る殺気にカズヤを含めその場にいた全員が戦慄した。左腰の鞘に納めた剣の柄に手を伸ばすほどリリィは戦闘態勢を取っていた。
「おぉらぁ〜!悪い子はいねぇがぁ〜!!!」
その時、青年と赤い鬼の姿がダブって見えたのは言うまでもない。
「エイシス!抑えて!!!」
今にも大鎌――――鳳旋火を振り回しながらルーン・エンジェル隊に襲いかかろうとするエイシスの肩に手を回して流水が血相を変える。
「ふざけんな!久しぶりの出番で『帰ってきたエイシス』っていう歌も作ってたんだぞ!?見せ場を壊しやがって!!」
必ず語尾に『!』マークをつけるほど青年――――エイシスの怒りは頂点に達していた。
「エイシス?・・・・・パパ・・・なのだ?」
「はん?」
ナノナノの震えて掠れた呼び声に思わず素っ頓狂な声を上げるエイシス。その直後、
「パパぁっ・・・・・なのだ!!」
エイシスにぴょんと飛びついた。
「ちょっ!何だよお前!俺はまだ結婚してねぇぞ!!!」
「エイシス、実は・・・・・」
「何?ヴァニラが見つけた生きたナノマシン・・・・・?」
流水がコッソリと耳打ちし、エイシスが目を細める。
今自分に抱きついている少女がヴァニラをママと呼び、そのヴァニラが自分に想いを寄せていた故に自分はパパと呼ばれているのだ。良く観察してみる。猫のように愛くるしい顔、良し。
身体はまだ成長段階だから放っておく。そして・・・・・尻尾。
ん?尻尾?
確かに白いしっぽのようなものがフリフリと自由自在に動いているではないか!!
その時、エイシスの脳裏にある光景がフラッシュバックした!!
「なにエイシス?猫のように可愛い女の子が自分をパパと呼んで飛びついた?
しかもしっぽが生えている?
逆に考えるんだ「しっぽが生えちゃっていてもいいさ」と逆に考えるんだ」
「はっ・・・・・ジョースター郷!!!」
目をかっと見開くエイシス。再びナノナノに視線を移し、
「私はお前の父親だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
某ダークサイドに堕ちた騎士のような声でエイシスはナノナノを抱き上げた。
「わーい!!」
満面の笑顔を浮かべてはしゃぐナノナノ。
ごほん、と盛大に咳払いをする愛璃に気付きやれやれ、と肩をすくめてエイシスはナノナノを床に下ろし頭を撫でて顎で席を示した。しぶしぶ頷きながらもナノナノが席についたことを確認し、
「驚かしちまったな。ワリィ!俺の名前はエイシスだ。気軽にエイシスって声をかけてくれ!」
何なんだこの人は?
カズヤは率直な意見を脳裏に浮かべた。かなりのインパクトを与えるほどの存在感。
タクトとは別の意味で快活な男だ。
「それじゃ、説明に入るわね?」
惑星間統治帝政国家“ガーリアン”。
皇帝が統治する国家で245の星系を掌握し国家独自の優れた科学技術と旧世代文明時代の遺跡、通称“灰の月”に眠る古代技術を組み合わせた単独有人搭乗式巨大人型兵器、AFの開発により一気に軍事力を高めていく。EDENのロストテクノロジーほど魔法的なような技術がない変わりに“ガーリアン”独自が優れた科学技術を保有している。帝政国家とはいえ貴族、一般市民といった階級は無く皇帝もどちからといえば象徴に近い存在。
中央と辺境への貧富の格差は少ないが反逆面、犯罪面に関しては徹底しており犯罪が起こる前に武力で殲滅する為、その強引なやり方に国民からは賛否両論の意見が出されている。
帝政軍。
帝政国家が保有する軍隊で幾つかの特殊部隊と代表的な陸上戦部隊、空戦部隊、宇宙部隊の三つの部隊によって構成され士官養成局を卒業したものは主にこの三つの部隊に配属されるが、成績優秀者などには特殊部隊に配属される事も。特殊部隊は情報部隊、聖光騎士団などである。
また、特捜機動部隊も軍属という事になっている。
士官養成局。
帝政軍に所属する士官を育てる士官学校のよう施設。毎年、様々な士官候補生がこの士官養成局から巣立っていく。伊織、流水もまたこの士官養成局出身者である。
特捜機動部隊。
AFによる大規模犯罪、戦争に発展する犯罪を片っ端から殲滅する特殊部隊で専用の高性能AF“フレスヴェルグモデル”が標準戦力とし日夜疾駆する超越公安組織で逮捕ではなく殲滅を主体とした部隊の為、部隊員特別裁量権が部隊員に与えられ部隊員は独自の判断で犯罪者を裁くことが出来る(伊織は容赦なく犯罪者を皆殺しにした事により殺人機械<キリークマシン>と呼ばれていた)。
