二つでひとつ    著:高瀬 未沙

 

「コタロー君!一緒に帰ろっス!」
美紗が、いつも通りのハイテンションで湖太郎を呼び掛ける。
「ハイ。・・・ってギャッ!」
返事をするなり、美紗は湖太郎に抱きついた。
「美・・・美紗・・・さん・・・?」
湖太郎は、美紗が抱きつくのと同時に、ある違和感を感じた。
「コタローちゃーん、帰ろっ♪・・・ってあ゛ー!美紗さん!湖太郎ちゃんにくっつかないで下さい!」
小星が湖太郎の元へダッシュする。が・・・。
「ラブユー美紗さぁ〜ん!帰りましょ〜vv」
「ギャッ!」
どっから出てきたのか、大が小星の邪魔をする。(悪気があるわけではなさそー・・・)
もちろん小星は・・・。
「邪魔すんじゃねーーーーー!」
「グフッ」
小星のパンチを喰らった大は、空のかなたへと飛んでいった。
「ひゃぁ〜、飛ぶなー。やっぱ植松の力はだてじゃねーぜ。ホントに女か?お前」
いつのまにいたのか、天が笑いながら話し掛けた。
「なんですって!?もー、テンちゃんなんかキライ!湖太郎ちゃん、帰ろって・・・コタローちゃん?」
「・・・・・・・・・・・・」
湖太郎は、なにか思いつめたような顔をして、ずっと下を向いていた。
状況を知った美紗は、すぐさま湖太郎から離れる。
「あっ、ゴメンッス・・・。コタローくん」
湖太郎はムキな顔をして、美紗の手首をつかんだ。
「ゴメン。小星ちゃんもテンちゃんも先帰ってて」
「あっ、コッ、コタロー君?」
湖太郎はそう言い残すと、美紗を連れて、裏庭の方へと向かった。
「・・・どーしたのかな?コタローちゃん・・・?」
「さぁ・・・・・・?」
「御手洗 大、ただいま大復活☆さぁ、美紗さん!一緒に帰りましょう!そして、帰りにウチに寄ってお茶でも・・・・・・・・・  って、いないしぃー!」
「・・・テンちゃん、かえろ」
「ああ・・・」
ガクッと膝を地面につく大を置いて、小星達は去っていった。

「どしたッスか?コタロー君?」
美紗はコタローに笑顔で質問する。
それが、湖太郎にとって、とても悲しかった。
「美紗さん、あんまりムリしないで下さい!」
「フエッ、コタロー君さっきから変ッスよ?どしたッスか?」
「変なのは美紗さんです!・・・・・・なにがあったんですか?」
湖太郎は、嘘のない、真剣な顔で真っ直ぐ美紗を見つめる。
美紗はそれに降参するかのように、静かに口を開く。
「・・・なんでコタロー君にはすぐ分かっちゃうッスかねー・・・・」
「話せる事なら話してください・・・」
コクリと美紗はうなずく。
「・・・てひひ、あたし・・・また試験落ちちゃったッス」
「試験て・・・『テンシ』の試験の事・・・ですか?」
美紗は、またコクリとうなずく。
「この試験受かったら、一人前に一歩近づけたのに・・・。さっちゅんにも『まだまだ甘い!』って言われたッス」
湖太郎は、しばらく黙った。
美紗も、しばらく黙った。
長い沈黙が、重い空気をもっと重くする。
しかし、その長い沈黙は湖太郎によってとけた。
湖太郎は、黙ってかばんからなにかを取り出した。
「コ、コタロー君・・・」
「クッキーです。小星ちゃんからもらって一枚余ったので、美紗さんにあげます」
湖太郎は無表情で、美紗を見つめ、手に乗っているクッキーを差し出す。
すると、美紗は笑顔で
「ありがとッス」
ドキ・・・
なんでだろ?
美紗さんの笑顔を見ると、こんなにも落ちつくのはなぜ?
「・・・・・・・・・・」
美紗はクッキーをしばらくみつめ、パキンと半分にわった。
「コタロー君に半分分けるッス!」
「・・・・・・ありがとうこざいます」
湖太郎は反論せず、素直に受け取る。
「コタロー君、このクッキー、いまは半分・・・二つだけど・・・」
美紗はコタローのクッキーをとりあげて、くっつける。
「こーすると一つッス!不思議ッスね!」
湖太郎にクッキーを返す。
すると、湖太郎は笑顔で頷く。
「そーですね・・・・」
僕の心は、美紗さんに扱われてるみたいだ・・・。
・・・じゃ、美紗さんの心も僕の物なのかな・・・・?

FIN.



〜管理人感想〜

切ないようでほのぼのした話です。
クッキーの中に繊細に描かれていた湖太郎や美紗の感情の動きが、私自身とても参考になりました。