犯罪者から見れば特捜機動部隊に遭遇したら自らの死が訪れるのを待つだけだ。
聖光騎士団。
帝政圏、最強の部隊と称され尊敬と恐怖の対象として君臨する皇帝直轄部隊。
第一団艦隊から第八団艦隊まで存在し各団艦隊は要塞一つを陥落させるほどの戦力で各団団長(筆頭)、副団長(筆頭補佐)と艦隊戦闘司令の三人が主軸となってそれぞれの艦隊を統括している。帝都の護衛、重要拠点の警護、戦争時の敵部隊の撃破などを任せられ、帝政軍の切り札的存在。騎士団専用AFも開発され、また操縦兵も最高の人材が帝政国家全土から選び抜き固められた。
騎士団設立と総団長を務めるのは生きた伝説、ガイン・ゼーガルド郷。
「以上が“ガーリアン”の主要組織よ」
「何か質問はあるかな?」
「せんせーい!僕の筆箱がありません!」
悪ふざけに手を挙げて小学生のようなエイシスに愛璃はその緋色の双眸に刃物以上の鋭い光を宿しどこからか取り出したチョークをエイシスに投げつけた。その余りに早い行動にエイシスは一瞬だけ目を見開きチョークの直撃を許してしまった。
「あべし!」
チョークが当たった額を抑え呻き声をあげるエイシス。
「何すんだよ!?こんな簡単に我を忘れて精神が壊れちゃ今の日本は駄目だな」
「ぶち壊れてんのはアンタの精神よ!!大体、何でアンタがゲストキャラなのよ!?」
激昂する愛璃に、
「いや・・・・これオマケ小説じゃん?本編関係ねぇずら!だから何をしてもいいんだよ」
(なんつう・・・・・現実に引き戻す発言を・・・・)
「あの・・・・緋水管理者」
リリィの挙手に気持ちを切り替える。
この男に何を言ったところで無理だろう。確かにこれはオマケ小説だが、本編ではただでさえ出番が少ないのだ。出るところはシッカリと出なければ存在が消えてしまう。現実じみた自己保存本能に従い、
「何かしら?」
「騎士という称号ですが・・・・やはり剣術の達人が集っているのですか?」
リリィの真剣な問いかけにカズヤは内心苦笑した。彼女の出身地であるセルダールは剣の惑星といっても過言ではない。そのセルダールで騎士の称号を取るのはごく限られた者のみ、すなわち達人の領域に達した者に騎士の称号が与えられるのだ。ならば、惑星ましてあ住んでいる世界が違え彼女にとっての“聖光騎士団”はまさに剣術のプロフェッショナルが揃っている部隊だろう。
しかし、
「いや、騎士団っていうのはあくまで名称に過ぎないんだ。確かに限られた人間にのみ入団は許可されるけど特に剣術って訳でもないよ」
「そう・・・・・・ですか」
やや落胆した様子で返すリリィに流水は思い出したように、
「でも・・・・・薙刀とか棒術が得意な人はいるけどね」
「そうなんですか?」
うん、と答える。“聖光騎士団”は皇帝直轄だけあって豊富かつ潤沢な資金源をフルに活用し基本配備戦力であるAFも一から開発するなどとかなりのバックアップがついている。その反面、専用機として開発された高性能AFを扱うことは並みの熟練兵では機体スペックにすら追いつくことがは出来ない。故に帝政国家全土から選りすぐりの人材を選び抜き固められた戦闘のプロフェッショナルフォースが“聖光騎士団”なのだ。ちなみに騎士団AFは白い装甲に金色、銀色といった華やかなカラーリングが施されているのはせめて外見だけでも騎士に近づけようと総団長であるガイン郷の意思である。
「確か・・・・第二団艦隊の団長が体術とかを得意としていたなぁ」
あくまで自分は艦隊による戦闘を指揮している立場に過ぎないため他人事のように呟く。
「要するにスペシャリストが集まっている部隊っていえば分かってもらえるかな?」
なるほど、と呟くリリィ。
「他に質問は無いみたいね。じゃあ今日はここまでにするよ」
「解散!!!」
オマケ小説 完
続く・・・・・のか?
オマケ小説後書き
何だかんだでエイシスを出してみました。ナノナノとのネタを思いついた途端、いつの間にかPCを起動させてキーボードに手を伸ばした自分。その割にはエイシスは余り喋っていない・・・・・・
こんな調子でオマケの方は不定期ですが続けていきたいと思います。